大切なものを守るようです
193 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:08:16 ID:.vou25f20
 
 
 
( ФωФ)「めがねこそ至高」
 
(‘_L’)「目を覚ませ。クーにゃんは狐コスこそが」
 
( ФωФ)「めがねとは本来、その人の知的属性を向上させるためのアイテム」
 
( ФωФ)「しかしクーにゃんの場合、どうしたことか、ドジっ娘成分とギャップが生まれるのだ」
 
( ФωФ)「考えてみろ、ドジなクーにゃんがにゃんにゃんしている……その姿を!」
 
(‘_L’)「狐コスには勝てないな」
 
(‘_L’)「狐コスには、圧倒的、圧倒的すぎる、破壊力が備わっている」
 
(‘_L’)「そんな小手先では到底通じないような……そう、まさにチャンピオン。それが、狐コスなのだ」
 
(‘_L’)「クーにゃんの艶やかな髪から伸びる、尖った耳」
 
(‘_L’)「頬ずりしたくなるほどちいさくて丸みをおびたおしりから生える、ふさふさな尻尾」
 
(‘_L’)「おまけに、それがぱたぱた動く、なんていうオプションつきだ」
 
(#‘_L’)「しかも、無表情で、だぞ!!!」
 
( ;ФωФ)「ぐおッ!!!」
 
 
.

194 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:08:48 ID:.vou25f20
 
 
 
(‘_L’)「ファン投票でも狐コスが一位を占めている。……勝ったな」
 
( ;ФωФ)「ふ…フン! まわりに流されるなど、にわかのすることよ」
 
( ФωФ)「ワガハイは、クーにゃんのデビュー当時からのめがね写真を、欠かさず撮ってきている」
 
( #ФωФ)「ナマ写真で、だ!」
 
(;‘_L’)「な―――ナマッ!!?」
 
( ФωФ)「撮り損ねた写真は、ヤフオクで落とす。5桁などデフォルトよ」
 
(;‘_L’)「………!」
 
( ФωФ)「当然、ピンボケで誰なのかがわからないなんてものを掴まされたこともある」
 
( #ФωФ)「―――しかしッ!!」
 
( #ФωФ)「そんな賊の小手先で、ワガハイのクーにゃん道が閉ざされることは、」
 
( #ФωФ)「全く、決して、万が一にも、ないッッ!!!」
 
(:‘_L’)「―――ッッッ!」
 
 
.

195 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:09:18 ID:.vou25f20
 
 
 
( ФωФ)「……勝った、な」
 
(;‘_L’)「ふ、ふん。歌詞を間違えるような輩に勝ったといわれるとは、な」
 
( ;ФωФ)「そッそれは―――!!」
 
 
( ゚∋゚) ゙
 
 
( ФωФ)「――……?」
 
(‘_L’)「どうした、クックル氏」
 
 
( ゚∋゚)
 
(゚∈゚ ) 彡
 
 
(ФωФ )「? 校庭?」
 
(‘_L’)「??」
 
 
.

196 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:09:53 ID:.vou25f20
 
 
 
 
( ФωФ)「――――、」
 
 
( ;ФωФ)「!!! なッ――――」
 
(;‘_L’)「なんだあの集団は!」
 
( ゚∋゚)
 
( ;ФωФ)「ま、まずい! 今すぐ逃げ―――」
 
( ゚∋゚)っ サッ
 
( ;ФωФ)「ど、どうして止めるクック――、」
 
 
 
 
   「おい、まだヤローがいたぞ!!」
 
   「やっちまえ!!」
 
   「ヒャッハー!」
 
 
 
.

197 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:10:26 ID:.vou25f20
 
 
 
( ФωФ)「―――」
 
(;;;‘_L’)「………え、…えっと」
 
( ゚∋゚)
 
( ゚∋゚)「………。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ( ´_ゝ`)と(´<_` )は大切なものを守るようです
 
 
 
 
 
.

198 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:11:06 ID:.vou25f20
 
 
 
 

 
 
 
从 ∀从
 
(゚、゚;トソン「ダブルビクトリーって……」
 
(´;#)_ゝ".,)「………、」
 
(゚、゚;トソン「……わかった。」
 
 
 デミタスがなにか言おうとしたのだが、もう体力は尽きに尽きているようだ。
 クチが思うように動いていない。
 これ以上しゃべらせると、よけいにコイツに負担がかかるだけだ。
 
 救急車を、呼ぶべきだろうか。
 さすがにこれは、やられすぎで、しばらくは動けないだろうから。
 でも、救急車を呼ぶと、面倒なことに巻き込まれかねない。
 
 目の前でデミタスが倒れているのをほうっておくことはできないが、
 かといってしぃとミセリ、連れ去られた二人のほうがいまは重大だ。
 
 
 いますぐ、アイツらを助けにいかないといけない。
 でも、どうやって―――
 
 
.

199 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:11:38 ID:.vou25f20
 
 
 
(´;#)_ゝ".,)「  ……、…。」
 
(゚、゚トソン「ど、どうした。無理しなくていいぞ」
 
(´;#)_ゝ".,)「………ィ…」
 
(゚、゚トソン「?」
 
 
 デミタスは、クチを開こうとするのを止めない。
 頼んでもないのに、デミタスは続きを言おうとしている。
 
 だが、ここで無理に制止しても、おそらくはムダだろう。
 そう思って、アタシは、コイツのちいさな声に意識を集中させた。
 
 
 ゆっくりと、唇が動く。
 歯も何本か飛ばされているため、見てて痛々しい光景だ。
 
 しかしそんなことにもお構いなしで、デミタスは、続けた。
 
 
 
.

200 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:12:21 ID:.vou25f20
 
 
 
(´;#)_ゝ".,)「はうんい……あいあ…ン…………はい……ほ…、こ……ひょう。」
 
(゚、゚トソン「…?」
 
(´;#)_ゝ".,)「あいはん……はひ…、……     」
 
(゚、゚トソン「……もう一度、言っ――」
 
 
 
 
 
从 ∀从「ラウンジ第三廃工場だ」
 
(゚、゚トソン「!」
 
 
 
 
 ハインが、おもむろに立ち上がる。
 前髪が長いということもあるのだろうが、しかし、それだけではないだろう。
 コイツの顔に、影がはえている理由は。
 
 
.

201 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:13:13 ID:.vou25f20
 
 
 
从 ∀从「………行くぞ」
 
(゚、゚トソン「待て。コイツはどうすんだ」
 
从 ∀从「あとで、オレのツレに運ばせてやる」
 
从 ∀从「デミやんはそれまで、ワリぃがここで待っててくれ」
 
(゚、゚トソン「……、……」
 
(´;#)_ゝ".,)「………」
 
 
从 ∀从「走るぞ。あそこは、そう遠くない」
 
(゚、゚トソン「………」
 
 
 
( 、 トソン「……ああ。」
 
 
.

202 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:13:43 ID:.vou25f20
 
 
 
 

 
 
 
   「やぁ〜〜〜。気分はどうだ?」
 
 
   「       」
 
   「    」
 
 
   「おいおい、誰がクチ塞いでこいっつったんだよ」
 
( ´_ゝ`)「オンナのヒステリックな叫び声は好かないのでな」
 
(´<_` )「――叫ばれると、面倒だ」
 
   「……まあ、別にいいけど、さ」
 
 
   「    」
 
   「       」
 
 
 
.

203 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:14:14 ID:.vou25f20
 
 
 
( ´_ゝ`)「しっかし、あんたも好きだな」
 
   「なにがだ」
 
( ´_ゝ`)「『拳のハイン』と『脚のトソン』つったら、ほら、あれじゃないか」
 
(´<_` )「まあ少なくとも……ここらへんで一番相手にしたくない連中だな」
 
   「それが、なにか?」
 
( ´_ゝ`)「勝てる勝てないは別として、だ」
 
( ´_ゝ`)「こっちも、タダじゃあ済まないぜ。むろん、あんたも、だ」
 
( ´_ゝ`)「もっとも、あんたは直接手を下さず、全部俺たちに任せるってなら別だが――」
 
 
 
   「ナメんじゃねえ」
 
 
 
( ´_ゝ`)「………ごめんなさい」
 
(´<_` )「流石だな。ほんとうにプライドのカケラもない男」
 
 
.

204 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:14:47 ID:.vou25f20
 
 
 
   「復興した、ダブルビクトリー」
 
   「心と身体の双方から圧勝する」
 
   「……俺が手を下さないで勝ったところで、あの二人の心は折れないじゃねーか」
 
( ´_ゝ`)「こだわるねぇ」
 
   「徹底的に……そう、徹底的に、だ」
 
   「とことんいたぶって……あの二人に、認めさせる」
 
   「最強なのは、そう……」
 
 
 
 
   「俺たちだって、な」
 
 
 
.

205 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:15:19 ID:.vou25f20
 
 
 
( ´_ゝ`)「ただ、パイプ使った程度じゃ心なんざ折れないだろうよ」
 
(´<_` )「心より先に命が折れるな」
 
( ´_ゝ`)「流石の俺もコロシまではしたくないものだ」
 
   「……。」
 
 
(´<_` )「心を折るといえば……」
 
( ´_ゝ`)「……あ」
 
(´<_` )「なにかあったか?」
 
( ´_ゝ`)「まわそうぜ」
 
(´<_` )「なにを」
 
( ´_ゝ`)「『拳』と『脚』を」
 
(´<_` )「俺は断固として拒否する」
 
( ´_ゝ`)「なぜだ」
 
(´<_` )「なんであんなゴツいのをまわさねばいかんのだ」
 
( ´_ゝ`)「穴のカタさは変わらないぜ」
 
   「………。」
 
 
.

206 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:15:51 ID:.vou25f20
 
 
 
 
( ´_ゝ`)「まだ俺のチャカには弾丸が残っている」
 
( ´_ゝ`)「それに、ゴツいのは筋肉だけであって、やつらはわりといいカラダしてやがる」
 
( ´_ゝ`)「加え、ボコボコにされた状態でまわされたら、だ」
 
( ´_ゝ`)「プライドの高いやつらのこと。すぐに自殺を選ぶだろうよ」
 
(´<_` )「……、……」
 
( ´_ゝ`)「はい論破(笑)」
 
(´<_` )「あくまで心を折るってハラなら、」
 
( ´_ゝ`)「なに?」
 
 
 
 
(´<_` )「この二人を、やつらの目の前でまわすほうがいいだろうよ」
 
 
(* ≡ )
 
ミセ* ≡ )リ
 
 
.

207 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:16:22 ID:.vou25f20
 
 
 
( ´_ゝ`)
 
(´<_` )「そうすれば一石二鳥……いや、三鳥か」
 
(´<_` )「なにか、反論はあるか?」
 
( ´_ゝ`)
 
( ´_ゝ`)
 
( ´_ゝ`)「……」
 
(´<_` )「はい論破(笑)」
 
( ´_ゝ`)「氏ね」
 
 
.

208 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:17:03 ID:.vou25f20
 
 
 
   「相変わらず、だな」
 
( ´_ゝ`)「褒めてもらえるとは、な」
 
(´<_` )「たぶん違うと思う」
 
   「そんなことはどうでもいい」
 
   「それより……あいつらは、まだこないのか」
 
(´<_` )「案ずるな。見せしめにタコらせたやつに、ここのことを伝えさせた」
 
(´<_` )「あとは……向こうがそれにかかって、ノコノコ来るのを待つだけだ」
 
( ´_ゝ`)「なるほど。釣りのようなものだな。奥が深い」
 
(´<_` )「釣り、か……そうだな。確かに、釣りのようなものだ」
 
(´<_` )「餌は……っと」 ガシッ
 
 
 
 
(´<_` )「ここに、ある」
 っ( ≡ *)
 
 
.

209 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:17:45 ID:.vou25f20
 
 
 
   「さすがに、この人数で憂慮すべきことじゃねーとは思うが」
 
   「あの二人は、ツレ呼んできそうだったか?」
 
( ´_ゝ`)「うんにゃ……その心配はないだろうよ」
 
( ´_ゝ`)「二人とも、ヴィッ校じゃあ最上位の、生ける伝説だ」
 
( ´_ゝ`)「そんな二人が、いちいち群れないとケンカできないってなことになったら、今後の威厳にかかわる」
 
(´<_` )「プライドの高い二人のことだ、それもそうだろう」
 
( ´_ゝ`)「プライドにしがみつく……その愚かさを、ここで知らしめてやろうではないか」
 
(´<_` )「なぜだろう。説得力がある」
 
( ´_ゝ`)「フッ……」
 
   「………。」
 
 
.

210 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:19:29 ID:.vou25f20
 
 
 
 
   「……ま、まあ」
 
 
   「オモシロくなってきたじゃねーか」
 
 
   「ここらをモッてる二人に、」
 
 
   「かつての伝説が復活して、勝負を挑む」
 
 
 
 
 
   「そして、勝つのは、」
 
 
   「ラウンジの伝説。」
 
 
 
 
 
 
 
( ・∀・)「――― ダブルビクトリーだ。」
 
 
 
 
 
.

211 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:20:30 ID:.vou25f20
 
 
 
 

 
 
 
( ^ω^) カタカタ…ッターン
 
( ^ω^)
 
( ^ω^)「……」
 
( ^ω^)「うはwwwwやっぱVIPはおもすれーおwww」
 
( ^ω^)「wwwww」
 
( ^ω^)「ww」
 
( ^ω^)
 
( ^ω^) ?
 
( ^ω^)「………??」
 
( ^ω^)「……なんか、騒がしいお…?」
 
 
.

212 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:21:22 ID:.vou25f20
 
 
 
 バタン
 
 
ξ;゚听)ξ「ぶ、ブーン!!」
 
(^ω^ )「お、つd……ツン。どうしたん――」
 
ξ;゚听)ξ「いいから、外を見て!」
 
( ^ω^)「???」
 
 
 ツンが、僕の挨拶にも応じず、ただ一方的にうながしてくる。
 いや、むしろ、これは「急かしてくる」だ。
 これにはさすがの僕も、「異常事態」を察知せざるを得なくなる。
 
 ツンの焦燥といい
 なにやら感じ取れる騒がしさといい
 どこか、「いつもと違う」なにかが、僕の胸中にひょっこりと顔を出していた。
 
 
 校長室に備えられた、僕専用の椅子。
 そこからじゃあ、角度の関係から、外を見ることはできない。
 「異常事態」の実態が未だ呑みこめていないものの、渋々立ち上がって、言われるがまま外を見た。
 
 
 
 見なければ、よかった。
 
 
.

213 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:21:53 ID:.vou25f20
 
 
 
(  ゚ω゚)
 
 
 見渡す限りの、惨劇。
 校庭には十人はくだらないと思われる、妙な服を着た男たち。
 釘バットや大型バイクの進入を見る限り、とてもではないが、穏やかな連中だ、とは思えない。
 
 校舎の壁が砕かれたり、花壇が荒らされたり、
 倉庫のシャッターなんか、もうシャッターとしての役割を果たさなくなっている。
 窓も、この窓から見える限りで言えば、八割以上のものが割られている。
 
 そして、僕がそれらの音を「騒がしい」と感じた理由。
 なにも、破壊活動の音だけが騒がしかったわけではない。
 その、破壊活動に従事している連中の放つ声の数々が、破壊そのもののそれよりも、騒がしかったのだ。
 
 
 「異常事態」と「騒がしい」の二つがわかった途端。
 僕は、呼吸困難と称しても間違いではないようなほどの息苦しさを感じた。
 眼圧が強まっていく。両腕に力が徐々に籠められていく。
 
 気がつけば僕は、仰け反っていた。
 しかし、そこで後方に背面から倒れこみそうだったのを、ツンが支えてくれた。
 
 
.

214 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:22:29 ID:.vou25f20
 
 
 
ξ;゚听)ξ「ブーン!」
 
(  ゚ω゚)「………」
 
ξ;゚听)ξ「けッ、けーさ、ケーサツ……っ!」
 
 ツンの声が、いまいち耳に入ってこない。
 外耳道がこの上なく絞られているような錯覚に見舞われている。
 絞られた状態で聞こえてくるのは、ツンの、日頃の冷静さを欠いた声色だけだった。
 
 
ξ;゚听)ξ「ね、ねえ、どうしたいいの!? ねえ!」
 
(  ゚ω゚)
 
ξ;゚听)ξ「ブーンっ!」
 
(  ゚ω゚)
 
 
 いま、ツンが、呼んだ。
 それだけははっきりとわかった。
 この、聞きなれた、しかし学校では聞きなれていない呼び名。
 聞き違えるはずもない。
 
 ここでツンが僕を呼んだ、ということは、僕の意見を仰ごうとしているに他ならない。
 ならば僕は、ブーンではなく、校長として、ツンではなく、教頭である彼女に的確な指示を与えないといけない。
 
 的確な―――
 
 
 
.

215 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:23:06 ID:.vou25f20
 
 
 
 
ξ;゚听)ξ「――と、とにかく、まずケーサツに……」
 
(  ゚ω゚)
 
(  ゚ω゚)「―――だめだお」
 
ξ;゚听)ξ「!」
 
 
 僕を床に寝かせて、僕のデスクにある電話を使おうとした彼女を、そう言って制する。
 彼女は、その言葉か、それとも声そのものか――に驚いて、ぴたり、と動きを止めた。
 「え?」と声を漏らしながら、彼女は顔だけを、こちらに向けてきた。
 
 
(  ゚ω゚)「……ケーサツは、まだ、だめだ」
 
ξ;゚听)ξ「――な、……なんで…?」
 
(  ゚ω゚)「ここは……理事長のご意見を仰ぐべきだお」
 
ξ;゚听)ξ「で、でも、理事長はどこに……」
 
 
 
   「呼びましたか?」
 
 
.

216 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:23:44 ID:.vou25f20
 
 
 
ξ゚听)ξ「!」
 
(  ゚ω゚)「……」
 
 
 声のした方向――出入り口のほうに、ツンはがばっと躯を向けた。
 僕も、のっそりと、上体を起こし、そのまま立ち上がる。
 まだ、貧血に近い倦怠感は消えていない。
 だが、立つことくらいなら、できた。
 
 
( ´∀`)「……大変なことに、なってしまいましたねぇ……」
 
ξ゚听)ξ「理事長! ご無事で――」
 
( ´∀`)「そんな社交辞令はよろしい」
 
ξ゚听)ξ「!」
 
( ´∀`)「……校長先生」
 
(  ゚ω゚)
 
( ^ω^)「……はい?」
 
 
.

217 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:24:44 ID:.vou25f20
 
 
 
( ´∀`)「この度の、事態」
 
( ´∀`)「なにか、心当たりはありませんか?」
 
 
 理事長の、決して平生を欠かしていない声。
 いつもは丁寧ながらもちょっとした畏怖を兼ね備えている、そんな声にしか聞こえなかったのだが
 
 このときに限っては、むしろ畏怖しか感じ取れなかった。
 
 
( ^ω^)「……いいえ。まったくの見当もつかないですお」
 
( ´∀`)「ならば、原因――事の発端に関しては?」
 
( ^ω^)「それに関しても、僕は……」
 
 
( ´∀`)「わからないはずがない。むしろ、一つしかありえないでしょう」
 
 
( ^ω^)「え?」
 
ξ゚听)ξ「………!」
 
ξ゚听)ξ「理事長、まさか……」
 
 
.

218 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:25:23 ID:.vou25f20
 
 
 
 ツンが一歩、前に乗り出す。
 僕だけが置いていかれているような感じがした。
 
( ´∀`)「そうです。まさか、またしてもやらかしてくれるとは思わなかったものです」
 
 
 
( ´∀`)「……高岡ハインリッヒに、都村トソン」
 
( ´∀`)「今度は、このような騒ぎを持ってくるとは………」
 
 
 
( ;^ω^)「! あの二人が、まァーたなんかしでかしたんですかお!?」
 
( ´∀`)「二人がなにかしたか、までは知り得ません」
 
( ^ω^)「…え?」
 
( ´∀`)「耳を澄ませば、聞こえるではありませんか」
 
 
 
 
( ´∀`)「……連中は、事ある毎に彼女たちの名を発しているのです」
 
 
 
.

219 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:26:50 ID:.vou25f20
 
 
 
( ^ω^)「……なんだって…?」
 
 言われて僕はすぐに、耳を澄まして、聴覚に意識を集中させた。
 それを見て、ツンと理事長は閉口した。
 
 聞こえてくるのは、破壊活動に走り回る音、バイクの空吹かしの音に、叫び声。
 叫び声は、何を意味するのかがわからないようなものから、快感をあらわにしているようなものが大半だ。
 その他の声は、この校長室からでは、いまいち把握できない。
 
 聞こえてこないのを察してか、理事長は足早に、閉じた口を開いた。
 悠長に、その声が聞こえてくるのを待っている余裕など、ないのだ。
 
 
( ´∀`)「……彼女たちが喧嘩を売ったのか、まったくの事実無根なのかはさて置いて」
 
( ´∀`)「『彼女たちが存在するから』、この度の事態が生まれたと見るべきでしょう」
 
( ´∀`)「異論はありますか?」
 
 
ξ;゚听)ξ「……異論、ではないですが、」
 
( ´∀`)「はい」
 
ξ;゚听)ξ「つまり、その……どういう意味、ですか?」
 
( ´∀`)「言うまでもないでしょう」
 
 
.

220 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:27:34 ID:.vou25f20
 
 
 
 
 
 
 
 
 
( ´∀`)「早急に彼女たちを追い出すほかありません」
 
 
 
 
 
 
 
 
.

221 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:28:06 ID:.vou25f20
 
 
 
ξ;゚听)ξ「…! し、しかし――」
 
( ^ω^)「しかし、いま、彼女たちはどこに?」
 
( ´∀`)「おそらく……ここには、いないでしょう」
 
( ´∀`)「これだけの人数が、この学校を襲っているのです。
      もしここにいたら、今頃、彼らに見つかっているでしょう。
      彼女たちは、なにかに隠れるような性格ではないはずです」
 
 
( ;^ω^)「な、なら、どうやってこの事態を収拾するのですかお!
.      ケーサツ……でも、この規模では――」
 
( ´∀`)「警察? 呼べるわけがありまして?」
 
ξ;゚听)ξ「!」
 
 
( ;^ω^)「ど、どうして…?」
 
( ´∀`)「考えてもみなさい、校長先生」
 
( ´∀`)「今言ったように、この度の事態は、例の二人によって引き起こされたも同義です」
 
( ´∀`)「もしこれが明るみに出てしまっては……元凶の二人の退学処分だけでは、済まされません」
 
 
 
( ´∀`)「この学校が……責任を持たなければなくなる」
 
 
.

222 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:28:43 ID:.vou25f20
 
 
 
ξ゚听)ξ「!」
 
( ;^ω^)「どッどういう意味ですかお!?」
 
( ´∀`)「いままで、彼女たちが悪さをしでかしても、警察には突き出してこなかった。なぜか」
 
( ´∀`)「そうすることで、この学校の威厳と信頼が崩れ去ってしまうからです」
 
( ´∀`)「我々は、受験戦争に乗り遅れたような生徒を、より高い階級へと戻すために教育業務に従事する身」
 
( ´∀`)「となると当然、俗に不良と呼ばれる生徒が集うのもまた自然の摂理」
 
( ´∀`)「……そして、警察沙汰が引き起こされるのも、仕方のないこと」
 
( ´∀`)「もし、そのたびに逐一通報していたら、どうなるか」
 
 
 
( ´∀`)「この学校は、存在できなくなる」
 
 
.

223 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:29:15 ID:.vou25f20
 
 
 
( ´∀`)「しかし、いまの論理展開を見ればわかるように、言わば、これは『仕方のないこと』なのです」
 
( ´∀`)「多少の悪さには目をつぶって、それを悔い改めさせるような教育が、我々には求められる」
 
( ´∀`)「そして……今回の騒ぎも、それに該当する」
 
 
ξ )ξ「……」
 
( ;^ω^)「だ、だからといって、このまま連中を野放しにしては――」
 
( ´∀`)「さすがの彼らも、この場に標的がいないとなれば、諦めて帰るでしょう」
 
( ´∀`)「熱は、持続しない。私の教育理念の、ひとつです」
 
 
( ;^ω^)「……」
 
ξ゚听)ξ「……」
 
 
( ´∀`)
 
( ´∀`)「……」
 
( ´∀`)「どうしました、教頭先生」
 
ξ゚听)ξ「…え?」
 
 
.

224 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:29:46 ID:.vou25f20
 
 
 
( ´∀`)「なにか、言いたいことがあると見受けましたが」
 
ξ゚听)ξ「え、あ、その……。」
 
( ´∀`)「……」
 
ξ゚听)ξ「……」
 
 
 
( ^ω^)「……もし」
 
( ´∀`)「?」
 
 
 
 
 
( ^ω^)「もし、連中の狙いが、例の二人じゃなくて」
 
 
( ^ω^)「『この学校にある』、と……したら?」
 
 
 
 
.

225 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:30:20 ID:.vou25f20
 
 
 
( ´∀`)「……なんですって?」
 
( ^ω^)「例の二人は、理事長がおっしゃったように、隠れるようなタチじゃあありません」
 
( ^ω^)「つまり、最初に騒ぎの音を聞きつけた時点で、二人は、出てくるはずですお」
 
( ^ω^)「そしてそれは、連中も、理解しているはず」
 
 
( ^ω^)「……なのに」
 
( ^ω^)「例の二人は出てこないのに、この騒ぎは、依然続いています」
 
( ´∀`)「…!」
 
 
( ^ω^)「もし、これが高岡と都村両氏への直接的な攻撃ではなく……」
 
( ^ω^)「その両氏の学びやを破壊する、という、間接的な攻撃だったら……?」
 
 
( ^ω^)「この騒ぎは、収まることはない」
 
( ^ω^)「もし、収まるとしたら、それは―――」
 
 
 
 
( ^ω^)「この学校が、つぶれたときです」
 
 
 
.

226 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:30:53 ID:.vou25f20
 
 
 
( ´∀`)「!」
 
ξ゚听)ξ「だ、だったらケーサツに通報する以外、ありませんよ、理事長!」
 
( ´∀`)「………。」
 
ξ;゚听)ξ「理事長! どうして躊躇うのです!」
 
ξ;゚听)ξ「どのみちつぶれてしまうのであれば、通報が優先――」
 
( ´∀`)「………やはり」
 
ξ;゚听)ξ「?」
 
 
 
( ´∀`)「やはり……物事を鎮圧するのは、最終的には、暴力になってしまうのですね」
 
( ;^ω^)「り、理事長……?」
 
( ´∀`)「そもそも。」
 
( ´∀`)「私が、この事態のなか、無傷でここまでやってくることのできた、」
 
( ´∀`)「そのことに関して、疑問はないのですか?」
 
ξ;゚听)ξ「…? ……た、確かにないことはないですが……」
 
 
 
 
( ;^ω^)「ッ! まさか、理事長は、実はつよ―――」
 
 
 
.

227 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:31:23 ID:.vou25f20
 
 
 
( ´∀`)「覚えていますか? 去年に起こった、あの事件を」
 
ξ;゚听)ξ「あの…?」
 
( ´∀`)「……まだ、高岡さんと都村さんが、同じクラスにいた頃です」
 
ξ;゚听)ξ「両氏とも、2−G、でした……ね。今思うと、この上なく危なっかしいクラスです」
 
( ´∀`)「年度も終わる頃。あのクラスでは、問題が起こった」
 
( ´∀`)「覚えておいででしょうかね」
 
ξ;゚听)ξ「二人の喧嘩、ではなく……?」
 
( ´∀`)「なにをばかな。もっと、大規模なものです」
 
ξ゚听)ξ「大規模……」
 
ξ゚听)ξ「………、」
 
 
 
ξ;゚听)ξ「……! オオカミ高校の生徒との、乱闘騒ぎ……!」
 
( ´∀`)「ええ。それです」
 
( ;´ω`)「(……あれぇ…?)」
 
 
.

228 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:32:03 ID:.vou25f20
 
 
 
( ´∀`)「そもそも、あの乱闘が起こったのは、なぜか?」
 
ξ;゚听)ξ「2−Gの伝説を聞きつけた他校の不良たちが、その伝説に挑戦する、と――」
 
( ´∀`)「で、その事件の一番の問題点は」
 
ξ;゚听)ξ「………………、」
 
( ´∀`)「覚えておいででしょう。言ってみなさい」
 
ξ;゚听)ξ「……」
 
 
 
 
 
 
ξ;゚听)ξ「………『半殺し』。」
 
 
 
 
 
.

229 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:32:56 ID:.vou25f20
 
 
 
( ;^ω^)「……あ!」
 
( ´∀`)「そうです。この乱闘で、我が校の生徒は、全治六ヶ月の大怪我を、負わせてしまった」
 
( ´∀`)「その結果、2−Gの伝説を散らそうと、『彼ら』の所属するクラスを分散したのです」
 
( ;^ω^)「(確かに、そんな事件もあったお……)」
 
( ;^ω^)「………」
 
 
 
( ^ω^)「……?」
 
( ^ω^)「え、『彼ら』?」
 
 
 
.

230 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:33:40 ID:.vou25f20
 
 
 
( ´∀`)「私は、その大怪我を負わせた生徒を、当然、退学処分に処そうと思いました」
 
( ´∀`)「………しかし。『ある条件』を元に、一度だけ、チャンスを与えたのです」
 
( ´∀`)「そして、『彼』は今日びにおいて、その『条件』を守っている」
 
ξ゚听)ξ「しかし、その話が、いったいどう本筋に噛んでくるのでしょうか」
 
( ´∀`)「……いいでしょう。もう、前置きは済みましたからね」 ガラガラ
 
 
 
( ^ω^)「(……ん?)」
 
 
 理事長がそう言うと、扉の向こうから、なにやら物音が聞こえた。
 それを聞きつけたのはツンも一緒で、僕と同じような顔で扉に目を向けた。
 
 視界の傍らに理事長。視界の中央に、扉。
 まるで実況でもするかのように、理事長が続けざまに、言葉を放った。
 それにあわせて、扉が、ゆっくり、開かれる。
 
 
 
.

231 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:34:16 ID:.vou25f20
 
 
 
 
 
 
 
( ´∀`)「分散された伝説は、全部で、三つ。」
 
 
 
( ´∀`)「3−Gの、高岡ハインリッヒ」
 
 
 
( ´∀`)「3−Fの、都村トソン」
 
 
 
( ´∀`)「そして―――」
 
 
 
 
 
 
 
.

232 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:35:01 ID:.vou25f20
 
 
 
 
 
 
 
 
 そこで現れたのは、
 
 
 『腰をかがめないと室内に入れないほどの巨躯』を持つ、『男子』生徒。
 
 
 
 
 
 その圧倒的な威圧感をものともせず、
 
 
 理事長は、その名を、言った。
 
 
 
 
 
 
 
 
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233 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:35:35 ID:.vou25f20
 
 
 
 
 
 
 
 
 
( ゚∋゚)
 
 
 
 
 
 
 
( ´∀`)「3−Eの、三階堂」
 
 
 
( ´∀`)「またの名を……… 『躯のクックル』。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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234 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 13:36:20 ID:.vou25f20
 
 
 
 
(   ∀ )「結論からいいましょう」
 
 
 理事長は、いつも通りの表情といつも通りの声色で、言った。
 そして、その「いつも通り」こそが、「異常」だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(   ∀ )「連中は、この男が始末する」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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