大切なものを守るようです
110 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:12:25 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 この学校のトイレは、意外にも、荒らされてない。
 理由の一つとしては、警備員が二人、常に入り口前で待機しているからだろう。
 加えて、監視カメラが搭載されている。
 トーゼン、個室が覗かれる心配はないけど。
 
 警備員の耳と存在、監視カメラの目の三つを前にして、ワルいことをしようなんて思う人は少ないらしい。
 ワルさ、つまり、いじめとかね。
 それに、かーなーりー火の気にビンカンな火災報知器まであるのだから、ここでタバコは吸えないし。
 
 さすが底辺の私立高校。やることが情けない。
 そんなおカネがあったら、ミセリにくれたらいいのに。
 せっかく……
 
 
( ゚д゚)「やっぱり、きみだけは成績がいいな。満点だ」
 
ミセ*゚ー゚)リ「ありがとー」
 
 
 ミセリは、学年で一番の秀才なんだから。
 
 
.

111 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:14:00 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 文字式の四則計算とか、ナメてるの?って思える。
 一応有名私大を公募制推薦で受かっちゃったんだし。
 
 ……有名私大といっても、偏差値は60ないくらいだけど。
 ま、こんなクズが集うトコにしちゃ、珍しいことでしょーね。
 
 英語の小テストを返されたけど、満点。
 なんで時制なんかの問題を高3で……w
 yesterdayがあるので動詞はseeじゃなくてsawですよーとか、中学生レベルww
 
 まあ、首席をとることを理由にココにくるって親に約束しちゃったし。
 明日から全てのテストで0点を取り続けても確実に卒業できるんだけど、でもこうしてベンキョーはするよ。
 
 ヴィッ校は部活が強いのかって?
 聞いたことがないよ。
 不良生徒が野球やバスケを通じて成長する……なんて、ムカシの話でしょ。ないない。
 
 私立だけに、就職に有利なところがあるとか?
 まっさか。あ、でも土木工事に就く人は多いらしいね。タイヘンねー。
 
 ……じゃあ、どーしてこんなトコに入っちゃったのかって?
 それは……、時が来たら話すよ。
 
 
 それよりも、問題はトソン、あの子よ。
 ミセリがせっかく朝一できてベンキョーを教えてあげよっかなーって思ってたのに。
 
 朝から、ハインさんとプッツン対決。
 ミセリみたいなか弱い女の子に、止められるわけないし。
 「二限目が英語なのにー」と思ったけど、困るのはミセリじゃなくってトソンよ。
 これに懲りたら、喧嘩もほどほどにねってこと。
 
 
.

112 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:14:39 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
ミセ*゚ー゚)リ「トソーン」
 
( 、 トソン
 
 あ、いまはホームルームね。
 今のおめめの先生が担任なんだけど、ホームルームついでに今朝の小テストを返してるって状況。
 
 この学校で定期テストの点をじゅうぶんにとる人なんて、ほっとんどいない。
 だから、本来の規定でいえば学年の七割以上が留年ってなっちゃう。
 それを防ぐために、こんな小テストとか提出物で点を稼いでもらうんだとか。
 
 ちなみにみんなと同じ方法で成績を計算すると、ミセリの成績はカンストした。
 
 
ミセ*゚ー゚)リ「実力でどーでしたかー?」
 
( 、 トソン「……」
 
 あらら。どうやら、トソン様は点数がよろしくなかったようだ。
 トーゼンよね、普段ノート見せたりミセリが教えてやってはじめて点をとってたわけなんだから。
 
 
ミセ*゚ー゚)リ「トソーン?」
 
( 、 トソン「………イヤミか、あんた」
 
ミセ*゚ー゚)リ「んー?」
 
 
.

113 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:15:14 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 トソンがくしゃくしゃに丸めた答案用紙を、奪い取る。
 「あっ」と言ったけど、気にしない気にしない。
 
 で、なかを見た。目を疑ったね。
 なんでやねん。なんでseeの過去形がsedやねん。なあ。
 
 
ミセ*゚ー゚)リ「これは……キレーなマルだこと」
 
(゚、゚トソン「それ、捨てといて」
 
ミセ*゚ー゚)リ「フザケンナ。この小テストから、10点でるんだから。期末に」
 
(゚、゚トソン「あんたのがあるでしょ」
 
ミセ*゚ー゚)リ「どう間違えたかを知るのがダイジなんですぅー」
 
 わざと語尾を伸ばす。
 トソンはトソンで、ミセリの手助けがなかったら底辺まで真っ逆さまになるわけだから、従わざるを得ないようで。
 
(゚、゚トソン「フン。わかったわよ」
 
ミセ*゚ー゚)リ「じゃ――」
 
 
.

114 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:15:46 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
(;゚д゚)「あ、あの、都村……さん……?」
 
(゚、゚#トソン「あ゙あ!?」 ギロ
 
(∩д∩;)彡「ヒッ!」
 
ミセ*゚ー゚)リ「また威嚇するー」
 
 
 ミセリが続けようとすると、それをおめめさんが止めた。
 どうやら、トソンに用があるみたいで。
 でも、今のトソンに通じる話なんてそんなにないよ。
 
 
ミセ*゚ー゚)リ「しょーがないなあ」
 
 
 こんなことは、日常茶飯事だ。
 先生がなにか言いたくても、トソンが不機嫌だったら
 (おめめさんの場合はそうでなくてもだけど)用件を伝えることができない。
 そんなときは、ミセリが一枚脱ぐのよね。
 
 
 
 ……服は脱ぎませーん! 期待するんじゃないよーだ!
 
 
.

115 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:16:26 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
ミセ*゚ー゚)リ「なんですかー」
 
(∩д∩;)「あ、きみか……」
 
 先生の代わりに、ミセリがトソンに用件を伝えるのです。
 怒ってるトソンに用件を伝えられるのって、ぶっちゃけミセリくらいだろうし。
 
 
(;゚д゚)「都村さんに、これ渡しといて」
 
ミセ*゚ー゚)リ「どれ?」
 
 訊くと、先生はなにやらカゴから一枚、紙をとった。
 生徒に用件を通達する紙だ。
 一度先生が、それに目を通す。
 
 これ、先生の一つの心遣いなのだ。
 パソコンのミスで、生徒が読めなさそうな漢字があれば読みがなを振る、という。
 なかなかの達筆で、すらすらと読みを書いていく。
 なるほど……この紙、中身が多いみたい。こりゃたいへんだぞ。
 
 
.

116 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:17:22 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
(;゚д゚)っ「これ」
 
ミセ*゚ー゚)リ「はいはーい」
 
(;゚д゚)「いつもすまんね」
 
ミセ*゚ー゚)リ「ミセリはイイ子ですから」
 
(;゚д゚)「はは。ありがt
 
(゚、゚#トソン「こっち見んな!」
 
(∩д∩;)彡 サッ
 
ミセ;゚ー゚)リ「いや、見てなかったよ!?」
 
(゚、゚#トソン フーフー
 
ミセ*゚ー゚)リ「ったく……、……ん?」
 
 
 トソンに呆れながら、ふとその紙に目を留める。
 なるほど、必要なことを箇条書きで書いてるのね。
 
 それにしても先生、さすがにトソンでも「補習」くらいは読めるでしょ。ほしゅう。
 ほしゅう、ほしゅう……
 
 
.

117 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:19:02 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
ミセ*゚ー゚)リ
 
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
 
 
 
 『補習のお知らせ』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ミセ*゚ー゚)リは大切なものを守るようです
 
 
 
 
 
.

118 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:19:57 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 

 
 
 
(゚、゚#トソン「補習!?」
 
ミセ*゚ー゚)リ「補習」
 
 トソンは大声を出した。
 この子、体が大きい(胸囲はミセリ以下)からか、声も大きいのよ。
 軽く、地震きたんじゃね?って思える程度には。
 
 クラスのみんなも、先生も、びくっとする。
 間近にいるミセリ以外、反応を見せた。
 ミセリ?耳がキーンときた以外に問題はないよ。
 
 
(゚、゚#トソン「英語の?」
 
ミセ*゚ー゚)リ「ううん。数学」
 
(゚、゚#トソン「………す……ッ!」
 
 
 
(゚、゚トソン「……数学?」
 
ミセ*゚ー゚)リ「そう書いてるけど」
 
(゚、゚トソン「???」
 
 
.

119 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:20:28 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 今の怒声はどこ行ったんや。
 トソンは急にきょとんとした。
 
 まあ、今の流れからしたら、数学って聞いていまいちピンとこない理由もわかるよ。
 英語の小テストが返されました、0点でした、補習のお知らせがきました。
 フツーなら、まあ、英語だと思うでしょうね。それなのに、数学だもん。
 しかも、
 
 
(゚、゚トソン「タカラ、休みじゃなかったのか?」
 
ミセ*゚ー゚)リ「ほかの先生が担当するんじゃない?」
 
 
 三限目の数学をみてもわかるように、タカラ先生は休んでたんだもの。
 トソンの話を聞いてると、一年からずーっと、数学はタカラ先生に教わってるみたいだし。
 そりゃ、不思議に思うわ。
 
 ミセリは成績がいいから、数学のかわりに特進数学なんて科目をとらされてる。
 だから、わかんないけど。
 
 
(゚、゚トソン「他に数学のセンコーいるのか?」
 
ミセ;゚ー゚)リ「おるわ! 学校ナメんな!」
 
(゚、゚トソン「どんな」
 
ミセ*゚ー゚)リ「えっと、前髪が1メートルある人とk
 
(゚、゚トソン「帰るわ」
 
ミセ;゚ー゚)リ「待て!」
 
 
.

120 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:21:38 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 小テスト返却も終わって、ホームルーム。
 先生がトソンをほったらかして先に進めようとしてるけど、こんなの、むしろいつも通りだ。
 クラスメートのみんなも、トソンが気づかないうちにさっさと帰りたがってるんだし。
 
 あ、終わった。はや。
 期末テストについての留意点も既に話し終えてるし、ホームルームで触れることがないって考えたらトーゼンだけど。
 
 みんなが、トソンに絡まれないうちに、と逃げるように下校する。
 ミセリも帰りたいなー。
 
 
 
(゚、゚トソン「ミセリ、アタシたちも帰るぞ」
 
ミセ;゚ー゚)リ「だからだめだっての!」
 
 慌ててトソンの腰に抱きつく。
 いや、抱きついてるんじゃない。引きとめてるんだ。
 
 でも、ミセリみたいな軽い体重だと、この馬鹿力のトソンを止められるわけなくて。
 ずりずりと引きずられる。やだ、なんか恥ずかしい。
 
 
(゚、゚トソン「そのうちこけるぞ」 ピタ
 
ミセ;゚ー゚)リ「そう思うんなら止ま――やああッ!」 ビタッ
 
 トソンがなんか言ったかと思ったら、いきなり止まった。
 後ろに倒れるように全体重をかけてたから、勢い余って後ろにしりもちついた。
 しかもミセリだけ。うっわ、ハズかし………
 
 
.

121 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:22:11 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
(゚、゚トソン「ほら」
 
ミセ*;ー;)リ「『ほら』ちゃうわ! あーん痛いー!」
 
(゚、゚トソン「泣くな泣くな。化粧が落ちる」サッ
 
ミセ*;ー;)リ「落ちるほど化粧してn……、……?」
 
 そう言うと同時に、トソンはスマホを取り出した。
 画面が真っ黒で、鏡代わりに使うことができる。
 その鏡で、ミセリを映してきた。
 
 なによ今更……ミセリが可愛いってのは既に知ってるよ……
 とか思いつつもその鏡を見たら
 
 
(゚、゚トソン「落ちてるぞ」
 
ミセ*゚ー゚)リ「」
 
 
 
 ぴたりと、涙が止まった。
 
 
.

122 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:22:48 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
ミセ;゚ー゚)リ「わわ、わああああああッ!」
 
(゚、゚トソン≡「今のうち」 スタスタ
 
ミセ;゚ー゚)リ「あ、逃がすか!」
 
ミセ;゚ー゚)リ「あ、でもでもお化粧なおさないと!」
 
ミセ;゚ー゚)リ「うーあー!!」 ジタバタ
 
 
 トソンがスタスタと帰路に従って歩いていく。
 止めたい、いや、ミセリの燃ゆる正義の心が止めたがってる。
 
 でも、化粧が崩れた顔で廊下なんか歩けるわけがない。
 このかわゆいミセリあっての、正義だ。
 
 トソンを見逃すのは悔やまれるけど、二兎追う者は一兎も獲ず、だ。
 そうと決まれば。
 
 
≡ミセ;゚ー゚)リ「トイレにダッシュ!」
 
    「見たか、いまのしりもち!」
    「あっバカ、シメられても知らんぞ!」
    「つい写メとっちゃたんだけど……」
    「あ、一応ちょーだい。パンツ見えてるかも……」
 
 
 いらんモン撮ってんじゃないよおおおお!!
 あと配らないでえええええ!
 
 
.

123 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:23:24 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 でも、今はお化粧直しが最優先だ。
 いくら今から下校ってなってても。
 
 撮られたセクスィーな写真が悪用されてたら、そうだな、トソンを盾にしてシメる。
 虎の威を借る狐? なんとでもいえ。
 
 
 
 厚化粧ちゃう。ブリっこちゃう。性悪オンナちゃう。
 ミセリはミセリ。かわゆいかわゆい華の女子高生だ。異論は認めない。
 
 
ミセ*゚ー゚)リ「トイレ……よし、誰もいなさそう!」
 
 廊下の曲がり角から中に人がいるか? わかるわけない。
 ここはオンナのカンの語るがままにすればよろしい。
 化粧道具は日頃から持ち歩いてるけど……どうかなあ。直るかなあ。
 朝起きたらメイクにその大半を費やしてるほどだし。
 
 トイレはさっき言ったみたいに、人が意外にも少ない。
 特に個室に入れば、そこは至福の空間だ。お化粧直しにはもってこい。
 
 間違えても、水は流さない。こんな底辺学校のトイレを利用するくらいなら、公園いくわ。
 やっぱイヤ。公園よりはこっちの方がいい。
 
 
.

124 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:23:55 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
ミセ*゚ー゚)リ「奥……」
 
 トイレの扉を開ける。
 奥の、ちょっぴり広い個室。ここが、ミセリの特等席なのだ。
 障害者、それも車いすの人用だから、広い。端っこだから窓もあるし。
 
 さて、誰もいませんよう……に……、……?
 
 
ミセ*゚ー゚)リ「(だれかいる)」
 
 扉、それも奥の個室の扉が動く音が聞こえた。
 しまったなあ。ミセリの特等席に汚いもの流さないでよー
 トイレはそんなふうに使う場所じゃ……いや、そんな場所か。もともと。
 
 息を殺して、陰から顔だけを出す。
 どんな顔か拝んでから、次の日からあうたびにイヤな視線を送ってやる。
 
 さて、どんなオンナなのかn
 
 
 
(*゚ー゚)「………」
 
 
.

125 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:24:31 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
ミセ*゚ー゚)リ「ッ!」
 
 ――顔を見た瞬間、どうしてかミセリは、顔を引っ込めた。
 壁に背をぴたりとつけて、つい、深呼吸をする。
 
 
 ……あれ? なんで?
 なんでミセリは、隠れた?
 
 
(*゚ー゚)「……はぁ」
 
ミセ*゚ー゚)リ「よっす!」 ヒョコ
 
(*゚ー゚)「っ!」
 
 
 そう思ったミセリは、何気ない様子で声をかけた。
 直後、彼女は、露骨に驚く。
 
 はぁ……。やっぱり。
 
 
.

126 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:25:02 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
(;゚ー゚)「………………………。」
 
ミセ*゚ー゚)リ「なーにー、辛気くさい顔してw」
 
 
 すごい長く黙りますね。
 毎度毎度こうじゃ、ミセリの方が息が詰まるよ。
 
 彼女は固まって、ミセリを凝視する目が点になってる。
 あふれてきた汗が、頬を伝っていった。
 
 しかたない。
 ミセリだけが一方的にしゃべるのはイヤなんだけど……
 
ミセ*゚ー゚)リ「もう、やめてよーそのノリーw」
 
 
 
 
 
 
ミセ*゚ー゚)リ「……おねえ、ちゃん」
 
 
(;゚ー゚)「……………。」
 
 
 
 
.

127 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:25:40 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 姉の猫乃しぃは、まだクチを開こうとしない。
 いっつもいっつも、どうして。どうしてなんだ。
 
 家にいてもミセリはおろかお母さんとクチを利きすらしないし。
 ミセリが朝起きて登校するまでの時間、おねえちゃんは起きてこないし。
 
 ミセリは普段は時間ぎりぎりに間に合うように登校する。
 つまり、おねえちゃんは、ほぼ毎日遅刻。
 
 それどころか、たまにカレシとやらの家によく泊まる。
 今まででさえぽつぽつと泊まってたのが、最近さらにひどい。
 それほど、ミセリやお母さんと一緒にいたくないみたいだ。
 
 理由は言ってくれない。
 気がつけば、こうなっていた。
 
 そして、ミセリがこんなド底辺にきた理由は、そのおねえちゃん、だ。
 おねえちゃんは中学の、しかも最初の頃はフツーにミセリより頭がよかったのに。
 どうしてか、いつの間にか学年最下位を争うほどになってた。
 
 「非行に走りたがる年頃だから」ってミセリは考えてた。
 つまり、目を離してたらなにされるかわからない、と。
 
 タバコとかお酒、ならまだいい。
 もっとひどい、どうしようもないことに手を出してしまったら、だめだ。
 
 だから、ミセリはこの学校に急遽くることに決めた。
 お母さんは賛成半分、反対半分、みたいな感じだったけど。
 まあ、そこそこな進学校に合格できる能力でこんなトコに行かせるものか、って思ってたんでしょう。
 結局、「首席を取り続けるから!」って力説したことで、ミセリはココにくることになった。
 
 
.

128 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:26:21 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 昔から、おねえちゃんは「期待される姉」だった。
 まじめにベンキョーして高い成績を維持してたミセリよりも、ノー勉のおねえちゃんの方が上だったし。
 幼い頃からしっかりしてた人だったから。
 
 でも、どーして……
 
 
(*゚ー゚)「……。」
 
 
 こーなっちゃったんでしょうねえ。
 髪は染めるし(ミセリも染めてるけど)、化粧もするし(ミセリもしてるけど)。
 
 聞いた話じゃ、授業中もお菓子食べて音楽聴いてスマホいじって、みたいに、もはや不良のカガミとなってるらしい。
 これを、昔のおねえちゃんだけを知ってる親戚が聞いたら、心臓発作で死ぬわ。ハインさんとつるむし。
 
 ……ミセリとトソンはそんなんと違うわ。
 
 
 
ミセ*゚ー゚)リ「……おねえちゃん?」
 
≡(* - )「……」 スッ
 
ミセ*゚ー゚)リ「おねえち――」
 
 おねえちゃんは、ミセリの横をくぐり抜けた。
 ミセリよりちっちゃいからか、あっさりとトイレから出られてしまった。
 
 おねえちゃんがトイレでミセリが廊下。
 言ったら、おねえちゃんが閉じこめられている状態だ。
 つまり、おねえちゃんとしても接触を避けることができない状態。
 
 そんなんだったから、今日は、今日こそは話せる。
 そう思ったんだけど、ただの思い過ごしだったようだ。
 
 
.

129 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:26:53 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
ミセ;゚ー゚)リ「おねえちゃん!」
 
≡(* - ) スタスタ
 
 ミセリの隙……というか、油断を衝いて、そそくさと歩いていく。
 早歩きで、顔もうつむけている。露骨にミセリとの距離をとろうとしているのがわかる。
 
 どうして……こうなるんだろう。
 これじゃあヴィッ校にきた意味が……
 
 ……いや。
 学校にもミセリが、家族がいるってことで、それが牽制になってるとは思うけど。
 いなかったら、やっぱ、タバコとかしてたのかなあ。
 
 
.

130 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:28:21 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
ミセ;゚ー゚)リ「おねえ――」
 
(*゚ -゚) ピタ
 
ミセ*゚ー゚)リ「――へ?」
 
 また、逃げられる―――!
 そう思って、ミセリも化粧のことなんか忘れて、追いかけた。
 すると、ミセリが追いかけてくるのを足音で察したのか、おねえちゃんも走り出した。
 
 足は、おねえちゃんの方が速い。
 足はというより、運動神経――いや。
 持ってる才能のどれも、おねえちゃんの方が上だ。
 
 だから、今日も逃げ切られる。
 そう懸念して、ああ、今日もだめだった、って思ったとき。
 
 おねえちゃんが、不意に止まった。
 階段の踊り場だ。
 おねえちゃんの一歩手前で、ミセリも思わず止まる。
 
 
.

131 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:29:09 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
ミセ*゚ー゚)リ「……あ」
 
 だが、このとき、おねえちゃんに接触を試みることはできなかった。
 だって、そりゃあそうでしょ。
 
 
 
 
 
(゚、゚#トソン
 
从#゚∀从
 
 
 この人ら……どんだけぶつかりあうんだ!!
 
 
 
.

132 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:29:42 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
(;゚ー゚)「ちょ、ちょ! ハイン!」
 
从#゚∀从「……」
 
 階段の踊り場で、ハインさんとトソンがにらみ合っていた。
 服や髪の色とかが対照的な二人だけど、共通点があった。
 
 手に、くしゃくしゃにまるめた紙を握っていたのだ。
 あれ、この紙……。
 
 
 そうとは知らず、おねえちゃんがハインさんの腕を握る。
 今朝が今朝だったから、ハジマらないうちに、と止めに入ったのだろう。
 確かに、この状況を見たら、またハジマる――って思うよ。
 
 でも
 
从#゚∀从「……?」
 
从 ゚∀从「お、おう。しぃじゃねーか」
 
(;゚ー゚)「朝も教頭センセイに言われたでしょ! あなた、まだ……、……?」
 
(*゚ー゚)「………え?」
 
 
 あれ?怒ってないのか?
 おねえちゃんも、そう思ったんだろう。ハインさんの反応を見て、きょとんとした。
 
 
.

133 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:30:38 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
(*゚ー゚)「あ、えっと」
 
从 ゚∀从「んあ?」
 
(*゚ー゚)「……二人そろって、なにしてんの……?」
 
从 ゚∀从「なにって……」
 
(゚、゚トソン「帰るトコ、だけど」
 
ミセ*゚ー゚)リ「嘘つけ。思いっきりにらみ合ってたジャン」
 
(゚、゚トソン「あ、いたの」
 
ミセ;゚ー゚)リ「オ・モ・い・っ・き・り、目ェあってたでしょーが!!」
 
 
 ……あれ?トソンも怒ってないのか?
 すっごく、いつも通りなんだけど。
 
 
从 ゚∀从「このままフツーに階段下りたら、なんか二人一緒に帰るように見られんじゃん」
 
(*゚ー゚)「……!」
 
 
(;゚ー゚)「………まさか、それでどっちが先に帰ろうとするかを張り合ってた……とか、言わないでしょーね」
 
从;゚∀从「な、なんだその目は! しゃーねーだろ! コイツが帰ろうとしねーんだからよ!」
 
(;゚ー゚)「」
 
 
.

134 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:31:57 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
(゚、゚トソン「なんでアタシが先に行かなくちゃだめなのよ。そっちが先に行ってトーゼン」
 
 
 わあ、互いに譲りあって、エラい!
 じゃない!
 
 これは、譲り合いなんて聞こえのよいものじゃない。
 「相手に背を向ける」……つまり、それは自分の方が格が低いということ。
 この二人がそんな状況におちいったら、まあ、意地でも先に下りようとはしないわな。
 
 
 ……
 
 
ミセ*゚ー゚)リ「……あ」
 
 
 
 
ミセ;゚ー゚)リ「………あほらし……」
 
(゚、゚#トソン「アホ? 退いたら負けってモンでしょーが!!」
 
 
.

135 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:32:54 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
(*゚ー゚)「ほらハイン、北口から下りるよ」
 
从#゚∀从「ザケんじゃねえ!!」
 
 
(゚、゚#トソン「こーなったらチカラづくででも先に行かせてやるわ」
 
从#゚∀从「ハァ? ヌかしとけ猿」
 
 そう互いに言いあって、じりじりと歩み寄る。
 このフンイキは、今から喧嘩がハジマるという合図か。
 
 はは、階段が原因で喧嘩か。
 なんちゅー低レベルな争いや。
 
 
(*゚ー゚)「じゃんけんで決めたら?」
 
从#゚∀从「お、パーでびんたして鼓膜ツブすんか。いいな!」
 
ミセ;゚ー゚)リ「(発想がトソンと同レベル!!)」
 
(*゚ー゚)「あのねえ」
 
 
 
(゚、゚#トソン「へえ、パー。ならアタシの勝ちね」
 
从#゚∀从「ハァ?」
 
 待てや。
 なに、まさかのじゃんけん対決!?
 
 
.

136 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:33:46 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
(゚、゚#トソン「なぜなら―――」
 
 
 
 
(゚ー゚#トソン≡「目潰しの方が速いッ!!」 ビッ
 
 
 
 うわ、かっこわりィ!
 てかまだそのネタ引きずってたのね!
 
 トソンが飛び出し、チョキにした手をハインさんの目に突きつける。
 しかしハインさんが、後ろにステップをとりながら、拳をかまえて言った。
 
 
从#゚∀从≡「知ってっか? じゃんけんってのは―――」
 
 
 
 
从#゚∀从≡⊃「後・手・必・勝ッッ!!」 ビッ
 
(゚、゚#トソン彡「チッ!」 ヒュッ
 
 
 ノリノリでやってんじゃねーよおおおおおおおおおおおお!
 しかも、なに律儀にグーでチョキに後出ししてんのよハインさんも!
 
 わかってると思うけど、後出しは反則負けだかんね。
 じゃんけん対決なら、ハインさんの負け決定よコレ。どーせ聞いてないよね。はいはい。
 
 
.

137 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:35:20 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 トソンがハインさんの右拳(グー)を、上体を左下にうつむけるようにして避けた。
 そして
 
 
(゚、゚#トソン「…ッ。ご丁寧にじゃんけんなんかしてられるか!!」 ザッ
 
ミセ;゚ー゚)リ「(そりゃそうだけど! いや、カッコワル!)」
 
 
 そう言って、伸びていた右脚を前に蹴り出した。
 ハインさんは右腕を伸ばしきっているものの、左手はフリーだ。
 蹴りの勢いを流そうと、左手も構えた。
 そしてそれによって、トソンの脚のえがく軌道が上にずらされた。
 
 しかしここで、両者の体勢が崩れた。
 トソンの蹴りの勢いが速すぎて、ハインさんはそれを完全に流すことができなかったようだ。
 
 少し距離をとる。
 後ろから足音が聞こえてきた。
 よかった、じゃんけん対決は見られなかったみたいだ。
 
 それはそうと、早く止めないと。
 きっかけがショボいとはいえ、もういつものようなマジな喧嘩に戻っているからだ。
 これじゃあ今朝の喧嘩と変わらない。
 
 なんてことを思っているうちに、トソンが動いた。
 右足を地につけて、余った勢いを左脚に移すことでムダに体制を整える必要を削ったようだ。
 そのまま、左の回し蹴りを―――
 
 
.

138 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:35:51 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
    「わぁーったったったッ!!」 ダッ
 
 
(゚、゚#トソン「!…、……ッ!?」
 
从#゚∀从「ッ!!」
 
 
 トソンの回し蹴りが軌道に乗ろうとしたとき。
 後ろからミセリの横を通り過ぎて、トソンの後ろに飛びついた人がいた。
 
 その人物の登場に、ハインさんがびっくりする。
 トソンは人物にではなく、後ろからトツゼン人が現れたことにびっくりしたようだ。
 そのせいで蹴りの勢いが薄れてしまい、ハインさんが左腕でパシッと足を止める。
 
 そのときの顔も、どこか抜けたものだった。
 アゼンとしていた、というべきか。
 
 
.

139 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:37:04 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
(*゚ー゚)「……?」
 
ミセ*゚ー゚)リ「?」
 
 おねえちゃんがその人を見た。
 続けてミセリも。
 
 ああ、この人か。ナットク。
 毎度毎度、お疲れさまです。ほんとうに。
 
 
 
 
 ……え、…え!?
 
 
( ;^Д^)「止まれッ!」
 
(゚、゚;トソン「……ッ!? ハァ!?」
 
从;゚∀从「て、テメエ…………ッ!」
 
 
.

140 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:37:36 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 トソンも先生に気づき、ハインさんと同じような顔をした。
 体勢は同じまま、服を引っ張って自分を止めた先生を横目で見る。
 
 
( ;^Д^)「あっ先に言っとくけど、ボクは意地でも止めるからね、こればっかしは!」
 
从;゚∀从「い、いや……そうじゃなくて……」
 
 
 また毎度のように二人からギャーギャー言われると思ったようで、先に先生がわーわーと言った。
 だけど、ハインさんはそこを言おうとしたわけじゃないのだ。
 
 いや、ハインさんだけじゃない。
 おねえちゃんも、トソンも、あとミセリも。
 
 もっと別のことで、言いたいことがあったのだ。
 
 
.

141 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:38:31 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
(゚、゚;トソン「な、なんで……ココにいンだよ……」
 
( ^Д^)「あ、君たち捜してたらグーゼン…」
 
从;゚∀从「ちげェ! タカラ、テメエぁ――」
 
(゚、゚;トソン「休みじゃなかったの!?」
 
从#゚∀从 …イラ
 
 
 ハインさんのセリフを奪って言うと、先生は一瞬きょとんとした。
 そして「あ、それ」と言ってから、続けた。
 
 ……ってか、いつまで服引っ張ってんのよこの人は。
 トソンが気づいてないならいいんだけどさ。
 
 
.

142 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:39:06 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
( ^Д^)「なに言ってんの。休むのは午前中だけ、だったけど」
 
从 ゚∀从「……え?」
 
( ^Д^)「あれー、聞いてない?おっかしいな、ちゃんと連絡したんだけど」
 
(゚、゚トソン「……誰に?」
 
( ^Д^)「校長」
 
 このとき、四人みんながみんな同じことを思っただろう。
 「あ…ナットク」と。
 なんで頼りない校長先生に伝えたんだ。あれだけはだめでしょ、アレだけは……と。
 
 
( ^Д^)「それはそうと……」
 
(゚、゚#トソン「――じゃねえ!おい、なにまた止めて……」
 
( ^Д^)「いや、だって」
 
(゚、゚#トソン「もうタカラだろうと許さねえ。カクg――」
 
( ^Д^)「いくらロングでも、スカートで回し蹴りはだめだよ。女子高生的に」
 
(゚、゚#トソン「ハァ? それがどうし……、」
 
 
(゚、゚トソン「……っ!」
 
ミセ*゚ー゚)リ「(やっと気づいた)」
 
 
.

143 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:39:57 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 そう言われて、トソンははッとしていま自分が置かれている立場をハアクしようとする。
 
 左足はハインにぶつけたまま。
 右足の一本立ちだけど、先生が服を引っ張ってるからバランスを崩さないで済んでる。
 そして、「服」というが、引っ張ってるのはロングスカートだ。
 
 足はハインさんの肩くらいの高さにあがってる。
 つまり
 
 
从 ゚∀从 …ア、シマシマ…。
 
 
(゚、゚トソン「」
 
 
 トソンが黙って、真顔に戻って、体勢を元に戻す。
 そして、ゆっくり、先生の方を見る。
 無表情で、だ。
 
 
 
.

144 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:40:50 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
( ;^Д^)「あ、ボク見てないし触ってもないからセクハラじゃないよ!
.      ただ、蹴るんだったらこーゆーリスクがあるんだよってことをだな――」
 
⊂≡( 、 #トソン サッ
 
( ; Д )「っギ!!」 ズボッ
 
从*゚∀从「(ウヒャヒャヒャヒャ! あ、あのトソン様が! ウヒャヒャヒャ!」
 
(゚、゚;#トソン「――――、――〜〜ッ!!」
 
 
< あ゙あ゙あ゙あ゙ああああッ!痛ッてええええええええッ!!
 
 
 
从*゚∀从「ヒーwwwwwwヒーwwwww」
 
(゚、゚;#トソン「あんたもよ!!」
 
从∀゚*从≡「ウヒャヒャwwwwwゲホッwwwwwww」 ダッ
 
(゚Д゚#トソン≡「あ、待てッ!! キサマああああああああ!!」 ダッ
 
 
 
.

145 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:41:39 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
ミセ*゚ー゚)リ
 
ミセ*゚ー゚)リ
 
ミセ*゚ー゚)リ
 
 
 
< どーせ…ほ、補習…ッ、サ、ボるだろうから……捕まえにき…た、だけなのに……ィィ!
 
 
 みぞおちをトソンの怒りの拳でおもいっきり殴られたせいか、普段あんなに頑丈な高村先生がもがいてた。
 廊下に転がって、じたばたと足を動かす。
 さすがにみぞおちにめり込んだら、痛そうだわ。
 
 ハインさんは笑いすぎてせき込むし。
 トソンは逃げたハインさんを追いかけにいくし。
 高村先生はこんなんだし。
 
 ……帰ろう。トソンは知らん、ほっとく。
 
 
 
.

146 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:42:22 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
≡(* - )「……」 スッ
 
ミセ*゚ー゚)リ「あ!」
 
 しまった! おねえちゃんを忘れてた!
 
 
 
< ア……厚化粧の君……、保健室からセンセーを……うッ…
 
≡ミセ;゚ー゚)リ「おねえちゃん!待って!」 ダッ
 
< あ………あガ……、………g
 
 
 
 
 
 
.

147 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:42:53 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 出口に向かって、おねえちゃんは走ってく。
 速い……けど、どこか、足取りが覚束ない。
 
 やっぱり……おねえちゃんは、嫌いみたいだ。
 「家族」が。
 
 
 階段を下りて、一階、廊下に躍り出る。
 ここから一番近い門――出口は、右だ。
 右にまっすぐ伸びる廊下を渡っていけば、右手にそのうち門が見えるんだ。通用門ってやつ。
 ほかに職員用と裏門とがあるけど、おねえちゃんが逃げる方角にはない。
 
 しかし……右、か。
 しまった。直線勝負じゃ、勝ち目がない。
 
 
ミセ;゚ー゚)リ「――えちゃ―――おね――……ッ」
 
 
≡(* - )
 
 
.

148 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:43:26 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
ミセ;゚ー゚)リ
 
 みるみるうちに、距離を離されていく。
 さっきトイレからダッシュした分が、どっとふりかかってきた。
 もうちょっと持ちこたえてほしかった……。持ちこたえても、どのみち追いつかないんだけど……
 それほどには、おねえちゃんは足が速いんだ。
 
 でも、それもトーゼンだ。
 おねえちゃんだもん。猫乃しぃ、だもん。
 
 
ミセ;゚ー゚)リ「………」
 
 
 
ミセ*゚ー゚)リ「……、」
 
 
 
 
ミセ*;ー;)リ「…………。」
 
 
.

149 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:43:59 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 走るのをあきらめ、その場で座り込みそうになるのをこらえる。
 もう曲がり角手前まできたが、間に合わない。
 今日も……おねえちゃんと話をすることは、できなかった。
 
 
ミセ*;ー;)リ
 
 とぼとぼと歩いて、目を右の手のひらで一気に覆う。
 歯を食いしばって、うつむいて、肩をふるわせた。
 
 ふだんは、おねえちゃんと話せないことで泣いたりはしない。
 向こうが話したがらないし、話す機会をことごとく削ってくるから、トーゼンなんだけど。
 
 でも、今日は事情が違った。
 おねえちゃんは一度、この手の内にとらえたのだ。
 
 トイレで追いつめたとき。
 あのとき、ミセリはおそらく、こわい顔をしていたのだろう。
 優しい顔をしていれば、警戒心を解くことだってできただろうに。
 
 それに、階段の踊り場で二人とも止まったとき。
 あのときにでも、はずれに連れ出したり教室に連れ込んだりすれば、チャンスはあったんだ。
 
 なのに、今日も逃げられた。
 露骨に拒絶反応を見せられて。
 実姉にそんな態度をとられて、傷つかないわけがないでしょう。
 
 
.

150 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:44:32 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
ミセ*ぅ -t)リ ゴシゴシ
 
ミセ*゚ー゚)リ
 
ミセ*゚ー゚)リ「……」
 
 
 おねえちゃんは、どうしてるだろう。
 ミセリが追ってこないのを見て、走るのをやめただろうか。
 それとも、警戒して、ずっと走ってるだろうか。
 
 今のミセリにできること。
 前者の可能性を信じて、ただ走ることだ。
 靴を履き替えなかったら、もしかしたらその差し引き分、距離を詰めれるかもしれない。
 
 そうと決まれば。
 目をこすって、涙をごまかす。
 化粧、だいぶ崩れてるだろうけど……
 逆にこの崩れた化粧で、おねえちゃんをセットクできるかもしれない。
 
 
 恥じらいよりも、おねえちゃんだ。
 おねえちゃんは、ミセリが守らなければいけない。
 
 
 
.

151 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:45:03 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 

 
 
 
(゚、゚#トソン「追い詰めたぞ!ゴリラ!」
 
从 ゚∀从「……チッ」
 
 
 袋小路となる倉庫手前で、オレはトソンと向かい合っていた。
 ずいぶんと追いかけっこをしてしまったモンだ。
 一旦北口に向かったかと思えば、階段を下りつつUターン。
 ブンキ点っつーブンキ点で曲がってったら、そりゃーもうすごいことになった。
 
 センコーとか生徒はほとんど見かけなかった。ココじゃアタリマエなんだけど。
 でも、生徒が人っ子一人いなかったっつったら違うみたいで、道の途中で
 
 
 

 
 
(‘_L’)「でさあ、そこで……、」
 
(;;;‘_L’)「ッッ!! ぎゃああああああああああ!!」
 
( ゚∋゚) ゙
 
(ΦωΦ )彡「ん? どうしたd
 
 
 
.

152 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:46:03 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 
   从∀゚#从≡≡≡ ドドドド
 
 
       (゚、゚#トソン≡≡ ダダダ
 
 
 
( ΦωΦ)
 
 
(;;;ΦωΦ)「ぎゃあああああああああああああああ!!」
 
 
从#゚∀从「ジャマだッ! どけッッ!」
 
≡\(;‘_L’)/「ごめんなああああああさい!」 ダッ
 
≡\(;ΦωΦ)/「おゆるしいいいいいいいい!」 ダッ
 
≡\( ゚∋゚)/
 
 

 
 
 
 ……ま、まあ、思えばかわいそうだったけど。
 カンゼンなとばっちりだし。
 
 ………ん? そういや、クックルらしき男が見えたような……
 あんななよなよした連中とツルんでるたァー思えんし、まあ別人かな。
 2メートル超えの転入生。やべェわソレ。
 
 
.

153 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:46:44 ID:q/yBrCxQ0
 
 
从 ゚∀从「……あー」
 
(゚、゚#トソン「もう、動くんじゃねーぞ」
 
 
 トソンのヤローは、もうカンゼンにイッてやがった。
 別にパンツの一枚や二枚、見られても気にするこたァないのに。
 
 でも、まあ……、………www
 あ、あの、トソン様ともあろうおかたが……wwwwwwwww
 
 
 
(゚、゚#トソン「……?」
 
从 ゚∀从「………ャヒャ…」
 
(゚、゚トソン「?」
 
 
 
 
 
从*゚∀从「ウッヒャヒャヒャヒャヒャwwwwwwwちょwwwヒャヒャwwwww」
 
(゚、゚トソン「」
 
 
 
 
.

154 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:47:28 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 やっべ。思い出し笑いしちまった。
 こうなっちまったら、もう抑えることは……www
 
 
:; ( 、 #トソン ;: 「あ……アンタ……ってやつァ………!」
 
从*゚∀从「ま、…ッ待てよ、ww……わ、ワルギがあるわけじゃ……ッヒャヒャ!!」
 
( 、 #トソン「」
 
从*゚∀从「wwヒャwww……、……」
 
( 、 #トソン
 
从 ゚∀从「………」
 
 
 
:; ( 、 #トソン ;:
 
从 ゚∀从
 
 
 
 
从 ゚∀从「いっけね」
 
(゚Д゚#トソン「 ブ ッ 殺 す ! ! 」
 
 
 
.

155 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:47:59 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 

 
 
 
    「あ、痛てて……」
 
    「………うーん」
 
    「やっぱ、痛いな。うん。またシップ買わないと」
 
 
    「あー……」

    「あの二人、もういっちゃったかなぁー…?」
 
    「よい、しょ……っ」
 
 
 
 
.

156 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:48:31 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
( ^Д^)「ア……やっぱ、立ったらクるな、これ……」
 
( ;^Д^)「ったく、あいつら、テカゲンってもんをまるで知らないから……」
 
( ;^Д^)「『カラダを張って熱血指導』なんて風潮がムカシあったけど、いまはもう近未来だっての!」
 
( ;^Д^)「現職のセンセーが、わざわざカラダ壊してまで指導すんのかっての」
 
( ^Д^)「とか言いつつ、指導すんのがセンセーなんだけどね」
 
 
( ^Д^)「……ふぅ」
 
( ^Д^)
 
( ^Д^)「…」
 
 
( ^Д^)「……補習はムリだった、か」
 
( ^Д^)「しゃーない。もともと、ダメモトってやつだったし」
 
( ^Д^)「二人しか呼び出してなかったわけだしな」
 
( ^Д^)「その二人が、逃亡……」
 
 
( ^Д^)「……ボクも、帰るか」
 
 
.

157 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:49:05 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 

 
 
 
    「……」
 
    「首尾はどうだ」
 
    「一時間張ってるけど、まだ出てこないな」
 
    「みんな、か?」
 
    「ああ」
 
    「学校で殺人事件でもあったのか?」
 
    「……悪い。ふつうの生徒は、ほとんど帰っている。目測、九割は」
 
    「ああ、そういう意味か。ほらよ、ニゲチキ」
 
    「このタイミングで出すとは、流石だな」
 
    「それはそうと……みんなってことは、例の四人か?」
 
    「ああ。おおかた、センコーに捕まってるんだと思われる」
 
    「あーヤダヤダ。俺だったら十秒で殴っちまう」
 
    「俺だったら八秒だ」
 
    「流石だな、あんたも」
 
    「あんたほどじゃないさ」
 
 
 
.

158 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:49:45 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
    「それはいいとして、冷めてるぞ、ニゲチキ。どういうことだ」
 
    「おかしいな。買ってすぐに来たつもりだったのに」
 
    「白状しろ。どこで道草くってた」
 
    「……」
 
    「答えろ。カネ払わんぞ」
 
    「ウンコ」
 
    「よーし、いい子だ。カネは諦めるんだな」
 
    「抜いてた」
 
    「OK、わかった」
 
    「払えよ」
 
    「ん?」
 
    「いやいや、払えよ。120円」
 
    「ブツ握った手で持たれたコレを食う俺の身にもなるんだな」
 
    「こりゃ一本とられた」
 
 
    「…! おい、出てきたぞ」
 
    「お」
 
 
.

159 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:50:17 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
( ^Д^) 〜♪
 
 
    「……」
 
    「なんだ。センコーか」
 
    「もう少し待つしかないみたいだな」
 
 
    「でも、おかしくないか」
 
    「なにが」
 
    「言い換えると、だ」
 
 
    「もう、センコーですら帰る時間だってことだぞ」
 
    「…」
 
    「ひょっとすると、俺らの知らないルートで帰ったんじゃないのか?」
 
    「だったらほかのやつが見つけてるはずだぞ」
 
    「それはそうだが……」
 
 
.

160 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:50:53 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
    「ん? 誰かがきた」
 
    「……? どこだ?」
 
    「違う、裏門のほうからだ。右」
 
    「…どれ」
 
 
 
≡( ´・_ゝ)
 
 
 
    「冴えない顔だな。あいつがどうしたんだ」
 
    「……あの、バイク」
 
    「ん?」
 
 
(<_・` ≡ ´・_ゝ・)
 
 
    「……ハヤブサじゃねーか。ってことは、アイツ、もしかして……」
 
    「ああ。噂の『走り屋』だろうな」
 
 
.

161 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:51:25 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
    「もうどーせあいつら帰ったし、ちょっとパッシングかけるか?」
 
    「やめとけ。すぐに置いてかれるのがオチだ」
 
    「……にしても、なにをしてるんだ、アイツは」
 
    「誰かを探してるみたいだな」
 
    「おお。俺のファンか?」
 
    「身の程を知るんだな」
 
    「ジョークはいいとして、だ。……あいつがいると、面倒だぞ」
 
    「別にヤる分にはかまわんのだが……一度逃げられると、ややこしいことになりかねん」
 
    「さっさとどっか行ってほしいぜ」
 
    「まったくだ」
 
 
(´・_ゝ・`) ……。
 
 
.

162 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:52:28 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
    「……一度、あいつらに連絡とるか?」
 
    「どいつだ」
 
    「裏門で張ってるやつ」
 
    「あんたも小心者だな」
 
    「それを言うなら心配性だ」
 
    「どっちでも一緒さ」
 
    「はやくしねえと、俺のチャカが火を噴くぞ」
 
    「さっさとヌいてくれ。あっちでな」
 
    「OK。さーて、どっかにいいオンナは……」
 
 
    「……! おい、待て、戻れ」
 
    「なんだ? 俺のチャカは待ってくr……!」
 
 
 
(* - )
 
 
.

163 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:53:07 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
    「おでましだぜ」
 
    「くそ。なんてタイミングだ」
 
    「諦めろ。さっさとするぞ」
 
    「『走り屋』に気取られないようにな」
 
    「おう――」
 
 
 
 
 
 
( ´_ゝ`)「今日も流石に決めるぞ」
 
 
(´<_` )「流石に、か。悪くない」
 
 
 
.

164 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:53:40 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 

 
 
 
ミセ* - )リ トボトボ
 
ミセ* - )リ「………はぁ」
 
 
ミセ*゚−゚)リ
 
ミセ*゚ー゚)リ「……明日があるさ」
 
 
 おねえちゃんを追うのを諦めて、もう一分は経っただろうか。
 いつもならあっという間に去る一分だけど、いまはそうでもなかった。
 
 一秒一秒が、心をキシキシと痛めつけてくる
 そんな表現が、いまの自分にぴったり合った。
 
 
 いつまでも悲しむのはガラじゃあない。
 あとはこの角を曲がれば、そのまままっすぐ帰る――
 
 
.

165 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:54:32 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
ミセ*゚ー゚)リ「…?」
 
 
 
( ;´・_ゝ・)
 
(;*゚−゚)
 
 
( ´_ゝ`)
 
(´<_` )
 
 
 
ミセ*゚ー゚)リ
 
 
 
 
 なんだ、あれ。
 
 
 
.

166 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:55:11 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
( ´_ゝ`)「どうしたのよ、デミちゃん」
 
(´<_` )「まさか、あんたともあろうお方が、ハシるのを断るなんてな」
 
(´・_ゝ・`)「……」
 
 
ミセ*゚ー゚)リ ???
 
 
 そのとき、私は目の前でなにが起こっているのか、よくわからなかった。
 
 まず第一の驚きが、まだおねえちゃんが帰ってなかった――そこにとどまっていたこと。
 第二に、見慣れない恰好の男二人が、門の前にいること。
 
 第三に――
 
 
(´<_` )「サツが多いトコがあんだ。どうよ、俺とサシでハシらね?」
 
(´・_ゝ・`)「あいにく、今日はルートが決まっていてね」
 
(´<_` )「じゃあそのルートでいいから、さ」
 
 
 
ミセ;゚ー゚)リ「………」
 
 
 
 なにやら、いい雰囲気ではなさそうだった、ということ。
 
 
.

167 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:55:55 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 『走り屋デミタス』、彼のことはミセリでも知っている。
 おねえちゃんのカレで、また不良の間じゃちょっとした有名人だ。
 というのも、顔は冴えないのに、ひとたびバイクに跨れば、彼に追いつく人はいない、とか。
 
 乗るバイクがハヤブサ、とかいうとにかく速いやつだからってのもあるんだろうけど
 どうも、コーナーリングといい障害物を避ける様といい、とにかく垢抜けてるんだそうだ。
 で、そんな彼の伝説を崩そうと、いまみたいに、ハシりに誘ってくる暴走族も多いんだと。
 
 
 ………でも。
 
 
 
( ´_ゝ`)】「おーおー、俺俺。正門だ。集まれ」
 
(´<_` )「あんたとハシるのが楽しみでしかたがなかったんだよ」
 
(´・_ゝ・`)「……もう、ハシるのはやめたんだよ、コッチは」
 
 
 
ミセ;゚−゚)リ
 
 
 ……どうも、この人たちは、そんな暴走族ではないみたいだけど。
 
 
 
.

168 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:57:04 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
(;*゚−゚)
 
 
( ´_ゝ`)「……あ。ひょっとしてあんた、そのオンナの連れ?」
 
(´<_` )「なーるほど。オンナの前だから、カッコワルイ自分を見せるのが嫌……ってところか」
 
(´・_ゝ・`)「もう一度、言う。そこをどけ」
 
( ´_ゝ`)「ごめん、俺ツンボだから(笑)」
 
(´<_` )「流石だな兄者。プライドのカケラもない男」
 
(´・_ゝ・`)「……」
 
 
 あきらかに、男二人はデミタスさんを挑発にかかっている。
 二人のバイクに道を塞がれているので、彼は帰るに帰れない状況だったようだ。
 ミセリは、ブーツを履くのも忘れて、ただぽかんと、そこに立ちつくしていた。
 
 
 
( ´_ゝ`)「……ん?」
 
 
 
 あっ
 
 
.

169 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:57:35 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
(´<_` )「どうした?」
 
( ´_ゝ`)「こいつは運がいい。弟者、見てみろよ」
 
(´<_` )「ん?」
 
 
 
 
 あっ―――
 
 
 
 
(´<_` )「――これはこれは。ほんとうに俺らは運がいいみたいだ」
 
( ´_ゝ`)「こうなったら作戦変更。強行突破にでるぞ」
 
(´<_` )「逃げられないのか?」
 
( ´_ゝ`)「安心しろ。 “囲ませた”」
 
 
ミセ;゚−゚)リ「………?」
 
 
.

170 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:58:08 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 「囲ませた」
 その言葉がひっかかった次の瞬間、ミセリの耳に、ある音が聞こえてきた。
 やんややんやと騒ぐ音、人ごみを感じさせる雑音、そして――
 
 
 バイクの、音。
 
 
 
(´<_` )「ぬかりはなかったか。流石だな」
 
(´・_ゝ・`)「……なんだこれは……」
 
( ´_ゝ`)「悪いな。恨むなら “あのオンナたち” を恨んでくれ」
 
(;*゚−゚)「……?」
 
(´・_ゝ・`)「ちょっと待て。こっちが何かしたのか?」
 
(´<_` )「……なにか……ねえ」
 
 
 
 
 
(´<_` )「別に?」
 
 
 
.

171 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:58:44 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
(´・_ゝ・`)「!」
 
(;*゚−゚)「!」
 
 
 鼻が低いほうの男がそう言ったかと思うと、彼は二人のもとに飛び掛った。
 それを見て、思わず背筋が冷たくなる。
 限りなく、嫌な予感がしたのだ。
 
 
 
( ´_ゝ`)「こっちは任せろ」 ダッ
 
ミセ;゚−゚)リ「!?」
 
 
 
 ――なにがあった。
 
 
 
.

172 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 22:59:15 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
ミセ;゚三゚)リ「ッ!! ―――ッ!」
 
( ´_ゝ`)「悪いな。あんたに恨みはないんだ」
 
(;*゚ー゚)「! ミセ――」
 
(´<_` )「おっと」
 
(;* -゚)「ッ!」
 
 
 鼻が高いほうの男が飛び出してきたかと思うと、
 ミセリはそのまま両手を相手の左手で掴まれ、空いたほうの手でクチを塞がれた。
 
 思わず、おねえちゃんがこちらに注意を向けるが
 その瞬間、デミタスさんのわきを潜り抜け、鼻の低いほうの男がおねえちゃんの首を捉えた。
 
 
( ;´・_ゝ・)「! おまえ――」
 
(´<_` )「甘い」
 
( ;´・_ゝ )「――ッ!!」 ドガッ
 
 
.

173 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 23:00:12 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 デミタスさんが、連れ去られそうになったおねえちゃんを助けようとすると
 その男は、空いたほうの手、つまり右手でデミタスさんのみぞおちを殴った。
 
 瞬間、デミタスさんは、目を見開いた。
 
 
( #´・_ゝ・)「くっ…!」
 
 
 おねえちゃんが引っ張り出されたため、デミタスさんは男に殴りかかった。
 だが。
 
 
 
(´<_` )「俺もな」 パン
 
( #´・_ゝ・)「!」
 
(´<_` )「できることならイッパツ、相手してやりてえところだが――」
 
(;*゚−゚)「あ―――」
 
 
 
(´<_` )「それはまた今度になりそうだ」
 
 
.

174 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 23:00:44 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 男がそう言って退いたかと思うと、後ろのほうで待機し、「囲んでいた」男たちが代わりに前にでてきた。
 おねえちゃんを連れ去ろうとした男を追おうとすると、それはその不良たちに阻まれる。
 
 
 ―――このときになって、彼らがなにをしようとしていたのか、がわかった。
 
 
 
 
( ´_ゝ`)「じゃあデートとしゃれこみますか」
 
ミセ;゚三゚)リ「ん゙ん゙ーーーーーーー!!!」 ジタバタ
 
( ´_ゝ`)「おうおう。チャカをなめさせたことはあるが、掌ははじめてだな。
      これもなかなかいいもんだ」
 
(´<_` )「はやくずらかるぞ」
 
( ´_ゝ`)「OK」
 
 
 
 
 
 ―――拉致。
 
 
 
 
.

175 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 23:01:49 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 

 
 
 
(゚、゚#トソン「………。」 ジリジリ
 
从#゚∀从「……。」 ジリジリ
 
 
 オレとトソンは、互いの腕を押さえあい、いわゆるコーチャク状態にあった。
 互いに睨み始めて、もうどれくらい経ったかがわかんねえ。
 
 だが、退いたらダメだ。
 そう思うと、ブスイなケンカだとは思いつつも、やめるわけにはいかなかった。
 
 
 
(゚、゚#トソン「………」
 
从#゚∀从「……痛ェぞ、テメエ」
 
(゚、゚#トソン「……爪先にまで気を払わないほど、オンナを捨ててるつもりはないんでね」
 
从#゚∀从「知ってっか? そーゆーのを、中途半端って言うんだぜ」
 
(゚、゚#トソン「あんたが漢字を使うなんて、珍しいコト」    ダダダ…
 
从#゚∀从「ごたごた抜かしてっと……」    ドダダ…ダダ……
 
                                バン
(゚、゚#トソン「……」    ダダダ…
                          ダダ…
从#゚∀从「……」
              ガシャーン
 
 
(゚、゚#トソン「………なんの、音?」
 
从#゚∀从「知るか」
                 いたぞ! >
 
.

176 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 23:02:40 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
(゚、゚#トソン「……」
 
 
(゚、゚トソン「…! いま、なんか言った?」
 
从#゚∀从「ハア? テメ、なに寝言を――」
 
 
 
 
(・∀ ・)「いたぞテメーらあああッ!」
 
 
    「「「 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!! 」」」
 
 
 
 
从 ゚∀从「―――ッ!」
 
 
 
.

177 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 23:04:17 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
(・∀ ・)「ハインとトソン!」
 
 
(・∀ ・)「今からおれがお前らを―――」
 
 
 
从#゚∀从≡⊃「ッせえ!!!」
 
        . , , ゚
( )))ヹ) 。;゚,∵'・
 
 
 
 
从#゚∀从「おい! 何事だ!」
 
(゚、゚#トソン「……とにかく、出るぞ!」
 
 
                       バキッ
    「待て! いまからてめーらをボkぎゃああああああああああああああああ!!!
 
 
 
.

178 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 23:04:49 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 

 
 
 
 
 オレは、妙な胸騒ぎがした。
 理屈は……わからない。
 ただ、非日常にしては、タチの悪いジョーダンだ。
 
 トソンと一緒に、オレは一心不乱に学校から一度出よう、と思った。
 なにかをハアクするには、中から、よりも外から、のほうが早い。
 
 
 ……で、だ。
 道中、見事にヤローどもが群がってきたわけよ。
 服装からして、校内を荒らしたり、最初にオレたちに食いついてきたのと同じ連中だ。
 
 目の前にそいつらがくるたびに、オレとトソンはお構いなく、殴り飛ばして蹴り飛ばした。
 もともと走り回ってたから体力は減ってたけど、だからといってやり込められるほど相手が強いわけでもなかった。
 
 
 相手がどんなやつか、は…わからない。
 ……が、ひとつだけ、わかったことがある。
 
 
 
 
(゚、゚;トソン「こいつら……アタシたちを狙ってるのか?」
 
从;゚∀从「さーな…」
 
 
 
 オレも、そう思ってたところだ。
 
 
 
.

179 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 23:05:30 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 オレとトソンを見つけるたびに、ヤローどもは声をあげる。
 「いたぞ」……と。
 そしてオレたちめがけて、ヤツらが飛び掛ってくる。
 
 
 これは、どう考えても、オレたちに敵意があるってことだ。
 
 
 確かに、敵襲は未経験ってわけじゃあない。
 一応ケンカ上等な二人だから、過去に何度もそういうのにあってきたことは、ある。
 
 どこぞのガッコーの番長とか、ゾクとか、なんか知らんがボクサーとか。
 タイマンだったり集団戦だったりするが、一応言うと、オレは無敗だ。
 まともにケッチャクがついてないのがトソンだけで、それ以外の連中とのケンカは全部勝ってきた。
 だからこそ余計に目をつけられたりはするし、ケンカの回数は増えてばっかだ。
 
 
 ……でも。
 今回は、規模が段違いだった。
 
 だって、そりゃそうだろ。
 校内を、トコトン荒らしまわっているのだから、コイツらは。
 
 
 
 オレたちの、母校を。
 
 
 
.

180 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 23:06:14 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
(゚、゚;トソン「! 門にもいるぞ!」
 
从;゚∀从「構うか。全員ブッコロす」
 
 
 あとは、この角を曲がって下足室を横切れば、外だ。
 なにがあったのか知らんが、いつまでもここにいちゃあ、さすがのオレでもバテる。
 それに、なにがあったのかをハアクしないことには、どうしようもない。
 
 下足室で釘バットとかイスとかを振り回してた連中のタマを、次々蹴りつぶしていく。
 あとは、この、開放されてる扉をくぐれば――
 
 
 
从 ゚∀从「………?」
 
从∀゚ 从「…?」
 
从∀゚ 从
 
 
≡从∀゚;从「!!?」
 
(゚、゚トソン「どうした!」
 
 
.

181 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 23:07:17 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 倒したヤローどもを踏み越えたオレは、ふと視界の端に映るものが気になって、そっちを見た。
 誰かが、ふらふらになりながらも、例のヤローどもとハッていたのだ。
 
 で、オレが思わず仰け反ったのは、ソイツが、アレだ。
 知り合いだったわけよ。
 
 
 
 
 
(´;#)_ゝ".,)「……」
 
 
 
 
 デミやん。
 
 走り屋、デミタスだ。
 
 
 
 
.

182 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 23:07:52 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
从;゚∀从「で、デミやん!!」
 
(゚、゚;トソン「お前!」
 
 
 オレがそれに気づくと、トソンもヤツの存在は知ってたのか、すぐにオレと一緒に駆けつけた。
 オレたちの顔を見てびびったのか、いまデミやんに殴りかかろうとしてたヤツはしっぽ巻いて逃げた。
 
 ……が、いまはそんなのはどうでもいい。
 とにかく、デミやんの介抱が第一だ。
 
 
 
从;゚∀从「デミやん、どーした! 大丈夫か!」
 
(´;#)_ゝ".,)「………ば…インs…ん……。」
 
(゚、゚;トソン「お前、走り屋だろ! どうしたんだ!」
 
 
 
 デミやんは、ボロボロだった。
 顔面は打ち身だらけで、とにかく腫れてやがる。
 服も掴まれた衝動で破けちまったのか、ずたずただ。
 
 周囲に、ノビてるヤローが五、六人いる。
 一人で、一度にコイツらを相手したっていうのか。
 
 でも、右脚の腿がヘンな方向に曲がってるのを見ると、おそらくここは折れたんだろう。
 オレたちを見て安心でもしたのか、フラッとして、オレたちのほうに向かって倒れた。
 すかさず、トソンがそれを受け止める。
 
 
.

183 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 23:08:26 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
从;゚∀从「さっきの連中にやられたのか!」
 
(´;#)_ゝ".,)「……」 コク
 
 
 トソンに両肩をささえられて、デミやんはゆっくりうなずいた。
 それを見て、トソンは不思議がった。
 
 
(゚、゚;トソン「……狙いは、アタシたちじゃなかったのか…?」
 
(´;#)_ゝ".,)「……。」
 
(゚、゚;トソン「そもそも、アイツらはいったい……?」
 
(´;#)_ゝ".,)「……  、…     ……。」
 
 
 デミやんがなにかを言おうとするが、クチまでヤられたみたいで、まるで声になってなかった。
 トソンが耳を近づけた頃には、デミやんはしゃべるのをやめていた。
 
 
.

184 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 23:09:07 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
从 ゚∀从「いったい、なにが……」
 
从 ゚∀从「………、……あ」
 
(゚、゚トソン「…?」
 
 
 ――そこで、そもそもなんで、ここにデミやんがいるのかを考えてみた。
 言うまでもなく、デミやんはヴィッ校の生徒じゃない。
 コイツがヴィッ校に来る理由と言えば…………、………!
 
 
从;゚∀从「ちょ、ちょっと待て。おい、デミやん!」
 
(´;#)_ゝ".,)「   …… 。」
 
从;゚∀从「アイツは……」
 
(゚、゚トソン「アイツ?」
 
 
 
 
 
从;゚∀从「しぃは! しぃはどうしたんだ!」
 
 
 
 
 
.

185 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 23:09:38 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
(゚、゚トソン「!」
 
(´;#)_ゝ".,)「    …  ……  、…。」
 
 
 トソンが、それに反応する。
 そしてすぐさま、トソンは下足室、つまりはロッカーのほうに引き返した。
 支えを失ったデミやんが倒れようとするが、それをオレが受け止める。
 
 どうした、急に……
 そう思ったのも束の間。
 トソンはとあるロッカーを開けて、「あっ」と言った。
 
 
(゚、゚;トソン「…!」
 
从 ゚∀从「な、なんだよ…」
 
(゚、゚;トソン「………リ…。」
 
从 ゚∀从「り?」
 
 
 
 
(゚、゚;トソン「ミセリの……ブーツ……っ!」
 
 
 
.

186 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 23:10:25 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
从 ゚∀从「ミセリ……」
 
 
 猫乃ミセリ。トーゼン、知ってる。
 しぃの妹で、トソンの相棒。
 ケバくてブリッコ、とオレはあまり好きになれないが。
 
 ……待て。
  “ブーツ” ……?
 
 
 
(゚、゚;トソン「……アイツ、もう校内にいなかったよな?」
 
 
从 ゚∀从「お、オレの見てた限りじゃあ……、……!」
 
从;゚∀从「ま、待て! ってことは、アイツも―――」
 
 
 
 
 
从;゚∀从「ミセリも消えちまったっていうのか!?」
 
 
 
.

187 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 23:11:26 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 
 
 
    「   ………  ……、……リー……。」
 
 
 
 
 
从;゚∀从「…? デミやん?」
 
(´;#)_ゝ".,)「………ル……トリ………。」
 
从;゚∀从「なにトリって?」
 
 
 
 デミやんは、歯が何本か抜けたクチをなんとか動かして、言った。
 
 
 
 
 
.

188 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 23:11:58 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(´;#)_ゝ".,)「ダブル………ビクトリー……」
 
 
 
(´;#)_ゝ".,)「二人とも……、………連れ去ら……、…れた」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
.

189 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/31(日) 23:12:42 ID:q/yBrCxQ0
 
 
 
 
 
 戦争のはじまる音が、頭のなかで弾けた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
.


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