大切なものを守るようです
- 51 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/16(土) 23:55:46 ID:LPOyqarA0
-
( ^ω^)「……」 カタカタ
( ^ω^)「……」 カタカ…ッターン
( ^ω^)
( ^ω^)「………」
( ^ω^)「……っぶww」
( ^ω^)「うはwww朝からVIPはおもすれーおww」
.
- 52 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/16(土) 23:56:17 ID:LPOyqarA0
-
ξ゚听)ξ「校長」
(^ω^ )「あ、なんd
Σ(゚ω゚; )「ッ!! いた!?」
ξ゚听)ξ「わかってます。黙っていますよ」
( ;^ω^)「あ、ありがとう。それでこそつd……ツンだお」
ξ゚听)ξっ
( ^ω^)「えっと……その手は?」
ξ゚听)ξっ「おヒル」
( ^ω^)「その……え、えぇ……?」
ξ゚听)ξ「あ、そうですか」
( ^ω^)「つ、ツン?」
ξ゚听)ξ「……」 ピポパ
( ;゚ω゚)「あ、わかった!おごる、オゴるから、理事長には!」
ξ゚ー゚)ξ「……晩ゴハンもね」
( ;^ω^)「おー……」
.
- 53 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/16(土) 23:56:56 ID:LPOyqarA0
-
( ^ω^)「……」
ξ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「………あのー」
ξ゚听)ξ「はい。なんですか」
(;^ω^)「(元に戻った……)えっと、用は?」
ξ゚听)ξ「代理監督です」
(;^ω^)「え?あー、え?」
ξ゚听)ξ「タカラ先生が午前だけお休みになるので、彼が今日受け持つクラスの授業はみな自習になるのですが」
( ^ω^)「あーそれかお。なんで校長の僕が……」
ξ゚听)ξ「ほかに監督を勤めたがる先生がいらっしゃらないので」
( ^ω^)「待てや」
ξ゚听)ξ「はい」
( ^ω^)「なんでそこ、挙手制なんだお。空いてる先生に無理やり押しつければいいじゃないかお」
ξ゚听)ξ「そこなんですが」
( ^ω^)「というと」
ξ゚听)ξ「監督しなければいけないのが、三年のFとGなのですよ」
.
- 54 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/16(土) 23:57:36 ID:LPOyqarA0
-
( ^ω^)
( ^ω^)「ちょっと今ばあちゃん死んだから帰るわ」
ξ゚听)ξっ「ダメ」 ズリズリ
( ;ω;)))「あああああああやだやだ!やだだお!!あの二つだけは、いやあああああああああああ!!!」 ズリズリ
( ^ω^)とξ゚听)ξは大切なものを守るようです
.
- 55 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/16(土) 23:58:09 ID:LPOyqarA0
-
◆
(*゚ー゚)「〜〜♪」
今日も朝からヴィッ校は元気だ。
ハインとトソンちゃんがいないココは、活気に満ちあふれるのだ。
一年や二年の、ふだん暴れることのできない男連中が騒ぐ。
それも、まるで祭りでもおっぱじめるかのように。
登校する陰気な男子たちをいびり、可愛い女子にはセクハラ。
登校を見守るセンセイたちもそれを防ごうとするが、数の差で毎回負けてる。
私がわざわざ毎朝遅刻する理由は、こんな景色を朝から見るのが嫌だからってのもあるのだ。実は。
ほんとうは、ただ眠いからっていうのと……、……。
なんでもない。そう、眠いんだ。朝は。
だから遅刻なんて気にしないで、のんびり、空いてる電車に乗ってココに来る。
でも、だ。
そんな私が今日もこんな早くに来れた理由は、単純。
今日もカレの家に泊まって、言わば朝帰りだからだ。
当然私も、お祭り騒ぎの連中の目に、一度は留まる。
でも、私とハインの繋がりを知ってる人はロコツに距離をとってくるし、
知らない人は知らない人で、カレの睨みを見た瞬間露骨にしっぽを巻いて逃げる。
カレも一応ゾクだし。大型バイクの迫力もヤバいし。
前に一度、カレとその祭り連中の一人とが喧嘩したんだけど、
カレがみぞおちにイッパツお見舞いしたら、それでコトが終了した、ってのがあって。
そのせいで、「ハシり屋デミタス」は一部じゃちょっぴり有名らしい。
有名な他校のカレのバイクに揺られて優雅に登校……
ちょっぴりVIPになった気分だ。ヴィップ高校だけに。
.
- 56 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/16(土) 23:58:40 ID:LPOyqarA0
-
(*゚ー゚)「あ。アルフォートなくなった」
(*゚ -゚)「………〜〜ッ!」
仕方なく、とっておいたトッポを取り出す。
最近しょっちゅう食べるせいですぐ尽きるから、温存してたんだけど……。
またハインに買ってもらおうかな。
そうだ。ハイン。
ここ最近、毎日のように(昨日は来なかったけど)早朝登校してる私を、はやくあの子に見せたげたいなあ。
しかもあの子、テストに余裕ができてるだろうから、たぶん上機嫌だ。
いつものように笑って、授業を聞いてもあの子は鼻を鳴らすだろう。
「ウヒャヒャヒャ! カンタンすぎだっつーの!」とかなんとか言って。
まあ、文字の絡んだ足し算引き算なんて、高が知れてるし。
テストつくるのタカラセンセイだからどうせ難しくないし。
昨日、私もあのあとベンキョー教わったし、なんとかなるでしょー
(*゚ー゚)「……」
.
- 57 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/16(土) 23:59:21 ID:LPOyqarA0
-
◇
(*´・_ゝ・`)「これが、こうで……ボソボソ……」
(*゚ー゚)「え、なんて?」
(*´・_ゝ・`)「だ、だから、これが……ボソボソ…」
(*゚ー゚)「だめだなあ、もっと声を大きくしないと」
(*´・_ゝ・`)「しぃちゃん、ちょ、………!」
(*゚ー゚)「いいから早く教えてよー」
(*´ _ゝ `)「〜〜〜〜ッッ!」
◇
(*゚ー゚)
(*゚ー゚)「ハインに知られちゃダメね」
(*゚ー゚)「……うー」 ジタバタ
どうしても朝早く来ると、この時間の無駄遣いがもどかしく思える。
しゃべれる人なんてほかにいないし、この時間からスマホやウォークマン使ってたら電池すぐ切れるし。
お菓子の在庫なんか、今まさに切れつつあるし。
昨日そんなに寝てないから寝ようかな……。
でも、無防備な姿をハインに見せたら、ゼッタイイタズラされるかお菓子奪われる。
.
- 58 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/16(土) 23:59:59 ID:LPOyqarA0
-
(*゚ー゚)「サンポしよ」
スマホを首から提げて、教室を出る。
……あ、この壁。ハインがこの前砕いたやつ。
まだ直されてないんだなあ。私立高校のくせに、設備悪い。
まあ、私立だから公立よりやんちゃなことできるんだけどね。
しっかし、ハインはそろそろガッコ来るのに。
それか、もしかして、ベンキョーに火が点いて徹夜……?
(* n )「ぶふっ…www」
「あ、あれネコノさんじゃない……?」 ヒソヒソ
「見るな、高岡さんにシメられる!」 ヒソヒソ
「ちげーよ! 噂の『ハシり屋』にやられちまうよ!」 ヒソヒソ
(*ぅー゚)「朝からうるさいなあ」
いや、あのハインがベンキョーのために徹夜とか、ゼッタイにあり得ない。
我ながら変なことを思いつくものだ。
徹夜でベンキョーするハインを思い浮かべたら、つい噴き出してしまった。
こう、おでこに「気合!」って書かれたハチマキ巻いて……
.
- 59 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:00:30 ID:Ms8sK/Pc0
-
(*゚ー゚)「……んー?」
しかし……周りの様子がヘンだなあ。
いつもは廊下に人は少ないのに。登校時間でも。
廊下にいたら、そこを渡ってくる不良に目をつけられやすいから。
平和を求める生徒は、いつもなら、決まってすぐに教室にこもる。
でも……
なんか、その「平和を求める」タイプの人たちが、多く廊下にいるんだ。
ほかの教室のなかからはなにも聞こえないから、なかで喧嘩が〜〜とかはなさそうだし。
グラウンドにゾクが侵入してきた〜〜とかいうわけでもなさそう。
グラウンドは今日もお祭り集団がうろちょろしてるだけだ。
人混み……というほどでもないけど、珍しくもぽつぽつといる人の隙間をぬって前に進む。
前、つまり、人々が向いてる方角に向かって。
前に進めば進むほど、だんだん人口密度は高くなってきた。
(*゚ー゚)「……なにか、あるのかな」
もう、チャイムも鳴るってのに。
私は別にいいんだけど、この人たちはいいのかなあ、遅刻ついても。
まあ気になるから、私はその先を目指す。
すると、その人混みのなか、一カ所だけ、円があったことに気がついた。
大きな円を囲うように、人々がいるのだ。
ははーん、またどこぞの誰かが喧嘩でもするみたいだ。
そんなことしたら、ハインとかトソンちゃんに目ェつけられるのに。
「ザコのくせにイキがってんじゃねえぞ!!」とかなんとか―――
(*゚ー゚)「―――え?」
.
- 60 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:01:03 ID:Ms8sK/Pc0
-
人混みを抜けたところは、階段の踊り場。
のぼってくる人やおりてくる人がそこでつっかえるほどには、そこは人混みであふれている。
結構前に進んだので、私もその円の中心にいる「二人」を見ることができた。
そこまでは、いいんだ。うん。
でも、問題は、その「二人」なわけで………
「やべえって……帰ろうぜはやく……」
「そうだよ、チャイムも鳴るし…」
「でっでも、こんな光景、めったに見られないじゃないか……」
从#゚∀从「………。」
(゚、゚#トソン「…………。」
「タカラ先生は!?」
「いなかったよ! いつもならいるのに!」
「こ、怖ええぇぇ……!! おれ、やっぱ帰るわ…」
「わたしも……ッ」
(*゚ー゚)「………!」
.
- 61 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:01:33 ID:Ms8sK/Pc0
-
え、え?嘘でしょ?
なんで朝っぱらから、この二人が向かい合ってるの!?
しかも両方ともプッツンモード。
ハインは腕を組んで胸を張り、トソンちゃんを見下ろして
トソンちゃんは両手をポケットに入れて、のぞきこむようにハインを見る。
いつもならここにタカラセンセイが仲介したりする。
この二人に喧嘩させないために、だ。
ガッコの頂点を競い合うレベルの二人が喧嘩なんてしたら、サイアク、流血程度じゃ済まなくなる。
それは二人も知ってるみたいで、自然に騒ぎはおさまるんだけど……
今回はそうはいかないな、と思った。だって………
「どっちに賭ける…?」
「高岡さんだろ……ここ、狭いから、『拳』のほうが…」
「でも、都村さんの蹴りで扉がぶっ飛ぶんだろ?『脚』の方が『拳』より強いし……」
「それ言ったら、高岡さんも机を叩き割ったり、壁砕いたりしてんぜ!」
(;゚ー゚)「(見物じゃないんだ!! ヤジウマは帰りなさいよ、バカ!!)」
. ・ ・ ・ ・ .・ ・ .・ .・ ・ .・
ギャラリーがいるから。
.
- 62 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:02:09 ID:Ms8sK/Pc0
-
二人とも、なんだかんだ言ってプライドはある。
それも、互いのことに関しては、それは超一流だ。
普段なら気にしないようなことも、ハインならトソンちゃんが、
トソンちゃんならハインが絡めば、ゼッタイに譲らなくなるほどには。
でも、でも………!!
((;゚ー゚))「……だ………だ、め……」
だめだ。ゼッタイに、この二人がホンキでぶつかり合ったら、だめだ。
ゼッタイに歯は飛ぶし、血はそこらじゅうにつくし、骨は折れるか砕ける。
最終、首を絞めたりとかで、殺しかねない……ような、手に、でちゃうかもしれ……ない。
そんな地獄絵図は、見たくない。
もう、あんな惨劇は、見たくない。
いまも、脳裏に、トラウマとして、はっきり植え付けられている。
.
- 63 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:02:49 ID:Ms8sK/Pc0
-
◇
(*;Д;)「 ッ ! !!」
ドガッ
バキッ ボゴ
从 ∀从 ビチッ…
バン ミチミチ…
グチャア
( 、 トソン ドガッ
ボゴ
(*;Д;)
.
- 64 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:03:25 ID:Ms8sK/Pc0
-
◇
(;゚ -゚)「…………ッ!」
鳥肌が、わきたつ。
背筋を冷たいものが走る。
ふわり、と体が浮く感じがする。
だんだんと周りの音が聞こえなくなる。
平衡感覚がずれてきた。
見える景色がモノトーンになる。
从#゚∀从「……最後に訊いてやるわ」
(゚、゚#トソン「………なによ」
从#゚∀从「ワビんのかって話よ」
(゚、゚#トソン「ハア?こっちのセリフよ」
(;゚ー゚)「あ、あ………あっ……」 ソワソワ
从#゚∀从「はい交渉ケツレーツ。もうキた。コロす」
( 、 #トソン「………ゴタゴタと……」
从#゚Д从「あ゙あぁ!?」
(゚Д゚#トソン「 ッ ッ る せ え ん だ よ ! ! ! 」 ザッ
.
- 65 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:03:58 ID:Ms8sK/Pc0
-
((; - ))「ッ!」 ビク
――トソン……ちゃんが、建物が揺れるほどの大声を発したかと思えば
ハインの左わき腹を抉るように、右足を蹴り出した。
この脚で、トソンちゃんはやすやすと扉を蹴り破った……んだよね。
考えるまでもなく、人っこ一人飛ばすより扉を、それも固定されているのを飛ばす方が難しい。
そう考えたら、こんなのを喰らったら、ハインだとしても………
从#゚∀从≡「ッ」 サッ
(゚、゚#トソン「……」 ブン
ハインは冷静に、一歩下がった。
トソンちゃんの大振りのそれのリーチを見切った上での、判断だった。
で、同時に、音が聞こえてきた。
バットを思いっきり振った時にそれは似ていた。
その音を聞いて、私含むヤジウマどものみんなが、震え上がった。
同時に、一歩二歩、と全員が後ずさって、円が大きくなった。
なかには、二人の恐ろしさの片鱗を見て、逃げ出す人もいた。
私は。
私は、目に涙がにじんでいた。
体の芯から、ふるえが襲ってきた。
((; - ))「……や………め……」 ブルブル
.
- 66 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:04:30 ID:Ms8sK/Pc0
-
「ヤッパやべえって!! 帰るぞ!!」
「あんなの喰らったら、骨イくわ!!」
「音ッ! いま、ブン って!!」
从#゚∀从「……」
(゚、゚#トソン「………」
.
- 67 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:05:06 ID:Ms8sK/Pc0
-
徐々に、きれいな円形だったのが歪なものになっていく。
やはり「右にならえ」の精神はもってたみたいで、一人が脱落したら俺も、私もって次々に見物をやめていったのだ。
だが、いくらギャラリーが減ってもいることはいるし、
仮にギャラリーのみんなが消えたとしても、もはや円満に喧嘩が終わることはなくなっただろう。
トソンちゃんが、手を出した。
ただそれがあっただけで、ハインはそれに対する報復、トソンちゃんはそれに対する応戦……
と、果てのないいたちごっこに発展するのだ。
とめ、た……とめたい。
でも、私じゃあ、もう止めることはできない。
こうなってしまったら、私の声でもハインには届かないのだ。
止めようものなら、あのセンセイみたいに、自殺上等で間に割り込まないとだめだ。
警察が集団でおさえにかかっても、数人は必ず被害を受けるだろう。
しかも、流血や骨折は免れないレベルで。
从#゚Д从彡「ドラッッ!!」 ヒュッ
トソンちゃんの右足が放たれた、その隙をつくように
ハインは左腕で弧を描くように殴りかかった。
さっき一歩退いた反動で、二歩詰め寄る。
それを見て、あれは退いたんじゃなく 「引いた」 んだ――そう、わかった。
.
- 68 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:05:42 ID:Ms8sK/Pc0
-
(゚、゚#トソン「――ッ」
でも、トソンちゃんもそれくらいわかっていたようで。
右腕をたたんで、上体を右に傾ける。
ハインの左フックを右肘で受け止めた。
続けてハインは、「引い」ていた右拳を、まっすぐに放った。
机をまっぷたつに割った、人間凶器を。
でも、動いたのはハインだけじゃなかった。
トソンちゃんも、放った右足を左奥についてそのまま、体躯を低くしてたんだ。
そして体重を右足に載せて―――左の回し蹴り。
ハインの拳の軌道にトソンちゃんの胸があったのが、背中に変わった。
しかも背中に垂直にそれが当たるんじゃない。
カミソリパンチのように、かすれた。
大振りの一撃が、はずれた。
从#゚∀从≡「チッ!」
前のめりになったハインに、トソンちゃんの回し蹴りがきた。
右腕じゃあ間に合わない。
体を落とす時間もない。
左腕を縦にすれば被弾こそまぬがれるが、その腕は………………
折れるだろう。
(*;ー;)「ひッ…!」
.
- 69 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:06:14 ID:Ms8sK/Pc0
-
(゚、゚#トソン「ッッ!」 パァン
从# ∀从「………!」
トソンちゃんの足が当たったような音が、周囲にこだました。
ギャラリーが思わず顔を手で覆う。
見かねて、なにもなかったかのように逃げ出す人もでた。
続けて、チャイムが鳴る。
が、二人をほって帰ろうだなんて、思えない。
(; - )「…………」
両手で目を覆う。
直後、その場が静かになる。
.
- 70 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:06:46 ID:Ms8sK/Pc0
-
(; -゚)「………、…?」 チラ
両目を覆ったうち、左手だけを少しおろした。
被弾したわりには、続きが行われる音がしなかったからだ。
いくらトソンちゃんにヒトのココロがあろうと、ハインとの喧嘩の場合、手を休めることはないだろう。
トソンちゃんの左半身と左足を伸ばした姿が見えた。
ハインは、右に大きく傾けた体、右腕は伸ばしたままで、
左腕を縦にしてトソンちゃんの蹴りに迎え撃とうとしていた。
. ・ ・
―――その間に、ヒトがいた。
「遅刻ですよ。高岡、ハインリッヒ」
.
- 71 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:07:16 ID:Ms8sK/Pc0
-
从# ∀从「……………………!」
(゚、゚#トソン「………あ、あんた………!!」
(;゚ー゚)「………ッ!!」
そのヒトの金髪の巻き髪が、揺れた。
左の掌をトソンちゃんの左足のかかとに当て
右の手で、ハインの伸ばした右腕を掴んでいる。
スーツを着てる、華奢な女性だった。
ハインのことを知ってるみたいだが、なじみのない顔だ。
だけど………見覚えは、あった。
.
- 72 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:07:52 ID:Ms8sK/Pc0
-
(゚、゚#トソン「………タカラが、いねえって、思ってたら……」
トソンちゃんが、怒鳴る。
. ・ .・
(゚Д゚#トソン「なんの用だ!! 教頭ッッ!!!」
ξ )ξ「あなたも授業があるのでしょう」
ξ゚听)ξ「早く教室に戻りなさい。都村、トソン」
………津出レイ、教頭。
若くして教頭にバッテキされた、エリート。
(;゚ー゚)「……………え……?」
でも……なんで。
なんで………教頭センセイなんかが、ここに……?
.
- 73 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:08:23 ID:Ms8sK/Pc0
-
从# ∀从「……………………」 ワナワナ
ξ゚听)ξ「高岡さん。それと、そこ」
(;゚ー゚)「………え…、え?」
教頭センセイと目があった。
私を見ながら言ったので、おそるおそる私は自分を指さす。
教頭センセイは、うなずいた。
ξ゚听)ξ「そう。猫乃、しぃも。一限目の遅刻は、一日の遅刻です。放課後、指導がありますから」
(;゚ー゚)「え…………???」
だめだ。アタマが回らない。
あまりに急のことで、わからないことはいっぱいあった。
どうして教頭センセイがここにいるのか。
どうして遅刻の話をされるのか。
どうして……二人を止められたの、か。
.
- 74 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:09:00 ID:Ms8sK/Pc0
-
ξ゚听)ξ「今日、タカラ先生がお休みになりました。3−Gの一限目の数学は、自習です」
(゚、゚#トソン「………!」
トソンちゃんが反応を見せた。
ハインは、同じ体勢のまま、ただわなわなと震えていただけだった。
(゚、゚トソン「タカラが……休み?」
ξ゚听)ξ「だから3−Fの二限目も、自習。私と校長が監督をしますから」
(*゚ー゚)「こ……校長?」
ふと、教頭センセイの後ろの方を見る。
すると、柱の陰から顔だけをのぞかせる男がいた。
この丸顔、間違いない。
ω^)「………」
(*゚ー゚)「……」
.
- 75 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:09:37 ID:Ms8sK/Pc0
-
だとすると……
タカラセンセイが休みで、数学の授業が自習で、その監督にこの二人が就く……この三つは、確かみたいだ。
トソンちゃんもギャラリーも、それをわかったみたい。
ギャラリーは逃げるように教室に戻っていく。
校長センセイはともかくとして、教頭センセイのカタブツさは有名だから。
あれやこれや、とムダに処分を受けたくないから、顔を見られないうちに――というハラなんだろう。
気がつけば、その場にはトソンちゃんとハイン、私、そして校長センセイと教頭センセイだけになった。
トソンちゃんがぎろりと睨んだだけで校長センセイは陰に完全に隠れたから、実質四人だけど。
(゚、゚トソン「……」
ξ゚听)ξ「騒ぎが聞こえたからまさか、とは思ったけど……」
ξ゚听)ξ「喧嘩以外、できないの? あなたたちは」
(゚、゚トソン「…………」
.
- 76 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:10:13 ID:Ms8sK/Pc0
-
トソンちゃんが黙る。
いつもならタカラセンセイに止められるのを、今日は違ったからだろう。
それに、またしてもあっさりと止められるとは思いもしなかったからか。
サトすように、教頭センセイが続ける。
ξ゚听)ξ「ほんとうなら、とっくに二人とも退学処分を受けているのよ」
ξ゚听)ξ「もう卒業も近いんだから、自粛しないと」
ξ゚听)ξ「高岡さんも、よ」
傍らで、いまだ顔をあげないハインに、言う。
さっきまでハインはちっとも反応を見せなかったけど、そう言われて我に返ったのか、ゆっくり顔をあげた。
从# ∀从「…………」
从#゚∀从「…………。」
ξ゚听)ξ「聞いてるの? 返事は?」
.
- 77 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:10:46 ID:Ms8sK/Pc0
-
从#゚∀从「…………………テメエ……」
ξ゚听)ξ「テメエ?誰に言って――」
从#゚∀从「ジャマすんじゃ………」
从#゚Д从≡⊃「ねーよゴルァ!!!」
ξ )ξ「!」 パァン
(;゚ー゚)「あ!」
.
- 78 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:11:17 ID:Ms8sK/Pc0
-
ハインがついにキレたのか、教頭センセイに、殴りかかった。
トソンちゃんとの喧嘩を止められるだけでキレるのに、まして止めたのが自分となじみの薄い教頭センセイ。
そのうえ、説教だ。『拳のハイン』なら、キレてもおかしくないだろう。
でも、相手は教頭センセイなんだ。
さすがのハインでも、この人に暴力をふるったら……!
(; - )「…………っ」
パアン、と乾いた音が鳴ったと同時に、とっさに目をつむってしまった。
その音の後、さっきみたいに、またその場が静かになった。
ハインが怒鳴ることも、教頭センセイが悲鳴をあげることもない。
その静けさが、逆に、とても怖かった。
.
- 79 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:11:49 ID:Ms8sK/Pc0
-
(; -゚)「…………、」
(゚、゚;トソン「……っ」
静かに、ゆっくりと、私は目をひらいた。
なにがあったのか、わからなかったからだ。
ハインが追撃をすることもなく、教頭センセイが泣くこともなく。
目を開くと、まず最初に目に入ったのは、驚きを露わにしているトソンちゃんだった。
動揺が、顔一面に表れている。
視線は……ハインと教頭センセイに向かっていた。
その視線を、私も追う。
(;゚ -゚)「……!」
.
- 80 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:12:20 ID:Ms8sK/Pc0
-
从;゚∀从「………て、テメエ……?」
ハインも、なにやら動揺している。
左腕を伸ばしたまま、教頭センセイを見て、固まっていた。
さっきまで見せていた怒りも、いまのハインからじゃつかみ取れない。
そして、その向こうにいる教頭センセイを見て、私も動揺した。
だって………
ξメ )ξ「………」
从;゚∀从「……なんで、避けねーんだよ……!」
.
- 81 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:12:54 ID:Ms8sK/Pc0
-
教頭センセイが、あの『拳のハイン』の左ストレートを、真正面から受け止めたからだ。
しかも、顔面で。
教頭センセイはその衝撃に耐えかねたのか、左足が一歩後ろに下がっている。
上半身は少しのけぞってるし。
でも……それが、おかしいのだ。
どうして……ハインの拳を、避けようとせず、真正面から受け止めた?
いや、そもそもどうして受け止められた?
常人だったら、その拳をくらえば頬骨くらいなら砕けるだろうに。
でも、そんな様子をまったく思わせないそぶりしか、教頭センセイは見せなかった。
悲鳴はあげないし、怒鳴りもしないし、やり返しもしないし、逃げようともしない。
ただ、放心状態に近い感じだった。
だから、ハインも動揺したのだ。
ξメ )ξ「……」
ω^)「つ……ツン!」
.
- 82 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:13:28 ID:Ms8sK/Pc0
-
音とハインの言葉を聞いて状況を把握できたのか、隠れていた校長センセイが出てきた。
教頭センセイの隣にきては、身を案じる。
教頭センセイは殴られたまま、 つまり、顔を左に向けたままだ。
殴られた右頬に、手を添えようともしない。
校長センセイが、教頭センセイが無事なのを確認してから、彼女を介抱したままハインの方を向いた。
ふだんはなよなよしてるだけのデブなのに、このときだけは、顔が、まじめだった。
(#^ω^)「……今までは黙ってたけど……もう、許さんお!」
从 ゚∀从「………」
(# ω )「数々の暴力事件を引き起こして!あげく、先生にまで暴力!!」
.
- 83 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:14:02 ID:Ms8sK/Pc0
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(#;ω;)「退学だ!! 高岡ハインリッヒ、あんたは今日をもって退学だお!!」
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- 84 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:14:37 ID:Ms8sK/Pc0
-
◆
(;‘_L’)「ロマネスク氏!」 バッ
( ΦωΦ)「わっ! ……な、なんであるか」
(;‘_L’)「つ、都村さんと高岡さんが、ハジメた!」
( ゚∋゚) ゙
( ;ΦωΦ)「な…な……、マコトであるか!? 確か、タカラ先生は休みであるぞ!」
(;‘_L’)「やばいよ!! 都村さんが蹴っただけでバットみたいな音が鳴ったもん!」
( ;ΦωΦ)「まさか、さっきの揺れは……!」
(;‘_L’)「………都村さんの、怒鳴り声」
( ;+ω+)「…………帰りたい」
.
- 85 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:15:16 ID:Ms8sK/Pc0
-
(゚∈゚ )
(;‘_L’)「ど、どうした? クックル氏」
( ;ΦωΦ)「見にいくつもり……であるか!?」
(;‘_L’)「バカ! 巻き添えくらったら、いくらクックル氏でも――」
(( ゚∋゚)) フルフル
(‘_L’)「あ……気になっただけ?」
( ΦωΦ)「よかった……けど、クックル氏ならとばっちりくらってもけろっとしてそうであるな」
(‘_L’)「そういや、クックル氏って、」
( ゚∋゚)
(‘_L’)「去年まではずっと都村さんや高岡さんと一緒だったよね、クラス」
( ΦωΦ)「Gであるな。しかし、それが?」
(‘_L’)「いやあ……なんか、ごついのが揃ってたのに、今年は違うなあって」
.
- 86 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/03/17(日) 00:15:50 ID:Ms8sK/Pc0
-
((( ΦωΦ))) ブルッ
( ;ΦωΦ)「ええ、エンギの悪いことは言うな!」
(;‘_L’)「……クックル氏?」
( ゚∋゚)
( ΦωΦ)「首傾げてるである」
(‘_L’)「だよねー」
( ΦωΦ)「このアルファベットって、アタマの良さで決まってるとの噂であるし。他意はなかろう」
(‘_L’)「そっか……。そうだよね」
.
- 87 名前:いやああああああああああああ[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:17:04 ID:Ms8sK/Pc0
-
( ゚д゚)「そこ、うるさいぞ」
( ;ΦωΦ)「授業中だったの、忘れてたである」
(‘_L’)「……? なんだ、このプリント」
( ゚д゚)「では、小テストはじめ!」
( ;ΦωΦ)「! しまった、勉強してなかったである!」
(;‘_L’)「喧嘩騒動のせいですっかり忘れてた!!」
( ゚д゚)「そこの二人、減点」
( ;ΦωΦ)(;‘_L’)「「あああああ!!」」
.
- 88 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:17:36 ID:Ms8sK/Pc0
-
◆
ハインは、まあ日頃の行いを見てわかるように、「不良」だ。
クラスメートや他校の連中にはもちろん、センセイにまで暴力を振るう。
そして、そんなことを普段からしでかしてる以上、「こうなること」も覚悟しているのだ――
ほんとうは。
停学はもちろんのこと、退学すら視野に入れてハインは暴れているのだろう。
ハインが退学になったら、たぶんガッコは荒れに荒れまくるけど……
でも、こうして実害を出された場合、ガッコとしては退学処分を下すのが一番合理的だ。
親友……にこんなこと言いたくはないけど、その……
ハインは…… 「言われてわかるタイプ」ではない。
自分に実害が起こって、はじめてわかるタイプなのだ。
つまり、暴力事件を起こそうと、退学になったり逮捕されたりしないかぎりは、その事の重大さに気づけない。
ハインは、そういったことをわかった上で、暴れているはずなのだ。ほんとうは。
でも………どうして……
从;゚∀从
あなたは……そんなに、驚くの。
顔面いっぱいに、焦りを散りばめて。
.
- 89 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:18:10 ID:Ms8sK/Pc0
-
後ろにいたトソンちゃんも、同じような顔をする。
いままで自分と同じくらい暴れていたハインが、退学処分を、それも校長本人から言い下されたからだ。
場が、もう一度静かになる。
その空気をつぶしたのは、
ξメ )ξ「…………ねえ」
なぜか、教頭センセイだった。
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- 90 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:18:46 ID:Ms8sK/Pc0
-
从;゚∀从「………………オレ、か?」
ξメ )ξ「ほかに、誰が?」
(#;ω;)「ツン、もういいお! へたなことを言ったら、また殴られるお!」
ξメ )ξ「……」
(#;ω;)「コイツは退学させるお!! だから―――」
ξメ )ξ「いいわよ、別に」
( ;ω;)「え……」
从;゚∀从「……!」
(;゚ー゚)「!」
(゚、゚トソン「!」
ξメ゚听)ξ「喧嘩を止めるのに、この程度の傷はついてトーゼン、だし」
( ;ω;)「………ッ! で、でも――」
ξメ゚听)ξ「それよりも、高岡さん」
从;゚∀从「な……なんだよ」
.
- 91 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:19:17 ID:Ms8sK/Pc0
-
予想外の言葉に驚きを隠せない、校長センセイとハイン。
教頭センセイは、暴力をなんとも思ってない様子で、ハインに訊いた。
ξメ゚听)ξ「あなたは、どうして、拳を振るうの?」
从;゚∀从「……え…………」
ξメ゚听)ξ「誰かを、救うため? 喧嘩が、したいから? それとも………」
・ ・ .・ .・ .・
ξメ゚听)ξ「弱い自分を、守りたいから?」
.
- 92 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:19:47 ID:Ms8sK/Pc0
-
从 ゚∀从「ッ」
( ;ω;)「ツン、よけいなことは言うなお! こんなのほっといて、早くいくお!」
从 ゚∀从「………」
ξメ゚听)ξ「一応、こっちは殴られてるの。黙秘権はないわ」
从 ゚∀从「…………、」
校長センセイをムシして、訊く。
予想外な質問で、しかもその内容も予想外なものだ。
ハインが戸惑うのも、しかたないことだろう。
少し、静かになる。
ハインがクチを開くまで、誰も(校長センセイのぞく)なにもしゃべらなかった。
从 ゚∀从「………あ」
ξメ゚听)ξ「あ?」
从∀゚ 从「相手が……うぜえから、だよ」
(゚、゚トソン「…!」
ξメ゚听)ξ「……………。」
.
- 93 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:20:18 ID:Ms8sK/Pc0
-
教頭センセイが、黙る。
じっと、そっぽを向いたハインを見つめて。
从 ゚∀从「もういいか?」
ξメ゚听)ξ「!」
从 ゚∀从「オレ、退学?なんだろ?」
从 ゚∀从「じゃ、帰るジュンビしてくっから」
.
- 94 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:20:49 ID:Ms8sK/Pc0
-
(゚、゚トソン「!」
(;゚ー゚)「!! は、ハイン……っ!!」
从∀゚ 从「んあ? あ、いたの」
(;゚ー゚)「……………最初、から……」 ボソ
从 ゚∀从「じゃ、そーゆーことだから。今までサンキュな」
(;゚ー゚)「…………、……ゃ」
从 ゚∀从「ん? なんだよ」
(;゚ー゚)「………イ、ヤ…」
从 ゚∀从「…」
(*;ー;)「い………イヤ………、……ハイン……退学…っ!」
从 ゚∀从「……………」
.
- 95 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:21:22 ID:Ms8sK/Pc0
-
思わず、涙が流れる。
声がかすれて、今の声でさえ、届いたかわからない。
でも、膝のチカラが抜けて。
その場に、へなへなって、しゃがみこんでしまった。
あふれる涙をおさえるために、目を両手で覆って、がしがしとこする。
でも、止まらない。
涙が、止まらない。
(*;ー;)「ひぐッ………ぇ……っ…」
从 ゚∀从「………」
(゚、゚トソン「……しぃ……」
ξメ゚听)ξ「……」
( ;ω;)「ツン、ここはアブナ――」
ξメ゚听)ξ「……いいから」
校長センセイを制して、彼女は一歩前に出る。
私の方を向いたハインの肩に、ぽんと手を置いた……らしい。
涙がにじむせいで、前が見えないのだ。
.
- 96 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:21:55 ID:Ms8sK/Pc0
-
ξメ゚听)ξ「私はね、高岡さん」
从 ゚∀从「…?」
ξメ゚听)ξ「 『大切なもの』 を守るためなら、暴力はしてもいいって思うの」
从 ゚∀从「……ッ」
(゚、゚トソン「!」
.
- 97 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:22:38 ID:Ms8sK/Pc0
-
ξメ゚听)ξ「むしろ、手段は選ばなくていい――そう言った方がいいかも」
从 ゚∀从「………だ、だからなんだよ」
ξメ゚听)ξ「私が教師を始めてできた 『守りたいもの』 は、あなたたちよ、高岡さん」
从 ゚∀从「!」
ξメ )ξ「生徒。たとえ非行に走っても事件を起こしても、私は生徒を見捨てたいとは、ゼッタイに思えない」 スタスタ
从 ゚∀从「あ、ちょ――」
そう言って、彼女はハインやトソンの横を通り過ぎ、教室に向かって歩き始めた。
校長センセイが慌ててあとを追う。
ハインとトソンちゃんが、やっぱり動揺を隠せていないまま、教頭センセイを見つめる。
すると彼女は振り返って、ハインに――いや、ハインとトソンちゃんに向かって、言った。
.
- 98 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:23:10 ID:Ms8sK/Pc0
-
ξメ゚听)ξ「だから、退学処分はナシよ」
从 ゚∀从「!! な、なんd――」
( ;ω;)「バカ言うなお!あんなの、退学にしt
ξメ゚听)ξ「その代わり。」
从 ゚∀从「ッ」
ξメ゚听)ξ「その拳は、大切なものを守るときにだけ、使いなさい」
.
- 99 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:23:50 ID:Ms8sK/Pc0
-
从 ゚∀从「な、なんだよ、『大切なもの』 って………」
ハインが、訊く。
若干、ほんとうに微々たるものだけど、その声がどこか、震えているように聞こえた。
教頭センセイはそれに気づいたのだろうか。
それに答えるとき、彼女は、ほほえみを見せた。
ξメ゚听)ξ「そのうち」
从 ゚∀从「…?」
ξメ゚ー゚)ξ「……そのうち。 きっと、わかると思う」
从 ゚∀从「……っ」
(゚、゚トソン「…。」
.
- 100 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:24:23 ID:Ms8sK/Pc0
-
ξメ゚听)ξ「……早く、教室に戻りなさい。欠課時数がムダに増えるだけよ」
(゚、゚トソン「……フン」
言われて、トソンちゃんは鼻を鳴らす。
そしてうつむきながら、教室に向かって歩き始めた。
すっかり、喧嘩する気持ちもなくなったのだろう。
それは、私にとっては、実にうれしいことだ。
うれしいこと、なんだけど……
(*;ー;)「………ヒっ……、」
ξメ゚听)ξ「………猫乃さn――」
从 ゚∀从「……しぃ、たてるか」
(*;ー;)「………ん」
.
- 101 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:24:56 ID:Ms8sK/Pc0
-
ξメ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「………なんで」
ξメ゚听)ξ「?」
( ^ω^)「なんで……笑って許せるんだお」
( ^ω^)「きみは……ツンは、殴られたんだお? 骨も、折ったかもしれない」
( ω )「なのに……」
ξメ゚听)ξ「……それ」
( ^ω^)「?」
ξメ゚听)ξ「タカラ先生に、私も訊いたんです。そしたら……」
.
- 102 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:25:28 ID:Ms8sK/Pc0
-
◇
( ^Д^)「え?」
ξ゚听)ξ「ですから、どうしてそんなに二人を止めようと……?」
( ^Д^)「ああ、みました? アザ」
ξ゚听)ξ「服を脱がれては、嫌でも目に入ります。いくら湿布を貼るとはいえ……」
( ;^Д^)「あっはは……」
( ^Д^)「まあ…、訊かれてもですねえ」
ξ゚听)ξ「へ?」
( ^Д^)「そりゃーあれだからですよ」
( ^Д^)「センセーだから、ボク」
ξ゚听)ξ「……っ」
.
- 103 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:26:00 ID:Ms8sK/Pc0
-
( ^Д^)「きれいごとって言われちゃったけど、でも本心だしなーって」
( ^Д^)「そこで、逆に考えたんですよ! 本心できれいごとなら、ココロがきれいってことだよな!?ってww」
ξ゚听)ξ「……」
( ^Д^)「ww……。あ、教頭センセー……?」
ξ゚听)ξ「…」
ξ゚ー゚)ξ「……確かに、そうですね」
◇
( ;^ω^)「…た、確かにタカラ先生らしいけど……」
ξメ゚听)ξ「ムカシを思い出しちゃって」
( ^ω^)「お? ムカシ?」
ξメ゚听)ξ「なんでもないわ。さ、早く行きましょ」 スタスタ
( ;^ω^)「あ、待って!」
.
- 104 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:26:36 ID:Ms8sK/Pc0
-
◆
从 ゚∀从「……落ち着いたか?」
(*゚ー゚)「……なんとか」
自習と言いつつ監督のセンセイすらいなかった間は、まあ、荒れに荒れていた。
ハインもいないのをいいことに、教室で野球をはじめる男子もいたそうだ。
でも、ハインと校長・教頭が同時に入室したのを見た瞬間、その男連中はすぐに席についた。
やっぱり、ハインに目を付けられるのが怖いんだろう。
そのまま私とハインは席について、教頭センセイが事の成り行き
(タカラセンセイの欠席とか、なぜ自分たちが遅れたか、など)を話してからは、自習になった。
自習する生徒なんていなかったけど。
私は、まあなんとか立ち直れた。
ハインが心配そうな目で見つめる。
……最近、こんなのばっかだなあ。
私は、穏やかな日々を求めてるってのに……
.
- 105 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:27:09 ID:Ms8sK/Pc0
-
………でも。
どうして、あの二人は今朝になっていきなりあんな大喧嘩をはじめようと思ったのだろう。
そんな疑問が浮かび、また自習時間でもあったので、私は何気なくそれを聞いた。
从 ゚∀从「へ?」
(*゚ー゚)「だから、なんでまた喧嘩?」
从 ゚∀从「………」
(*゚ー゚)「?」
从 ゚∀从「今朝、バイクで登校しようとしたら、変なのに絡まれてよ。五、六人」
从 ゚∀从「まあ……ものの一分足らずで全員ノしたけど。一人を締め上げて問いつめたら、吐いたんだ。呆気なかったな」
(*゚ー゚)「……なんて?」
从 ゚∀从「『トソンさんに、高岡を襲え、と命令された』んだとよ」
.
- 106 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:27:40 ID:Ms8sK/Pc0
-
(;゚ー゚)「えっ!」
从 ゚∀从「で、だ」
◇
从#゚∀从「(あの糞……どこだ!)」
( 、 #トソン「………ス……、…ロ……」 ボソボソ
从#゚∀从「……! いた! おい、テメエ!」
(゚、゚#トソン「!」
(゚、゚#トソン「あんた……! 今朝はよくもしてくれたな!!」
从#゚∀从「ハア!? そらこっちのセリフじゃボケ!!」
.
- 107 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 00:28:18 ID:Ms8sK/Pc0
-
◇
(*゚ー゚)「……え?」
从 -∀从「いま思えば………話がかみあってなかったんだよな」
从 ゚∀从「アイツがオレにほんとうにしかけたんだったら、変にとぼけたりなんか、しねーし」
(*゚ー゚)「………」
……それを聞いて。
私は、特に根拠があるわけじゃないけど、
なんか、私の求めてる平穏が、だんだんと遠ざかっていってるような……
そんな、予感がした。
.
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