从´ヮ`从ト スティール・マイハートのようです


2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 15:49:00.71 ID:9eAe1teg0
チハルとフサが心地よい眠りに着いている時。
日付が変わった頃、アラマキ・チェブリコフは怒り狂っていた。

/#,' 3「どうなってやがる!!」

【スーツの男A】「も、申し訳ありません、ボス」

/#,' 3「どうしてどいつもあの盗み屋の事を知らないんだ!!」

【スーツの男B】「交友関係が皆無に等しく……」

/ ,' 3「そんなもん知った事じゃねぇ!!
    いいか、手前等の頭の中に、情報屋って文字はないのか、あぁ?!」

【スーツの男A】「ロードン随一の、シャーロッキン・ホームズに訊きましたが、奴も知らないとなると、この街で奴の居場所を知っているのは、もういない――」

言葉を途中で遮ったのは、アラマキの手の中にあるマカロフの銃声。
足元の床を撃ち抜かれ、男は、失禁しそうなほどに怯え出した。

/ ,' 3「殺し屋を雇えばいいだろうが!!
    猫を探しているんじゃねぇ、俺達は、あの彫刻を探しているんだ!!」

【スーツの男B】「ぼ、ボス、なら、一つ提案が」

/ ,' 3「おう、言って見ろ」

【スーツの男B】「ゴロツキを大量に雇って、あいつの居場所を探させるんです。
 ゴロツキ共、頭はあれですが、横の繋がりは豊かです。
 だもんで、それを上手く使えば、見つけるのは簡単かと」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 15:54:23.20 ID:9eAe1teg0
/ ,' 3「……確かにそうだな。
   よし、それでいこう。
   それと、……ワーズワースを雇う」

【スーツの男A】「わ、ワーズワースって……
 まさか……!!」

/ ,' 3「お前が交渉に行って来い」

【スーツの男A】「そんな、ボス、それだけは……!!
          あいつの所に行ったら、絶対に、俺は殺されちまいます!!」

/ ,' 3「いいじゃねぇか、男を見せれば、殺されねぇかもしれないぞ」

【スーツの男A】「ジャック・ザ・リッパーの再来、フレデリック・ウェストの弟子、ジョン・ジョージ・ヘイグの師匠、あの野郎の名前を、ボスも知っているでしょう?!」

/#,' 3「なぁ、俺がお前に頼んでいる様に聞こえたのか?
    なら言い直してやる。
    クックル・フレイムワークス=Eワーズワースの所に行って、仕事を依頼して来い!!」

【スーツの男A】「ああぁ、ボス、お願いです、それだけは、あいつの所に行くのだけは、勘弁を……」

/#,' 3「ガタガタ抜かしてると、俺が手前の頭を吹っ飛ばすぞ!!
    その次は手前の家族だ!!」

【スーツの男A】「ひいっ!!」

/#,' 3「おい、何してやがる?
    お前も、さっさとゴロツキ共を雇いに行け!!
    いいか、何が何でも、あの盗み屋を捕まえて、彫刻を手に入れろ!!」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 15:59:38.44 ID:9eAe1teg0
* * *

起床は朝の六時よりも、少しだけ早かった。
フサが目を覚ましたのには、二つの理由があった。
一つ目は、甘い匂い。
二つ目は、腕の中でもぞもぞと動く温かな生き物の感触。

ここまで揃えば、状況を把握する事は容易く、自責の念に苛まれる事は、避けては通れない道であった。

从´ヮ`从ト「しゅぴー」

一晩寝ただけで、腹の傷は殆ど治癒していた。
時折内臓に走る痛みを耐えれば、問題なく動ける。

从´ヮ`从ト「くー……」

あまりにも気持ちよさそうに眠っているようで、無為に起こすのも躊躇われたが、今は、一分一秒、全ての時間を無駄なく使い、準備を整える必要があった。
この隠れ家を有効的に放棄する準備も、今の内に進めなければならない。

ミ,,゚Д゚彡「おい、起きろ」

从´ヮ`从ト「ぽー……」

揺さぶるが、起きる気配を見せない。

ミ,,゚Д゚彡「おい、チハル。
 さっさと支度をしろ」

从´ヮ`从トそ「はっ!? 今、旦那があたしの名前をっ?!」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 16:04:47.21 ID:9eAe1teg0
ミ,,゚Д゚彡「まずは服屋だ。次に武器屋、そして飯、車に……」

从´ヮ`从ト「ちょ、ちょーっと待って下さい旦那!!」

ミ,,゚Д゚彡「何だ?」

从´ヮ`从ト「……もう一度、名前を呼んで下さい」

ミ,,゚Д゚彡「チハル、これでいいか?」

从*´ヮ`*从ト「ひゃっふううううう!!」

ベッドの上から、チハルが飛び上がった。
それはもう、見事な跳躍であった。

从´ヮ`从ト「では、旦那!! まずは服屋ですね!!
      さぁさぁ、ほらほら、起きて下さいよ!!」

ミ;,,゚Д゚彡「……あ、あぁ。
      その前に、やる事がある」

从´ヮ`从ト「ほい?
      ま、まさかっ……!!
      お、おおおお、おはようのチューですか?!」

ミ,,゚Д゚彡「目覚めのアイアンクローがほしけりゃくれてやろう」

从;´ヮ`从ト「うあああ……だんなぁ……
      もうやってるじゃないですかーもー」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 16:08:05.65 ID:9eAe1teg0
ミ,,゚Д゚彡「ほら、準備をしろ」

从´ヮ`从ト「うぃー」

それから三十分ほど、フサはチハルと共に、隠れ家に別れを告げる準備を終えていた。
万が一に備えて、ホルスターに入れたグロックと、予備の弾倉をチハルに渡し、使い方を教えようとしたが、

从´ヮ`从ト「そいやっ」

教えるまでもなく、分解、掃除が出来ていた。
玄関で靴を履き終え、フサは最後に、一日だけ過ごした隠れ家を見た。
もう、ここに戻る事はない。
しかし、チハルと出逢ったのはこの場所だと思うと、何故だか、本当に少しだけ、寂しい気がした。
チハルを従え、フサは隠れ家のドアを閉め、ロードンの街に繰り出した。

从*´ヮ`*从ト「あ、あの……あの、旦那?」

ミ,,゚Д゚彡「何だ」

从*´ヮ`*从ト「どどど、どうして?」

ミ,,゚Д゚彡「だから、何だ?」

从*´ヮ`*从ト「どうどう、どどどっ……!!」

ミ,,゚Д゚彡「落ち着け」

从*´ヮ`*从ト「どうして、ててて、手をつつつ、繋いでいるんでしょう?」

ミ,,゚Д゚彡「服屋に行くまでに迷子にならない様に、だ」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 16:12:57.58 ID:9eAe1teg0
从*´ヮ`*从ト「あのあのあの、でも……」

ミ,,゚Д゚彡「付け加えるなら、治癒が早まる。
     そうなんだろ?」

从*´ヮ`*从ト「そうですけどっ、でもっ……
       旦那、あんなにあたしの事避けてたじゃないですか、どうして……」

ミ,,゚Д゚彡「……煩い」

早朝から服を売っている様な風変わりな店は、ロードン市内には限られており、その店は今二人が歩いている様な、人気のない、路地裏の様な場所にしかない。
看板も出ていない店。
ビルの一室を借りて店を出している、古着屋が、フサの狙いだった。
人目をはばかる様に道を選んで進み、古びた雑居ビルの一つに、二人は入った。

口が堅く無口な店主が二人を一瞥すると、挨拶はせずに、目礼だけをした。

ミ,,゚Д゚彡「好きな服を選べ。
      悪いが、靴は俺が選ぶ」

この店を選んだのは、靴の品ぞろえが豊富で、確かな品が多く取り揃えられていると云う点も、理由の一つに挙げられた。
下手に口を開く事はせず、チハルは店内を歩き回り、冬のロードンを走り回れるだけの服を選び始めた。
その間、フサも服を選び、チハルが服を選び終わったのを見計らい、シンサレートの入った8インチのワークブーツを二足、500ドルと共に店主の前に出した。

ミ,,゚Д゚彡「ここで着て行かせてもらっても?」

【店主】「……」

店主は無言で頷いた。
試着室で服と靴を取り換え、脱いだ服の処理を考えていると。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 16:16:17.40 ID:9eAe1teg0
【店主】「ウチで処分しておく」

こう云った、気の利くところも、フサがこの店を選んだ理由であった。
こうして。
二人は夜まで行動が可能な、動きやすい服と、完全防水のブーツを手に入れる事に成功した。
続いて、同じ通りの反対にある武器屋に、フサ達は向かう事にした。

馴染みの武器屋以外、フサは利用しない事にしていた。
と云うのも、武器はある意味で情報の塊である為、信頼できる人間の手から買い取りたいと云うのが、盗み屋の考えだった。

从´ヮ`从ト「え? ここですか?」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ」

疑問に思うのも、無理もない。
フサが訪れたのは、どう見ても、ただの民家だったのだから。

ミ,,゚Д゚彡「……よう、ハインリッヒ」

从 ゚∀从「何だ、お前か。
      …………その娘は?」

从´ヮ`从ト「あ、えっと、あたしは……」

ミ,,゚Д゚彡「妻だ」

从;´ヮ`从ト「ぴょ?!」

从 ゚∀从「冗談が言える様になったとはな」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 16:20:31.60 ID:9eAe1teg0
ミ,,゚Д゚彡「まぁな」

从 ゚∀从「それより、俺の前で手を繋ぐのは止めた方がいい。
      嫌味か?」

ミ,,゚Д゚彡「……失念していた」

从´ヮ`从ト「ぁぅ……」

从 ゚∀从「顔が赤いが、風邪でも引いたのか?」

ミ,,゚Д゚彡「恥ずかしがり屋の淑女なんだ」

从 ゚∀从「はっ、今日は雪でも降りそうだな。
      ……で、お前さん、何をやらかした?
      ロシアン・マフィアが血眼になって捜してるぞ」

ミ,,゚Д゚彡「だろうな。
      重大な契約違反をされた」

从 ゚∀从「なら仕方ないな。
      気をつけろ、フサ。
      連中はゴロツキをわんさと雇い入れて、徹底的にお前さんを探しているぞ」

ミ,,゚Д゚彡「雇い主が死ねば黙るだろ」

从 ゚∀从「だな。
      ……で、何を買うんだ?」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 16:25:50.30 ID:9eAe1teg0
ミ,,゚Д゚彡「ソウドオフの水平二連ショットガン二挺と、イングラム1挺とサプレッサー、マガジンを5、ベレッタのマガジンは3つだ。
      後はいつものを――」

从´ヮ`从ト「あ、後、クリンコフにマスターキーを付けてもらえますか?
      ルーマニア産のクリンコフが……いい、かな……と?」

ミ,,゚Д゚彡「……………………」

从 ゚∀从「…………………………」

从´ヮ`从ト「…………ほい?」

从 ゚∀从「…………おい」

ミ,,゚Д゚彡「………………」

从 ゚∀从「その子も参加するのか?」

从´ヮ`从ト「そりゃあ、あたしはこの人の妻ですか――」

ミ,,゚Д゚彡「――駄目だ」

从´ヮ`从ト「ちょっ、折角あたしが手を貸そうと言っているのに、その言い草は何ですか」

ミ,,゚Д゚彡「銃を撃った事無いんだろ?」

从´ヮ`从ト「あのー、シューティングレンジを貸してもらえませんか?」

从 ゚∀从「そんな物はない。
      俺は素人に銃は売らない主義だ」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 16:28:42.57 ID:9eAe1teg0
从´ヮ`从ト「むぅー、あたし結構上手な自信があるんですけども」

ミ,,゚Д゚彡「撃った事もないのに、上手いかどうかなんて、分かる訳ないだろ」

从´ヮ`从ト「ええー、分かりますよぉー」

ミ,,゚Д゚彡「ハインリッヒ、気にしなくていい」

从;゚∀从「あ、あぁ……
      変わった連れだな」

ミ,,゚Д゚彡「見つかる前に準備を整えたい」

追手が大勢いるとなれば、残念極まりない話だが、平穏無事に時間を消費する事は無理だろう。
となれば、である。
万が一に備えて、対抗手段を用意し、予定を早めても支障のない様にする必要がある。

从 ゚∀从「弾はホローポイント?」

ミ,,゚Д゚彡「それと12番ゲージのスラッグと散弾だ。
     グロックのロングマガジンを3つ、追加してくれ」

从´ヮ`从ト「……あ」

从 ゚∀从「あいよ。
      ……この後、どうするつもりだ?」

弾を受け取りながら、フサが答える。

ミ,,゚Д゚彡「なぁに、別の場所に行くさ」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 16:33:48.47 ID:9eAe1teg0
从 ゚∀从「仕事がねぇだろ」

ミ,,゚Д゚彡「あんたに関係は?」

从 ゚∀从「ただの興味だよ」

それきり、二人は何も言葉を交わさなかった。
ただ金を渡し、注文した品々を受け取り、防弾・防刃ベストを服の下に着てから、店を出た。

从´ヮ`从ト「あの、旦那……」

ミ,,゚Д゚彡「来るんだろ?
     撃てるんだろ?」

从´ヮ`从ト「はい、そりゃあ勿論です、旦那」

ミ,,゚Д゚彡「弾のない銃なんて持っていても、正直、邪魔でしかない。
 だから、これは仕方なくだ」

グロック用の33連ロングマガジンを、チハルの手に乗せた。

从´ヮ`从ト「こりゃあどうもです、旦那」

ミ,,゚Д゚彡「それと……」

从´ヮ`从ト「ほ??」

ミ,,゚Д゚彡「…………ん」

そっぽを向きながら、フサは手を差し出す。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 16:37:44.38 ID:9eAe1teg0
ミ,,゚Д゚彡「迷子になられると……困る……そう言っただろ」

遠くの方で地鳴りのような音が聞こえたが、チハルもフサも、それどころではなかった。

从*´ヮ`*从ト「お、お、おおっ、おおおおっ!!」

奇声を上げて喜ぶチハルはさっさとマガジンをしまい、フサの手に指を絡めて握った。
冷えた掌が、ゆっくりと温まりだす。

ミ,,゚Д゚彡「飯を食いに行くぞ」

ロードン市内には観光客向けにも、地元住民向けにも、多くの飲食店がある。
その中でも安全な店を選別すると、ごく僅かな量に減る。
しかし、数少ない選択肢の中から、フサは更に数を絞る必要があった。
ゴロツキのネットワークは恐ろしい物がある。

携帯電話の所有率は100%。
店の中にその細胞がいれば、瞬く間に位置が明るみになる。
客の少ない、信頼できる店となると、それは飲食店と云うよりかは、酒場に分類されてしまう。

ミ,,゚Д゚彡「……夜までもたなそうだな」

そう、答えを出さざるを得ない。

从´ヮ`从ト「だんなー、一つ提案がありますぞー」

惚けた様な顔のチハルが、呑気な声でそう言った。

ミ,,゚Д゚彡「言ってみろ」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 16:46:21.15 ID:9eAe1teg0
从´ヮ`从ト「向こうが暴れるのを待つんですよ」

ミ,,゚Д゚彡「……警察を利用するのか」

从´ヮ`从ト「そうすれば、チンピラの排除で手を汚さずに済みますし、一々気にしないで動けます。
      で、混乱に乗じて――」

ミ,,゚Д゚彡「報告に来たチンピラに扮して、アラマキを殺すってことか」

ただし、絶対に掴まらず、こちらから手を出す事はしない、と云う条件が付加される。
目撃されて追われるのが目的なら、人目に着く場所で食事をしても、何ら不都合はなく、むしろ好都合だ。

ミ,,゚Д゚彡「だが、脚が必要だ」

その前にはまず、車を用意する必要がある。
買うには金が足りない。
走って逃げるのは愚の骨頂。

从´ヮ`从ト「あー、旦那? 旦那には特技があるじゃないですか」

ミ,,゚Д゚彡「道具が無いと無理だ」

从´ヮ`从ト「ノンノン、旦那。
      チンピラって、ランサーとかに乗ってるじゃないですか。
      無駄にスピードの出る奴」

本当に、チハルの頭の回転率の良さは目を見張るものがある。
わざわざ向こうから車を持ち出してくれるのなら、それは非常に良い展開だ。
盗まれれば当然、チンピラ達は必死になって、それこそ、当初の目的も忘れるほどに怒り、フサ達を追いかけ回すだろう。
そして、チンピラの車を使う事で、アラマキ達に警戒心を抱かせることなく、近付く事が出来る。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 16:52:13.54 ID:9eAe1teg0
正に、一石二鳥だ。

ミ,,゚Д゚彡「……なら、通りに面した店だな」

チンピラの車が一目で分かる場所で食事をすれば、それは同時に、彼等がフサを視認すると云う事で、目的を全て満たせる。

ミ,,゚Д゚彡「……チハル」

从´ヮ`从ト「はい、旦那」

ミ,,゚Д゚彡「悪いが、今日は俺に付き合ってもらうぞ」

从´ヮ`从ト「へへっ、何を今さら。
      あたしは旦那の分身、こうして一緒にいられれば、それだけで幸せですよ」

ミ,,゚Д゚彡「…………そうか」

申し訳ないと云う気持ちを、フサはようやく認めた。
献身的なチハルが、自分に好意的なチハルが、フサは苦手だった。
慣れていなかったからだ。
受け入れるのを躊躇い、今も尚、その覚悟が出来ていない。

今はただ、契約違反のその罰を、アラマキに受けさせる事だけを考え、フサは繋いだ手に力を込めた。

ミ,,゚Д゚彡「飯の希望はあるか?」

从´ヮ`从ト「温かいのが良いですねぇ」

ミ,,゚Д゚彡「分かった」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 16:59:44.18 ID:9eAe1teg0
そうして、フサは大通りに面した喫茶店を選び、閑散とした店内で、窓辺の席を確保する事に成功した。
フサとチハルはモーニングセットを注文し、チハルは温かいスープとグラタン、チーズフォンデュを頼んだ。
時間が経つにつれ、店に人がやってくる。
当然、若い人間も。

ぐらぐらと煮えるチーズに野菜を浸しながら、チハルが言った。

从´ヮ`从ト「だんな〜」

ミ,,゚Д゚彡「…………」

从´ヮ`从ト「これが終わったら、旦那、どうするんですか?」

ミ,,゚Д゚彡「……一先ず、ロードンにはいられないな」

从´ヮ`从ト「隠居生活とかしますか?」

ミ,,゚Д゚彡「それは金持ちの特権だ。
     二人分の金なんか蓄えてない」

从´ヮ`从ト「…………へ」

ミ,,゚Д゚彡「……何だ?」

从´ヮ`从ト「旦那……今、二人と?」

ミ,,゚Д゚彡「不満なら構わないが」

从*´ヮ`*从ト「めめめ、めっそうもありゃあせん、だんなぁ!!」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 17:03:01.79 ID:9eAe1teg0
ミ,,゚Д゚彡「さっさと食え。
     それと、今のはあくまでも、全部が上手く行った場合の話だ」

从´ヮ`从ト「へへへっ、旦那、この手をみてくだせぇ」

ミ,,゚Д゚彡「あ?」

从´ヮ`从ト「働き者のいい手でしょう」

ミ,,゚Д゚彡「傷一つない掌が働き者なのか?」

从´ヮ`从ト「ぶー、じゃあ旦那のを見せて下さい」

しぶしぶ、左手を見せる。

从´ヮ`从ト「ひゅー、見ろよこいつを。
      まるで鋼だぜ」

ミ,,゚Д゚彡「まさか、だけどお前には勝てねぇよ」

从´ヮ`从ト「まぁ、そりゃあそうでしょう。
      あたしは硬い女ですから」

ミ,,゚Д゚彡「鉄の女の間違いだろ」


从´ヮ`从ト「鉄の女の鉄の心を盗むってわけですね」


ミ,,゚Д゚彡「誰が上手いことを言えと云った」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 17:08:00.70 ID:9eAe1teg0
そろそろ、機が熟す頃だろうか。
会話に夢中になっていると思わせながら、チハルの視線はフサの後ろに、フサの視線は、チハルの後ろに。
携帯電話を使って連絡を始めた人間を、油断なく観察し、フサは、3台のセダンが縁石沿いに駐車され、そこからガラの悪い男達が降りて来たのを見て、口元を綻ばせた。

ミ,,゚Д゚彡「チハル、時間だぞ」

从´ヮ`从ト「それじゃあ旦那、丁度いいや。
      あたしがどれだけ戦えるか、ちょっくら見て下さいよ」

ミ,,゚Д゚彡「……いいだろう。
      駄目な様なら、無理矢理にでも連れて行くぞ」

从´ヮ`从ト「あい、旦那」

そして、大挙して訪れたチンピラ集団。
その内の一人が、フサ達の席の前で立ち止った。
店員達は怯えて近付こうとも、注意しようともしない。
行幸である。幸先がいい。

【チンピラA】「アラマキさんがお前探してるぜ」

ミ,,゚Д゚彡「…………」

【チンピラA】「おいおい、だんまりかよ。
        こんなかわいこちゃんを連れて逃げて、どこか遠くで平穏に暮らそうってか?」

从´ヮ`从ト「…………ぁぅ」

【チンピラB】「ひゃはは!! 子猫みたいに振るえちまってるよ!!
       俺が温めてやろうか?」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 17:11:19.32 ID:9eAe1teg0
【チンピラC】「腰の前後運動でなぁ!!」

从´ヮ`从ト「…………っ」

【チンピラA】「あ? 今何か言っ――」



从´ヮ`从ト「喚くな、下衆が」



【チンピラA】「はっ?!」

【チンピラB】「なっ?!」

戦端は、チハルによって開かれた。
熱せられたチーズフォンデュの鍋が、男達に向けて放られ、煮えたぎっていたチーズが男達に降り注ぐ。

【チンピラA】「あっぎゃあああああ?!」

阿鼻叫喚の渦の中、チハルの眼は静かで、正に鉄を彷彿とさせた。
鍋を素手で掴んで放り投げるその度胸と決断力、思わずフサも唸るほど。

【チンピラF】「……のっ、野郎!!」

懐から拳銃を取り出したのを見計らい、チハルはフサに目配せをした。
無言で頷き合い、フサはテーブルを思い切り持ち上げ、ひっくり返した。

【チンピラF】「のわっ……?!」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 17:16:25.51 ID:9eAe1teg0
【チンピラF】「のわっ……?!」

その隙。
チハルが窓に向かって疾駆した。
こればかりは、フサにも意図が分からなかったが、チハルが拳一つでガラスを粉々に砕いたのを見て、体が鉄である事を思い出した。
思っていたよりも、チハルは戦闘に慣れている。

砕けたガラスの向こうに、二人は全力で走りだした。
店員の悲鳴とチンピラの怒号を背に、フサはアイドリング状態の、白いランサー・エヴォリューションに狙いを定め、素早く乗り込みむ。
チハルが助手席に乗ったのを確認してから、アクセルを踏んで逃走を開始した。
小うるさいカーステレオを切り、ルームミラーを見て、チンピラ達が追って来るのを見た。

ミ,,゚Д゚彡「いいぞ、食い付いた」

从´ヮ`从ト「リュック・ベッソンを期待しても?」

ミ,,゚Д゚彡「シートベルトを締めておけ。
     お前が飛び出すと洒落にならない」

鉄の砲弾になったチハルを想像して、フサはくすくすと笑った。
信号機の前で停まり、チンピラ達を置いていかない様に注意する。
無駄にマニュアル使用のランサー。
エンジンを吹かし、シフトレバーをセカンドに入れた。

从´ヮ`从ト「旦那」

直ぐ後ろに、ぼろぼろのメルセデスと、ワーゲンが迫る。
信号が青に変わった。

ミ,,゚Д゚彡「行くぞ」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 17:20:28.76 ID:9eAe1teg0
クラッチから足を離し、ランサーはその本来の性能を、如何なく発揮した。
3メートル程の距離から、一気に10メートル、20メートルと引き離す。
平和の象徴である静かな朝は、3台の車によって、見事に失われた。

从´ヮ`从ト「ひょー!! だんなすげぇ!!」

通勤に向かう車の列。
その間を、掠めることなく抜いて行き、テームズ川沿いの道を目指す。

从´ヮ`从ト「……おろろ?!」

ミ,,゚Д゚彡「……やっぱりな」

次々と車が列から抜け出し、フサの後を追い始めた。

ミ,,゚Д゚彡「こうでなくちゃな」

サードにギアを変え、道を塞がれる前に、フサはランサーを加速させた。
五つ目の信号無視をした辺りで、遂に、??地鳴り?≠フ原因を捜査していた警察車両に見咎められ、この大騒ぎに加わり、華やかなパレードを形成する事になった。

ミ,,゚Д゚彡「来たぞ」

从´ヮ`从ト「すんげぇ……」

行く先々で、車が道を譲る。

从´ヮ`从ト「モーゼの十戒みたいですね」

ミ,,゚Д゚彡「後ろが撃ち始めれば、もっと賑やかになるさ。
     チハル、発煙筒があるか見てくれ」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 17:26:07.80 ID:9eAe1teg0
从´ヮ`从ト「ありますよ、結構古そうですけど」

ミ,,゚Д゚彡「後ろの連中にプレゼントしてやれ。
      あー、ついでに……」

从´ヮ`从ト「邪魔な物全部後ろに返してあげますよ。
      安全運転でお願いしますよ」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ、いつも安全運転をしているから、こうして俺は生きているんだ」

冗談を交わし、チハルがシートベルトを外して後ろの席に行く。
載せていた荷物の一切合財をまとめ、後部座席のドアを開け、そこから外に捨て始めた。
中にはギアボックスもあった。

从´ヮ`从ト「おいしょー」

ルームミラーで見ると、後ろの車の助手席に座っていた男が、怒りを露わに怒鳴っているのが見えた。
どうやら、あの男の車だったようだ。
ドアを閉め、チハルは発煙筒を擦って煙を起こし、窓の外に捨てた。
荷物を避ける為に蛇行運転をしていた車が、煙に視界を奪われ、近くにいた不運な乗用車にぶつかり、サイドミラーが宙を舞った。

助手席に戻ったチハルは直ぐにシートベルトを締め、親指を立てた。

从´ヮ`从トb「ぐっ」

ミ,,゚Д゚彡b「…………ふ」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 17:37:10.76 ID:9eAe1teg0

その親指に、フサも親指を立て、軽く重ねた。
思っていたよりも、相性が良いようだ。
テームズ川沿いのクラリス・ストリートに合流し、ハンドルを左に切った。
後輪が悲鳴を上げながら尾を振り、道沿いに突き進む。

頭の中の地図とアラマキの居場所を重ね合わせ、どこで車を捨て、アラマキを訪れるかを、フサは一瞬で算出した。
盗み屋たる者、これぐらいは、当たり前の技能だ。

ミ,,゚Д゚彡「今後の方針について、手短に言う。
      アラマキに然るべきツケを払わせた後、俺は隣接するノ・ドゥノに行こうと思う」


从´ヮ`从ト「……ノ・ドゥノって、最果ての都ですか?」


ミ,,゚Д゚彡「そうだ。今更こんな事を言うのもなんだが……
      その……一緒に来てくれるか?」

从´ヮ`从ト「……旦那、そのお誘い、お受けしますよ。
      ただ、ロードンを無事に出られたら、ですけどね」


ミ,,゚Д゚彡「ひっそりと盗むのは、俺の得意分野だ。
      物は問わない主義なんでね。
      平和だって命だって、変わった彫刻だってお手のもんだ」


波間を潜り抜け、ランサーはほぼ直角に曲がって、クラリス・ストリートを抜け出し、同時に、高層ビルの合間にその身を隠した。
後を追おうとしたメルセデスとワーゲンは、無残にも中央分離帯に乗り上げ、後続のパトカーに追突された。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 17:43:31.62 ID:9eAe1teg0
* * *

/;,' 3「…………」

【スーツの男B】「…………」

/;,' 3「どう……いう……事……だ」

【スーツの男B】「……その……」

/#,' 3「どうしてフレイムワークス≠ェ吹っ飛んだんだ!!」

【スーツの男B】「そ、それが、隠れ家にC4が仕掛けられていて……」

チンピラの報告によれば、フサは荷物を持っていなかった。
つまり、隠れ家に彫刻が隠されている可能性があると考え、隠れ家を突き止めたアラマキは、フレイムワークスに命じ、捜索を行わせた。
火炎放射機を得物にするフレイムワークスは、同伴した部下諸共爆発に巻き込まれ、火星まで吹っ飛んでしまった。
それを報告に来た部下に対し、アラマキはどうしようもない憤りをぶつけていた。

/ ,' 3「……それで、奴は何処だ」

【スーツの男B】「…………そ、それが……」

/ ,' 3「なんだ、言え!!」

【スーツの男B】「姿を……見失いました……」


部下の背後で扉が開かれた瞬間、アラマキは絶句した。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 17:51:49.99 ID:9eAe1teg0
* * *

人間の命を盗むのは、決して、フサに取って初めての経験ではなかった。
だから、扉を開けた瞬間に見たアラマキの顔の変化は、目新しい物ではなかった。
減音器を付けたイングラムの銃声は、離れていれば僅かな物音程度にしか聞こえず、現にマフィアの一人を撃ち殺しても、何ら問題はなかった。

ミ,,゚Д゚彡「よう」

扉を閉めながら、フサは気さくに声を掛けた。

/ ,' 3「……野郎!!」

ミ,,゚Д゚彡「盗みに来たぞ、お前の命を」

それ以上の言葉は、イングラムが代弁した。
皮張りの椅子とマホガニー製の机が、無残にも銃弾で穿たれ、腸を撒き散らしながら、アラマキは仰向けに倒れた。
ホローポイント弾が食い千切ったのは、腸だけではなく、背骨も含まれており、脊髄が損傷した事と痛みによって、アラマキは身動き一つとる事が出来なかった。
数分後に部下が訪れた時、そこには、苦痛に顔を歪めた、アラマキの変わり果てた死体が残されていた。






ロードン警察の必死の捜査にも関わらず、犯人に繋がる証拠は何一つなく、最終的に、事件は迷宮入りしてしまう事になった。





2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 18:57:08.18 ID:Yb0umqSA0
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                                        2month ago→→→→
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ノ・ドゥノにある、アパートの一室。
そこに、フサとチハルの姿があった。

ミ,,゚Д゚彡「…………」

从´ヮ`从ト「…………」

ロードンからノ・ドゥノに至る道程は、決して楽ではなく、何度も検問を掻い潜り、ランルージュ・ハイウェイを通って、ようやくノ・ドゥノに到着したのが一週間前。
そこから安全そうなアパートを探すのに三日、家具を揃えるのに二日、そして腰を落ち着けられたのが昨晩、改めて脱出の成功を祝う食卓には、非常に前衛的な食事が並んでいた。
全てを平らげたフサは口元を拭い、言った。

ミ,,゚Д゚彡「努力は認める」

从´ヮ`从ト「あう……」

ミ,,゚Д゚彡「その気概も認める」

从´ヮ`从ト「……みゅ」

ミ,,゚Д゚彡「味だけは認められん」

从;´ヮ`从ト「ぎょおおおお!!」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 19:01:47.02 ID:Yb0umqSA0
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2month ago, the man refused any love.
二か月前、その男はあらゆる愛を拒んでいた。

He was afraid of every love.
彼は愛を恐れていたのだ。

In someday, the day will have to come the love will gone.
いつか、その愛が消え去る日が必ずやってくるから。

So, he had decided to alive like a steal.
だから、彼は鉄のように生きようと決意したのである。

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ミ,,゚Д゚彡「練習あるのみだ」

从´ヮ`从ト「……努力します」

逃亡が成功した要因の一つに、チハルの頭脳が関係していた。
冷静で的確な判断と、咄嗟の嘘に関して、チハルは天才的だった。
検問を突破する際、それが大いに貢献した。

ミ,,゚Д゚彡「まぁ……焦るほど切羽詰まってるわけじゃないんだ、ゆっくりでいい」

从*´ヮ`*从ト「だんなぁ……!!」

仔犬の様に喜ぶチハルを見て、フサは重要な事を思い出した。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 19:07:30.61 ID:Yb0umqSA0
ミ,,゚Д゚彡「お前には借りがある。
      俺に出来る事なら何でも良いぞ」

从´ヮ`从ト「……何でも、ですか?」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ、無理難題でなければな」

从´ヮ`从ト「…………ぃ」

ミ,,゚Д゚彡「何? 今、何て言ったんだ?」

从´ヮ`从ト「抱いて……下さい」

ミ,,゚Д゚彡「良いだろう」

从´ヮ`从トそ「マジでっ?!」

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But, it was changed by one girl.
しかし、それは一人の少女によって変えられることとなった。

She doesn't have heart, but has a heart.
彼女に心臓はないが、心はあった。

The heart is softly, mighty and kindly.
その心は柔らかく、強く、そして優しかった。

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7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 19:10:37.49 ID:Yb0umqSA0
ミ,,゚Д゚彡「本当だ。ほら、こっちに来い」

从´ヮ`从ト「いやっほおおお!!」

がしっ、とチハルがフサに抱きつく。
そのまま、フサはチハルの頭を抱き込み、ぽんぽんと、背中を優しく叩いて撫で擦った。

从*´ヮ`*从ト「ふしゅぅぅぅ……」

ミ,,゚Д゚彡「ほら、これでいいか?」

从´ヮ`从ト「は?!」

ミ,,゚Д゚彡「だから、抱いてやっただろ」

从;´ヮ`从ト「うがー!! だんなぁぁぁ!!
      今時どこのラブコメですか?!
      そうじゃない、そうじゃないでしょおおお!!」

ミ,,゚Д゚彡「何故だ」

从´ヮ`从ト「女の子が抱いてと言ったら、アダルトな意味に決まってるじゃないですかぁぁぁ……!!」

ミ,,゚Д゚彡「どうして泣くんだ、そこで」

从;´ヮ`从ト「う〜ううう、あんまりだぁ……
      HEEEEYYYY!! あんまりだアアアア!!」

ミ;,,゚Д゚彡「えぇい、泣くな!!」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 19:21:05.03 ID:Yb0umqSA0
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That is exactly reason why they could understand together.
だからこそ、二人は分かりあえたのだ。

They had same stealy heart.
彼らは、同じ鉄の心を持っていたのだから。

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从´ヮ`从ト「でも、でもぉ……!!
      旦那、どうしてです?
      どうしてあたしは駄目なんですかぁ?!」

ミ,,゚Д゚彡「それはお前の勘違いだ。
      駄目な訳じゃない、むしろ逆だ」

从´ヮ`从ト「ほ?」

ミ,,゚Д゚彡「俺だって……その……なんだ……
      お前みたいな女に迫られたら、良い気がする。
      だけどな……お前のその気持ちは、きっと、俺が俺の血を受けたから出来た、偽物みたいな気持ちなんじゃないかって、そう思ってな」

从´ヮ`从ト「……旦那、実はあたし、旦那に一つ嘘を吐いてましてね」

ミ,,゚Д゚彡「何だ?」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 19:24:48.85 ID:Yb0umqSA0
从´ヮ`从ト「旦那が最初、あたしを拒絶していた理由、知ってたんです。
      血を介して、あたしと旦那は、繋がっているんです。
      だから、記憶だって、夢だって、本当は全部あたしに伝わってたんです。
      逢った時にはもう……旦那の妹さんが……殺されたってことも……」

ミ,,゚Д゚彡「なら――」

从´ヮ`从ト「――でもね、旦那。
      ズルをしているのなら、それはあたしなんです。
      あたしと旦那は同じような存在。
      だから、旦那が警戒心を解いたのは、自分自身を警戒しないのと同義、つまり、あたしの力じゃないんです。

      ……でも、でも、旦那。
      あたしが旦那に一目惚れしたって云うのは、嘘じゃないんです。あたしの気持ちなんです」

しばしの沈黙。
やや間を置き、フサが口を開いた。

ミ,,゚Д゚彡「……なんだ、そうだったのか」

从´ヮ`从ト「…………っ」

チハルの背に回した手に、フサはゆっくりと力を入れた。

ミ,,゚Д゚彡「なら、俺はお前に怯えなくてもいいのか」

从´ヮ`从ト「……あい、だんな。
      あたしは、旦那の傍を離れませんよ」

チハルも、フサを抱き返す。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/09/17(月) 19:29:22.06 ID:Yb0umqSA0
ミ,,゚Д゚彡「……済まない、チハル」

从´ヮ`从ト「お気になさらず、旦那」

道理で、チハルの温もりが心に染み渡る筈だった。
チハルはフサの半身、血を分けた存在。
誰よりも近く、誰よりもフサを理解している、世界でただ一つの存在。
死に急ぐ必要を忘れさせたのは、皮肉な事に、自分自身だったと云う訳だったのだ。

そこで初めて、フサは気づくこととなる。
彼の鉄の心は、チハルを盗んだ時から、とっくに盗まれていたのだと。
彼が盗んだのは、他ならぬ、自分の心。

从´ヮ`从ト「旦那……」

ミ,,゚Д゚彡「なんだ?」



从*´ヮ`*从ト「えへへっ……
       ……ずーっと一緒に、いましょうねっ♪」





幸せそうにそう言って、返事と誓いの代わりに、二人は、長い長い、キスをしたのであった。


                                                 END


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