ここは解決屋『シルバー&ブラック』本社のようです
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:17:14.81 ID:K8YReSpGO



(,#゚Д゚)「行くぞゴルァ!!」

(;=゚д゚)「っっ!」

ギコがトラギコに向かって駆ける。
策も何もない、真正面からの特攻だ。

(;=゚д゚)「うっ……ぉおおおおお!!」

トラギコは体の内側から溢れる恐怖を無理矢理押さえ込み、気合いを入れ直す。

(=゚д゚)「ああああ!!」

そして両手に持つ二つのトンファーに電撃を宿し、
もう目の前まで来ているギコ目掛けて右のトンファーを振り下ろした。

トンファーはギコの左の鎖骨辺りに落ちる。

(,, Д )「!」

ギコの体が一度大きく痙攣し、その後動きが止まった。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:19:02.77 ID:K8YReSpGO
(=゚д゚)「もう一つ!」

ギコの動きが無くなったのを確認すると、追って左のトンファーを突き出した。



だが、それよりも速く。

(,#゚Д゚)「―――っぁあああああああ!!」

(;=゚д゚)「!」

ギコの、体ごと持ち上げる左アッパーがトラギコの顎に襲いかかる。
それに気付いたトラギコは攻撃を止め、慌てて首を後ろに引いた。

彼のすぐ目の前を拳が通過する。
風を切る音がハッキリと耳に届いた。
もし一歩遅れていたら首から上が飛ばされていたのではないか、と思わせる程の圧力だった。
それを想像したトラギコの体から血の気が引く。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:21:02.50 ID:K8YReSpGO
(,#゚Д゚)「シャアアアッ!」

(;=゚д゚)「うわあっ!」

ギコは持ち上がった体をすぐさま切り返し、今度は右の拳を振り下ろす。
トラギコは後ろに大きく飛んでその場を退いた。

拳は目標物を見失っても尚、勢いは留まらず、そのまま地面に叩きつけられる。



轟音。
部屋全体が揺れた。

拳を中心として、アスファルトに円状に亀裂が走っている。

(;=゚д゚)「……っ!」

呆れるほどに強大なその威力。
マトモに受けたら一体どれほどの惨状になるのか―――

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:23:03.38 ID:K8YReSpGO
(,#゚Д゚)「…………」

全ての生物をひれ伏せさせそうなその殺気は留まる事を知らない。

足を踏み出す。
一歩ずつ、ゆっくりとだが確実にトラギコへと近付いていく。

(;=゚д゚)「ううっ……」

そのスローな動きが、逆にトラギコを畏怖させた。

一歩、また一歩と近付いていく。



不意に背中に触れる、冷たく硬質なモノ。

(;=゚д゚)「!?」

体を萎縮させつつも後ろを振り向いたそこには、埃でうっすらと汚れた灰色の壁があった。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:25:06.29 ID:K8YReSpGO
(;=゚д゚)(何で……っ!? 後退していたのかオイラは? 知らず知らずに!?)

トラギコは、自分が気圧されたという事を否定したい己の感情と、
しかし実際に後ろに下がっていたという事実とがぶつかり合い、軽く自分を見失う。



(,#゚Д゚)「トラギコォ……」

(;=゚д゚)「!!」

己の居場所が判らなくなっていたところに、ギコからの自分を呼ぶ声が耳に届く。
トラギコはビクッと体を震わせ、恐る恐るギコを覗き見る。

(,#゚Д゚)「トラギコォ……!」

再度、ギコはトラギコの名を呼ぶ。
トラギコは何も言い返さない。次に放たれるであろうギコの言葉を、固唾を飲んで待つ。

ギコの口が開いて―――

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:27:01.65 ID:K8YReSpGO
                                  .









(,,゚Д゚) ここは解決屋『シルバー&ブラック』本社のようです 川 ゚ -゚)



第七話-b
「俺が、怖いか?」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:29:02.47 ID:K8YReSpGO
(;=゚д゚)「なっ、…………あ、え?」

(,,゚Д゚)「俺が怖いのか、と聞いたんだ」

ギコは低く、ゆっくりと、相手を諭すかのように言葉を紡いだ。
その中に憤怒といった感情は、もう入っていない。

(;=゚д゚)「……馬鹿、を、言うな。お前が怖いかだと? そんな訳―――」

(,,゚Д゚)「いいや、お前は俺が怖い。俺を畏れているんだ」

(;=゚д゚)「ふっ、ふざけるなっ! それ以上愚弄すると……」



(,,゚Д゚)「それでいい」

(=゚д゚)「…………は?」

(,,゚Д゚)「それでいいんだ。俺たちは人間なんだからな」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:31:02.33 ID:K8YReSpGO
(=゚д゚)「何を訳の判らない事を―――」

トラギコがギコの言葉の意味を理解できずに困惑していると。



ギコが唐突に前に出てきた。

(;=゚д゚)「!!」

トラギコは横に飛んで免れる。

その少し後に音。
もと居た場所を見ると、ギコの左腕が壁の中に突き刺さっていた。

(;=゚д゚)「くっ、一体何だ……。何がしたいラギ……?」

どうもギコの動向が不可解だ。急に問いかけたかと思ったら話の途中で再び襲いかかる。
ギコが何を伝えたいか、トラギコには感じ取る事が出来なかった。

そんな彼の迷いを打ち消すかのように、再度ギコは口を開く。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:33:14.66 ID:K8YReSpGO
「俺たちは人間だ」

ギコはトラギコの方は見ず、ただ壁をじっと見ている。



「だから、物事を感情なしに行えない」

壁に埋まっていた腕を引き抜く。



「もし無感情で行動できたら、それは生物じゃない。ましてや、人間でもない」

そして壁に空いてしまった穴のすぐ隣に拳を置き



一気に壁を貫く。

壁にはヒビが入る事無く、綺麗に穴だけが生成される。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:35:07.80 ID:K8YReSpGO
「何かを怖いと思う事。それは人間として当然だ。正しいんだ」

引き抜く。少し隣に拳を置き、貫く。
その動作を繰り返している。
部屋内に一定のリズムで音が鳴り続ける。

「感情を忘れてはいけない。人間である事を辞めてはいけない」

壁はやがて穴だらけになる。
よく見たらそれには規則性があった。

穴は『コ』を時計とは逆回転に90°。まるで門のような長方形が綺麗に形作られていた。

「だから、それを忘れぬように。人間を辞めずに済むように」

いつしか穴は繋がり、一つの線になった。
そして、人間程の大きさのコンクリートが壁から分離する。

「俺が、お前に教えてやる」

ギコが壁から目を外し、トラギコの方に振り返る。



(,,゚Д゚)「恐怖とは、何かを」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:37:10.42 ID:K8YReSpGO
ギコは右腕を後ろに持っていき、巨大なコンクリートの塊の上の部分を鷲掴みにする。

(,,゚Д゚)「お、おお」

力が入る。腕全体が震えている。
あたかも、身に余るパワーを無理に体の中に押さえつけているかのように。

(,,゚Д゚)「おおおお」

コンクリートの手で掴んでいる部分にヒビが入る。
だがこれは割れている訳ではない。強大な力により圧縮されているのだ。

(,,゚Д゚)「おおおおおおおおおお……!」

塊が少し上がる。腕一本で持ち上がっている。





(,,゚Д゚)「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

投げた。トラギコに向けて。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:39:26.65 ID:K8YReSpGO
(;=゚д゚)「なああっ!!?」

コンクリートの塊が飛来する。
それはフリスビーのように横回転しながら向かってくる。圧力の比の桁は違いすぎるのだが。

(;=゚д゚)「う、うわっ!」

慌ててその場で伏せる。
彼の僅かに上、轟音を鳴らしながら塊が通過していく。

トラギコは安堵感で一息つくが、直ぐにその心は焦燥に駆られる。

(;=゚д゚)(有り得ない、あんなものを投げるなんて……。
      しかも片手で、あの速度で……。悪夢を見ているようラギ)

トラギコは湧き上がる絶望を押し殺しながら、前を見る。
そこにはギコが塊を投げ終わった後の姿勢のまま、立っていた。



だが、トラギコは気付く。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:41:22.49 ID:K8YReSpGO
(=゚д゚)(なんだ……、アレ……)

ギコの右腕から、何やら線が伸びている。よく見たらそれは鎖だった。

その鎖は真っ直ぐにピンと張っている。
そしてそれはトラギコの上を通り過ぎて、彼の視界の外へと向かっていた。

しばらく―――と言ってもほんの数瞬の間だが、呆けていたトラギコ。



だが、突如として。





―――ドクン



心臓が跳ねる。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:43:03.90 ID:K8YReSpGO
(;=゚д゚)(待て! この鎖はどこに伸びている!? どこに繋がっているラギ!?)

トラギコは後ろに伸びている鎖の先を目で追う。

その先。
在ったのは―――





そういえば、とトラギコはふと思う。

さっき真上を飛んでいったアレ。

轟音を鳴らして飛んでいったアレ。

その後音がしなかったな、と。

地面に落ちたり、壁にぶつかったりした音が。

その謎の正体は、彼の見る映像。



―――鎖に巻かれた、未だ宙を浮くコンクリートの塊。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:45:03.69 ID:K8YReSpGO
鎖の端にはコンクリートの塊。
もう一方の端はギコの右手の中に。

鎖がギシリと悲鳴を上げる。



塊が向いているベクトルを、一本の腕で変える。





(,# Д )「     ォ

              オ

        オオ

             オ        オオオ

       オ オ    オオオオ


                  オオオオオオオオオオオ!!!!!」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:47:02.64 ID:K8YReSpGO
叫ぶ。
自分の内なる力を引き出す為に。

その力はギコの右腕から鎖を伝っていき、塊へと届く。

力を加えられた塊は慣性や重力といった自然の流れを否定しだす。



はっきりと物事を言えば。



コンクリートの塊は二度、トラギコを襲う―――!



(;=゚д゚)「あああああああああっ!!」

塊の一撃が彼を吹き飛ばす。
二本のトンファーを叩きつけて衝撃を減らそうとするも、焼け石に水。
トラギコは地面を転がり滑っていく事となった。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:49:02.30 ID:K8YReSpGO
(;=゚д゚)「ぐううっ……」

トラギコはうつ伏せの状態で突っ伏している。
その身は傷や埃で汚れきっていた。

(;=゚д゚)「メチャクチャだ……。何もかも、メチャクチャ過ぎるラギっ……!」

ヨロヨロと体を起こす。



直ぐ目の前に。





(,,゚Д゚)



(;=゚д゚)「ヒィイッ!?」

ギコが見下ろしている。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:51:02.88 ID:K8YReSpGO
(;= д )「ぅ」

トラギコはもう何も考えられなくなった。

身を絶する恐怖。
余りにも異常なギコの力。
それらを受け入れ切れなかった彼は錯乱する。

故に思考を放棄。
そんな彼に残されたのは。



(;=゚д゚)「うわああぁああぁああああああっ!!!」

己の身を守る為の、防衛本能。

両手のトンファーにありったけの電撃を流し込み、前に突き出した。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:53:02.67 ID:K8YReSpGO
二本のトンファーはギコの両脇腹辺りにヒットする。

体が跳ねるギコ。
大量の電撃が体内を駆け巡る。

(;=゚д゚)「ああっ、あああああああああっ!!!」

一回では終わらない。
トンファーを当てたまま、次々に電撃を流し続ける。

力の限り。
目の前の存在を消し去る為に。





ギコの両腕がゆっくりと動き出す。

少しずつ、少しずつ。
時の流れが遅くなっているのかという程にゆっくりとそれらは動き、

トラギコの両手首を掴んだ。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:55:02.80 ID:K8YReSpGO
そして、





一気に引き寄せ、トラギコの顔面に自らの額を叩き込んだ。



(;=゚д゚)「ぶあっ……!」

トラギコはフラつき、たたらを踏む。

ギコがすぐさま懐に潜り込む。



その時、トラギコは血と涙に濡れた目で確かに見た。



(,,゚Д゚)





ギコの両目が、銀色に輝いているのを。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:57:02.67 ID:K8YReSpGO
(,,゚Д゚)「せあっ!」

体ごと潜り込んだギコは左腕をアッパーの形に固定して、
両足で踏み切り体全体を上にかち上げる。

拳はトラギコの鳩尾を正確に捉え、勢いのまま彼の体を持ち上げた。

ごふ、とか、ごひゅっ、とかいう声を漏らしながら、トラギコの体が宙に舞う。



ギコは右手の鎖を持ち、強く握りしめて体を捻った。

標的に狙いを定め、一言。



(,,゚Д゚)「さあ、仕上げるぜ」

捻った体を、一気に戻す。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/27(月) 23:59:03.39 ID:K8YReSpGO
(,,゚Д゚)「『五月雨蜂(さみだればち)』」

ギコの右腕から放たれた鎖は、トラギコに向かいながらも空中で一つ一つに分離する。

その数は十となり、百となり、千となる。
無数の弾幕が一斉に襲いかかった。

トラギコの体のあらゆるところに針の一突きが刺さる。
一個の力は大したものでは無いが、それが多勢となると話は変わってくる。
その威力は、トラギコが宙に浮き続ける程だ。



当たった鎖は勢いを失い、地上へと落ちていく。

やがて弾幕が底を尽きかけたとき、ギコは次の手に移る。



(,,゚Д゚)「『龍巻(たつまき)』」

ギコは左手を前に突き出し、そうつぶやいてから何もない空を握り締めた。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:01:02.89 ID:GXcP5462O
その動作を皮切りに、トラギコの真下に落ちていた鎖が渦を描きながら巻き上がった。

渦はトラギコの体を包み込む。

彼の体に張り巡らされた鎖の破片は再び繋がり、一本の鎖へと戻っていった。

全ての鎖が繋がった時、トラギコの体は頭を残して他は全て鎖に巻かれて縛られていた。



その姿はまるで、巨大な龍に噛みつかれているかのようだ。





ここでギコが前に向かって走り出し、上に飛ぶ。

そして自由落下をしようとしていたトラギコの体に着地した。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:03:08.81 ID:GXcP5462O
二人の体は重力に従い、墜落する。

ギコはトラギコの足の方を持ち上げ、頭を下にする。
そしてトラギコが唯一剥き出しにされている頭部に、右足を置いた。

その状態のまま、地面へと近付き―――





(,,゚Д゚)「―――『蛇落(だらく)』」

落ちる勢いも利用して、トラギコの頭を踏み降ろした。







―――空を夢見た蛇。

彼はその身を龍へと変えて天を目指した。

だけども後一歩で雲を抜けて空に在る事が出来たというところで、
変身は解け蛇に戻り地へ落ちる。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:05:26.57 ID:GXcP5462O
彼は残念に思ったものの、悔いは残らなかった。

何故なら一瞬でも龍になる事が出来たから。



つかの間であったが雲の向こうの空を、すぐそばにある空を、その目で見る事が出来たから―――。





(,,゚Д゚)「連技・『龍頭蛇尾』」

ギコはトラギコに巻かれていた鎖を解いて回収する。
トラギコの髪は、黒に戻っていた。

ギコは倒れているトラギコに向かって声をかける。

(,,゚Д゚)「龍の一噛み、効いただろ?」



少し、笑って、



(,,゚Д゚)「ま、ちょいと頭でっかちな龍だったけどな」

そう、付け加えた。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:08:07.21 ID:GXcP5462O



そのすぐ後、ギコの耳に聞き慣れた声が届いた。

「うおーい、ギコー」

(゚Д゚,,)「んお、クーか。あっちも終わってたんだな」

声はドアの奥から聞こえてきた。
そのドアが開かれ、人影が現れる。



川 ゚ -゚)ノシ「おいすー」

(;゚Д゚)「赤っ! いや、黒っ!?
     な、何かお前の顔、とんでもない事になってんぞ! 特殊メイク!?」

クーの顔は乾いた血で覆い尽くされ、それはもう凄い事になっていた。

軽くビビっているギコにクーはスタスタと近付いていき、そして



ソイヤッ   ドゴォォォォ
川 ゚ -゚)三つ#)Д゚,,)
         ギャアアアア!

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:11:41.62 ID:GXcP5462O
川 ゚ -゚)「まったく、人の顔を見て酷いとか言うな」

(,,゚Д(#)「だったら血を拭くなりなんなりしてくれ……」



(,,゚Д(#)「しかし其処までボロボロなのに割と元気そうだな」

川 ゚ -゚)「まあちょっと休んでたしな。……あ、そうだ。思い出した」

(,,゚Д゚)「え、何を?」

クーはギコを正面に見据えると、



ソイヤッサ  ドゴォォォォ
川 ゚ -゚)三つ#)Д゚,,)
         ギャアアアア!?

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:13:02.39 ID:GXcP5462O
(,,゚Д(#)「えーと、ごめんなさい。今、俺は何で殴られたの?」

川 ゚ -゚)「実はさっきのとは別にだな、お前を殴ろうと
     心に決めていたんだよ。思い出せて良かった」

(,,゚Д(#)「理不尽だ! この暴君め!」





ソイヤッサッサ ドゴォォォォ
川 ゚ -゚)三つ#)Д゚,,)
         ゴメンナサイ!

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:15:50.28 ID:GXcP5462O
(,,゚Д(#)「うう、人をボコボコ殴りやがって……」

川 ゚ -゚)「大体な。ボロボロというのなら、ギコ、お前だって……」

クーの口の動きが途中で止まった。

ギコが何事かと思ってクーの顔を見る。
彼女の顔は呆然と固まっていた。

(,,゚Д゚)「? おい、どうし―――」

川 ゚ -゚)「ギコ。その、目」

(,,゚Д゚)「……あぁー」

そう言えば、とギコは思い出す。彼の目は『銀』色のままだった。

川 ゚ -゚)「……めずら、しいな。お前が力を出すなんて」

(,,゚Д゚)「さて、何の事かな?」

川 ゚ -゚)「…………」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:17:03.77 ID:GXcP5462O
ギコは眉間を右手の親指と人差し指で摘むようにして押さえる。

(,,゚Д゚)「このままだと疲れるからサッサと戻して―――と?」

ギコがふと、後ろを振り向く。

川 ゚ -゚)「ん? どうかしたか?」

振り向いたその場には、何もない。

(,,゚Д゚)「んー……、まぁいいや。ちょっと神経が過敏になってたようだ」

ギコは顔を正面に戻し、二〜三回まばたきをした。
目の色は黒に戻っていた。

(,,゚Д゚)「さ、帰ろうぜ。長居は無用だ」

川 ゚ -゚)「あ、ああ。そうだな……」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:19:03.04 ID:GXcP5462O
二人はドアを開け部屋を出ていった。



部屋には未だ倒れているトラギコ以外、誰もいない。
そして外に出た二人の足音も聞こえなくなった頃。



何の前触れも無く、まるで初めからそこに居たかのように一人の女性が部屋に現れた。





从'ー'从「ふぇぇ〜、ビックリしたよ〜。バレちゃったかと思った〜」

その女性は両手を胸に置いて、ほうっ、と息をつく。
しかしその動作と台詞の割には、顔は変わらずニコニコ顔だった。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:21:02.57 ID:GXcP5462O
从'ー'从「いや、あれはもしかして気付いていたかも〜。……ま、いっか」

うんうんと頷く。

ふと、彼女の目が一点に止まる。
その先にあるのはトラギコの姿だ。

彼女はトラギコを見つけると、人差し指を唇につけて何やら考える動作をしばらくの間見せて。



从^ー^从「バイバイ」

ひらひら、と手を振り、その場から消えた。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:23:02.26 ID:GXcP5462O



(=-д-)「う、ん……」

トラギコの口から吐息が漏れる。意識が覚醒したようだ。



(=゚д゚)「…………。オイラ、は……」

目を開け、何度か瞼を開閉した後、手を使って立ち上がろうとする。

(;=゚д゚)「つっ……!」

だが頭に鈍痛が走り、体がよろける。



「あまり無理しない方がいいわよ。手酷くやられちゃったみたいだしね」

(=゚д゚)「……ガナー」

( ‘∀‘)

背後から聞こえた声にトラギコが振り返ると、そこにはガナーがいた。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:25:02.32 ID:GXcP5462O
(=゚д゚)「お前も……、無事そうには見えないラギ」

ガナーの姿も、トラギコに負けず劣らずと言ったところだ。

( ‘∀‘)「私も手酷くやられたからね」

(=゚д゚)「……負けた、ラギ」

( ‘∀‘)「ええ、負けたわね」

(=゚д゚)「…………」

トラギコはつい先程までの戦闘を思い出そうとして、



(,,゚Д゚)



(;=゚д゚) ゾクッ

( ‘∀‘)「ん、どうしたの? 顔色悪いけど、まだ体が痛むの?」

(;=゚д゚)「あ、いや、大丈夫。何でも無いラギ……」

記憶の底に押し留める事にした。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:27:08.70 ID:GXcP5462O
( ‘∀‘)「まあいいわ。ひとまず帰りましょう」

(=゚д゚)「……ああ」

負けて帰って、は瀬川から何と言われるだろうか。
いや、小言を言われるくらいなら何も問題ない。
それだけなら良いが、もしかしたら何らかの処分を受ける可能性が有る。
そう考えるとこのまま帰るのは得策では無い気がした。

元々、は瀬川に恩とかそういうものが有るわけでも無いのだ。
だったらこのまま帰らずに姿を眩ました方が良いのかもしれない。
そう思ったトラギコはガナーを呼び止めようとする。

(=゚д゚)「ガナー、ちょっと……」





「待て」



( ‘∀‘)「!」(゚д゚=)

第三者の声が二人の耳に届いた。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:29:39.30 ID:GXcP5462O
開けっ放しになっていたドアの奥から現れたのは。





ミ,,゚Д゚彡



( ‘∀‘)「フサギコ……。『フサギコ=ビッグガンゴールド』」

(=゚д゚)「……何の用ラギ? ワザワザ組織の、『COLOR's』の『No.1』がお出迎えとは」

二人の前に立つのはフサギコと呼ばれた男。

『No』にも劣らない程の体格をした金髪の男は、
トラギコとガナーの二人を制するかのように黄金の双眼で睨みつける。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:31:26.39 ID:GXcP5462O
ミ,,゚Д゚彡「出迎え、か」

低く、威圧するような声。そして他を顧みないその存在感。

ミ,,゚Д゚彡「確かにその通りだ。俺が貴様等を送ってやろう」

そんな彼から放たれるのは、相手を思いやるような優しさでは無い。

ミ,,゚Д゚彡「最もその場とは、心休まる憩いの地などではなく―――」





ミ,,゚Д゚彡「捨てられた者共が集う黄泉の国、だがな」

ただ全ての者を射止めんとする、殺気だけだ。

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:33:02.88 ID:GXcP5462O
(;‘∀‘)「!?」

(=゚д゚)「…………」

二人に緊張が走る。

(;‘∀‘)「どういう事っ!? アタシたちは仲間でしょう!?」

(=゚д゚)「……いくら任務を果たせなかったとはいえ、命を取るのはやりすぎじゃないラギ?」

二人の弁を聞いたフサギコは薄く笑みを浮かべる。

ミ,,゚Д゚彡「仲間、か。俺は一度もお前等の事を仲間だと、
      志を共にする同士だとは思った事は無いがな」

(;‘∀‘)「っ!」

ミ,,゚Д゚彡「それに、今のこの行動は誰の命令でも無い。他ならぬ俺の意志だ」

(=゚д゚)「お前の独断……? 何の為に?」



ミ,,゚Д゚彡「『間引き』、だ」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:35:52.89 ID:GXcP5462O
(=゚д゚)「『間引き』? 一体どういう事ラギ?」

ミ,,゚Д゚彡「そこまで語る必要は無い。貴様等の生はこの瞬間をもって潰えるのだから」

殺気が更に膨れる。
冗談といった類のものでは無いようだ。

(=゚д゚)「本気ラギか。
     ……先鋒の『青』、フィレンクトが行方不明になっているのもお前の仕業だったラギ?」

ミ,,゚Д゚彡「…………」

沈黙。

(=゚д゚)「当たりラギね」



(;‘∀‘)「くっ……、どうしたら……」

ガナーは焦りを見せている。予想外の出来事に、今自分が何をすべきかが判らないようだ。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:37:33.03 ID:GXcP5462O
(=゚д゚)「どうしたらいいか? 決まってるラギ」

( ‘∀‘)「え?」

ガナーはトラギコの方を見る。



(=゚д゚)「目の前の男を倒す。それしか無いラギ」

トラギコの目と髪が黄色く染まる。そしてフサギコに負けずに睨み返した。

(;‘∀‘)「な、何言ってんの!? アンタ相手が誰だか判ってるの!?」

(=゚д゚)「じゃあどうするラギ! この男がオイラたちを簡単に逃がす訳無い!
     それとも抵抗もせず殺されるのを待てって言うのか!? そんなの出来ないラギ!!」

(;‘∀‘)「そ、それは……、でも……」

ガナーは迷う。このままでは駄目だというのは判るが、かといって他に方法も無い。
先の戦いよりも更に深い絶望を、彼女は感じていた。

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:39:26.35 ID:GXcP5462O
ミ,,゚Д゚彡「同じ事だ」

(;‘∀‘)「!」

二人のやり取りを静観していたフサギコは、結論づけるように言葉を発した。

ミ,,゚Д゚彡「抗おうがそうで無かろうが結果は同じ。
      二つの骸が出来上がるという事実は変わる事は無い」

(=゚д゚)「ハッ、この世には『窮鼠猫を噛む』って言葉が有るの、知ってるラギ?」

(;‘∀‘)「! トラっ!?」

ミ,,゚Д゚彡「…………」

(=゚д゚)「もうお前にも自分の体にも遠慮はしない。この身が砕けようと、お前を倒してやるラギ!」

トラギコは腹を据え、両足に力を込めて

(=゚д゚)「ヒャアオオオオオ!!!」

フサギコ目掛けて、弾けるように飛び出した。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:41:21.54 ID:GXcP5462O
(;‘∀‘)「トラっ! 駄目ぇぇぇえええええ!!!!」

ガナーの絶叫も聞く耳持たず、トラギコは一直線に駆ける。

(=゚д゚)(狙いは喉元。一撃で仕留める!)

互いの距離が一メートルを切ったところで、トラギコは真上に跳躍。
天井を足場にして再度踏み切る。

(=゚д゚)「アアアアアアアアアッ!!」

上空から猛スピードで落下するトラギコ。
対するフサギコは、まだ前を見たままだ。

トラギコの突き出した左腕がフサギコに触れようとしたその直前。
フッ、とフサギコが顔を上に向けて、その黄金の目をトラギコに見せる。



すると。



(=゚д゚) ―――ドクン

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:43:07.78 ID:GXcP5462O
一度大きくトラギコの心臓が跳ね、





(;=゚д゚) ―――ゾクゥッ!

全身が固まった。

(;=゚д゚)(こ、れは……)

息が詰まる。
体が妙な浮遊感に包まれる。
自分の体が自分のものでは無い。
まるでそれは幽体離脱をして、少し離れたところから自分の姿を見ているような感覚。

そして、全てがスローモーションになった世界。

(;=゚д゚)(この、感じ……。『銀』と戦っていた時と似ている……!)

(;=゚д゚)(いや、違う! そんなものよりも遥かに上の……!)

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:45:05.74 ID:GXcP5462O
(;=゚д゚)(………………ハッ!?)

気がつくとフサギコが右足をピン、と真っ直ぐ上に掲げている。
その足はかなり高い位置まで来ていて、既にトラギコの頭よりも上にある。

その限界まで高められた右足は、引き絞った弓の弦のようだ。



そして、発射。

フサギコのカカトが目の前に迫り来る。

(;=゚д゚)(マズいっ! 避け……られない! ガードだ!)

トラギコはとっさに両腕を顔の前でクロスさせる。

そのすぐ後にフサギコの足がトラギコに触れ、





そのままトラギコの頭を地面に引き落とし、踏み潰した。



赤い花が、咲いた。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:47:02.81 ID:GXcP5462O
(;‘∀‘)「あ……、ああっ……」

一部始終を見ていたガナーの目から、涙が一雫流れる。

トラギコの体は一度ビクン、と跳ね上がった後、力無く地面へと伏した。

フサギコは倒れているトラギコを見て、



ミ,,゚Д゚彡「確かに相手が猫程度のものであれば、可能性が有ったかもしれない。
      だがそれが獅子であったならば、貴様の勝機など万に一つも無い」

そう、言い残した。



ミ,,゚Д゚彡「さて、あと一人」

(;‘∀‘) ビクッ

フサギコはガナーの方に振り返り、ゆっくりと歩み寄る。

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:49:25.32 ID:GXcP5462O
(;‘∀‘)「い、いやああああああああ!!!!」

ガナーは大声を上げ、部屋から逃げようとドアのところへ駆け出す。
そしてフサギコのいる部屋から外へ出ようとしたその時。

(;‘∀‘)「きゃあっ!!」

見えない何かにぶつかり、尻もちをつく。

すると外から部屋の中に入ってくる者が居た。



(゚、゚トソン「逃がしません。貴女はここで死ぬのです」

(;‘∀‘)「あ、アナタは……」

ミ,,゚Д゚彡「―――トソン。俺はお前もついてくるようには言っていないぞ」

フサギコからトソンと呼ばれたその女性は、彼に恭しく一礼をする。

(゚、゚トソン「申し訳ございません、フサ。貴方だけに任せておく事は出来ませんでした」

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/28(火) 00:51:02.63 ID:GXcP5462O
ミ,,゚Д゚彡「……勝手にしろ」

(゚、゚トソン「はい、有り難う御座います」

フサギコは、再び礼をするトソンからガナーへと視線を移す。

ミ,,゚Д゚彡「さて、辞世の句は済んだか?」

(;‘∀‘)「あ、ああ……」

ガナーは地面に座ったまま、立ち上がる事が出来ずにいた。
そんなガナーの目の前までフサギコは近付き、左手を上げる。

ミ,,゚Д゚彡「最も、済んでいなくても待つ事はしないのだが、な」

(; ∀ )「あ、アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」



ビルの中で響いた悲鳴は誰にも届く事無く、消えていった。



第七話-b 終わり

   →第八話へ続く?


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