(,,゚Д゚)ここは解決屋『シルバー&ブラック』本社のようです
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 21:22:28.55 ID:/lZ6RREH0



男は飢えていた。



男は血に飢えていた。



男は他の誰よりも、血に飢えていた。





男は渇きを、人を殴ることで潤していた。

殴るのは、男とは全く接点の無い赤の他人。
歩道で、商店街で、店の中で。
男が渇きを感じた時に、男の近くにいた不運な通行人は犠牲者となる。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 21:25:28.33 ID:/lZ6RREH0
狙うのはカップルが良い。
もちろん、他の者に邪魔をされないように、裏に連れ込むのを忘れずに。

幸せそうに笑っていた男女が、一転して恐怖に顔を歪ませ、
涙と鼻血を垂らしながら許しを乞う様は、とても、とても清々しい気分にさせた。

「もうやめて」。
その言葉が発せられる度に拳を顔に叩きつける。

次第に言葉にならない叫びで泣きわめくだけになるので、全身をくまなく蹴りつける。

そうしていると声が消え、殴っても蹴っても反応を返してくれなくなる。
そうなったら憩いの時間は終了だ。
物言わぬ人形をいたぶっても楽しくないから。



そんな日々を送りながら、男は欲を、渇きを満たしていた。
繰り返し、繰り返し、繰り返し。
男の渇きを満たすための血を献上するために、
街には壊れたガラクタがいくつも生産されていった。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 21:28:35.86 ID:/lZ6RREH0
しかし男はある日、返り討ちにあった。
いつものように踏みにじろうとして、逆に地を舐めさせられた。

男は初の敗北を知り、圧倒的な力の存在を知り、そして気付いた。


「渇く。今までとは、比にならない程、渇くっ」


男は理解したのだ。
今まで男が壊してきたものなど、只の肉でしかなかった事に。


「虫ケラなんて踏み潰したところで何だって言うんだ。俺は人間を壊したいんだ」


もう駄目だった。
弱者の屍ではいくつも重ねたところで、何も満たされない。
渇きを潤せない。


「そうだ……、奴だ……。俺を倒したアイツを壊さなきゃ、もう俺の渇きは消えない」


もう男の目には、彼を打ち負かした、あの銃弾のような銀色の男しか映っていなかった。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 21:31:08.81 ID:/lZ6RREH0
男は待った。復讐の時を。
体の内側で暴れ回る欲を必死に抑えつつ。
全身の細胞一つ一つの、渇きを訴える叫びに耳を傾けながら。





そして今、男の前に銀色の銃弾が現れる。



待っていた。この瞬間を待っていた。
ずっと待っていた。激しい渇きに身をやつしながらも、それでも耐えた。

でも、もういいんだ。
もう我慢しなくてもいい。

早く、早く―――。





                                               .

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 21:34:03.12 ID:/lZ6RREH0
                                               .









(,,゚Д゚)ここは解決屋『シルバー&ブラック』本社のようです川 ゚ -゚)



第14話

「俺の渇きを潤してくれェ!! 『銀弾』ッッッ!!!!」





                                               .

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 21:37:02.09 ID:/lZ6RREH0
ジョルジュは笑っていた。

待っていたんだ、と。
今この瞬間こそが至福の時なんだ、とでも言うかのように。


(,,゚Д゚)「んだよ、お前生きてたのか。てっきりフサギコの奴に殺られてんのかと思ってたぜ」


高揚しているジョルジュとは対照的に、ギコは冷静だった。
ジョルジュの精神の危険度は前回の接触で認知済みだ。
慎重に彼の動きを注視する必要がある。

  _
( ゚∀゚)「あ〜? ヒヒヒ、俺が死ぬ訳ねえだろうが。
     俺はお前を殺さなくちゃならねえんだからよぉ」


笑う。狂ったように笑う。
最早彼には理性など無い。
彼の頭の中にあるのはただ一つ、殺意だけだ。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 21:40:07.69 ID:/lZ6RREH0
(,,゚Д゚)「ま、何だっていいさ。そこ退けよ。俺はテメーに構ってる暇なんざ無いんだ」
  _
( ゚∀゚)「退かねえよ。待ってたんだよ俺は。
     お前の肉を裂き、血を浴び、心臓をえぐり出せるこの時をなぁ」


何を言っても同じ事しか繰り返さないジョルジュに、ギコはため息をつく。
もうこの男とはマトモな会話は成立しない。


(,,゚Д゚)「ふうん。希望を語るのは勝手だけどな」


ギコは挑発混じりに言葉を繋げる。


(,,゚Д゚)「で? お前にそれが出来んのかよ?
     お前は俺に一度負けたんだぜ。まさか忘れちまったなんて言わせねぇぞ?
     お前の武器も壊しちまったしな。お前はもう俺とは闘えねえよ」


突き放すように言葉を吐き出す。
ただ、現実として両者の間には埋めようのない実力差があるのだ。
言ってみればこの発言は、ギコなりの情けを掛けた結果なのかもしれない。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 21:43:06.31 ID:/lZ6RREH0
  _
( ゚∀゚)「いいや、闘う。殺し合ってもらうぜ」


しかしジョルジュは拒否する。
まるでその様子は、駄々をこねる子供のようであるが―――。


(,,゚Д゚)「あのなぁ……」
  _
( ゚∀゚)「そして俺は、お前を殺す為ならどんな事でもしてやる」


ただ子供と明確に違うのは、そこには人間性の欠片も無いという事。
その身、その思考を既に泥の底に沈めきっているという事。

ジョルジュはポケットから、一粒の薬用カプセルを取り出した。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 21:46:12.67 ID:/lZ6RREH0
(,,゚Д゚)「? それは……」
  _
( ゚∀゚)「なんだろうな。俺も知らねえ」


ジョルジュはカプセルを開封する。
中には白い粉末が詰まっているのが確認できた。

  _
( ゚∀゚)「知らねえが……」


ジョルジュはその粉末を口に入れる。唾液を混じらせ、喉の奥へと流し込んだ。

  _
( ゚∀゚)「そんな事はどうでもいい。俺はただ、お前を殺せればそれで……」


その粉末を飲んで、すぐ。

  _
(; ∀ )「……グッ、はあっ!!」


異変がジョルジュの体を襲った。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 21:49:08.05 ID:/lZ6RREH0
ジョルジュは胸を押さえて苦しみ出す。

痛みに耐えるかのように歯はギチリと噛み締められ、顔からは大量の汗が溢れ出ていた。
その場に立っていられなくなったのか、地面に膝をつき、体全体は小刻みに震えている。

その突然の状況に、ギコは判断が追いつかない。


(,,゚Д゚)「なんだ? おい、一体テメーは―――」


ギコはジョルジュに向かって一歩踏み出す。
しかし、その一歩は余りにも不注意で不用心すぎた。



ギコが一歩踏み出したのと同時に。



うずくまり、苦しんでいた筈のジョルジュの体が、消えた。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 21:52:10.43 ID:/lZ6RREH0
(;゚Д゚)「! しまっ……」


ギコが自分の失敗に気付いた時にはもう遅かった。

  _
(#゚∀゚)「ギィィィンダァァァァァァァァァンンンンン!!!!!!」


ジョルジュは突如、ギコの背後に現れ、人の命に無遠慮な一撃を首元に叩きつける。


(,, Д )「がっ……!!」


車に撥ねられたように横っ飛びに吹き飛ばされるギコ。


(;゚Д゚)「っ、なんの!」


だが、すぐに空中で体勢を整え直し、床を滑りながら着地する。
首元を狙うジョルジュの打撃を、ギコはとっさに右手を間に挟むことでダメージを軽減していた。

しかし、ジョルジュの攻撃は続く。
遠くに飛ばされたはずのギコの背後に、いつの間にか回り込んでいる。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 21:55:17.29 ID:/lZ6RREH0
(;゚Д゚)「また後ろにっ!」


それに気付いたギコが前方へ逃れようとしたが、間に合わない。

  _
( ゚∀゚)「オラアァッ!!」


ジョルジュの右足がギコの脇腹へえぐり込まれる。


(;゚Д゚)「っあ!!」


ギコの体は再度宙を舞い、五メートル程飛ばされたところで着地した。


(,,゚Д゚)「ゲホッ、ゲホッ! ってて……」


ギコは膝立ちの状態で、痛む脇腹をさする。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 21:58:09.21 ID:/lZ6RREH0
  _
( ゚∀゚)「ヒ、ヒヒ……」


ギコは更なる追撃に備えるためにジョルジュをしっかりと目に入れていたが、
ジョルジュは次の攻撃に移ろうとしない。

  _
( ゚∀゚)「ヒャーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!」


代わりに、大声で笑った。
右の手のひらを顔に覆い被せて、堪えられないといった風に笑う。
指の間から見える彼の目は、狂気に染まっていた。

  _
( ゚∀゚)「スゲェ! スゲェぞこの力は! 周りが超スローに見えるぜ!!」


予想以上に自分の力が上がり興奮したジョルジュは、
溢れ出る激情をそのまま足下にあった椅子に押し付ける。
蹴り飛ばされた椅子は壁に当たり、バラバラに飛散した。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:01:05.18 ID:/lZ6RREH0
大口を開けて笑い続けるジョルジュ。
その姿を見て、ギコはゆっくりと立ち上がり、言葉を出す。


(,,゚Д゚)「さっき……、さっき飲んだ薬の効力か。それは」


その声に反応し、ジョルジュは目線をギコに向けた。未だ口はだらしなく歪んでいる。

  _
( ゚∀゚)「ん〜? だったらどうだってんだぁ?」

(,,゚Д゚)「何なんだよ、その薬。
     残像すら残さねぇ速さを生み出すデタラメさもそうだが、
     飲んで数秒で効果が出るその即効性……。異常だぜ?」


ギコが気になったのは薬の出どころだった。
もしもそんな超常的な薬が大量に出回ったとしたら、間違い無く世界に混乱が起こる。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:04:04.67 ID:/lZ6RREH0
  _
( ゚∀゚)「それが?」


しかしジョルジュはギコのそんな心配など歯牙にもかけない。


(,,゚Д゚)「そんな度が外れた薬、誰が作ったって言ってんだよ。は瀬川のヤローか?」


  _
( ゚∀゚)「…………」

(,,゚Д゚)「?」


一瞬、ジョルジュの眼が丸く見開かれた。
ギコはそんなジョルジュの表情に疑問を抱いていると―――。




  _
( ゚∀゚)「ひ、ヒヒヒヒアハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」


これ以上ないといった様子で、ジョルジュは再度激しく笑い出した。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:07:01.86 ID:/lZ6RREH0
(,,゚Д゚)「……おいっ」


彼のその笑い声が癇に障ったのか、ギコは若干苛つきながらも質問の答えを促す。

  _
( ゚∀゚)「ヒヒヒッ。何を聞くかと思えば……。どうでもいいだろそんな事。なあ?」


だがジョルジュからは返答は聞けなかった。
興味が無いのだ。そんな事は。

  _
( ゚∀゚)「そうだ、重要なのはなぁ、銀弾……」


彼の関心を引くモノ。
彼が恋い焦がれるモノは、ただ一つ。




                                               .

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:10:35.87 ID:/lZ6RREH0
                                               .





  _
(#゚∀゚)「お前が今!
     この俺に手も足も出ねえって事だろうがよおおおおおおおおお!!!!!」


目の前の人間を、血の一滴まで殺し尽くす事―――!


(,,゚Д゚)「ジョルジュ!!」


言葉は聞かない。
制止は利かない。
ただ、脚が、腕が、肉を求めて前に出る―――。





―――――――――――――――
――――――――――
―――――

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:13:03.90 ID:/lZ6RREH0



その頃、地上では。




(*゚∀゚)「このっ! しつこい!」


つーのチェーンソーが金切り声をあげて前後左右に振られる。
体を数個に分離されるのは一体ではない。
チェーンソーが触れた者は片っ端から細切れにされていった。
宙を縦横無尽に駆け巡るそれは、『No』の体から噴き出る黄色の血液で軌跡を作る。


(;*゚∀゚)「!?」


だが、止まる。
今まで何物をも障害としなかった彼女の武器が、
『No』達の圧倒的な物量の前に、立ち止まらされた。
そう、『No』は文字通り、身を犠牲にして進軍を止めたのだ。

彼らの愚行な策は、それでも成就し、千載一遇とばかりに彼女に拳を振り上げる。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:16:03.03 ID:/lZ6RREH0
しかし―――。


(#*゚∀゚)「うあああああ!!!!」


つーは咄嗟にチェーンソーから手を離し、懐から二本のスパナを取り出し、両手に持った。
そして、彼女は独楽のように回転する。
四方八方から彼女に襲い掛かった『No』達の首が、皆一様に反対側を向いた。


(*゚∀゚)「今のうちっ!」


つーは身を翻し、工場内に設置されていたクレーンに足を掛け、駆け上った。
『No』達が彼女を追おうとクレーンに飛び乗るが、
足場が狭く、巨体である彼らの足取りはおぼつかない。

それでも何とか登っていこうとしている彼らの頭に。


(*゚∀゚)「来るなよっ!」


スパナが命中する。
つーは懐から多数のスパナを取り出し、手当たり次第に投げていった。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:19:12.73 ID:/lZ6RREH0
从 ゚∀从「つー! 大丈夫?」

(;*゚∀゚)「正直シンドイよぉー! コイツらどれだけ湧いてくるの!?」


床には動かなくなった『No』が、足の踏み場に困るほどに散乱していた。
既に、最初にこの部屋へ侵入した際にいた『No』の数ほどは倒しきっているはず。
しかし、彼女に向かってくる『No』らの手は、未だ衰えることは無い。


从 ゚∀从(思ったよりも『No』の生産速度が高い……)

从∀゚ 从「ショボン! そっちの調子はどう?」

「ちょっとマズい! 弾が持ちそうに無ぇ!」


ハインがショボンに呼びかけると、物陰の奥から銃音の隙間を縫って声が帰ってきた。
どうやら弾切れが近いようだ。
むしろ戦闘開始から今まで弾を撃ち続けていたのに、未だ残っているのが不思議なくらいだ。


从 ゚∀从(甘く見過ぎたか……。先に生産の現場を押さえるべきだった)


もう何体目になるのか、ハインは『No』を巨大メスで切り裂きながら思考する。
『No』をあらかた片付けてから大元を叩けばいいと
考えていたのが失敗だった事に気付き、軽く舌打ちをした。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:22:03.16 ID:/lZ6RREH0
从 ゚∀从(三人だけじゃ人手不足だったね。ここらが潮時か……?)


自分たちの身の安全を確保するために、撤退するかどうか。
ハインは悩む。





しかし、そんな思惑の外から突然、『彼ら』がやって来た。




「乗っ込め!! クックル!!!」




从;゚∀从「うおっ!?」


どこからか男の声が聞こえてきたかと思ったら、けたたましい音を立てて壁の一部が爆ぜた。
立ちのぼる砂煙を払うかのように現れたのは、全身を黒に染め上げた筋骨隆々の鶏人間と、
それに肩車で乗っかっている研究員風の男だった。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:25:11.07 ID:/lZ6RREH0
( ´_ゝ`)「はっはっはっはー! 俺! 参上!!」

( ゚∋゚)「…………」


上機嫌な上の男と無言な鳥男。
下の鳥が巨漢なせいで、まるで遊園地に遊びに来た親子のように見える。
上のはいい年した野郎ではあるが。


从 ゚∀从「なんなのあれ……」

(´<_` )「あれか? あれは愚兄とペット」

从;゚∀从「うわっ! まだいた!?」


声がした方へ振り向くと、もう一人、研究員風の男がいた。
よく見るとその男は、鳥男の上に乗っている男と瓜二つだった。


从 ゚∀从「双子? ……もしかしてアナタ達、流石兄弟?」

(´<_` )「ああ、そう。その流石兄弟」


流石兄弟。
以前彼等は『COLOR's』の『緑』と『茶』としてギコらに襲い掛かった。
敗北後は、『COLOR's』の手から逃れるために逃亡生活をしていたはずだが。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:28:01.52 ID:/lZ6RREH0
从 ゚∀从「何故ここに?」

(´<_` )「実は、俺らはアンタらの行動を陰ながら追っていたんだ。
       で、そろそろここを襲撃するだろうと思ってね」

从 ゚∀从「……私たちを止めるのかい?」

(´<_` )「まさか。そのつもりならもっと早くから来てたさ。俺らはアンタらの味方だ」

从 ゚∀从「味方、ね。その割には随分遅れての登場ねえ?」

(´<_` )「研究が終盤に差し掛かっててね。でも、何とか間に合った。見てみなよ」


弟者が指差す先には、彼らのペットと称された鳥人、クックル。


( ゚∋゚)「…………」


歴戦の兵士を思わせる精悍な顔。彼は主の命令を静かに待っている。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:31:02.42 ID:/lZ6RREH0
( ´_ゝ`)「さあクックル! お前の新必殺技の御披露目だ!」


兄者はクックルに乗っかったまま、ノートPCを取り出して打ち込む。
ノートPCを頭に乗せる、厳つい顔した巨漢の鳥男の図は、なかなかにシュールだ。


( ´_ゝ`)「充電開始! 20%……50%……80%……」


兄者がカウントダウンを始めると、クックルの顔が次第に光り出した。
いや、正確には顔の内部、喉の辺りから光が漏れているように見える。
クックルの体は何かを抑え込んでいるかのように、小刻みに震えていた。


( ´_ゝ`)「90%……95%……100! 充電完了! 目標前方5mから10m! 捕捉! 全解除!」


クックルの震えは更に激しさを増し、光の眩さも強くなっている。


(#´_ゝ`)「行くぞっ……!」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:34:03.19 ID:/lZ6RREH0
                                    .









(#´_ゝ`)「クックルっ、レェェェェェザァァァァァァァァァァァ!!!!!」










兄者の叫びと共に、限界まで集束された光はクックルの口から真っ直ぐ前方へと発射され、
その先にいた『No』の群れを薙ぎ払った。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:37:01.15 ID:/lZ6RREH0
『No』達を存分に吹き飛ばし終えると、
クックルの口から放たれた光線は次第に細くなっていき、遂には消えた。

彼の口の周りが焼け焦げているのが見て取れたが、その傷は瞬く間に治癒されていった。


( ´_ゝ`)「…………ふ」




( *´_ゝ`)「ふはははーっ! 見たか! これがクックルだ!!
       いいぞクックル! 今、お前は最高に格好いいぞっ!!」

( ゚∋゚)「…………」




両手を上げてクックルを褒め称える兄者。
クックルの表情が、少し柔らかくなったように見えた。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:40:02.36 ID:/lZ6RREH0
从;゚∀从「なんなんだ、ありゃ……」


その一部始終を見ていたハインは呆然としていた。
まあ、目の前の鳥人間がいきなり口から光線出したら、大体は彼女のようになるだろう。


+(´<_` )「ふっ、説明しよう。アレこそが我ら流石兄弟の最新兵器、
        その名も“クックルレーザー”だ」

从;゚∀从「アンタ等の研究って……」

+(´<_` )「もちろん、“クックルレーザー”の実現だ」


そう言うと弟者は、僅かに頬を上気させつつ語り始める。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:43:11.84 ID:/lZ6RREH0
+(´<_` )「“クックルレーザー”は『やはりレーザーは当然のように装備しておかないと』という

        コンセプトから産み出された、まさにロマンの結晶ともいえるシロモノだ。
                              ペラペラ
        いや、なかなか大変だったよ、これを使用可能なレベルにまで持ってくるのは。

        漫画やアニメでは誰もが手軽にバンバン撃っているが、
         ベラベラ
        現実の世界で行おうとすると、どうしても様々な不具合が生じてくる。

        中でも粒子の加速器に最も苦労した。
                              ペラペラ
        充分な出力を出そうとしたら、実に32.195立方メートル以上の加速器を用意しなくてはいけなかった。

        これは余りにもデカすぎる。まあ巨大なレーザー砲を携えるクックルというのも
         ベラベラ
        悪くないと俺は思ったんだが、兄者がどうしても口から出したいと言ったからな。

        しかし確かに口からレーザーも捨てがたいと俺も思ってしまった。
                              ペラペラ
        そこからは兄者と二人でどうにかクックルの口からレーザーを出そうと、

        何日も何日も実験しては失敗の繰り返しだったよ。あの期間が一番辛かった……。
         ベラベラ
        しかしある日、遂に兄者が起死回生の妙案を編み出した。

        そう、クックルの半電子体という特性を利用したんだ」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:46:09.53 ID:/lZ6RREH0
+(´<_`* )「つまり大きすぎる加速器の大元、この場合はオリジナルと言うべきか。

        それを兄者のFMVの中に収める。そして兄者がその加速器を作動させ、
                              ペラペラ
        加速された荷電粒子の情報をクックルに流してやるのさ。

        それにより、クックルの体そのものが加速器と同じ役割を果たすことになるんだ。
         ベラベラ
        クックルに加速器を入れる事が出来ないなら、

        クックルそのものを加速器にしてしまえばいい……。
                              ペラペラ
        まったく、兄者の発想にはいつも度肝を抜かされるよ。

        だけど、まだ全ての問題が解決された訳じゃない。
         ベラベラ
        まず一つに射程だ。今の状態では精々12メートル先までしか届かない。

        クックルを介している所為か、粒子の軌道が安定しないんだ。
                              ペラペラ
        ま、この辺りは細かい調整を続けていけばクリア出来ると思う。

        真に問題なのは、連射性能に欠けるという点だ。
         ベラベラ
        現状では一発撃ったらクールダウンに6分47秒もの時間がかかってしまう。

        これでは一戦闘に一発が限度だろう。
                              ペラペラ
        クックルの体の負担も考えればそれも仕方ないのかもしれないが、しかしそれでも―――」

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:49:07.47 ID:/lZ6RREH0
从;゚∀从「あーあーストップ!! 何時まで話すつもりなの!?
      つーかメッチャ饒舌だな! 気持ち悪いわよ!」


ひたすらに話し続ける弟者に付き合いきれなくなったハインは、慌てて彼の話を遮る。


(´<_` )「ん? まだ折り返してもないんだけど」

从;゚∀从「そんなモノは四つ折りにしてゴミ箱に入れてしまえ!」

(´<_` )「これからがいいところなのに……」


ノリに乗っていたところを無理矢理中断された弟者は、見るからに落ち込んでいた。


从 ゚∀从「はぁ……。弟の方はマトモそうに見えてたのに、どっちともこんなのだったなんて」

(´<_` )「研究者なんてみんなそんなモンだよ」


呆れたように溜め息をつくハイン。
しかし軽く首を振って気合いを入れ直した。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:52:01.66 ID:/lZ6RREH0
从 ゚∀从「まあ何だっていいわ。人手が増えたのはグッドね。
     ちょっと私はこの『No』達の生産場所に行ってくるから、
     アナタ達兄弟はここで頑張っててくれない?」


そして弟者に提案する。

ジリ貧な先程までの状況とは違う。
この流石兄弟とクックルがいれば、ハインがこの場を抜けても持ちこたえる事が出来るはずだ。


(´<_` )「いや、その必要はない」


しかし、弟者の返答はハインの意とは異なるものだった。


从 ゚∀从「? それはどういう……」

(´<_` )「兄者」


理由を聞きたいハインの問いをそのままに、
弟者は未だキャーキャーはしゃいでいる兄者の名を呼ぶ。

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:55:01.81 ID:/lZ6RREH0
(´<_` )「いつまでも遊んでないで、さっさと始めてくれ」


その様に言われた兄者は、ハッとした表情で弟者の方を見た。


( ´_ゝ`)「っと、そうだったな。じゃ弟者、クックルへの命令は任せたぞ」

(´<_` )「了解、任された」


そう言うと、兄者はクックルの肩から降り、ハインの側へと寄った。
兄者と交代した弟者はクックルの背後に付き、なお増えていく『No』達と対面する。

ハインの近くに来た兄者は、適当な段差に腰を下ろすと、FMVを開いて何やら作業を始めた。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:58:01.44 ID:/lZ6RREH0
从 ゚∀从「何をするつもり?」

( ´_ゝ`)「なに、すぐに判ることになる。だから悪いけど、
       俺に寄ってくる『No』達を倒していってくれないか?」


その様に言われたハインは、若干納得できない表情を見せたが。


从 ゚∀从「……判ったわ。速くしなさいよ。私の可愛い妹が疲れてるんだから」


その要求を飲むことにした。
直感だが、彼を信じてもいいかなと思ったからだ。


( ´_ゝ`)「ありがとう。ええと……」

从 ゚∀从「ハインリッヒよ。ハインでいいわ」

( ´_ゝ`)「OK。じゃ頼むよハインさん」


ハインは兄者に軽く手を振ってから、巨大メスを握りなおした。
兄者はそんなハインを見て、少し顔を綻ばせつつも、再び目の前のディスプレイに集中する。


――――――――――――――――――――
――――――――――
―――――

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 23:01:19.69 ID:/lZ6RREH0



(,,゚Д゚)「おっと!」
  _
( ゚∀゚)「ちいっ! チョコマカと!」


ジョルジュが薬を飲んでから数分の刻が流れたが、攻勢に変化は無かった。
ジョルジュは止め処なく攻め続け、ギコはひたすらに避け続ける。

ギコのスーツは、もはや破れている所が無いといった様相であった。


(,,゚Д゚)「ふうっ」


しかし当のギコには余裕が感じられる。
服は裂かれているが、ジョルジュの攻撃はギコの体に触れてはいないようだ。

  _
( ゚∀゚)(クソッ! 何故だ! 何故当たらなくなった!?)


対するジョルジュの顔には苛立ちが浮かんでいた。

彼が望んでいるのは一方的な暴力。
このような鬼ごっこは、彼にとって余りにも退屈なモノだった。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 23:04:15.29 ID:/lZ6RREH0
  _
(#゚∀゚)「うがあああっっ!!!」


解消されないストレスを直接ぶつけていくかのように、ジョルジュは攻める。
瞬き一つの間に差を詰めるそのスピード。人の目には追い付けないその速度を。


(,,゚Д゚)「っ!」


ギコは避ける。
彼の服の一部が更に持っていかれるが、やはり肉体に傷はない。
ミリ単位で躱せるという事は、ジョルジュの動きを正確に見極めているという事に他ならないのだ。

  _
(#゚∀゚)「クソッ……!」


空を切る手に怒りを覚えながら、ジョルジュはすぐさま振り向き、飛びかかろうとした。

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 23:07:23.19 ID:/lZ6RREH0
だが。

  _
(;゚∀゚)「!?」


振り向いた先にギコの姿は見えない。



バカな。
そこに居るはずなのに。
何故いない。
何故。
何故。
何―――。



  _
(;゚∀゚)(―――っっっ!!)


ぞくり、と。
背中に何かが張り付く、そんな気味の悪い何かををジョルジュは感じた。

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 23:10:01.89 ID:/lZ6RREH0
_
(゚∀゚;)「うおおっ!?」


ジョルジュの防衛本能が、彼の体を動かす。
倒れ込むようにして体を前方へと飛ばしつつ、振り返った。


(,,゚Д゚)「…………」


振り向いた先にギコはいた。
何をする訳でもなく、ただその場に立っていた。

  _
(;゚∀゚)「はあっ、はあっ、はあっ……!」


ジョルジュの息は上がっている。
疲れからではない。正体不明の感覚に、彼は追い込まれていた。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 23:13:02.55 ID:/lZ6RREH0
  _
(;゚∀゚)「なっ……」

(,,゚Д゚)「?」
  _
(;゚∀゚)「何をっ、している……!? オマエ、何をしているんだっ!?」

(,,゚Д゚)「……『何を』?」
  _
(#゚∀゚)「トボけんじゃねえっ!! オマエ、何かしているだろうがっ!」


語気を荒げたジョルジュの言葉。
その怒りは攻撃が当たらないという理由からではなく、
何をされているか判らない事による不安を隠すためのモノだと思われた。


(,,゚Д゚)「…………」


その問いに、ギコは。


(,,゚Д゚)「別に。俺は何か、特別なことをしてるわけじゃないぜ」


さも当然だと言わんばかりに、あっけらかんと答えた。

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 23:16:01.32 ID:/lZ6RREH0
その淡泊なギコの態度は、焦りを感じていたジョルジュの怒りを更に増幅させる。

  _
(#゚∀゚)「何も!? 何もしていないだと!?
     そんな訳が無えだろ! 俺の速度について来れるハズが無いっ!
     俺を馬鹿にしてんのかっ!!」

(,,゚Д゚)「…………」


ギコは何も答えず、観察でもしているかのように、じっとジョルジュを見ていた。

  _
(#゚∀゚)「スカしてんじゃねえ!! 答えろっ!!」

(,,゚Д゚)「……判った」


ようやく、ギコが口を開いた。
しかしその声は、ジョルジュの激しく圧するようなモノとは正反対の、
静かに抑えられたモノだった。


(,,゚Д゚)「判ったよ。時間の無駄って事が判った」

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 23:19:00.95 ID:/lZ6RREH0
  _
(#゚∀゚)「っ、なにをフザケた事っ……!!」

(,,゚Д゚)「フザケてんのはテメーの方だ」


ジョルジュの声を遮るように、ギコは強く言葉を放つ。
今までの、やる気が感じられないといった風な態度から一変、
ギコの体から突如現れた威圧感に、ジョルジュは押し黙らざるを得なかった。


(,,゚Д゚)「筋力が、とか速さが、とかが増したから俺に勝てる。
     そんな事を考えているお前の方が……」
  _
(;゚∀゚)「っ!」


そしてジョルジュは感じ取る。
悪夢。あの時の屈辱。今でも一刻一秒鮮明に思い出せるシーン。
その過去を産み出した相手が目の前にいるという事実を、否が応でも認識させる程の―――。


(,,゚Д゚)「俺を舐めきっているとしか言えねえな」


力。
圧倒的な力。
髪を、そして眼を『銀』色に変えたギコを見て、ジョルジュは一筋の汗を流した。

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 23:22:02.02 ID:/lZ6RREH0
(,,゚Д゚)「『例題』……」
  _
(;゚∀゚)「?」

(,,゚Д゚)「例えばの話だよ、ジョルジュ。ちょっと想像してみろ」


『銀』色になったギコは、左手の人差し指を立てて説く。
出来の悪い生徒に懇意に教える教諭のように。


(,,゚Д゚)「俺は拳銃の弾を避けることが出来る。
     でも避けるっつっても、発砲された後から体を動かして避ける訳じゃない。
     相手の目線、呼吸、銃口の向き、指の筋肉。
     それらを見て、タイミングよく避けているだけだ」


ギコは立てた人差し指を前に向け、親指を上げる。
手で象られた拳銃の標準は、ジョルジュに向けられている。


(,,゚Д゚)「判るか? 俺は銃弾よりも早く動くことは出来ないが、銃弾を避けることが出来る。
     なあ、ジョルジュ。俺の言っている意味が判るかい?」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 23:25:07.59 ID:/lZ6RREH0
  _
(;゚∀゚)「…………」


ジョルジュの顔が歪む。
ギコの言いたいことを理解してしまったから。

つまりは、ギコはジョルジュの攻撃など楽に見切れると言ったのだ。
いや、もしかすると、ジョルジュの力など拳銃を持った
普通の人間並みだという意味も含まれているのかもしれない。


(,,゚Д゚)「ま、最初は面食らったけどな。それでも、一度見れば充分だ」  _
(;゚∀゚)「……違う。俺は真っ直ぐ進むだけの銃弾とは違う。
     手を出すか、足を出すか。頭を狙うか、胴を狙うか。
     何通りもある攻撃方法を、姿が見えないまま判るハズが……」

(,,゚Д゚)「手を出そうが、足を出そうが。頭を狙おうが、胴を狙おうが。
     テメーの『殺意』は真っ直ぐ俺に向けられてんだよ。
     俺がその程度、読み切れねえとでも思ってんのか?」
  _
(;゚∀゚)「……っ」


ハッタリじゃない。
現にギコはジョルジュの攻撃をことごとく躱してみせた。

ギコの言っていることは真実で、
要するにそれはジョルジュの勝機などゼロに等しいと宣告されたようなモノだった。

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 23:28:33.56 ID:/lZ6RREH0
(,,゚Д゚)「もういいだろ。俺は先に進ませてもらうぜ」
  _
(;゚∀゚)「!!」


ギコが出口に向かって歩き出す。
思考が固まり動けなくなっていたジョルジュはようやく己を取り戻し、ギコの姿を目で追った。
ジョルジュの目に映ったのは、ギコの背中。ジョルジュから一歩ずつ離れていく。

その背中は、余りにも無防備だった。
敵であるハズのジョルジュを、全く気にもとめていない―――。

  _
(; ∀ )「…………、ふっ……」




その背中は、ジョルジュの中にある自信、切望、焦燥、不安といった様々な感情を。



  _
(#゚∀゚)「ざっけてんじゃねぇぇぞっっっ!!! 何で俺に背を向けてんだぁ!?
     テメエはいつまで俺を無視するつもりだぁぁっっっ!!!」




根こそぎ破壊し尽くした。

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 23:31:11.74 ID:/lZ6RREH0
大地を震わせるかのようなジョルジュの叫びに、ギコの足は止まった。
しかし、ただ止まっただけであった。ジョルジュに背中を向けたまま、振り向こうとはしない。

  _
(#゚∀゚)「畜生!! こっちを向けよ! 振り向け!
     俺を見ろ!! 俺を憎め!! 俺にありったけの殺意を撃ち突けろ!!!
     その憎悪を俺が引き裂いてこそっ……」


一歩二歩、憎悪を撒き散らしながらジョルジュは近寄っていく。
ギコは動かない。

  _
(#゚∀゚)「俺の欲は、解消されるっ!!!!!」


駆けた。
己の存在。己の意義。
今までの人生において、そしてこれからも。
彼が彼である所以を証明するために。



ジョルジュは文字通り全てを賭けて、ギコに必殺の一撃を突き刺した。

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 23:34:13.65 ID:/lZ6RREH0
                                              .









(,,゚Д゚)「知らねえな、そんな事」





だが、その一撃は届くことは無かった。

背後から迫るジョルジュの攻撃を上に跳んで躱す。
天井に脚を付けたギコは、壁にヒビが入るほどに強く踏み込み、下方に加速。
真下にいたジョルジュの頭を右脚で踏みつけ、勢いよく地面へと彼の頭を叩きつけた。

  _
(  ∀ )「――――ァ」


それで終わった。
ジョルジュの意識は闇へ吸い込まれ、再度ギコの前に立つ事は出来なかった。

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 23:37:05.72 ID:/lZ6RREH0
(,,゚Д゚)「今、俺が見てんのはクソ兄貴だけなんでね。テメーに付き合ってる暇なんざ無えのさ」


うつ伏せに倒れたまま微塵も動く気配のないジョルジュにそう言い残し、
『銀』を消したギコはその部屋を去った。

もう寄り道など出来ない。
ギコは自分を待っているであろう敵の元へと、歩を進めた。



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91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 23:40:01.08 ID:/lZ6RREH0



从 ゚∀从「ちょっと! まだ時間かかるの? 私もう疲れたんだけど」


ハインが気怠そうな顔で兄者の方を見ている。
しかし、彼女が手に持つ巨大なメスは軽快に『No』達を斬り分けていた。
実際のところ、まだまだ余力はありそうだ。


( ´_ゝ`)「はいはーい、今終わるよ! えーと後はここのコードを、っと」


その声に、ディスプレイから目を離さずに兄者が答える。
少しの間、止まっていた彼の両手が再び動き出し、キーボードを短く叩いた。

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 23:43:03.41 ID:/lZ6RREH0
( ´_ゝ`)「よし、終了だ」


兄者は背を伸ばし、軽く肩を回して一息つく。


( ´_ゝ`)「さあて、は瀬川はどんな顔をするのかな? 見れないのが残念だ」


そして、人知れずにんまりと、底意地の悪そうな笑みを浮かべるのであった。





第14話 おわり

   →第15話に続く?


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