(,,゚Д゚)ここは解決屋『シルバー&ブラック』本社のようです
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 18:53:51.28 ID:fKq+66etO
- ※
ミ,,゚Д゚彡「…………」
どこか高雅なモノを感じさせる黄金の髪をした男―――フサギコは、とある野道を歩いていた。
人気のないそこを、朱くなりつつある日の光を掻き分けて進む。
その足の先には、彼ら『COLOR's』が隠れ潜む建物があった。
彼はその建物の中へと入ろうとして、しかし歩を止める。
誰かが中から出て来ようとしている気配を感じ取ったからだ。
そして扉は開く。フサギコの前に顔を見せたのは。
从'ー'从「あっ。おかえりなさい〜♪」
ミ,,゚Д゚彡「……『ピンク』か」
不自然な程に自然な桃色の髪をした彼女が、そこにいた。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 18:55:55.34 ID:fKq+66etO
- 从'ー'从「随分ゆっくり帰ってきたね〜。寄り道?」
まるで年端もいかぬ幼子のような、屈託の無い笑顔で彼女は質問を投げかける。
フサギコはそれに対し、愛想笑いすらも浮かべずに返答する。
ミ,,゚Д゚彡「……俺の後をつける痴れ者がいたからな。
威嚇して追い返し、少し迂回して帰路についた」
从'ー'从「ふーん、優しいね〜。殺しちゃった方が早いのに〜」
ミ,,゚Д゚彡「…………」
朗らかな笑いながらも、残虐性を全面に押し出す台詞を吐く。
フサギコはこの様な言動を行う『ピンク』を注視していた。
『残虐な性格をしている』
。これ自体は特に取り立てて言う程のモノではない。
性格の事を言うならば、ジョルジュの方が余程酷いと言えるだろう。
問題なのは、それを曇りのない笑顔で言う事なのだ。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 18:58:15.72 ID:fKq+66etO
- 笑いながら非道な内容を話す。
別に珍しい光景ではない。
ただしこの場合の『笑み』とは、少なからず邪気が映っている。
しかし『ピンク』は、その邪気がまったく感じられない。
完璧な『正』の笑顔から、完全な『負』の言葉を放っているのだ。
明らかな矛盾―――。
故にフサギコは『ピンク』を信用しない。
この女は本質が自分たちとは異なっている、と彼は思っていた。
从'ー'从「ん〜? どうしたのかな、怖い顔しちゃって〜」
ミ,,゚Д゚彡「……なんでもない」
从'ー'从「あ、そうだね〜。怖い顔はいつもの事だったね〜♪」
ニコニコと笑い続ける『ピンク』。
様々な事象を無視しても、俺はコイツが苦手だ、と彼は内心溜息をついた。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:00:14.03 ID:fKq+66etO
- ミ,,゚Д゚彡「……ところで、何処へ行くつもりだ?」
フサギコは帰宅するために入口から中に入ろうとした。
ならば、彼と向かい合わせになった『ピンク』は外出の用がある筈だ。
从'ー'从「ふふっ、乙女の秘密だよっ☆」
从'ー'从「って言いたいところだけど、一応締めはちゃんとしておかないとね〜♪」
ミ,,゚Д゚彡「?」
『ピンク』はそう言うと扉を閉めて前へ歩き出し、フサギコの横を通り抜ける。
フサギコがそれを目で追って振り返ると、夕陽に溶け込んだ彼女が彼を見ていた。
从'ー'从「私、『COLOR's』抜けるねっ♪」
唐突に彼女が話し出したのは、離別の意。
何てことは無い、「買い物にでも行ってくるね」とでも言わんばかりの気軽さで、彼女は告げた。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:02:02.15 ID:fKq+66etO
- ミ,,゚Д゚彡「そうか」
しかし、フサギコは揺れない。
その泰然とした様は、まるで彼女がそう言い出すのを、前もって知っていたかのようだ。
从'ー'从「ん〜私的にはもうちょっと驚いてみたり〜、
引き止めて欲しかったりしたんだけど〜?」
『ピンク』は少し不満そうに唇を尖らせる。が、またすぐに元の笑顔に戻った。
ミ,,゚Д゚彡「お前は何か目的を持って『COLOR's』に入ったのだろう?
そして今は、それを既に達成している。
だから、出ていく。何も不思議がる事は無いし、引き止める理由もこちらには無い」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:04:12.78 ID:fKq+66etO
- 从'ー'从「堅いお返事だね〜♪ そんなんじゃ周りの人に避けられちゃうよ?」
ミ,,゚Д゚彡「構わん。もとより俺は他人など気にも留めない」
フサギコが婉曲的に『ピンク』を突き放す言葉を発した。
すると、それを耳に入れた彼女は、一瞬きょとんとした表情を見せ、
从'ー'从「えへへっ☆」
と、より一層笑みを深め、
从'ー'从「『他人』は、ねぇ?」
何か物を含めたような、少しフサギコを茶化すような、そんな言い方をした。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:06:03.82 ID:fKq+66etO
- ミ,,゚Д゚彡「……何が言いたい?」
尋ねるフサギコ。
しかし、彼女の意図している事が半ば判っている為、僅かに苦い顔を見せた。
从'ー'从「いやいや、何もぉ〜☆」
ミ,,゚Д゚彡「……行け。もういいだろう。お互い時間を無駄にしたくはない。違うか?」
これ以上彼女と話していても不快なだけだと思ったフサギコは、この会話を終わらせようとする。
从'ー'从「駄目だよ行き急いじゃ〜。若いうちは無駄な時間を楽しまなきゃ♪」
でも、と『ピンク』は続ける。
从'ー'从「ま、私も用事があるしね。残念だけどお開きにしようか〜」
残念、とでも言うかのような彼女の顔。
フサギコは無言で建物の入口へと向かう。
入口のドアの前に立っていた『ピンク』は、彼の邪魔にならないようにその場を離れた。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:08:08.86 ID:fKq+66etO
- フサギコがドアの取っ手に手をかけた、その時。
彼は振り返り、『ピンク』の方を見て、口を開いた。
ミ,,゚Д゚彡「ああ、最後に言っておきたい事がある」
从'ー'从「ん? なにかな?」
笑う『ピンク』。
対照的に、フサギコの顔は硬い。
ミ,,゚Д゚彡「お前が何を企んでいるかは知らん」
ミ,,゚Д゚彡「が、もしもこの先、俺の前に現れて、俺の邪魔をする事があれば―――」
瞬間、フサギコの体から、まるで視認できるかと思える程、高濃度の殺気が放たれた。
ミ,,゚Д゚彡「その時は、潰す。覚えておけ」
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:10:48.12 ID:fKq+66etO
- か弱き生物ならば、その場にいるだけで息絶えてしまいそうな空間。
異界と化したその中でも、『ピンク』は決してその笑みを陰らせる事は無い。
いや、むしろ喜びをより深めているような、そんな風にも見受けられる。
从'ー'从「大丈夫だよ。私が貴方の前に立つ事はもう無いから」
从'ー'从「でも、貴方が私の前に立つ事はあるかもしれないね」
謎かけのような彼女の返答。
ミ,,゚Д゚彡「どちらも同じだ」
从'ー'从「ふふっ。うん、判ったわ。覚えておくね」
バイバイ、と可愛らしく手を振って、彼女はフサギコ背を向けて去っていった。
フサギコは、『ピンク』の気配を少しでも感じ取れている内はその場に待機し、
やがて気配を完全に察知できなくなると、
ようやくドアの取っ手を引いて建物の内部へと入っていった。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:13:32.92 ID:fKq+66etO
- フサギコが建物内に入った頃、『ピンク』は彼が来た道を歩いていた。
从'ー'从「それにしても凄い殺気だったね〜。
いったいどれ程の覚悟が有ればあんなモノを纏えるんだろ?」
彼女の足取りは軽い。
目の前に好物ばかりの上等な料理を並べられたら、
今の彼女みたいな状態になるのかもしれない。
从'ー'从「ここに来て良かった。目的のモノ以外にも沢山の逸材と出会えたんだもの♪」
泉のように溢れ出す彼女の笑顔。しかし、ふと彼女は笑うことを止め、
从'ー'从「むん」
と気合いを入れた。
从'ー'从「さあ、浮かれてばかりもいられないね」
そして彼女はしっかりと大地を踏み、しかし口元はやはり緩みながら、唄うように声に出した。
.
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:15:47.57 ID:fKq+66etO
- .
(,,゚Д゚) ここは解決屋『シルバー&ブラック』本社のようです 川 ゚ -゚)
第十二話
「準備、準備♪」
.
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:17:50.03 ID:fKq+66etO
- ※
(,,-Д-)「…………」
(,,-Д-)「……、……」
(,,-Д゚)
(,,-Д゚)「…………ぃぇぁ」
目を覚ましたギコが最初に見たのは、くすんだ白色の壁。
それは、彼らの事務所内にあるギコの部屋の天井だった。
(;・∀・)「あっ! ハインさんハインさん! ギコさんが起きましたよ!」
从 ゚∀从「おー、起きたー? まったく寝坊助さんねー」
声が聞こえた方にギコが目を向けるとそこには、
慌てた様子のモララーと、何故か嬉しそうに笑っているハインの姿があった。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:19:59.84 ID:fKq+66etO
- (,,-Д゚)「んあー?」
モララーはともかく、どうしてハインが俺の部屋にいるのだろう。
そう疑問に思ったギコは、体を起こそうとして―――
(;゚Д<)「んがぐあ!!」
全身に走る鈍い痛みに悲鳴をあげた。
从 ゚∀从「あーあー急に起きようとするから。
いくらアナタ達が一般人より治りが早いからって言っても、
あと二日はゆっくりしてなきゃ駄目よ?」
(;゚Д゚)「いたたた……。い、いったい何事……?」
よく見てみたら自分の体が包帯まみれになっている事に気付いたギコは、
こんな有り様になってしまった理由を思い出そうとする。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:22:23.61 ID:fKq+66etO
- そして
(,,゚Д゚)「んー」
と唸ること三秒後。
(;゚Д゚)「あああああっ!!!」
と、これまでの経緯を思い出して絶叫し、
(;゚Д<)「あばらばぁ!!!」
と、大声出したせいで再度痛みが走って、やっぱり絶叫した。
从 ゚∀从「五月蝿いわねぇ。ここには怪我人もいるんだから静かにしなさい」
(;゚Д゚)「お、俺がその……、怪我人、なんだろうが……。ち、畜生……。MAX痛てぇ……」
从 ゚∀从「そうだった。ギコだったわね。よし、じゃあギコ。もっと思う存分叫んでいいわよ」
(;゚Д゚)「断固拒否する……!」
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:24:22.79 ID:fKq+66etO
- ( ・∀・)「いやー、大事じゃなくて良かったです。
グッタリしていたギコさんが担がれてやってきた時は何事かと思いましたよ」
(,,゚Д゚)「担がれて、って誰に?」
モララーの言葉にピンとこないギコ。
しかし、それをキッカケに重要な事を思い出す。
(;゚Д゚)「ってか、そうだ! クーは!? クーは無事なのか!?」
从 ゚∀从「アナタよりは軽傷よ。ついでにアナタ達を担いできた子は今、クーの部屋にいるわ」
目に見えて焦り出したギコを愉快そうに眺めながら、ハインはクーの安否を伝える。
(,,゚Д゚)「そ、そうか無事か」
とりあえず大丈夫そうだと一息つく。
が、ギコは部屋の出口を見たり、窓の外を見たりと、
キョロキョロして落ち着かない様子を見せていた。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:26:32.15 ID:fKq+66etO
- 从 ゚∀从「何そわそわしてるの。顔見に行きたいなら行けばいいじゃない」
(,,゚Д゚)「いや、別に……。じゃなくて、まあ……、行くけどさぁ」
何処となく気恥ずかしそうな顔を見せながら、ギコはベッドの上からゆっくりと起き上がった。
( ・∀・)「肩貸します?」
(,,゚Д゚)「ん。歩くくれーなら問題ねえ」
手助けはいらないと言うように、ギコは右手を上げて払うように振る。
しかし、その時右手に違和感を覚えた。
ギコは無意識のうちに握り締めていたその右手を開いてみる。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:29:02.36 ID:fKq+66etO
- そこには、指輪。
あの時しぃにプレゼントして、そして今は彼の手に戻っている銀の指輪。
(,,-Д-)「…………」
再びその指輪を握り締める。
きつく、しっかりと。
ただ何となく持つのではなく、確固とした意志を持って、それを。
( ・∀・)「ギコさん? どうしました? やっぱりまだ傷が……」
ギコの様子が妙だと感じたモララーは声をかける。
ギコは何でもないよと笑い、一つ上の階にあるクーの部屋へ行く為に階段を上がっていった。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:31:15.00 ID:fKq+66etO
- 三階から四階へと移動したギコは、部屋のドアの前に立つ。
(,,゚Д゚)「クー、俺だ。入っていいか?」
「ギコか? いいぞ」
部屋の中から聞こえたクーの声。
いつもと変わらないその声に安堵感を覚えつつ、ギコは中へと入る。
川 ゚ -゚)「やあ。怪我はもういいのか?」
クーは白いシーツが広がるベッドに腰掛けていた。
頭に包帯を巻いていたが、特に具合が悪そうでは無く、元気そうに見える。
(,,゚Д゚)「ハッ。俺があれくらいでダウンするかよ」
川 ゚ -゚)「よく言う。完全に気を失って彼女に運ばれて来たというのに」
ここでギコはクーのそばにいた二人の少女に目を向けた。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:33:09.83 ID:fKq+66etO
- (*゚∀゚)ノ「や」
一人はつー。デスクの上に座り、ギコの方に軽く手を上げている。
そしてもう一人。
ノパ听)「こんにちわっ」
ギコ達と戦い、そして倒れた少女―――『COLOR's』の『赤』がそこにいた。
彼女は座っていたソファーから素早く立ち上がり、ギコに向けてお辞儀をする。
(,,゚Д゚)「お前は……」
ノパ听)「はい。私はヒート。『ヒート=レッドハート』です。
その折は助けていただいてありがとうございましたっ」
もう一度頭を下げる少女。
彼女のポニーテールがそれにつられて跳ね上がった。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:34:50.21 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)「……ああ。まあ、気にすんな。俺達が勝手にやった事だからな」
ギコは返答しつつも、彼女の動きを逐一見逃してはいなかった。
彼女があの時苦しんでいたのは事実。
『COLOR's』にいいように操られていたのも、きっと真実なのだろう。
だからといって、正気に戻った彼女がギコ達とは敵対関係にならないと決めつけるのは早計だ。
ギコとクーを窮地から救ったのは彼女らしいが……。
それも何か裏があっての事かもしれない。
故にギコは警戒していたのだが―――。
从 ゚∀从「心配ないわよ?」
そんな声と同時に、少し開けられたドアからハインの顔が出てきた。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:37:12.76 ID:fKq+66etO
- 急に現れたハインに対し、ギコは胡散臭そうな目を向ける。
(,,゚Д゚)「そりゃどういう意味だ?」
从 ゚∀从「私、その子に催眠療法したのよ。こっそり。
やましい事とか隠してなかったから安心していいわよー」
(;゚Д゚)「…………」
川 ゚ -゚)「ハイン。むしろお前がやまし過ぎるぞ」
ヒートの目がまんまるく開けられている。
知らない内に自分の心を覗かれていたんだから、そりゃあ驚く。
(;゚Д゚)「う、うーん」
相変わらず道徳心のカケラも無いハインの行動だが、その言葉は嘘ではないだろう。
しかし、
(,,゚Д゚)(かと言ってそうそう簡単にはいかないよなぁ)
とギコが悩んでいると、そこにクーが割って入ってきた。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:54:11.73 ID:fKq+66etO
- 川 ゚ -゚)「ギコ。大丈夫だよこの子は。私が保証しよう」
(,,゚Д゚)「ほー。その心は?」
川 ゚ -゚)+「女の勘」
(,,゚Д゚)「へーそうですか。ちょっと今俺考え事してるから黙ってようか?」
川 ゚ -゚)「女の勘をあまくみるなよ!」
……仕切り直してギコが悩んでいると、
今まで口を開かなかったヒートが意を決したような顔をして発言した。
ノパ听)「……銀さん」
(,,゚Д゚)「なんだ? てゆーかちょっと待って。
その呼び方だとどっかの木刀甘党になるから。ギコでいいから」
ノパ听)「あ、はい。じゃあ、ギコさん」
ヒートがギコの顔を正面から見つめてくるので、ギコもまた見つめ返す。
彼女のその目は、真っ直ぐにギコを見据えていた。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:55:51.84 ID:fKq+66etO
- ノパ听)「私はギコさん達に襲いかかりました。たとえそれが私の本意ではなかったと言っても、
私を信用できないのは当たり前なのかもしれません……」
でも、とヒートは続ける。
その手には力が込められている。
ノパ听)「私はどうしてもあの人達を、『COLOR's』を倒さなければならないんです!
お願いします! 私もギコさん達と一緒に戦わせて下さいっ!」
頭を深く下げるヒート。
伏せて見えなくなったが、彼女のその目はやはり真っ直ぐなのだろう。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 19:58:18.58 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)「……一つ質問がある」
その声により、ヒートの顔が上げられた。
(,,゚Д゚)「お前はどうしても『COLOR's』を倒したいようだが……、何故だ?
いいように操られた仕返しの為なのか?」
ノパ听)「いいえ、違います。あの人達……、特に今の『COLOR's』を纏めている、
は瀬川という男は危険です。警察では彼を、『COLOR's』を止めることは出来ません。
だから、対抗できる力を持った私が止めないといけないんです」
(,,゚Д゚)「どうしてお前がそこまでする必要がある?」
ノパ听)「力無き人達の為に。私は今、ここにいます」
(,,゚Д゚)「……ん、ナルホドね」
ギコは理解する。
目の前の少女は『正義のヒーロー』なんだ、と。
しかも、単にヒーローを真似ているのではなく、
恐らく彼女の本質、思考が正義のヒーローそのものなのだろう。
つまり『ヒーローが格好いいから』『ヒーローに共感できるから』といった余分な考えが一切無い。
言わば『ナチュラル・ボーン・ヒーロー』とでも言うべき存在―――。
それが彼女だった。
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:01:10.67 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)「うーん」
ギコは腕を組み直して再度悩む。
彼女の言葉に嘘はないだろう。この手のタイプは驚くほど自分に厳しいのだから。
(,,゚Д゚)(しかしホイホイと仲間にしちまって良いものかね?)
モララーの場合は保護も含めての事であった。
何より彼はほとんど前線に出ないので、比較的危険が及ぶ事はなかった。
第一、彼の能力を使えば、自身の安全はある程度保障されている。
しかしヒートは最前線でしか能力を奮えない。
故に彼女に襲いかかる危機はモララーとは比べものにならないのだ。
敵は『COLOR's』。
誰かの身を案じながら戦える相手では、無い。
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:02:56.93 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)(だけど……)
断るのは簡単だ。だがギコは悩む。
ヒートのその純粋な思いを無下にはしたくないから。
(,,゚Д゚)(甘いなぁ、俺も)
そんな感じでギコが長らくうんうん唸っていると、
こっそりとクーがヒートの前まで歩いてきた。
川 ゚ -゚)「という訳で今日から君は私達の仲間だ。よろしく頼むよ」
(,,-Д-)「うんうん、コンゴトモヨロシク……」
(゚Д゚;)「って、ちょおっ! なに勝手に返事しちゃってるんですかぁ!?」
川 ゚ -゚)「煩い。お前がいつまでもグダグダやってるからだ」
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:05:12.79 ID:fKq+66etO
- 川 ゚ -゚)「じゃあ宜しくなヒート。はい握手ー」
ノパ听)「あ、はい、握手……。え? 本当にいいんですか?」
クーが右手を差し出したので反射的にその手を掴むヒート。
クーとギコの顔を交互に見ている。
(#゚Д゚)「よくないっ! ……こともないんだけどー……やっぱり……。うああ!」
川 ゚ -゚)「ええい煩いウルサイ五月蝿い。どれだけ優柔不断なんだ、このダメ男が。
お前の決断を待っていたら内閣総理大臣が三回は変わってしまうぞ」
(#゚Д゚)「んぎぎ。よーし判った俺も男だ! スパッと決めてやる!」
クーの口撃、もとい攻撃に歯軋りするギコは、鬼神のような顔でヒートを睨みつける。
ヒートはひい、と小さく声を漏らして一歩退いた。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:07:30.20 ID:fKq+66etO
- (#゚Д゚)「今日からお前は俺達と行動を共にしてもらうっ!
ただし! まず自分の命を第一に考えて動けよ! 『いのちだいじに』だ!」
ノハ;゚听)「は、はあ……。えーと、あれ?」
ギコの怒涛の剣幕にたじろくヒートは、言葉が耳に入ってもロクに理解が出来ていないようだ。
(#゚Д゚)「なんだその気の抜けた声は! 一緒に戦おうっつってんだ! 返事は? ヒート!」
ノパ听)「あ……」
ノハ*゚听)「はい! よろしくお願いしますっ!」
ここで、自分は受け入れられたのだとようやく気付いたヒートは、
満面の笑みで元気良く返事をした。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:10:34.28 ID:fKq+66etO
- 川 ゚ -゚)「よしよし、それでは改めて宜しく頼む。私はクールだ。呼ぶときはクーでいい」
从 ゚∀从「アタシはハインリッヒね。ハインでいいからー」
(*゚∀゚)「つーちゃんだぞー」
ノパ听)「ヒートです。皆さんよろしくお願いします」
先程の緊迫した空間から一転、和やかなムードに変わる。
ハインやつーがヒートと談笑しているのを見ていたクーは、
ふと、視界の端、床に転がっている何かを発見した。
(; Д )「……カッ……グハッ…………!」
そこには体を小さく丸めて、息も絶え絶えにうめいているギコの姿があった。
川 ゚ -゚)「……なにしてるんだ、ギコ?」
(; Д )「クッ……きゅ、急にさけ、叫んだから……っ、傷口が、開い……ウウッ」
蜘蛛の巣に捕まった虫の如くうごめいているギコを見下ろして、
クーは呆れたような顔でため息をついたのだった。
川 ゚ -゚)「……馬鹿」
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:12:51.95 ID:fKq+66etO
- ※
ダウンしたギコを背中に担ぎ、クーはギコの部屋へと入る。
川 ゚ -゚)「よいしょー」
(;゚Д゚)「す、すまねえ」
クーはギコをベッドの上に横にさせ、自身もベッドに腰かけた。
川 ゚ -゚)「ふぅーつかれた。全く、私も怪我人だと言うのに余計な仕事をさせるなよ」
(,,゚Д゚)「いや、ヒートにでも運ばせりゃよかったじゃねーか……」
実際、クーがギコを担ごうとした時、ヒートは私が運びますと言っていたのだが。
川 ゚ -゚)「おいおい、いくら仲間になったとはいえ、
年下の女の子に背負われるのはどうなんだ?」
(,,゚Д゚)「むう……」
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:14:58.42 ID:fKq+66etO
- 川 ゚ -゚)「それに―――」
(,,゚Д゚)「それに?」
川 ゚ -゚)+「恩を売るチャンスだしな」
(;゚Д゚)「やな事を言う……」
部屋に二つの笑い声が重なる。
その声が途絶え、少しの間を置いた後、クーが口を開いた。
川 ゚ -゚)「『銀』」
(,,゚Д゚)「ん?」
川 ゚ -゚)「なっていたな、『銀』色に」
(,,゚Д゚)「ああ……」
川 ゚ -゚)「初めて見たよ、お前のあの姿」
(,,゚Д゚)「あれ? そうだっけ?」
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:17:10.60 ID:fKq+66etO
- 川 ゚ -゚)「そうだよ。お前は頑なに力を開放することを拒んでいたからな」
そういえば、とギコは先程の戦闘を除けば、最後に『銀』になったのは、
例のあの日―――しぃとの戦いの時だった事を思い出す。
ギコとクーが出会ったのは、その事件のすぐ後だった。
(,,゚Д゚)「……あの、さ」
川 ゚ -゚)「なんだ?」
(,,゚Д゚)「さっきまで、俺が気を失っていた間さ……」
(,,゚Д゚)「夢を、見ていたんだ」
川 ゚ -゚)「夢?」
(,,゚Д゚)「ああ。昔の、―――しぃの、夢だ」
川 ゚ -゚)「…………」
(,,゚Д゚)「俺はあの日から『銀』になるのを拒否し続けた。
人の持つ力じゃないモノなんて使いたくなかったから」
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:20:06.69 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)「でも……。夢を見て、あの日を改めて顧みて、そうじゃないって気付いた。
力を使わないから人間なんじゃないんだ。心が人間だから、人間でいられるんだ」
(,,゚Д゚)「俺は脳が、クーは体が人間のそれじゃないけれど……。それでも俺たちは人間なんだ」
川 ゚ -゚)「心さえあれば、か」
(,,゚Д゚)「そうだ。だから俺はこれから力を使う事を躊躇わない。
力に溺れないだけの強い心を、俺は持つ」
川 ゚ -゚)「……そうか。ギコがそう決心したのなら、私は何も言わないよ」
(,,゚Д゚)「ああ。この事は、お前にはちゃんと言っておきたかった」
川 ゚ -゚)「当然だ。ギコと私はパートナーなんだからな」
(,,゚Д゚)「おう。これからも頼むよ、相棒」
ギコは笑う。
クーや他のみんながいる、今の環境。
ここにいれば、きっと道を外す事は無い。
そんな確信に似た思いを彼は感じていた。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:22:50.22 ID:fKq+66etO
- 川 ゚ -゚)「うむ。相棒、か……」
(,,゚Д゚)「ん? どーした?」
ふと、ギコがクーを見ると、なにやらクーは腕を組んでしきりに頷いている。
いったい何事なのかとギコが怪訝な顔をしていると。
川 ゚ -゚)「ところでギコ。君はジョルジュとの戦闘で『銀』になった時、
なんて言ったか覚えているか?」
(,,゚Д゚)「は? なんでそんな事……」
川 ゚ -゚)「いいからいいから」
(,,゚Д゚)「んー。つっても、あんとき頭に血が上ってたからなぁ。何を言ったか……」
川 ゚ -゚)「いや、言ってたんだよ。私に関する事を」
(,,゚Д゚)「クーの? 言ったっけ俺?」
川 ゚ -゚)「しょうがないな、ヒントをやろう」
クーは何故か、妙にウキウキしながら話している。
そんな彼女の様子に、ギコはなんだか言いようのない焦りを感じていた。
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:25:21.34 ID:fKq+66etO
- 川 ゚ -゚)「ヒントは『第十一話-b、>>71の18行目からのギコの台詞』だ」
(,,゚Д゚)「判りやすいようで判りにくいな。つーかメタい。まあいいや、ええと……」
(,,゚Д゚)つ【(,,゚Д゚)「極力こうならないように努めてた……、
いや、深層心理の中でかな? セーブされてたんだが……。
こうなっちまったら後は同じだ。俺の女をしこたま殴ってくれた礼だ、本気で行くぞ」】
(,,゚Д゚)「コレか。まったく恥ずかしい台詞だ。誰が言ったんだ、この厨二病まるだしの台詞?」
川 ゚ -゚)「君だよキ・ミ。ともかく、何か気付いた事は?」
(,,゚Д゚)「さあ?」
川 ゚ -゚)「じゃあ実際に口に出して言ってみたらいいよ」
(,,゚Д゚)「えー。かったるいな。ええと……」
(,,゚Д゚)「『きょくりょくこうならないようにつとめてた。
いやしんそうしんりのなかでかな。せーぶされてたんだが。』」
川 ゚ -゚)「その調子その調子」
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:27:54.49 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)「『こうなっちまったらあとはおなじだ。おれのおん―――』」
『俺の女』―――。
(,,゚3゚).:∵*:∴ ゚ ブフーッ
川 ゚ -゚)「おっ、気付いた気付いた」
/(;゚Д゚)\(くああああっ!! 一年八ヶ月前の俺のバカ!! 間違えた!
ついさっきまでの俺のバカ!! 何であんな事言ったんだ!?
勢いか!? 勢いなのか!? 勢いってすげえ! 勢いバンザイ!!)
川 ゚ -゚)「おお、見事に混乱してるな」
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:30:07.40 ID:fKq+66etO
- (;゚Д゚)「いや、あの、その、そ、そうだ! クー、あ、アレは何というか言葉のあやで―――」
川 ゚ -゚)「あ……そうか。本心からの言葉では、無かったのか……」
(,,゚Д゚)(―――ハッ!)
川 ゚ -゚) ショボーン
(,,゚Д゚)(クーが心なしか悲しげな目をしている………………気がする)
(,,-Д-)(俺は何をしている!? ここは男を見せる時じゃないのか!?
そうだ、ついさっきヘタレだの何だの言われたばかりじゃないか!
クーだって俺からハッキリ言ってくれるのを望んでいるに違いない!
恐れている場合じゃねえ! 男なら当たって砕けろだ!)
(,,゚Д゚)+「クー!」
川 ゚ -゚)「ん、なに?」
(,,゚Д゚)+「アレは俺の正直な台詞だぜ! クー、お前は俺のモンだ!! 文句あるか!?」
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:32:51.67 ID:fKq+66etO
- .
川 ゚ -゚)「あるに決まってるだろ。私は私のモノだ。なに勘違いしてるんだ、このクズ男が」
(,,;Д;)「はい砕けたぁ――――!! 今ので俺の心完全に砕けたよぉ――――!!
あー今最っ高に死にたいなぁ――――!!!」
この世の終わりのような顔でむせび泣くギコ。
しかし暴れたりはしない。
何故なら彼は今、ベッドの上にいるから。
ベッドの上で動き回るとホコリが舞うからである。
川 ゚ -゚)「なあ、ギコ」
(,,;Д;)「うっうっ、なんですか?
今、僕は優しい言葉以外を掛けられたら千の風になりそうなんですが」
川 ゚ -゚)「ふと思ったんだが、『クズ男』と『九州男』って似てるよな。響きとか」
(,,つДと)「酷くどうでもいい発言ありがとうございます……。
おかげさまで私は、エアーズロックに私の遺灰をバラまかれる覚悟は出来た所存です……」
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:35:04.52 ID:fKq+66etO
- ギコがしゃくりあげる声に混じって、
下の階から「ただいまー」という男性の声がクーの耳に入った。
川 ゚ -゚)「む。ショボンが来たようだな。これで全員揃ったし、
ミーティングをしよう。場所はここでいいや」
そう言って、ショボンを迎えに行こうとクーは部屋の外に出ようとする。
ギコが何かを訴えるような目で彼女を見ていたが、スルーされた。
川 ゚ -゚)「―――ああ、そうそう」
ドアを開け、体の半分を外に出したところで、クーは顔だけをギコに向けた。
(,,つД゚)「なんですかー。どうせまた、どうでもいい事を言うんだろ?
『なんでローソンのうまい棒は9円で売ってるんだろうな?』とかそんなの」
川 ゚ -゚)「いや、そっちじゃなくてな。あ、でも気になる……」
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:38:48.33 ID:fKq+66etO
- 川 ゚ -゚)「ま、そんなに落ち込むな。失敗は誰にでもあるさ」
(,,゚Д゚)「あ、駄目だ。慰められるとそれはそれで心の傷にしみる」
川 ゚ -゚)「どうされたいんだ、君は」
毛布にくるまってイジイジし続けるギコを見て、
クーは「おほん」と一つ、咳払いをする。
川 ゚ -゚)「まあ、それにだ、別に失敗という訳でも実はないぞ」
(,,゚Д゚)「あのー、失敗失敗言わないでもらえます?
その度に体が逆側に反り返る程、傷が抉れるんですが」
川 ゚ -゚)「いいから聞け。だから、私はそれなりに―――」
(,,゚Д゚)
川 ゚ -゚)「それなりに―――」
(,,゚Д゚)
川 ゚ -゚)
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:40:49.52 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)「…………?」
ギコが、言葉の続きを言いたがらないクーに疑問を抱いていると。
川 ゚ -゚)
彡
バタン、と、ドアが。
(,,゚Д゚)「閉まっちゃったよ」
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:43:13.95 ID:fKq+66etO
- 本当に、何をしているのだろう。
首をひねて、クーが何を言おうとしていたのかを予測しようとした時。
「嬉しかったよ」
扉の向こうから声が聞こえた。
(,,゚Д゚)「え?」
突然の事に呆けるギコを余所に、階下へと歩む足音だけが響く。
しばらくドアの方を見ていたギコだったが、やがて背中をベッドに乱雑に預けた。
ギコはしばらく大の字のまま、白いくすんだ天井を見上げていたが、ふと、ポツリと呟いた。
「可愛いやつめ」
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:45:33.34 ID:fKq+66etO
- ※
(,,゚Д゚)「さて、と」
ギコはベッドの上にあぐらをかき、ぐるりと周りを見渡した。
ギコの部屋には今、クー、モララー、ヒート、ハイン、つー、
そしてショボン、と一同が集っていた。
(,,゚Д゚)「そんじゃまずはショボンの報告から聞こうか」
(´・ω・`)「うん。でも、申し訳ないけど言う事は何も無いよ。追跡は失敗しちゃったから」
ギコとクーがフサギコの奇襲を受けていた時。
ヒートとハインが二人の救助に向かったのだが、実はショボンもその場に潜んでいた。
ショボンは全てが終わってその場を去ろうとするフサギコの後を追い、
彼らのアジトを突き止めようとしたのだ。
しかし、
(´・ω・`)「無理無理。あのまま追っかけてたら消されてたよ。それはもう、物理的に」
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:48:04.07 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)「ま、無理だよな。てゆーか……」
ギコはヒートの方を見る。
(,,゚Д゚)「ヒートがいるんだから場所は判るんじゃねえの?」
ノパ听)「……はい。確かに場所は判るんですけど」
歯切れが悪そうにヒートは語り出す。
ノパ听)「ただその場所に行くだけでは、中に入る事は出来ないんですよ」
川 ゚ -゚)「? どういう意味だ?」
ノパ听)「『ピンク』と呼ばれる人物のせいです」
『ピンク』―――。
その名前を聞いたギコは、ふと思い出した。
(,,゚Д゚)(『ピンク』……。確か流石兄弟が言ってた、残る『COLOR's』の内の一人だったな。
アイツら曰く、正体不明らしいが……。どんな奴なんだ?)
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:49:53.78 ID:fKq+66etO
- ヒートは言葉を続ける。
ノパ听)「実際彼女が何をしているかは判らないのですが……。
ともかく、『ピンク』がアジト周辺を四六時中監視しているので、
味方以外は確実にアジトへ辿り着けないんです」
川 ゚ -゚)「その『ピンク』とやらは幻術でも使うのか?」
ノパ听)「幻術……。恐らくそれに近いものだと思われます」
(´・ω・`)「という訳らしいから、フサギコ君の後をつけて突破しようと思ったんだけど……。
やっぱりそんな簡単には行かなかったね」
川 ゚ -゚)「ふむ、どうしたものかな……」
(*゚∀゚)「取り敢えず、その場に行ってみたらどう? 辺りを探したら何か判るかも!」
从 ゚∀从「それは駄目よ。敵地で無闇にウロウロするのは良くないわ。
その場で向こうから仕掛けられたら、こちらは圧倒的に不利になるから」
(*゚∀゚)「そうかー……。じゃあどうしたらいいんだー?」
「「う〜ん……」」
皆、頭を悩ませる。
場所は判るのに侵入できる方法が判らないのは、何とももどかしいものだ。
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:52:05.88 ID:fKq+66etO
- ( ・∀・)「やっぱり向こう側からやってくるのを待つしかないんですかね?」
从'ー'从「いやいや、その必要はないよ、モララー君。もう私『COLOR's』抜けちゃったし」
(;゚Д゚)「!!」
川 ゚ -゚)「!?」
从 ゚∀从「……!」
(;・∀・)「って、え!!?」
ノハ;゚听)「なっ……、『ピンク』っ!?」
まるで始めからそこにいたかのように。
誰からも認識される事無く、しかし同時に誰もが瞬間的に彼女を認識した。
不自然な程に自然に『出現』した桃色の髪の女性は、ギコの部屋の机に腰を降ろしていた。
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:54:47.43 ID:fKq+66etO
- 从'ー'从「あ、ヒートちゃんだ。うんうん、元気そうだね。何よりだよ」
ノハ;゚听)「……っ」
その部屋にいる全員が彼女を緊迫した面持ちで見ているというのに、
彼女は一切気にもせず、世間話をするかのようにヒートに話しかけた。
異質。全てが異質。
彼女、『ピンク』はその場にいる他の誰よりも異なっていた。
川 ゚ -゚)(……一体)
思わぬ事態にしばし硬直していたクーは、しかし素早く立て直し、思考する。
そして湧き出るように浮かび上がる数々の疑問。
川 ゚ -゚)(一体、この女は何時この部屋に入ってきた? 私もギコも、それどころか―――)
(;・∀・)(―――全く気付かなかった。気付けなかった。
何も予兆が無かった。こんなの……初めてだ)
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:58:13.18 ID:fKq+66etO
- 『危険察知』。
彼が持つ、唯一無二の非凡な才能。
これまで(特にギコやクーと知り合ってから)、
彼の身の回りで起こる様々な『危険』は、大小あれど確実に読み取っていた。
それ故に彼は、その力に少なからず自信を持っていた。
だからこそ、驚愕した。
己の力では測りきれないモノが、目の前に存在する事に。
(;・∀・)(……力が、急に使えなくなった訳じゃない。今は見えている。
僕の脳が、『彼女は危険だ』と知らせてくる)
モララーが危険を読み取る時。
彼の脳、もしくは彼の潜在意識とでも言うべきモノが、彼に危険を知らせる。
それによって、あの領域は危険だという事を理解するのだ。
そして、ごく稀にではあるが、その危険領域が赤く見える事があった。
それは赤い斑模様だったり、赤い霧のようだったりした。
これらが見える時。
それは危険領域がハッキリと視認できるという事なので、
モララーは赤いモノが見える日は調子が良い日なんだと考えていた。
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 20:59:51.59 ID:fKq+66etO
- そして現在。
『ピンク』が彼の目の前にいるこの瞬間。
この時も、モララーには赤いモノが見えていた。
(;・∀・)(でも、これは……)
モララーが思考の渦に捕らわれていると、ふと、彼の耳に音が届いた。
それはとても微かなものだったが、彼にとってはよく耳にする音だったのですぐに気がついた。
その音とは、金属同士が擦れる音。
(,,゚Д゚)「……っ!」
ギコの鎖が、うねりを上げて『ピンク』の元へと走った。
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 21:03:04.41 ID:fKq+66etO
- 突然の襲撃。
並の人間なら訳も分からぬ内に意識を失うだろう。
しかし相手は『COLOR's』。
この程度の攻撃なら、躱すか捌くかして難なくやり過ごす筈だ。
しかし、『ピンク』の取った行動はそのいずれでも無かった。
彼女は鎖が体に触れようとするその瞬間に、『消えて』しまった。
目標を失った鎖は彼女が腰掛けていた机と衝突し、
ヒステリックな女性の叫び声のような音を立てる。
(,,゚Д゚)「ちっ! どこにいった!」
从'ー'从「ここだよ」
(゚Д゚;)「っ!?」
彼女は机があった場所とはちょうど反対側に位置する、部屋の入口のドア近くに立っていた。
髪も衣服も乱れた様子はない。
まさにワープしたとしか思えない程の早業だった。
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 21:04:55.18 ID:fKq+66etO
- (;・∀・)(駄目だ、やっぱり反応できない。気がついたら赤が消えて、気がついたら赤が……)
从'ー'从「まったく〜。急に乱暴したら驚いちゃうでしょ?」
(,,゚Д゚)「テメエ……。ここに何しに来やがった?」
鎖を引き戻し、ギコは油断無く構える。
クーとヒートも、いつでも飛びかかれる体勢へとシフトしている。
从'ー'从「そうそう、教えに来たんだよ〜。私、『COLOR's』から離れたの」
(,,゚Д゚)「……あぁ?」
从'ー'从「袂を分かったって事ね。だから君達は安心して
『COLOR's』のアジトに辿り着けるんだよっ♪」
『COLOR's』を辞めた。
彼女は微笑みながら、なんて事のないように話した。
そうであるなら、ギコ達にとって目の前の女性は敵では無いという訳になるが、しかし―――。
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 21:07:49.63 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)「それを俺らに信じろってか? そいつはかなり無理があるぜ」
从'ー'从「そうだね。そうなるよね」
切って落とされた彼女の言葉。
だが彼女にとってもこの返答は予想済みだったのだろう。
だから言葉を続けた。
从'ー'从「でも、だからといって君達は『COLOR's』のアジト襲撃を見送るのかな?
今まで通り、後手に回ることにする?」
(,,゚Д゚)「…………」
ギコは苦い顔をする。
『COLOR's』を早い内に潰す事が出来るのなら、それに越した事はないのだ。
川 ゚ -゚)「だが、罠と判っていて進もうという愚直な真似は出来んな」
ここでクーが口を挟んだ。
ギコを支えるように。同時に、『ピンク』に牽制をするように。
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 21:10:02.58 ID:fKq+66etO
- 从'ー'从「罠なんて無いって。それに、ゆっくりしてもいられないんだよ?」
川 ゚ -゚)「? どういう意味だ?」
从'ー'从「は瀬川、って男は知ってるよね?」
は瀬川。幾度となく聞いたその名前。
現在の新『COLOR's』を立ち上げ、牛耳っている男だ。
从'ー'从「彼が『No』の大量生産に身を乗り出したの」
川 ゚ -゚)「!」
『No』とは『COLOR's』の科学者達が作り上げた、人工生命戦闘員の通称。
『No』一体で、武器を持った男三人と相手が出来る。
そんな奴らが大量に産み出されるとなると、ギコ達にとって不利になる。
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 21:12:50.90 ID:fKq+66etO
- 川 ゚ -゚)「……その話、本当か?」
クーは窺うように『ピンク』に問いただす。
『ピンク』は何も答えず、替わりに横から声が上がった。
(´・ω・`)「本当……である可能性が高いね」
(,,゚Д゚)「ショボン?」
発言したのはショボンだ。彼は皆の視線を集めると、再び口を開く。
(´・ω・`)「実はここ最近、闇市場の方で妙な動きがあったっていう情報をキャッチしてね」
(,,゚Д゚)「闇市場? っていうのはアレか?
人間の内臓やら何やらが非合法に出回ってるっていう例の?」
(´・ω・`)「そう。その闇市場。漫画みたいな話だけどね。
で、だ。そこで一人の人物が『とあるモノ』を大量に購入していたんだ」
川 ゚ -゚)「その『とあるモノ』とは?」
(´・ω・`)「炭素、石灰、アンモニア、リン、硝石、硫黄、フッ素……、などなどだ」
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 21:15:50.94 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)「? それらがどうかしたか?
何に使うのかは判らんが、別に何も変わったところが無い普通の代物だと思うぞ」
(´・ω・`)「そうだ。何も変哲の無いモノなんだよ。
それこそ、わざわざ闇市場なんかで取引しなくてもいいようなモノばかりだ」
(,,゚Д゚)「あ……」
(´・ω・`)「僕が妙と言ったのはその部分だ。そして今、そこにいる彼女の話で合点がいった」
ショボンは一旦区切り、少し溜めてから、次の言葉を吐いた。
(´・ω・`)「さっき挙げたモノは『人間の材料』だ。
人間を構成している物質を、その人物は大量に集めていたんだ」
ショボンの言葉にギコ達は息を呑む。
『人間の材料』を集める―――。
すなわち『No』の大量生産をは瀬川が目論んでいるという
『ピンク』の情報と繋がるのではないのだろうか?
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 21:18:06.93 ID:fKq+66etO
- (;゚Д゚)「お、おい! その材料を集めてる人物ってのは―――」
(´・ω・`)「残念ながら、それは僕にも判らなかった。
恐らくその人物も自分の素性をバラしたくないから闇市場を利用したんだろうね。
あそこでの売買において、相手の素性や事情を詮索する事はタブーになっているから」
「ただ……」、とショボンは言葉を止める。
あくまでも可能性の枠を出ないが、その謎の人物がは瀬川であるという事は大いに有り得る。
そして現実、それがは瀬川だった場合、『COLOR's』の戦力が増す。
それはギコ達にとって避けるべき事態であり、
从'ー'从
笑みを崩さない彼女が先程述べた情報と一致する事になる。
- 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 21:20:10.75 ID:fKq+66etO
- 何故彼女は敵であるギコ達に、そのような重要な情報を話したのか。
彼女が『COLOR's』と離別したというのは本当だというのだろうか。
(,,゚Д゚)「……仮にお前の言った事が全て事実だとして、だ」
判らないからギコは聞く。
彼女の真意を。そして目的を。
(,,゚Д゚)「なんでそれを俺達に話す? お前が『COLOR's』を抜けたって事は
俺らとも関わりが無くなる筈だ。一々関与する必要はねぇ。そうだろ?」
淡い桃色の瞳をギコの双眼が射抜く。
どこまでも不自然な彼女を視線で縛り上げる。
(,,゚Д゚)「お前は……何がしたい?」
- 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 21:23:33.26 ID:fKq+66etO
- 問いに対し、『ピンク』は笑った。
いや、もともと笑っていたのだが……。
(;・∀・)(ッ!)
モララーは気がついた。
彼は、目で見る以外の方法―――『危険察知』によって
彼女を『視』ていたので、彼だけが気がつく事が出来たのだ。
从 ー 从「私? 私がしたいこと、私が望むことは……」
彼女の、今までのような無邪気なソレではなく。
暗く冷たく、それでいて底が見えない、深海のような笑みを。
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 21:25:55.25 ID:fKq+66etO
- (;・∀・)(……こんな、…………)
しかしそれも束の間。
幻か何かのようにその表情は消え、元の笑顔に戻った彼女は口を開く。
从'ー'从「もちろんっ♪ 世界平和の為だよ〜っ♪」
(,,゚Д゚)「…………はぁ?」
気の抜けた、間延びした声。
『ピンク』はにんまりと笑い、両腕を広げて、その場でくるくる回った。
从'ー'从「世界中の人が幸せになったらそれはとっても素敵だよね〜♪
私はそんな誰もが望む世界―――『善世界(ハッピーワールド)』を目指しているの」
彼女は穢れを知らぬ少女のような夢を語る。
- 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 21:28:21.67 ID:fKq+66etO
- 川 ゚ -゚)「お前は、何を……」
从'ー'从「だから私は去るの。為すべき事を為すために。
その為には地獄ですら行くのを躊躇わないわ。
だってその先には心地よい風が吹く天国があるんだもん」
回転を止め、彼女はギコ達の顔を見る。
彼女の顔は、すべてを包み込む聖母のような穏やかな笑みに溢れていた。
从'ー'从「だから君達も進むんだよ。自分の信じる道をね。
大丈夫、道はきっと繋がっているから」
彼女の姿が薄くなる。
確かにその場に立っている筈なのに、まるで煙のように彼女の存在は心許ない。
- 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 21:30:30.18 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)「おいっ、待て! テメエにはまだ聞きたい事がっ……!」
从'ー'从「またいつか会えるのを楽しみにしてるね。バイバイ」
そして『ピンク』は消えていった。
「君達に、『天から降る風』の加護があらん事を」
ギコ達に一つの祝辞を残して。
- 103 名前: ◆KrvshEaXS2 投稿日:2010/12/17(金) 22:03:21.45 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)「……行っちまったのか? 結局なんだったんだよ……」
『ピンク』が姿を消して一分、誰も言葉を発さなかったが、
どうやら彼女は本当に去ったという事が判ると、ギコは疑問を口に出す。
川 ゚ -゚)「警告、だったのか? 色々と腑に落ちないところはあるが」
从 ゚∀从「うーん……」
眉間を右手の親指と人差し指でつまむような格好で
考え事をしていたハインは、ヒートに問い掛ける。
从 ゚∀从「ねぇ、ヒートちゃん? さっきの彼女は普段からあんな感じなのかしら?」
問われたヒートも思考中だったのか、ハッとした表情でワンテンポ遅れて反応する。
ノパ听)「あ、はい。えーそうですね。向こうで私と直接話した事はありませんでしたが。
だいたいはあのように、周りを自分のペースに引き込むような話し方をするというか……。
常に軽口を言っている、って感じでした」
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:05:49.80 ID:fKq+66etO
- 从 ゚∀从「ナルホドね。とすると、彼女……『ピンク』、だっけ?
『ピンク』の言ってた事は案外事実なのかもね」
そのハインが出した答えに、ギコは怪訝そうな顔で真意を聞く。
(,,゚Д゚)「その根拠は?」
从 ゚∀从「女の勘」
それを聞いたギコは、「えー」と異議を申し立てたい顔になる。
(,,゚Д゚)「またそれか……。しかもお前、女って感じじゃ……」
ギコはハインの真の顔―――戦闘モードの際の凶暴な性格を知っている。
故に彼女の「女」発言に対し、全力で疑問をぶちまけたかったのだが。
从 ^∀从「な・に・か・い・っ・た?」
(;゚Д゚)「い、いや……。ゴメンナサイ」
ハインの素敵すぎる笑顔(背後で般若を形どったオーラが見える)
に怖じ気づき、反射的に謝る事となった。
- 105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:07:50.89 ID:fKq+66etO
- 川 ゚ -゚)「ともかく。例え罠だとしても退く訳にはいかないだろう?」
そのクーの言葉にショボンが頷きを返す。
(´・ω・`)「兵力の増強の件は確実と言ってもいいしね。間を置けば不利になるのは間違いない」
(,,゚Д゚)「退歩は無し、か。上等だ。
罠だろうがなんだろうが、それを上回るパワーを見せりゃ済む事だ」
ギコが左の掌に右の拳を打ちつけて、自らの気概を表す。
川 ゚ -゚)「じゃあ……」
(,,゚Д゚)「ああ。四日後、襲撃をかけるぞ。これで今度こそ終わらせてやる」
ギコ達の進路は決まった。
皆、その決断に不服はないようだ。その目は強い志気に満ちている。
- 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:10:00.42 ID:fKq+66etO
- しかし一人だけ、別の目をしている者がいた。
(*゚∀゚)「……ん? モララー?」
(; ∀ )「…………」
(*゚∀゚)つ「おいこらモララーって。むしするなー」
モララーが心ここにあらずといった感じでいるのに気付いたつーは、
近寄って彼の胸元を突っつく。
(;・∀・)「えっ? あ、ああ、つーちゃん? どうかした?」
(*゚∀゚)「それ聞きたいの、こっちだってーの。顔色悪いよ? だいじょぶ?」
( ・∀・)「え? そう? ご、ゴメン。これで決着かと思うと緊張しちゃってさ」
(*゚∀゚)「そうなのかー。モララーは小心者だなぁ。
よし、君の不安を消すためにつーちゃんがマザーのごとく
抱きしめてあげよう。さあ来なさい!」
胸を張り、両腕を広げて受け入れ体勢に入るつー。
- 109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:12:12.13 ID:fKq+66etO
- ( ・∀・)「あはは、そんな事したらハインさんに
ダルマにされて脳に植物植えられそうだから遠慮しとくよ」
(*゚∀゚)「えーつまんないなー」
( ・∀・)「それにつーちゃんのおかげで緊張もほぐれたし、
もう大丈夫。ありがとう、つーちゃん」
(*゚∀゚)「そう? ま、だいじょぶって言うならいいや。当日は頑張ろーなー」
( ・∀・)「うん、頑張ろー」
抱きしめてくれなかった事に対しつーは不満そうだったが、
モララーが頭を撫でると途端に満面の笑みになった。
つーの、上質な絹のような髪の感触を堪能しつつ、モララーは思い出していた。
『ピンク』。
彼女は何者だったのだろうか?
いや、彼女は本当に『者』だったのか?
モララーの目には、彼女が人間であるように見えなかった。
- 110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:14:15.85 ID:fKq+66etO
- なぜならあの時、『ピンク』が現れた瞬間。モララーが見た光景は―――。
( ・∀・)(―――『赤』。一面の、血に濡れたような『赤』だった)
モララーの『危険察知』。
たまにぼんやりと危険な位置が赤く見える事はあるが。
ああまでハッキリと、かつ濃い『赤』は始めてだった。
しかもそれが一面だ。ギコの部屋の総てが『赤』で塗り潰されていた。
ギコもクーも。
ショボンもハインもつーもヒートも。
そしてモララー自身も。
総て『赤』に。
- 112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:15:48.03 ID:fKq+66etO
- その光景が意味するモノは、つまり―――
( ・∀・)(……彼女は、やろうと思えば)
―――あの場にいた全員を、容易く殺す事が出来たんじゃないのだろうか。
モララーは、背中に冷たいモノが流れ落ちるのを感じた。
- 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:17:56.66 ID:fKq+66etO
- .
「…………ー、……い……ラ……!」
(,,゚Д゚)「モララー! 聞いてんのか!?」
(;・∀・)「えっ!? ……あ」
自分が呼ばれている事に気付いたモララーは、素っ頓狂な声を漏らしつつギコの方を見る。
彼の顔が若干不機嫌そうなところを見ると、何回か呼ばれていたらしい。
(,,゚Д゚)「何ぼーっとしてんだよ。話聞いてなかったな? この野郎」
(;・∀・)「す、すみません。つい……。えーと……」
(,,゚Д゚)「だーかーらー、お前は何が欲しいって聞いてんだよ」
- 114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:20:00.72 ID:fKq+66etO
- ( ・∀・)「欲しい? ギコさん何か僕にプレゼントでもくれるんですか?」
(,,゚Д゚)「どあほう」
(;・∀・)「痛い!」
ギコのチョップがモララーの額にヒットする。
モララーは赤くなった額を涙目でさすった。
(,,゚Д゚)「何で俺がそんな事しなきゃならんのだ。
敵のアジトに乗り込むんだから武器のリクエストを聞いてんだよ。寝ぼけてんのか?」
(;・∀・)「あ、そういう意味……」
ようやくモララーがギコの質問の意味を理解すると、横からショボンが口を挟んだ。
(´・ω・`)「モララー君は後で僕のところに来ればいいよ。
僕が今の彼の腕に見合った銃をチョイスするから」
(,,゚Д゚)「ん、そうか。じゃあモララーはいいとして……ヒートは?」
ノパ听)「私はコレひとつで充分です。というか、コレ以外の武器なんて使った事無いですし」
- 115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:22:05.84 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)「そっか。そっちの二人は?」
ギコはハインとつーに尋ねる。
彼女達は目と目でお互いに確認し合うと、
从 ゚∀从「ああ、私達は―――」
(*゚∀゚)「アタシらの家から持ってくるから大丈夫だぞー」
と答えた。
(,,゚Д゚)「ふむ。まあショボンも自分のトコから持ってくるだろうからいいとして……」
川 ゚ -゚)「後は私達の武器か」
ギコは懐から愛用の鎖を取り出して、それをショボンに、ずい、と押し付けた。
(,,゚Д゚)「とゆー訳で、ショボン。コイツのパワーアップをよろしく頼む」
(´・ω・`)「パワーアップって簡単に言われてもなぁ……」
ショボンは困ったように頬を指で掻きながら、それでも鎖を受け取る。
- 116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:23:54.39 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)「まあまあ。見た目普通の鎖だが、一応ソイツも
『COLOR's』製だぜ。何か面白い仕掛けがあるかもよ?」
( ・∀・)「あるかもよ、って……。ギコさん、自分の武器なのに知らないんですか?」
ギコの言葉に、モララーは不思議そうに尋ねた。
自分の武器の事を知らないとはどういう訳なのだろう、と。
(,,゚Д゚)「ん? ああ、いやいや。この鎖、俺専用の武器って訳じゃねーんだよ、実は」
( ・∀・)「あれ? そうだったんですか?」
そう言うと、ギコは昔を思い出すかのように目を細める。
(,,゚Д゚)「コレは『COLOR's』から抜け出す時にテキトーにかっぱらってきたモンでな。
確かジジイは未完成だとか言っていたが……」
ノパ听)「その割には鎖の力を充分に使いこなせているように見えますけど……」
ギコの話に興味を持ったのか、ヒートも会話に加わってきた。
- 117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:25:49.82 ID:fKq+66etO
- ( ・∀・)「だよねぇ。途中で進行方向が直角に変わったりとか、
バラバラになった鎖が竜巻みたいになるのとか、
普通のじゃ有り得ない動きしてるのに」
(,,゚Д゚)「あー、アレな。今だから言うんだが、アレは鎖の力じゃなくて俺がやってんだわ」
( ・∀・)「は?」
「自分でやっている」という言葉の意味が理解できないモララー。
(,,゚Д゚)「まあ見てな。実際にしてみせよう」
ギコは目を閉じ、息を浅く吐く。
ノパ听)(あっ……)
ヒートが、場の空気が変化した事を感じ取るのと同時に、
(,,゚Д゚)「ふっ!」
ギコの髪、そして瞳の色が『銀』へと変わった。
- 118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:27:54.69 ID:fKq+66etO
- (;・∀・)「ええええ!?」
ついつい大声を上げるモララー。目をこれでもかと見開いて、驚きの深さを示す。
(,,゚Д゚)「ああ、そう言えばモララーってコレ見るの初めてだっけ?
『COLOR's』とバトる時はお留守番だったしなぁ」
(;・∀・)「おおお驚いたぁ……。どうなってんですかソレ……。
え? てゆーか『COLOR's』の皆さんって
みんなそんな感じに変身できるんですか? ヒートちゃんも?」
ノパ听)「あ、うん。まあ」
言うやいなや、ヒートの瞳と髪が『赤』に染まる。
(;・∀・)「おぉー。凄いなー。綺麗だねー」
ノパ听)「え? あ、ありがと……」
突然『綺麗』だと言われたヒートは、狼狽えながらも少し照れてお礼を言う。
モララーとしては、腕のある職人が丹精込めて作った反物のような、
見事な『赤』色を誉めただけであったのだが。
- 120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:30:50.42 ID:fKq+66etO
- ( ・∀・)「あーそういえば、あの『ピンク』って人も髪とか桃色だったなぁ……。
ん? て事はクーさんも変身できるんですか?」
(,,゚Д゚)「ん? いーや?」
ギコはチラとクーの方を見てみる。
クーはつーと何やら話し込んでいるようだ。
川 ゚ -゚)「……で、つーにはこれらを使えるように改良して貰いたいんだが」
(*゚∀゚)「なになにー…………ぉおう! これはこれは……」
川 ゚ -゚)「どうだ? 出来そうか?」
(*゚∀゚)「いやー実際にイジってみないと何とも……。しかしこれはスバラシイ……。
メカニック魂に火が付き過ぎてオーバーヒートしそうだぁ……」
川 ゚ -゚)「……分解して戻せませんでしたー、とか勘弁してくれよ?」
(*゚∀゚)「だいじょぶだいじょぶ。でも流石にアタシだけじゃ手が余るなぁ。
独り占めしたいけどしょうがないか。おーい! ショボン!」
(´・ω・`)「はいはい判っているよ。手伝うんだね? 僕にとってもそれは興味深いから楽しみだ」
……などと、秘密裏に何かを進めているようだった。
- 121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:32:50.97 ID:fKq+66etO
- ギコは視線を元に戻す。
(,,゚Д゚)「クーはあのままだよ」
( ・∀・)「あれ? そうなんですか?」
ノパ听)「クーさんは『黒』ですよね。確かに変わりようがないですね。
人の髪や瞳の色は、元々黒ですから」
( ・∀・)「あ、そっか」
(,,゚Д゚)「ま、逆を言えばクーは最初から全力を出せるって事だけどな。
……なんか話が逸れちまったな。ええと、確か俺の力についてだったか」
ギコはモララーの方に体を向ける。
(,,゚Д゚)「んー……」
そしてジッとモララーを―――正確にはモララーの胸のあたりを見た。
- 122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:34:53.51 ID:fKq+66etO
- ( ・∀・)「あ、あれ?」
モララーは奇妙な感覚を得る。
それは例えるなら透明の手がモララーの服を探っているような感触だ。
(,,゚Д゚)「よっと」
ギコからそんな声がした、次の瞬間。
(;・∀・)「うわっ!?」
モララーの胸元から彼のボールペンが、ポーンと空中に飛び出してきた。
その予想外の出来事に、モララーは普段より半音高い声を上げた。
ノパ听)「これは……、いわゆる『テレキネシス』ですか?」
一連の動作を見ていたヒートは、神妙な面持ちでギコに尋ねる。
- 123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:36:51.36 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)「そうそう。その『テレキネシス』」
『テレキネシス』とは、自身の念を送って対象物を動かす超能力の事を指す。
ギコは、自分の力の源こそがその『テレキネシス』だと語る。
(,,゚Д゚)「ネタバラシするとあの鎖はこの力で動かしてんだよ」
( ・∀・)「はー……。いや、今までギコさん達のトンデモっぷりに振り回されて、
大概の事には動じなくなったつもりだったんですが……。
流石にコレにはもう閉口するしかないですねぇ」
妙に感心した風のモララーを横目に、ギコは「いやいや」と首を横に振る。
(,,゚Д゚)「つってもそんな使い勝手のいいモンじゃないぜ、コレ。
人ほどの重さになると動かせないしな。
基本的にはブースターとしてしか使わんのよ」
ノパ听)「ブースター、ってどういう意味ですか?」
(,,゚Д゚)「あー……つまりだな、例えば俺がパンチを撃つとするじゃん?」
ギコは実際に右拳を軽く虚空に振ってみせる。
- 124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:39:57.28 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)「当然だけど、どんなに力入れて撃っても俺の全力より上の力は出ない。
で、テレキネシスの出番だ。コイツで半ば無理矢理に筋肉を動かす事で
限界を遥かに越えたパワーを生み出す訳だな」
ノパ听)「? さっき、人は動かせないって……」
(,,゚Д゚)「そりゃ他人の話だ。自分の体なら勝手が判るから、
動く体を後押しする程度なら出来る。
と言っても流石に空を飛んだりとかは出来ないぜ。
せいぜいジャンプ力を上げるくらいだよ」
ノパ听)「なるほど……」
(;・∀・)「わ、わかったよーな、わからないよーな……」
(,,゚Д゚)「ま、要するに俺の体は超能力でメッチャ動けるって事だ。
そう難しく考える程のモンじゃ無い」
( ・∀・)「普通に超能力とか言ってる時点で、理解の範囲外なんですがねー……」
モララーは目を細めて、遠くに置いてきた『常識』を懐かしんだ。
- 126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:42:52.32 ID:fKq+66etO
- ノパ听)「しかし、そんな力があるのなら、武器はいらないんじゃないですか?」
(,,゚Д゚)「ああ、うん。まあ、それはごもっともな意見なんだけどさぁ……」
ヒートの疑問に、ギコは歯切れ悪く言葉を返す。
ノパ听)「なにか、無手では不都合な事があるんですか?」
(,,゚Д゚)「うん、ホラ。素手だとどうも地味って言うか、なんて言うか……」
ノパ听)「…………」
ノパ听)「はい?」
- 127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:44:51.27 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)「いやね、グローブがあればまだ話は別なんだけどな。
やっぱ悪の組織に乗り込むのに素手はねぇよなぁ……。
鎖も悪くないんだけどさぁ、俺専用って訳じゃないし……。
あーくっそぉ、カッコいい武器欲しいなぁ……」
ノパ听)「…………」
( ・∀・)「あ、ヒートちゃん。言い忘れてたけど、この人の話は
真剣に聞いちゃダメだよ。馬鹿らしくなってくるから」
ノパ听)「……今から私達、敵のアジトに乗り込むんでしたよね。あれ? 私間違ってました?」
( ・∀・)「大丈夫、大丈夫だよヒートちゃん。君は間違っていない。
間違っていないから君はそのままの君でいるんだ」
ノパ听)「はぁ」
- 128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:47:18.98 ID:fKq+66etO
- いまいち腑に落ちなそうな顔をするヒートに、モララーは達観したような表情で返す。
モララーは言葉を続けた。
( ・∀・)「決して毒されちゃいけないよ。ここの人達に関わるとね、
なんて言うか、子供が作った波打ち際の砂山のようなモノでね、
それは大事なモノなはずなのに少しづつ崩れていって……。
僕は波の届かない場所からそれをただ眺めている事しかできないんだ」
ノパ听)
ノパ听)「んん?」
ヒートが疑問を感じた時はもう手遅れだった。
いつの間にかモララーの目が据わっている。目が泥を被ったように濁っている。
モララーはまだまだ言葉を続けた。
- 129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:49:08.53 ID:fKq+66etO
- ( ・∀・)「こうなっちゃ駄目だよヒートちゃん。君は強く心を持つんだ。
僕はもう無理だよ。いやむしろあの二人は
僕が突っ込む事前提で話を進めている節があってね……。
考えすぎ? いや、まさか。あの人達は悪魔だよ……。
その点ヒートちゃん、君はいい。酷く常識的だ。
君の存在は日が暮れて真っ暗闇になっちゃった
僕の道を導いてくれる街灯とというか……。
君が輝いていてくれれば僕も照らされるから……。
ああ、ヒートちゃん。君だけが僕の常識という名の光だよ……」
ノパ听)
ノパ听)
ノパ听)そ ハッ
ノパ听)(いけない、私としたことが、一瞬我を失っていた)
- 130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:51:57.23 ID:fKq+66etO
- ショックを受けて放心してしまったヒートは、しかし何とか意識を取り戻した。
ノパ听)(それにしてもなんだろう、このモララーって人から凄い疲れを感じる)
未だモララーはブツブツと呪詛めいた言葉を呟いている。
呟けば呟くほどモララーの頭が前のめりに下がっていく。
もうなんか飛び込み台からプールへ飛ぼうとしている水泳選手のような体勢になっている。
ノパ听)(ああ、そうか、これが―――)
ヒートは周りを見回す。
休憩室で愚痴るOLのようなモララー。
仕事中なのにプラモデル作っている上司のようなギコ。
その二人が視界に入っている筈なのに我関せずと言った風に自分たちの仕事を進める他の面々。
これらの光景を見たヒートは、自分もこの輪に入らなければならない事を知り、そして
ノハ*゚听)(これが、現代社会に生きるという事なんだ―――)
と、間違った理解をしながら、何故か嬉しそうにガッツポーズをしていた。
- 131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:54:46.64 ID:fKq+66etO
- ※
三日後。
ギコとクーは日中の街を並んで歩いていた。
彼らは、来たる明日の決戦に必要な荷物を受け取るために、ショボンのバーへと向かっていた。
(,,゚Д゚)「やれやれ、こんな時に車が無いとはね」
いつも使っている車は、ちょうど車検の時期と重なってしまって使えない。
彼らは徒歩での移動を余儀無くされたのだった。
川 ゚ -゚)「車に慣れた身としては確かに億劫かもしれないが、
まあリハビリと思えばいいじゃないか」
(,,゚Д゚)「そんなモンが必要な程ヤワな体はしちゃいないだろ? お互いにさぁ」
川 ゚ -゚)「そう言うなよ。徒歩には徒歩の良さがあったりするものだ。
例えば……そうだな、空を見てみろギコ」
クーが顔を上向きにしているのを見て、ギコもそれに倣う。
- 132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:56:47.87 ID:fKq+66etO
- 最初にギコの目に入ってきたのは白い光だ。思わず目を細める。
その光を突き抜けた先に、透き通るような水色の空が見えた。
手を伸ばせば届きそうな、しかし同時に何物をも包み込むような雄大さを感じる青空。
ギコはその瞬間だけ全てを忘れて、遠く、空の向こうを見た。
川 ゚ -゚)「―――どうだ? こういうのは車に乗っていては見られないし、感じられないだろう?
偶には徒歩も悪くない。そう思わないか?」
(,,゚Д゚)「……まぁ、偶には、な」
どんな状況でも物事をプラスに考えるのは、人生を楽しむ一つのコツだ。
しかし。
(,,゚Д゚)「そんな霞を食べて暮らしていく仙人のような生き方はひもじいなぁ。
若いこの身としては、やっぱガッツリとしたステーキの
一枚や二枚は食したいモノなんだ」
川 ゚ -゚)「私はあんまり脂身は好きじゃないよ」
(,,゚Д゚)「あくまで例えの話だ。具体的に言うと―――」
川 ゚ -゚)「歩いてショボンのトコに行くまでの間が暇だ、と」
(,,゚Д゚)「ビンゴ」
- 133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 22:59:02.01 ID:fKq+66etO
- ギコは足元に落ちてあった空のペットボトルを拾い上げ、放り投げる。
宙に舞ったペットボトルは、吸い込まれるようにコンビニのゴミ箱の中へと入っていった。
(,,゚Д゚)「あーあ、何か面白おかしいハプニングでも起こらないかなー」
川 ゚ -゚)「そんなめったな事は言うもんじゃないぞ。実際に起きちゃうだろ、話の展開的に」
(,,゚Д゚)「めっためたですなぁ」
川 ゚ -゚)「めっためただよ」
(,,゚Д゚)「めっためたやわぁ」
軽口を叩きながら街を練り歩く。すると突然、クーが足を止めた。
- 134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 23:01:02.24 ID:fKq+66etO
- 川 ゚ -゚)「めっためただにゃ…………ん? アレは……」
何かを見つけた様子のクー。
(,,゚Д゚)「オイオイ、マジで見つけちゃったのかよハプニング。ワクワクするじゃねーか」
ギコはクーの視線の先を追う。そこには一組の若い男女がいた。
その男女とギコ達は向かい合う形で歩を進めていく。
歩き、彼ら四人の差は縮まっていき、その間に他の歩行者がいなくなったところで。
少年の方が、クーに気付いた。
( ^ω^)「お?」
ξ゚听)ξ「え?」
(,,゚Д゚)「うん?」
川 ゚ -゚)「あい」
- 135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 23:05:47.71 ID:fKq+66etO
- ( ^ω^)「クー、姉……?」
少年は茫然とした様子でクーを見ている。
クーを「クー姉」と呼んだ事から、親しい間柄だったのが窺える。
ξ゚听)ξ「どうしたの? ブーンの知り合い?」
少女は、急に立ち止まった男に声を掛けていた。
「ブーン」というのは少年の名前だろうか。
その少年の、少しふくよかな脇腹を指でつついているが、彼は気付いてない。
川 ゚ -゚)「やっぱり。久し振りだな、ブーン。最後に会ったのが一年と……半年くらいか?」
クーの表情は柔らかくなっていた。
目の前の少年に会えた事を純粋に喜んでいるようだ。
- 138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 23:23:08.54 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)(ふむ、「クー姉」か。って事は、このブーンってのは……)
ギコはとりあえず静観する事に決めた。
そしてクーとブーンの関係性に予測をつける。
川 ゚ -゚)「それにしてもブーン。いったい今まで何処に……」
そう言いながらクーが前に一歩踏み出した途端に。
(;^ω^)「ッ!!」
ブーンは連れの少女を護るように、彼女の前に立った。
腰を少し落とし、目は油断なくクーとギコを見ている。
彼は戦闘態勢に入っていた。
- 139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 23:25:46.83 ID:fKq+66etO
- ξ゚听)ξ「ちょっと、ブーン?」
その急な行動に驚く少女。しかしブーンはその声に答えず、前方を睨みながら呟く。
(;^ω^)「まさか、見つかるなんて……。気を抜いていたお……。
しかも相手がクー姉だなんて……」
彼の只ならぬ様子に、クーが訝しむ。
川 ゚ -゚)「おいブーン。突然なにを―――」
クーは言葉を続けようとする。
しかしブーンが右の掌をクーに見せて「止まれ」の意思を示したので、中断された。
( ^ω^)「いいおクー姉。皆まで言わなくても。
クー姉は組織の命令に従ってるだけ……。断れないのは判っているお」
川 ゚ -゚)「……ブーン?」
ここでようやくクーは気が付いた。
ブーンは何か勘違いしている、と。
- 141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 23:28:47.33 ID:fKq+66etO
- ( ^ω^)「でも僕はもうあの場所に帰るつもりは無いお。
クー姉や爺ちゃんには良くしてもらったけど、それでも……」
しかしブーンは止まらない。
彼は彼の世界を全力疾走していた。
川 ゚ -゚)「ちょっと待てブーン。お前は恐らく勘違いを―――」
再びのクーの発言。
しかしまたもやブーンの掌に止められた。
ちゃんとブーンの意志に従うあたり、クーも律儀である。
( -ω-)「いい、いいんだおクー姉。クー姉の気持ちは判るお。
それでも僕たちは戦わなくちゃいけない。これはもう逃れようがない運命なんだお」
(,,゚Д゚)(コイツ……面白ッ)
- 142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 23:31:11.79 ID:fKq+66etO
- ξ゚听)ξ「ねぇブーン。あの人はアンタの敵なの?
なんか向こうはそんな気は無いみたいなんだけど」
ブーンの後ろに匿われるような格好の少女は、彼の肩口からクーの顔を見て言った。
彼女も会話が噛み合っていないのに気付いたようだ。
( ^ω^)「大丈夫だお、ツン。君には傷一つ付けさせないお!」
ブーンは目線を彼女―――ツンの方に向けると、グッと親指を立てて笑った。
その時見えた彼の白い歯が、キラリと光ったように見えた。
ξ゚听)ξ「いや、そうじゃなくて……」
( ^ω^)「ごめんお、変な事に巻き込んで。
でもコレは僕の問題だから、ツンは手出し無用だお」
聞かない。
人の話をまったく聞かない。
それどころか、むしろ自分の世界に酔いしれている節がある。
- 143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 23:33:01.04 ID:fKq+66etO
- ξ゚听)ξ「あの、だから……」
( -ω-)「そう、コレは僕が過去に置き忘れた宿題―――。
でも宿題はちゃんとやらないといけないんだお。誰の力も借りず、自分の力で!」
ξ゚听)ξ「だから……」
( ^ω^)「今、この場で! 僕は過去を全て精算し、未来を生きるっ!」
ξ )ξ「だーかーらー……」
( `ω´)「さあ! かかってくるがいいおクー姉!
かつて姉と呼んだ貴女を、僕のこの両脚で―――」
.
- 144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 23:35:31.37 ID:fKq+66etO
- .
「人の話を聞けえええ!!!」
三つ
オラオラ 二三つ オラオラ
ξ#゚听)ξ三二三つ)゚ω゚).;∵`*,∴:'
オラオラ 二三つ オラオラ
三つ
「蹴り―――GYAAAAAAAAAAH!!!」
.
- 147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 23:39:19.13 ID:fKq+66etO
- ※
(メメメ^ω^)「いやーHAHAHAHA! なんだお、そうだったのかお!」
ξ--)ξ「ホントすみません。このバカがバカすぎて」
ツンの鉄拳説明によりブーンの誤解は解け、
現在四人は喫茶店のオープンテラスに腰を下ろしている。
ξ゚听)ξ「あ、自己紹介がまだでしたね。私はツンっていいます」
川 ゚ -゚)「私はクールだ。クーと呼んでくれて構わない」
(,,゚Д゚)「俺はギコ」
ξ゚听)ξ「クーさんにギコさんですね」
川 ゚ -゚)「呼び捨てでいいよ。敬語も使わなくていい。その方がこちらの気が楽だ」
ξ゚听)ξ「そうですか……。うん、判ったわ。宜しくね、クー」
川 ゚ -゚)「ああ、宜しく」
クーがツンの前に右手を差し出す。ツンはそれに倣って右手を出し、二人は握手をした。
- 148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 23:42:03.37 ID:fKq+66etO
- (,,゚Д゚)「ところで……、ブーン、でいいんだよな?」
( ^ω^)「お?」
自分の名前を呼ばれたブーンは、メニュー表からギコへと目線を移す。
(,,゚Д゚)「アンタが噂の“4th child”で、『瞬銅』かい?」
( ^ω^)「お……。まあ、そうだったお」
尋ねられ、肯定するブーン。
しかしその表情はあまり芳しくない。
- 149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 23:45:13.60 ID:fKq+66etO
- ξ゚听)ξ「……? “ふぉーす・ちゃいるど”? 『しゅんどう』?」
二人の会話から耳慣れない単語が飛び出してきたので、ツンが間に入る。
(,,゚Д゚)「そうだな。コッチの嬢ちゃんはなにも知らないみたいだし……。
ブーン、俺から説明していいか? なんでお前が俺たちを敵だと思ったのかを」
( ^ω^)「お……、いいお。いつかは話さなくちゃならない事だったお」
ブーンが頷いたのを確認すると、ギコはメニュー表を手に取った。
(,,゚Д゚)「じゃあ先に飲み物でも頼んどこうか。ちょっと長めのお話なんでな」
ギコはベルを押し、店員を呼ぶ。
しばらくした後、全員の注文が届いたところで話を始めた。
- 153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/17(金) 23:51:46.88 ID:fKq+66etO
- ブーン―――組織名『ブーン=ブロンズホライゾン』はかつて、
VIPコーポレーションが有する戦闘集団、『COLOR's』の一員であった。
ブーンはその中でも更に特別な存在であった。
『荒巻の五人の子供達』―――。
天才博士、荒巻の手によって体を機械化された五人の子供。
ブーンはその五人の内の四番目に在するモノ。
通称“4th child”。
“4th”とは“force”。
その言葉の意味する通り、ブーンは『五人の子供達』の中でも最大の戦闘力を有していた。
その実力が認められ、彼には『銅』の色が与えられる。
彼、ブーンと『銀』であるギコ、そして『金』のフサギコ。
彼ら三人は『COLOR's』のトップ3として、『皇剛三色』と呼ばれた。
- 167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 01:36:43.27 ID:FVbTTHT2O
- ブーンの武器は機械化されたその両脚だ。
赤褐色をメインとしたその両脚は、機械美とも言えるほどの洗練されたフォルムとなっている。
その出力は強大無比。
ブーンの血液を脚にも流し、その血流を急激に加速させる事によって、
生身の身体では到底生み出せない程のパワーを地面に叩き付ける。
それによって高速度で稼働する彼の姿は、まさに視認不可。
その圧倒的な速度を手にする彼についた二つ名が『瞬銅』。
しかし、その『瞬銅』はとある仕事中に、
同行していた他の『COLOR's』や『No』を殲滅させて組織から去った。
以降、彼の姿を見ることは無く、その生死も不明とされていたのだが……。
- 168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 01:40:12.58 ID:FVbTTHT2O
- (,,゚Д゚)「―――いたのだが、今ここで生存が確認されました、とさ」
クーからの補助説明を途中で挟みつつ、ギコは話を終えた。
ξ゚听)ξ「…………」
本当に今まで何も聞かされていなかったのだろう。
ツンは驚いた表情でまじまじとブーンの顔を見ていた。
一方ブーンは見られている事と自分の過去を知られた事で、ソワソワと落ち着かない様子だ。
ξ#゚听)ξ「ブーン! アンタそんな大事な事、なんで今まで黙ってたのよ!」
ツンはしばらくボーっとしていただけであったが、急に席から立ち上がるとブーンに詰め寄った。
(;^ω^)「い、いやホラ! 一応僕はVIPコーポレーションから逃げ回っていた身だし……。
あんまり簡単に話す訳には……」
ブーンはVIPコーポレーションが倒産した事を知らなかった。
当時は結構なニュースになっていたのだが、
その頃の彼は逃げ回るのに必死で、メディアのチェックも全くしていなかったらしい。
- 169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 01:42:54.51 ID:FVbTTHT2O
- ξ#゚听)ξ「なによ! 私が信用できなかったって言うの!? 私がアンタを売るとでも!?」
(;^ω^)「ち、違うお! 僕は単にツンを巻き込んで
危険な目に合わせたくなかっただけで……」
ξ#゚听)ξ「……嘘は無いでしょうね?」
(;^ω^)「無い! 無いお。誓って嘘は言っていないお!」
ツンは目の奧まで睨みつけるようにブーンをジッと見つめる。
ブーンは裁判所で判決を受ける被告人のような居心地の悪さを感じていたが、
かといって目を背けずにいた。
ここで目を逸らせばもっと酷い事になるというのを本能で理解していたのだ。
ξ#゚听)ξ「…………」
(;^ω^)「…………」
ξ#゚听)ξ「…………」
(;^ω^)「…………」
ξ゚听)ξ「……ふぅ、まあいいわ。黙ってた事、今回は許してあげる」
数秒(ブーンは何分ものように感じていた)の後、お許しの言葉がツンから放たれた。
とりあえずは信じてもらえたと、ブーンはほっと胸をなで下ろす。
- 171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 01:46:45.40 ID:FVbTTHT2O
- ξ゚听)ξ「で・も。今度からは隠し事は禁止だからね。次やったら許さないわよ?」
ビシィッ
(;^ω^)ゞ「い、イエスマム!」
しかし再度、ツンから鋭い目線と低い声が
ブーンに突き刺さり、彼は即座に敬礼を返すのであった。
(,,゚Д゚)「……苦労してそうだなぁ、アイツ」
川 ゚ -゚)「まあブーンは昔から前に出るタイプじゃなかったし、
ツンのようなズバズバと出ていく性格の人とは相性がいいと思うな」
ブーンとツンのやり取りを眺めていた二人。
クッキーを摘みながら映画鑑賞のノリで楽しんでいた。
ξ;゚听)ξ「はっ! し、しまった……。ついいつもの勢いで……っ!」
ブーンから目を離したツンは二人から好奇の目で見られていた事に気付く。
「いつもの」と言っている事から、やっぱり今のは日常茶飯事だったんだな、
と二人は納得したように頷いた。
- 174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 01:50:56.75 ID:FVbTTHT2O
- ξ;゚听)ξ「あ、いや、その、こ、これはー……」
ツンはしどろもどろになりながらも言い訳をしようと試みている。しかし言葉が出ていない。
他人に対しては猫でも被っているのか、かなりの慌てっぷりである。
川 ゚ -゚)「いや、でも良かった。安心したよ」
( ^ω^)「クー姉?」
クーがブーンの顔を見て、穏やかに笑いかけた。
ブーンはそれを不思議そうに見る。
川 ゚ -゚)「私はな、ブーン。お前が行方不明になったと知った時、かなり心配したんだ。
お前は力はあったが、まだ精神的に幼い部分があったからな。
外の世界、頼る相手も何も無い場所で生きていけるのだろうか、とね。
でもツンとこうして出会えて、お互いが大切なパートナーとして想い合っている。
いい人を見つけたな。私は嬉しいよ、ブーン」
( ^ω^)「クー姉……」
自由を求めて外へ飛び出したブーン。
しかし同時にそれはクーや荒巻達―――『家族』との離別だった。
- 175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 01:54:49.67 ID:FVbTTHT2O
- ブーンは組織を抜け出した後も、家族の事だけが気がかりだった。
しかし今日、偶然にも再会し、ブーンの心には喜びが溢れたが、
そのすぐ後から不安も湧いて出た。
勝手にいなくなった自分を、彼女は恨んでいるのではないかとさえ思った。
でも、そんな事は杞憂だった。
彼女は自分が笑って暮らせている事を喜んでくれた。
ブーンはこみ上げてくる思いにこの上ない幸福を感じ、口には出さずに彼女に感謝をした。
ξ*゚听)ξ「な、な、な」
( ^ω^)「……お?」
そんな、感激していたブーンだったが、ふと隣を見るとツンの様子がおかしい事に気付いた。
何やら顔が赤くなっている。風邪でもひいたのだろうか。
( ^ω^)「ツン、どうかしたのかお?」
ξ;゚听)ξ「ひゃいっ!」
ブーンはツンの肩に手を置く。
するとツンは変な叫び声を上げ、椅子を薙ぎ倒しながら後ろに下がった。
- 177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 01:57:01.58 ID:FVbTTHT2O
- ( ^ω^)「ツン?」
ξ*゚听)ξ「な、な、」
( ^ω^)「な?」
ξ*゚听)ξ「何でもないんだからね! ブーンとは只の仕事仲間なんだからっ!」
( ^ω^)「…………」
( ^ω^)「おお?」
どうやら先程のクーの「大切なパートナー」発言が彼女をパニックにさせたらしい。
川 ゚ -゚)「おやツン。君とブーンは恋人同士ではないのか?」
ξ*゚听)ξ「こここ恋人ぉ!? 違う! 絶対違う! ブーンは同僚!」
(,,゚Д゚)「ほうほう。じゃあブーンには全く恋愛感情を抱いてはいないと?」
ξ*゚听)ξ「うっ……。そ、そうよっ!!」
- 178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 01:59:11.31 ID:FVbTTHT2O
- 川 ゚ -゚)「そうなのか。だってさ、ブーン」
( ´ω`)
ξ;゚听)ξ「ああっ! ブーンが目に見えて落ち込んじゃった!」
(,,゚Д゚)「あーあ。ブーンの奴、可哀想に」
ξ;゚听)ξ「あ、あのねブーン。別にアタシはその、ブーンを嫌いって言ってる訳じゃ……!」
( ´ω`)「ツン」
ξ;゚听)ξ「な、なあに、ブーン?」
( ´ω`)「僕はツンの事が好きなのに、ツンは僕の事が好きじゃないのかお?」
ξ*゚〜゚)ξ「好っ……! 〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
(;^ω^)「ちょっ! ツン! 暴れないで! いい加減店員さんから追い出される!」
暴れ出すツン。
止めるブーン。
その二人を見て、ギコとクーは。
川 ゚ -゚)(面白ぇ〜な〜)(゚Д゚,,)
と思うのだった。
- 181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 02:01:15.15 ID:FVbTTHT2O
- 結局、喫茶店から出禁を喰らった四人はそのまま別れる事となった。
ξ--)ξ「ご、ゴメンナサイ……」
(,,゚Д゚)「まあ気にすんなよ。あともうちょっと素直になりなよ、嬢ちゃん」
ξ*゚听)ξ「〜〜〜〜っ!!」
川 ゚ -゚)「さて、私達はこの後用事があるのだが。ブーン達は?」
( ^ω^)「あ、僕らも仕事だお」
川 ゚ -゚)「む、そう言えば何の仕事をしているんだ?」
( ^ω^)「お? えーと、その……。う、運搬業だお」
川 ゚ -゚)「そうか。ブーンにはピッタリの仕事だな」
(;^ω^)(……流石に「怪盗やってる」なんて言えないお。例えクー姉でも)
- 182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 02:02:49.95 ID:FVbTTHT2O
- 川 ゚ -゚)「私達は解決屋をやっている。もし何かトラブルがあったらこの番号に電話してくれ。
あ、それとコッチが私のケータイな」
クーはブーンに名刺(モララー作)を渡す。裏にはクーの携帯番号が記されていた。
( ^ω^)「あ、それとクー姉……」
川 ゚ -゚)「なんだ?」
( ^ω^)「……荒巻の、爺ちゃん、は……?」
川 ゚ -゚)「……郊外に博士の墓を造ってある。今度、一緒に行こう」
( ^ω^)「…………」
( -ω-)
( -ω-)「……うん。行くお」
ブーンは目を閉じる。
昔の事を、荒巻と過ごした日々を、思い出しているのか。
- 183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 02:05:05.32 ID:FVbTTHT2O
- ξ゚听)ξ「それじゃブーン。そろそろ行くわよ」
( ^ω^)「あ、うん。判ったお」
(,,゚Д゚)「じゃあな。また今度ゆっくり話そうぜ」
( ^ω^)「お。じゃあ、まただお!」
手を振り、ブーンとツンは歩き出した。
ギコとクーは二人の去っていく後ろ姿を見つめている。
(,,゚Д゚)「なあ、クー」
ギコは前を向いたままクーに問い掛ける。
川 ゚ -゚)「なんだ?」
(,,゚Д゚)「良かったのか? 『COLOR's』がまだ生きている事。
明日奴らと闘う事をブーンに教えないで」
- 184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 02:07:10.34 ID:FVbTTHT2O
- 川 ゚ -゚)「……ブーンはもう別の人生を歩んでいる。
今の『COLOR's』も既にブーンを追いかけてはいない筈だ。
もうブーンに枷などはない。後は明日、
私達だけで『COLOR's』を潰せばそれで終わりさ」
(,,゚Д゚)「姉心、ってやつかい?」
川 ゚ -゚)「そうだな」
やがでブーン達の姿が見えなくなった。
クーは振り返り、ギコと向き合う。
川 ゚ -゚)「それが、姉としての私の役目さ」
(,,゚Д゚)「オーケイ。そんじゃま、その役目を果たす準備に向かうとしますか」
二人はショボンが待つ店へと歩き出した。
- 185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 02:09:03.47 ID:FVbTTHT2O
- ※
日も暮れ、色とりどりのネオンが街を照らし始めた頃。
ようやく二人はショボンの店に着いた。
(,,゚Д゚)「ありゃ。もう店始めちゃってるよ」
川 ゚ -゚)「予定より大分着くのが遅れてしまったからな」
(,,゚Д゚)「ま、とりあえず入ろうぜ」
店はもう開いていた。
本来なら開店の前に来て荷物を受け取りたかったのだが。
ギコがドアノブに手を掛け、押す。
ドアに備え付けられた、来訪者を伝えるベルが店内に鳴り響き、
カウンターの奥にいたショボンがこちらを見る。
- 186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 02:12:47.60 ID:FVbTTHT2O
- (´・ω・`)「いらっしゃ―――って君達か。随分遅かったじゃないか」
川 ゚ -゚)「済まない。こちらに向かう途中で昔の知り合いとバッタリ会ってな。話し込んでいた」
二人は中へ入り、カウンター席に座る。
店にはショボンの他に客が一人だけ、カウンター席で酒を飲んでいた。
_、_
( ,_ノ`)y━・~「おっとマスター。どうやら入り用みたいだな。じゃあ俺はお暇させてもらうよ」
見たところ四十代といった、煙草を吸う男。
彼はグラスの中の琥珀色の液体を飲み込み、立ち上がってポケットから財布を出した。
(´・ω・`)「いやいや渋澤さん。お気になさらずに、もっとゆっくりしていってもいいですよ」
ショボンはそんな彼を引き留めようとするが、渋澤と呼ばれた男は構わず一万円札を取り出す。
_、_
( ,_ノ`)y━・~「俺の方こそ気にすんなよ。そこまで空気読めないほど年喰っちゃいないぜ?」
ショボンは少しの間迷っていたが、結局お札を受け取る事にした。
- 187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 02:15:01.48 ID:FVbTTHT2O
- ショボンが会計をするためにカウンターを離れた時、渋澤はギコの方を向いて話しかけてきた。
_、_
( ,_ノ`)y━・~「なァ、兄ちゃん」
(,,゚Д゚)「ん? なんだオッサン」
_、_
( ,_ノ`)y━・~「お前さん、いい目をしてるなァ。覚悟を決めた男の目をしている」
渋澤はそう言って笑い、吸っていた煙草を懐から出した携帯灰皿にしまう。
_、_
( ,_ノ`)「いいか、迷うなよ? お前さんはお前さんの道を行け。
そうすればきっと、お前さんの望む未来がついて来るさ」
ショボンがお釣りを持って戻ってきた。
渋澤はそれを受け取り、「じゃあな、気張れよ」と言い残して店を後にした。
(,,゚Д゚)「なんだ? あのオッサン」
ギコは訳が判らないといった顔で、男を呆然と見送った。
- 188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 02:16:59.32 ID:FVbTTHT2O
- 川 ゚ -゚)「ショボン、今の方は……」
(´・ω・`)「ああ、彼は渋澤さんって人でね。ウチを贔屓にしてもらってるんだ」
(,,゚Д゚)「なにあのオッサン。酔っ払い?」
(´・ω・`)「コラコラ、ウチの大事なお客さんをそんな風に言わないでくれ」
(,,゚Д゚)「まあどうでもいいか。それよりもショボン。
客も居なくなった訳だし例のモノ、プリーズ」
(´・ω・`)「君ねぇ、ここがどこか知ってる? バーだよバー。
カクテルの一つくらい注文したらどうだい?」
(,,゚Д゚)「フハハハハ、甘いぜショボン。最近ウチの事務所はカッツカツなのだよ」
川 ゚ -゚)「最近じゃなくていつもの話だけどな」
- 189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 02:19:10.87 ID:FVbTTHT2O
- (´・ω・`)「……はぁ。判ったよ」
顔に手を置いて溜め息をついたショボンは、三つのグラスと一つのボトルを棚から取り出す。
(´・ω・`)「はい、このテキーラはサービスだ」
(,,゚Д゚)「いやっほう! 話が判るぜショボン! って、アレ? 何故にグラスが三つ?」
(´・ω・`)「僕も飲むからに決まってるじゃん」
川 ゚ -゚)「仕事中に飲むなよ」
(´・ω・`)「大丈夫。店閉めたがら」
ショボンはボトルのキャップを開け、グラスに注ぐ。
琥珀色をした液体がゆらゆらと世界を歪ませていた。
(,,゚Д゚)「いつの間に閉めたんだ……。つーかいいのかよ」
(´・ω・`)「ま、お客さんには悪いけど、決戦前夜って事でね」
川 ゚ -゚)「ふっ、気が利くじゃないかショボン」
- 190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 02:21:07.28 ID:FVbTTHT2O
- (,,゚Д゚)「こんな事ならモララーやヒートも連れてくりゃよかったな」
(´・ω・`)「モララー君はお酒弱いからダメだよ。ヒートちゃんも未成年でしょ?」
ショボンは注がれた三つのグラスをギコとクー、そして自分の前に置く。
三人はグラスを持ち上げた。
(,,゚Д゚)「それじゃ、お言葉に甘えて」
川 ゚ -゚)「明日の闘いでの勝利を願って」
(´・ω・`)「また、こうしてお酒を酌み交わせる事を願って」
(,,゚Д゚)「全ての過去に終わりを告げて、未来を生きる為に」
- 191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/18(土) 02:23:02.37 ID:FVbTTHT2O
- .
「「「乾杯!」」」
グラス同士がぶつかる音。その音は静かに響き、彼等の意志を奮わせた。
明日、彼らの闘いが幕を開け、そして終わる。
第十二話 おわり
→第十三話につづく?
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