ここは解決屋『シルバー&ブラック』本社のようです
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:11:58.19 ID:fWh6nmexO
- ※
這いつくばるギコ、クー。
それを薄ら笑いで見下ろすジョルジュ。
今まで均等に分かれていた両者の力関係が、一気にジョルジュの方へと傾けられた。
(;゚Д゚)「ぐっ……、な、んだコレは……っ?」
川 ゚ -゚)「……立てない」
腕だけで無く全身の力を振り絞って体を持ち上げようとしてもビクともしない。
まるで何人、何十人もの人間から押さえつけられているみたいだ。
_
( ゚∀゚)「ヒャハハ、動けねえだろ? ま、喋れるだけ大したもんだぜ?
普通の奴なら呼吸すらままならんだろうしなぁ」
必死になって立ち上がろうとする二人とは対照的に、ジョルジュは余裕の笑みを浮かべている。
その笑みの意は待望。
彼は相手を好き勝手に蹂躙できる時を待ち望んでいたのだ。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:14:18.24 ID:fWh6nmexO
- (;゚Д゚)「テメ……っ、これは……?」
ギコは何とか首を上げて顔をジョルジュに向ける。
_
( ゚∀゚)「ハハ、『これは?』、か? んなもん聞かなくても判んだろ? コレだよ、コ・レ」
ジョルジュは人差し指で横にチョイチョイと指し示す。
その先には回転を続けている灰色の球体が。
_
( ゚∀゚)「コイツは俺以外の人体に超強烈な重力を乗せる事が出来る玉でねぇ……。
科学ってのは凄ぇモンだな。ま、原理とか細けぇ事は知らねぇし知りたくもねぇが」
川 ゚ -゚)(……推測するに、コレも暗示の一種か。
あの球体から発生する超音波か何かが私たちを支配しているのだろう。
しかも常に放出されているから時間経過で解ける事も無い、か……)
現状を把握し、原因を考える。
しかし、解決策は思い浮かばない。
体が動かないとは、それこそ全ての策を殺されるという事に他ならないのだ。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:15:57.81 ID:fWh6nmexO
- _
( ゚∀゚)「さぁ〜て、と。どうしたい? どうされたい?」
つかつかと歩み寄るジョルジュ。その足の先には倒れ伏せるギコが。
(,,゚Д゚)「馬っ鹿……やろう……。チョーシ乗ってんじゃ―――」
_
( ゚∀゚)「よっ」
(;゚Д゚)「がっ!」
睨みつけていたギコの顔に蹴りを入れる。
動けないギコはそれをまともに喰らい、受身も全く取れないまま後ろに倒れ込んだ。
(,,゚Д゚)「ちっ……、テメエ余裕コいてんのも今だけだぞ……。
すぐにその馬鹿面ブン殴ってやる……!」
_
( ゚∀゚)「ヒヒッ、馬鹿はオメエだろうが。そう思うんなら今すぐにでも立ち上がってみろよ?」
(,,゚Д゚)「クソがっ……!」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:17:55.33 ID:fWh6nmexO
- _
( ゚∀゚)「さぁて、どうやっていたぶってやろうかなぁ?
ただ殴るだけじゃちょっと面白みにかけるしなぁ。…………ん?」
顎をさすり、これからどうしようかを考えていたジョルジュは、視界の隅に彼女を捉えた。
川 ゚ -゚)「…………」
真っ直ぐな瞳でこちらを見るクー。
恐怖や絶望といったものは映ってはいない、何処までも真っ直ぐな、瞳。
_
( ゚∀゚)「…………キヒッ」
見つけた。
面白いオモチャを見つけた。
そんな事を言うかのように、ジョルジュは眼を見開き、舌で唇を濡らす。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:19:59.04 ID:fWh6nmexO
- _
( ゚∀゚)「ヒヒヒッ。そうだよなぁ。やっぱいたぶるのは野郎なんかより女の方が楽しいよなぁ」
川 ゚ -゚)「!」
クーの方へ歩み寄る。
もはやジョルジュの両眼は彼女のみに照準が合わされていた。
_
( ゚∀゚)「気が強そうなトコも高ポイントだ。その顔が段々と歪んでいくと思うと……、
ハハッ、想像だけでトリップしそうだ」
あらぬ方向を見、ヘラヘラ笑う。
病的なまでに狂っている彼の精神は、歯止めが利かない。
_
( ゚∀゚)「さ、楽しもうか俺とさぁ」
クーの目前まで来たジョルジュは、彼女の顔に手を伸ばそうとするが―――
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:21:56.63 ID:fWh6nmexO
- .
(,,゚Д゚) ここは解決屋『シルバー&ブラック』本社のようです 川 ゚ -゚)
第十一話-b
「待っ、ちやがれ……っ!」
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:23:56.88 ID:fWh6nmexO
- ジョルジュの手がピタと止まる。
そして笑顔を貼り付けたまま後ろに振り返る。
_
( ゚∀゚)「ヒヒ、テメエの出番は後だよ。テメエはそこで指くわえて―――」
ギコの姿を確認した瞬間、声が詰まる。
_
( ゚∀゚)「…………あ?」
(♯゚Д゚)「う、おおおっ……!」
ギコは立ち上がっていた。
歯を食いしばり、膝はガクガクと揺れ、非常に不安定な状態ではあるが
二本の足でしっかりと立ち上がっていたのだ。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:26:12.89 ID:fWh6nmexO
- _
( ゚∀゚)「…………」
ジョルジュはそんな彼の姿を呆けて見ていたが、
_
( ゚∀゚)「…………ハハッ、凄ェな」
すぐに素直な賞賛の弁を口にした。
_
( ゚∀゚)「ヒヒッ、いやいや、ホント凄ェ。
俺のコレを受けて今まで立ち上がった奴なんて一人もいなかったぜぇ。
流石、腐っても……いや錆びても元No.2っていったとこだな」
(#゚Д゚)「言っただろうがっ……! チョーシ乗ってられんのも今だけだってな……っ!」
_
( ゚∀゚)「ヒハッ、立つのもやっとのクセしてよくもまあ……。
じゃあそんなスバラシー君にプレゼントをあげよう」
そう言ったジョルジュは右手を前にかざす。
その先には回転する球体。
そして手で物を横にスライドさせるかのような動作を、何もない空中で行った。
すると、その動作にシンクロして球体が押されたように横に動く。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:28:09.64 ID:fWh6nmexO
- その球体はギコの近くにやって来る。
ギコと球体の距離がおよそ一歩分程度のところで球体はピタリと止まり、
(;゚Д゚)「――――っぐあああああっ!!?」
同時にギコの体を襲う圧力が今までのものより遥かに大きくなった。
たまらず片膝をつくギコ。しかし再び倒れ込むのは何とか防いだ。
_
( ゚∀゚)「オイオイまだ耐えられるのか? スッゲェなぁ。オマエ本当に人間?」
ジョルジュのあざ笑うかのような言葉も今のギコには届かない。
メキメキと音を立てる肉体。気を抜いたら内側から弾け飛んでしまいそうだ。
(;゚Д゚)「っう、お、お、お、……っ!」
_
( ゚∀゚)「大人しくこの女がボコボコにされていくのを見てろよ?
いや自分の事で精一杯でそんな余裕無いか? ヒャハハハハッ!」
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:30:05.17 ID:fWh6nmexO
- (;゚Д゚)「っ、待、―――くあっ!」
_
( ゚∀゚)「さぁて、と……」
もうその場から動く事は無いであろうギコを置いて、ジョルジュはクーの方に向き直る。
_
( ゚∀゚)「おっとっと、こっちもか」
川 ゚ -゚)「…………」
クーも立ち上がる事に成功していた。だがギコと同様に動き回る事は出来なさそうだ。
_
( ゚∀゚)「アッチの方にパワーを集中しちまったからなぁ。立つ事くれぇは出来るよな」
_
( ゚∀゚)「だけどよぉ……」
川 ゚ -゚)「! っう!」
ジョルジュの左足がクーの右肋骨を薙ぐように蹴った。
その一撃でクーは力無く地に倒れ込む。
_
( ゚∀゚)「俺から逃げる事は出来ないぜぇ」
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:31:55.71 ID:fWh6nmexO
- (;゚Д゚)「ク、ー……!」
_
( ゚∀゚)「おおっと! いいねぇ『銀』! それだそれだ!
その『今すぐ駆けつけたいけど動く事が出来ない歯痒い表情』っ!
それこそが俺が見たい顔なんだよ!」
_
( ゚∀゚)「さあもっとだ! もっと絶望しろ! 自分の無力さを噛み締め、俺に許しを請いてみろよぉぉ!!」
川 ゚ -゚)「ぐっ! っあ!」
ジョルジュは倒れているクーを二回、踏み潰すように蹴りつける。
(;゚Д゚)「ちっ、くしょうがっ……!」
今すぐ走り出したい。
今すぐあのムカつく横っ面を殴り飛ばしたいのに。
その思いしか前に出ない。ギコの足は鎖で繋がれたかのように動く事が出来ない。
(;゚Д゚)「動けっ……。前に出ろっ、俺の足……!」
思いだけしか、前に出ない。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:34:16.79 ID:fWh6nmexO
- _
( ゚∀゚)「さあ、あんな情けねー男は放っておいて、俺たちはお楽しみといこうかぁ」
ジョルジュはクーの胸ぐらを左手で掴み、力ずくで体を起こす。
川 ゚ -゚)(……片手で易々と持ち上げるか。やはり、実際に私の体が重くなっている訳では無い、な……)
クーは顔を上げ前を見る。不快なジョルジュの顔の奥に、苦しそうに立つギコの体が映った。
川 ゚ -゚)(今、あの球体の力はギコに集中している。私が、私が動かなければ……)
_
( ゚∀゚)「オイ、向こうじゃなくてこっち見ろよ」
川 ゚ -゚)「っっ!」
クーの左眼に影が走ったかと思えば、そのすぐ後にそこから痛みが突き刺さった。
ジョルジュが空いた右手でクーを殴ったのだ。
_
( ゚∀゚)「まったくよぉ、ちょっとは俺も見てくれないと落ち込んじゃうじゃん」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:36:12.69 ID:fWh6nmexO
- そう言われたので、とりあえずクーはジョルジュの顔に目を移した。
そこには相も変わらず歪んだ表情が。
やはり不快だ。
クーはそう思う。
真面目にしていればそれなりに見れる顔なのだろうが、どの道クーには欠片も興味が無かった。
_
( ゚∀゚)「ヒヒヒ。いいね、その冷たい視線。その目、何発殴れば消えるかなぁ?」
殴る。
衝撃。
顔が後ろに反り返るが、ジョルジュの左手がクーの体を飛ばせてくれない。
川 ゚ -゚)「っ……!」
_
( ゚∀゚)「さあジャンジャンいこうか。これで三発目だ。
いや、その前に三回蹴ってたっけ? じゃあ六発目か? 蹴りはカウントしない?
……ああ、メンドくせえ。何でもいいから殴ってりゃいいか」
ブツブツと自問自答を呟きながら、ジョルジュは引いた拳を前に出すのを繰り返す。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:38:20.27 ID:fWh6nmexO
- ガッ、ガッ、ガッ、っと一定のリズムで肉を打つ音が聞こえる。
工場の流れ作業のような感覚で、ジョルジュはひたすらクーの顔を殴り続けていた。
そんな光景を、ギコは少し離れた場所から見ている。
彼の隣には球体。その回転音は腹立たしいほどに主張し、ギコの聴覚を埋めていく。
(,,゚Д゚)(クソっ、クソがっ……! 俺は一体何やってんだっ……!)
最早ギコの心にはゆとりというものは一切無い。
あるのは怒り。
ジョルジュに対しての怒りと、不甲斐ない自分自身への怒り。
その怒りが体内に隙間無く敷き詰められていて、
今にも肉がめくれて体が裏返ってしまいそうだった。
(,,゚Д゚)(俺は何をっ……。俺はアイツを、クーを護るって約束したっつうのに……!)
(,,゚Д゚)(そう、約束したんだ。あのジジイと約束したのにっ……!)
思い出すのは、頬が痩けて弱々しい、だがひどく心から安堵したといった風な、あの笑顔。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:40:01.31 ID:fWh6nmexO
- (,,゚Д゚)(なのに俺は約束を守れない。クーを護れない。この体は動かない。何故だ?)
(,,゚Д゚)(力が、無いから?)
(,,゚Д゚)(……違う。力はある。でも、その力は……)
(,,゚Д゚)(俺は……)
力。
使わない理由。
人としての在り方。
冷たいカラダ。
指輪。
無くした心。
……無くした、かけがえのないモノ。
いろんな思いが閃光のように現れてはすぐ消える。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:41:58.12 ID:fWh6nmexO
- _
( ゚∀゚)「よっ。ほっ。とっ。……ふう。結構殴ったな。調子はどうだい?」
ジョルジュは規則正しく動かしていた右手を止め、クーの顔を覗いた。
川 - )「…………」
クーの頭は血で染まり、髪もバラついて顔に貼りついていたので表情が読み取れなかった。
_
( ゚∀゚)「あーあーみっともねえなぁ」
ジョルジュは髪を左右に分けてクーの顔を表に出す。
川 メ -゚)「…………」
片眼が傷によって閉じられていたが、それでも残るもう一方の眼には未だに力強い光が宿っていた。
意志はまだ、折れていない。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:43:58.89 ID:fWh6nmexO
- _
( ゚∀゚)「ほー強情なもんだ。まだそんな眼が出来るのかぁ。
こりゃちょっと趣向を変えた方がいいなぁ。
もっと痛みが走る、お手軽拷問みたいな―――、ん?」
ジョルジュがより良い嫐り方を考えていると、クーが右手を持ち上げているのが眼に入った。
_
( ゚∀゚)「オイオイどうした? そんなやっとの状態で腕を上げちゃって。
『こうさーん、もう殴らないでー』、ってか? ヒハハ」
川 メ -゚)「…………」
ギギギ、と寂れた音が鳴るかのような鈍重さで尚もクーは右腕を上げ、
_
( ゚∀゚)「お?」
トン、と触れるようにしてジョルジュの額に拳を置いた。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:46:04.17 ID:fWh6nmexO
- _
( ゚∀゚)「……ヒ、ヒャハハハハ! なんだコレぇ? もしかして俺を殴ろうとしたのか?
冗談だろ? ヒャッハッハッハ!!」
大きな笑い声を上げるジョルジュ。
そんな、小馬鹿どころか大馬鹿にした彼の反応を見たクーは、逆に嘲笑の微笑みを返し、
川 メ -゚)「醜い上に愚かだな貴様。その脳、ひっくり返してやろうか?」
右腕の撃鉄を上げた。
_
( ゚∀゚)「ぶっ!?」
ジョルジュは衝撃で後ろにひっくり返る。
それと同時に彼の左手から解き放れたクーはその場に倒れ込んだ。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:47:59.48 ID:fWh6nmexO
- (,,゚Д゚)「クー……」
クーがジョルジュに一撃を入れた。
ギコはその事に驚くと同時に、自分は何をやっているのだろうと、より一層思うようになる。
_
( ゚∀゚)「〜〜〜〜っ!」
地面に転がったジョルジュは慌てて体を起こし、クーを見た。彼の額から血が流れ落ちる。
クーは両手を使い顔だけを起こし、ジョルジュを睨みつけて、言う。
川 メ -゚)「油断しているから……、相手を侮っているから痛い目を見る……。
私の『圧空』の事は知っていた筈なのにな……。
所詮貴様は与えられた力を振り回しているだけの餓鬼に過ぎない……。
あの機械が無ければ何も出来ない癖に、何を偉そうにしている? 何を勘違いしている?
自分の力でも無いのに陶酔し、神にでもなったつもりか? おめでたい頭だな……」
最大限の侮蔑の言葉を、クーはジョルジュに吐き出してやった。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:50:00.40 ID:fWh6nmexO
- _
( ゚∀゚)「…………」
ジョルジュはそんなクーの言葉を受け、しばしぼんやりとしていたが。
_
(#゚∀゚)「―――っざけてんじゃねぇぞ、このアマぁぁぁぁぁあああああ!!!!」
眼をつり上げ、口を大きく縦に開く。
その顔はもはや知性ある人間のモノでは無く、
鬼がもしくは悪魔を連想させるような表情であった。
ジョルジュは即座に立ち上がり、伏せるクーへと一直線に駆け、
その細い首を左手で掴み持ち上げる。
川 メ -゚)「くっ……、ゴフッ……!」
万力のような力でクーの喉を締め上げる。
クーの顔が紅潮する。呼吸が出来ないのだろう。
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:51:57.57 ID:fWh6nmexO
- (,,゚Д゚)「っ、クー、……っ!」
マズい。
今のジョルジュは完全にキレている。
クーの身が危ない。
ギコの頭の中で、危険信号がうるさいくらいに鳴り響く。
しかしそれでも動けなかった。
(;゚Д゚)(クソッ、俺は何を迷っているんだ……! それとも……、怖いのか? 俺は……)
ギコの葛藤とは余所に、ジョルジュの凶走は続く。
_
(#゚∀゚)「止めだ。止めだ止めだ止めだァァァ!!!
せっかく俺が少しでも長く生きれるように
ゆっくりいたぶってやろうと思ったのによお……。
止めだ。ぶっ殺す。今すぐぶっ殺す!」
ジョルジュは左手の力を入れて更にクーの首を強く締め、同時に右腕を後ろに引いた。
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:53:54.79 ID:fWh6nmexO
- 川 メ -゚)「ぐ……ぬっ……!」
身の危険を感じたクーは何とかジョルジュから逃れようとするが、
未だ彼女の体は偽の重力に縛られている。
_
(#゚∀゚)「無駄だ。テメエは俺から逃げられねぇよ。……そして首を折るなんてチンケな事はしねえ」
ジョルジュの右手が標的を捉えた獣の口のようにカッと開かれる。
_
(#゚∀゚)「その心臓、抉り取ってやるよこの化け物がァァァァァァア!!!!!」
牙を剥き、発射される右腕。
空気すら裂くような鋭さ。その右手の進行方向にあるものは全て貫かれるだろう。
その手が行き着く先は、クーの左胸だ。
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:57:03.00 ID:fWh6nmexO
- (;゚Д゚)「クー!」
目の前がスローモーションで再生される。
しかし実際は一秒と経たずにジョルジュの右腕はクーの体に突き刺さるだろう。
その未来が、脳裏に再現される。
(,,゚Д゚)「あ……」
―――未来?
(,, Д )「れ……?」
.
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 21:58:55.98 ID:fWh6nmexO
- .
違う。
その未来、過去に見た事がある―――?
.
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 22:01:01.08 ID:fWh6nmexO
- (,, Д )「ああ……」
それも違う。
見た事があるだなんて生半可なレベルじゃない。
その光景は今でも夢に見る、過ち。
(,, Д )「あっ……!」
それに気付いた時、フラッシュバックのように色褪せた映像が流れる。
雨。
雲間から覗く月明かり。
寂れた工場跡の倉庫。
いつにも増して堅っ苦しい顔で見つめてくるフサギコ。
ずぶ濡れな俺。
雨でも流れ落ちない俺の右腕の血。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 22:02:57.49 ID:fWh6nmexO
- 自分よりも頭一つ分低い――を抱きしめる俺の姿。
俺に包み込まれて、でももう動かない―――
(* ー )
(,, Д )「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 22:05:01.06 ID:fWh6nmexO
- _
(;゚∀゚)「っッ!! な、なんだぁ!?」
いきなり熱風のような何かが後ろからジョルジュの体を通り抜けた。
慌てて振り向くとそこには。
(,,゚Д゚)
『銀』―――
息をするのも忘れてしまいそうな程に鮮やかに輝く『銀』。
髪と眼の色を『銀』色に変えたギコが真っ直ぐ立っていた。
_
(;゚∀゚)「な、なっ……?」
困惑の色を見せるジョルジュ。
情報によれば、ギコはもう『銀』色になる事はなかった筈だ。
だからこそ『錆びた銀弾』などという不名誉な俗称がつけられていたのに。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 22:06:56.31 ID:fWh6nmexO
- そして何よりも、ギコの体から溢れ出すこの圧倒的な闘気。
まるで『黄金』の色を持つ彼の……。
_
( ゚∀゚)(……いや、落ち着け俺。奴はまだ『Clay-G Gray』の中心部にいるんだ。何も心配する事は無い)
だが。
_
( ゚∀゚)(さっきまでやっとの事で立ってた癖に今は苦も無く立ってやがる。念には念を入れて……)
ジョルジュの灰色の瞳が鈍く輝く。
_
(#゚∀゚)「全力で、潰すっ!! パワーMAXだっ!!」
溢れ出る邪。
酔ってしまいそうなほど室内に濃く充満したそれを、球体は次々に取り込んでいく。
そして全てのエネルギーを取り込んだ後に。
球体は、淡い発光を見せた。
ドスン、と、音が聞こえた気がした。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 22:09:08.42 ID:fWh6nmexO
- 川 メ -゚)「っ……、……!」
更に圧迫される感覚を、クーは受けた。
その力は余りに強大で、体がみるみるうちに縮んでしまうのではないのかと思うほどだ。
しかも未だ首を締められていて、苦しみのあまり声を出すどころか呼吸もままならない。
クーは、深海に生身で放られたらこのようになるのだろうか、と遠くなりつつある意識の中で思う。
その力はギコにも襲いかかる。
先程まで平然と立っていたギコも、顔をガクンと俯け膝を折る形になっていた。
_
(;゚∀゚)「へっ、ヒヒッ、どうだぁ! コレでも平気な顔してられるかぁ!?」
_
(;゚∀゚)(チィィッ、化け物がっ! なんでフルパワーなのにまだ立ってんだ! 今の内にサッサと奴を殺さねぇと)
『Clay-G Gray』の全力に耐え切っているギコを見て、ジョルジュの焦りは上乗せされた。
もう余談は許されない。最優先で奴を仕留めなければ。
そう理解したジョルジュはクーの首から手を離し、ギコを正面に見据える。
放られたクーはその場に崩れ落ちた。
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 22:11:08.01 ID:fWh6nmexO
- だが即座に判断したジョルジュの行動は、それでも遅かった。
ギコは既に動き出している。左腕を伸ばし、球体に手を置いていたのだ。
_
(;゚∀゚)「なっ!! う、動け……? いやそれよりも何を―――」
するつもりだ。
そうジョルジュが言い終わる前に。
ピシ、と音が甲鳴る。
球体に黒い亀裂が扇状に棚引き、そして。
ガラスのように、簡単に砕け落ちてしまった。
世界を塗り潰した灰色の泥は、瞬く間にその場から消滅した。
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 22:13:29.97 ID:fWh6nmexO
- 川 メ -゚)「っ、ゴホッ、ゴホッ!」
ようやく圧迫されていた喉が自由になり、クーの体は酸素を無理矢理取り込む。
そして、同時に体を包んでいた重力からも解放されていた。
久方振りの正常な重力は、背中に羽根が生えたかのような体の軽さをクーに感じさせる。
_
(;゚∀゚)「なっ、なっ……」
_
(;゚∀゚)「なあああ!!?」
困惑。
焦燥。
疑念。
辟易。
不可解。
不可解。
不可解。
目の前の出来事が理解できない。奴は何をした?
確かにギミックは多くて脆い部分もあるが、アレも特殊な金属で出来たモノだぞ?
例えこのビルの屋上から投げ捨てても機能に影響は無い程の強度なのに!
不可解、だ。
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 22:15:22.80 ID:fWh6nmexO
- (,,゚Д゚)「ジョルジュ」
_
(;゚∀゚)「ッ!!」
体が震えた。ただ呼びかけられただけで。
ジョルジュの中には小さいながらも畏怖の念が産まれていた。
それはこの世に生を受け、全てを自分の思うがままにしてきた彼にとって初めての感情。
だが、彼はその初めての感情に飲み込まれなかった。
常人にとっては強すぎて支障を起こすほどのプライドが、彼にはあった。
己の狂気で支配されたそのプライドは、ジョルジュに『逃走』という選択肢を与えない。
よって彼は。
_
(#゚∀゚)「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
『闘争』を選んだ。
特攻。
追い詰められた獣の決死の牙が、ギコに襲いかかり―――
ジョルジュは両膝を折り、その場に座り込んでしまった。
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 22:17:19.78 ID:fWh6nmexO
- _
( ゚∀゚)「……………あ?」
何故俺は座っているんだ?
そう思うよりも速く、彼の背中側から肩に手が置かれた。
_
(;゚∀゚)「!??」
(,,゚Д゚)「ジョルジュ」
(,,゚Д゚)「よくもまあ俺をここまでブチギレさせてくれたよ。
そのせいでこんな姿になっちまった。……随分、久し振りだ」
(,,゚Д゚)「極力こうならないように努めてた……、
いや、深層心理の中でかな? セーブされてたんだが……。
こうなっちまったら後は同じだ。俺の女をしこたま殴ってくれた礼だ、本気で行くぞ」
_
(;゚∀゚)「〜〜〜〜っ!!」
汗が全身から吹き出る。
すぐ後ろで巨大な猛獣が口を開けて今か今かと待ち構えているかのような状況。
ともかく立ち上がらなければ。しかし足は動かない。
先程と立場が真逆になってしまった。
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 22:18:56.21 ID:fWh6nmexO
- (,,゚Д゚)「どうした? 動かないのか? 俺に恐れを抱いたか?」
_
( ゚∀゚)「!」
(,,゚Д゚)「心配するな。すぐに終わる。……一撃。それで終わりだ」
_
( ∀ )「っ!」
……一撃。
たった一撃で俺を倒そうというのか。
たった一撃打てばそれで俺など充分だというのか。
ふざけるな。
_
(#゚∀゚)「ふざけるなよギコォォォォォォオオオ!!!」
傷付けられたプライドは怒りを生み出し、怒りはジョルジュを動かす動力となる。
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 22:20:56.99 ID:fWh6nmexO
- 立ち上がり振り向きざまに拳をギコ目掛けて叩き込む。
しかし。
_
( ゚∀゚)「消っ、え……」
そこにギコは無く、
(,,゚Д゚)「一撃―――」
背後から聞こえた声に振り向いたジョルジュの顔に、ギコの右拳が突き抜けていった。
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 22:23:52.49 ID:fWh6nmexO
- 一転、二転、三転。
四転目の途中で壁にぶつかり、ジョルジュはうつ伏せで倒れる。
同時にジョルジュの髪の色が元の黒色に戻り、その後彼が立ち上がる事は無かった。
(,,゚Д゚)「…………」
(;゚Д゚)「…………っう」
吹き飛んでいったジョルジュを見ていたギコだが、不意に体がよろめく。
左腕を持ち上げ、手のひらを頭に押し付けた。どうやら頭痛がするようだ。
髪の色も眼の色も、元に戻っていた。
川 メ -゚)「ギコ? 大丈夫か?」
クーが心配そうにギコに安否を尋ねる。
まだダメージが残っているのか、座ったままの姿勢だ。
(,,゚Д゚)「……ああ、大丈夫だ。ちょっとめまいがしただけさ。それよりもクー、お前の方こそ無事―――」
「長い間、力を解放していなかったから体がついていかなかったんだろう。……情けない話だな、ギコ」
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 22:26:29.35 ID:fWh6nmexO
- (;゚Д゚)「!?」
突如の、声。
同時に爆砕し崩れ落ちる、壁。
(゚Д゚;)「!!」
ミ,,゚Д゚彡「せあぁっ!!」
コンクリートの破片を撒き散らしながら現れた金髪の男―――フサギコは
ギコのがら空きの脇腹に蹴りを叩き込んだ。
(;゚Д゚)「がぁっ、はっ―――!!」
フサギコの奇襲によって大きく飛ばされたギコは、一度強く地面と激突、バウンドし、倒れ込む。
川 メ -゚)「なっ……! 貴様はっ!」
クーは倒していた体を引き起こし、戦闘態勢をとる。
だがフサギコは、そんなクーの姿に一瞥もくれる事無く、ただじっとギコを見ていた。
- 94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 22:49:55.15 ID:fWh6nmexO
- (;゚Д゚)「ぐ……、うぉ……、て、テメェ……フサギコ……何故、ここに……?」
アバラを痛めたのか、息も絶え絶えといった様子でギコは問いかける。
そんなギコの問いにフサギコは声を返した。
ミ,,゚Д゚彡「……何故? 貴様も既に知っているだろう?
貴様等が今まで倒してきた『COLOR's』の面々……、
それらを俺が冥府に送りつけていたという事を。
だから俺がここにいても何の不思議も無い。そうだろう?」
(;゚Д゚)「っ、チッ……」
舌打ちをする。
相変わらずだ。相変わらず、自分に強大な自信を持ち、
自分の信念が何も間違っちゃいないと思っている。
何も変わってねぇ、とギコは思った。
- 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 22:51:55.59 ID:fWh6nmexO
- (,,゚Д゚)「んで……何だ? 今回は俺らを始末しにきたって訳か……?」
ギコは痛む脇腹を手で押さえ、流れ出る脂汗はとめどなく流れ落ちてはいるものの、
それでも眼だけは、意志だけは折れずにフサギコを睨みつける。
例えフサギコがギコを殺しに襲ってきても全力で返り討ちにしてやると、強く思っていた。
だが次のフサギコの言葉は、ギコの予想とは違うモノであった。
ミ,,゚Д゚彡「いや、違う。ギコ、俺はお前を迎えに来たんだ」
(,,゚Д゚)「……はぁ?」
ミ,,゚Д゚彡「『COLOR's』に帰れ、と言っているんだ」
告げられたフサギコの真意。
その本質をギコは見抜く事が出来ない。
(,,゚Д゚)「何言ってんだテメェ……。俺がそんなお願い聞くと思ってんのか」
ミ,,゚Д゚彡「思っていない。だからこそ、こうして実力行使に出ているんだ」
- 98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 22:54:21.35 ID:fWh6nmexO
- (,,゚Д゚)「ほんっと、ウザってえな……。で、理由は? 何故俺をそこまでして戻そうとする?」
ミ,,゚Д゚彡「…………」
フサギコは一度眼を閉じ、一呼吸置いた後に返答する。
ミ,,゚Д゚彡「ギコ。俺達は『あの日』を境に人の身を超えた強大な力を身に纏った。
その力は『COLOR's』の中ですら飛び抜けたモノだ」
ミ,,゚Д゚彡「そしてその力は誰にでも身につけられるモノでは無い。……お前も、知っての通り」
(,,゚Д゚)「…………」
ミ,,゚Д゚彡「つまり俺達には他の誰よりも強くなる素質があり、俺達は強者になるべくしてなったのだ」
(,,゚Д゚)「……で?」
ミ,,゚Д゚彡「人の上に立つべき人間なんだよ、俺達兄弟は」
フサギコは話す。
その内に絶対の自信と誇りを孕んで。
- 101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 22:56:12.66 ID:fWh6nmexO
- (,,゚Д゚)「そのための新『COLOR's』ってか?」
ミ,,゚Д゚彡「そうだ。前『COLOR's』よりも更に厳選を重ね、
真の強者のみで構成された唯一無二の戦闘組織……。
そのトップに、俺とお前が君臨するのだ」
フサギコの口から告げられた、彼の理念。
しかし、そんな彼の考えをギコは一笑に付す。
(,,゚Д゚)「その為だけにお仲間を殺して回ったってワケね。
ハッ、おめでてーのは見た目だけじゃ無ぇな……」
ミ,,゚Д゚彡「なんだと?」
(,,゚Д゚)「発想がガキなんだよ。最強の組織を作りたいだぁ?
下らねぇ。そんなヒーローごっこは頭の中だけでしてろよ」
ミ,,゚Д゚彡「貴様……、コケにするか……っ!」
フサギコがその金色の瞳を細める。
彼の誇りとしていた思想は、ギコにとっては埃を被った考えに過ぎなかった。
- 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 22:58:02.30 ID:fWh6nmexO
- (,,゚Д゚)「ともかく、俺は帰るつもりは無いぜ」
ミ,,゚Д゚彡「ふん、良いだろう。お前がその意志を貫くというのなら俺から逃れてみろ」
もはや言葉は無用、とフサギコが一歩前に出る。
それに対しギコは右手に持つ鎖を強く握り、
(,,゚Д゚)「誰が逃げるなんて甘い事言うかよ! 今ここでテメエをぶっ倒してやるよ!」
(,,゚Д゚)「『蜂』っ!」
投擲。
槍の一突きのような一撃がフサギコの顔に迫り来る。
だが、あと一息でヒットするという所で
ミ,,゚Д゚彡「ハアァッ!」
一喝。
その声に竦んでしまったかのように鎖はフサギコの目前で止まり、その場に落ちた。
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 23:00:30.73 ID:fWh6nmexO
- (,,゚Д゚)「なっ……」
ギコが唖然とする暇もなく、
ミ,,゚Д゚彡「足りんな。もっと力を込めろ」
(;゚Д゚)「!」
フサギコは一瞬でギコとの距離をゼロとし、
ミ,,゚Д゚彡「このようにな!」
ハンマーのような左拳をギコの胸にブチ込んだ。
(;゚Д゚)「ぐおっ!」
紙屑のようにギコは宙を舞い、落ちる。
フサギコの、他の追随を許さないパワーとスピード。
その比はジョルジュなど大人と子供―――足下にも及ばない程だ。
- 105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 23:02:16.69 ID:fWh6nmexO
- (;゚Д゚)「くっ……、そがぁっ!」
辛うじて意識を保っていたギコは自分の体に鞭を打ち、両手を使いすぐに立ち上がろうとした。
が、ふとギコの上着の隙間から何かが零れ落ちる。
(,,゚Д゚)「あ……」
指輪。
ギコが鎖を通して胸に下げていたアクセサリー。
いつでもどんな時でも身につけていたモノ。
ギコは反射的に右手を伸ばし、指輪を掴んだ。
ミ,,゚Д゚彡「…………」
その一部始終を見ていたフサギコは。
ミ,,゚Д゚彡「……まだ、お前の心は過去に縛られているのか」
悲しむような、哀れむような、そんな表情を顔に映した。
- 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 23:03:55.27 ID:fWh6nmexO
- (,,゚Д゚)「!」
フサギコの言葉にギコの体が震える。
ミ,,゚Д゚彡「いい加減『彼女』の事は忘れろ。
今を生きている者が、過去の者に動きを封じられるなど、馬鹿げた話だ」
ゆっくりと語りかけるフサギコ。それに対し、ギコは再度その身を震わせた。
ただし此度の震えは―――
(#゚Д゚)「馬鹿げた、だぁ……? フザけんなよっ……!」
身を焼かすほどの、怒りによる震え。
(#゚Д゚)「アイツの事が馬鹿げている? フザけるな。
アイツは、アイツの生は、決して馬鹿げたモンでも無意味なモンでも無いっっ!!」
ミ,,゚Д゚彡「その考えが縛られているというのだ……! 何故判らん!」
(#゚Д゚)「判っている! 判った上で自ら縛ってんだよ!
それに俺にとっては過去の事なんかじゃない。
俺はアイツをずっと背負っていかなきゃいけねーんだ!」
- 108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 23:05:58.61 ID:fWh6nmexO
- ミ,,゚Д゚彡「それは貴様の勝手な思い込みだ! 『彼女』はお前を縛る事を望んでいたと思うか!?」
(#゚Д゚)「『彼女』が、望んでいたか、だとぉ……?」
ミ,,゚Д゚彡「……むっ!」
ギコの周りの空気が変わっていく。彼の怒りに呼応して、空気が圧縮されていく。
(#゚Д゚)「テメエが……、アイツのっ……!」
髪が、眼の色が、『銀』色に変わっていく―――
(#゚Д゚)「『しぃ』の事を判った風に言ってんじゃねぇぇぇぇえええ!!!!!」
銀色の鋭弾が憤怒の炎によって発射される―――
- 110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 23:08:09.42 ID:fWh6nmexO
- .
―――よりも速く。
ミ,,゚Д゚彡「おおおおっ!」
フサギコの左足が降ろされ、起き上がろうとしていたギコの体を地面へと寝かしつけた。
(# Д )「がっ……、ぁ……」
それで、終わった。
ギコの髪は黒になり、意識は内没する。
ただし、右手はしっかりと握り締めた、ままで。
- 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 23:10:27.54 ID:fWh6nmexO
- 川 メ -゚)「っ! ギコ!」
ギコの闘気が完全に無くなったのを眼と肌で感じ取り、クーはようやく声を上げた。
声を出す事が出来なかった訳では無い。体が動かなかった訳では無い。
しかしそれでもギコに手助けを入れられなかったのは、二人の間に割って入れなかったから。
彼女の、『しぃ』の事はギコと『博士』から聞いている。
だが、それは所詮クーにとって言葉のみの出来事。
ギコと、そして恐らくその場に居合わせていたのであろうフサギコは
実際に肌で体験したリアルでの事なのだ。
そんな二人の会話。しかも彼等は兄弟。
クーは完全に部外者だ。無神経に突っかかる事は出来なかった。
しかしギコは倒れ、今この場に立っているのはクーとフサギコのみ。
もはや両者の激突は避けられない。
フサギコの全てを威圧する黄金の瞳がクーを認識する。
- 115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 23:12:13.92 ID:fWh6nmexO
- ミ,,゚Д゚彡「『黒』……。荒巻の最後の子供。
奴の下で育てられていたというのもあって期待していたのだが」
川 メ -゚)「……博士と面識があるのか?」
ミ,,゚Д゚彡「ああ。荒巻には昔、世話になった。
奴の科学者としての力は他と比べて抜きん出ていたからな」
しかし、とフサギコは言葉を続ける。
ミ,,゚Д゚彡「ジョルジュに手も足も出ない程の完敗。期待外れだ。
貴様も我が理想の組織の一員として検討していたのだが―――」
フサギコから発される闘気が二人の間の空気をねじ曲げていく。
クーはフサギコから眼を離さない。いや離す事は出来ない。自ずと体が身構える。
ミ,,゚Д゚彡「貴様は、要らん。退場してもらう」
その瞳に、ギコに向けられていたモノとは別の意思―――殺意が映った。
- 117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 23:14:07.66 ID:fWh6nmexO
- 川 メ -゚)「…………」
退路無し。
かといってこの満身創痍の体では勝機も薄い。
ならば、とクーは賭けに出る。
先手必勝。『圧空』で距離を詰め一撃を見舞う。
当たったならば倒れるとまではいかないだろうが隙は出来るだろう。
その間にギコを抱えて離脱しよう。そうクーは決めた。
立派な作戦じゃない。それどころか穴だらけの代物だ。
しかし今のクーに出来る事はそれだけなのだ。覚悟を決めて、力を溜める。
ミ,,゚Д゚彡「…………」
フサギコが右足をジリ、と前に出した。
川 メ -゚)(ここ!)
左足の『圧空』を発動。
一瞬の間も置かずにフサギコの体の裏に入る。
- 118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 23:16:04.25 ID:fWh6nmexO
- 川 メ -゚)「おお!」
フサギコの右斜め後ろから彼の横っ面を狙って右拳を飛ばす。
彼の視線は未だ正面で、こっちを向いていない。
川 メ -゚)(いけるか!?)
そうクーが思ったのも束の間、フサギコはノーモーションで右手を真横に飛ばしてきた。
クーの方を見ないままで、だ。
川 メ -゚)「っ!」
速い。
これでは僅かながらだが、フサギコの拳の方が先にクーの顔を吹き飛ばすだろう。
だったら。
川 メ -゚)「うああっ!」
体の向きを無理に調整し、右足の『圧空』を発動。フサギコの左斜め後ろに移動した。
- 119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 23:17:58.48 ID:fWh6nmexO
- 川 メ -゚)「コレで、どうだ!」
こちらに背を向けているフサギコの首の付け根に『圧空』を加えた渾身の左拳を飛ばす。
絶好の角度、シチュエーション。
仕留める。
強く思い、その心も乗せ、拳を―――
ミ,,゚Д゚彡「……遅い」
その声を耳にした時、クーは既に天井を見上げていた。
- 122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 23:21:38.02 ID:fWh6nmexO
- 川 メ -゚)「っ、ハッ―――」
宙に浮く体。
攻撃を貰ったのか? いつ?
疑問を浮かべ停滞する頭を余所に、体は地面に落下し、ダメージを負う。
クーには探知できなかったが、フサギコは後ろを向いた状態から回転、
右のバックブローをクーの顔に叩きつけたのだった。
速さはもとより、その軌道の正確さはまるで背中に眼がついているかのようだ。
倒れるクーに、フサギコはゆっくりと歩み寄り、すぐそばまで来る。
川 メ -゚)「グッ……」
力を振り絞り、顔を上げる。
そこにはこちらを鋭い目で見下ろしているフサギコがいた。
クーの全身が、一気に冷たくなった。
- 128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[ほぼサルかけました] 投稿日:2009/04/21(火) 23:38:17.59 ID:fWh6nmexO
- 無言で互いの顔を見る二人。両者共に動こうとしない。
もっとも、クーには立ち上がる程度の力すら残っていないのだが。
ミ,,゚Д゚彡「聞け。貴様に選択肢をやろう」
唐突にフサギコが沈黙を破り、そのような事を言い出した。
川 メ -゚)「選択肢……?」
ミ,,゚Д゚彡「そうだ。選ぶのは二つの内一つ。ここで俺に殺されるか、それとも」
ミ,,゚Д゚彡「お前一人でこの場を去り、以下俺たちに関わらないように生きるか、そのどちらかだ」
川 メ -゚)「……私がギコを見捨てれば生きて帰す、と。そういう事か」
ミ,,゚Д゚彡「そうだ」
川 メ -゚)「私がギコを見捨てる選択をすると思うのか?」
ミ,,゚Д゚彡「…………」
即言。迷う素振りなど一切見せなかったクーの解答。
- 130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 23:40:26.73 ID:fWh6nmexO
- ミ,,゚Д゚彡「……一先ず相手に従い、体力を回復した後にギコを取り戻そうとは考えないのか?」
川 メ -゚)「考えないな。私は、例え一瞬だとしても、それが本心ではないとしても、
ギコを裏切る事はしたくない。嫌だ」
クーはフサギコに当たり負けしないように、眼に力を入れて答えた。
川 メ -゚)「我ながら堅い考えだな。でも、それが私の正直な思いだ」
ミ,,゚Д゚彡「……いや、違う」
否定の言葉。
ミ,,゚Д゚彡「芯が強いと言うのだ、それは。……残念だ、その気概は素晴らしいが」
フサギコが右手を顔の前に掲げた。その手に力が満ちていく。
ミ,,゚Д゚彡「実力が伴っていなかったな。俺と、力を与えなかった荒巻を恨みながら―――」
ミ,,゚Д゚彡「冥府に落ちよ!」
鬼神の如き手が、クーの命を刈り取ろうと振り上げられる。
- 132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 23:42:04.59 ID:fWh6nmexO
- 川 メ - )(済まん、ギコ。君を助ける力が、私には無かった……)
クーの喉元に、その手が
ノハ#゚听)「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉっっ!!!!!」
燃える鎚を振りかぶった紅の少女が、フサギコの頭上から急襲する―――!
- 134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 23:44:58.91 ID:fWh6nmexO
- ミ,,゚Д゚彡「!」
ノハ#゚听)「ブッ飛べ!!」
フサギコが顔を上げると同時に、少女は重力と自身の体重を多分に上乗せした一撃を振り下ろした。
フサギコは左腕を上げてガードの姿勢を取る。
耳をつんざくような激しい暴音。
まるで龍の咆哮の如きそれの発生地点は、鎚と腕とで拮抗していた。
恐るべきは少女の必殺の一撃を片手で止めるフサギコの力。
だが、少女の持つ鎚の真価はこの先にある。
ノハ#゚听)「『爆』っ!!!」
掛け声と共に鎚とフサギコの左腕の接着点が爆発した。
- 137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[>>135訂正] 投稿日:2009/04/21(火) 23:50:02.23 ID:fWh6nmexO
- ミ,,゚Д゚彡「ぬううっ!!」
流石のフサギコもこれには肝を冷やしたか、後ろに大きく後退した。
同時に発生した爆煙によって視界が一瞬不良になる。
視界が晴れ、フサギコが少女の姿を再確認した時には、
少女は鎚を背負い、右腕にギコ、左腕にクーを抱えていた。
川 メ -゚)「き、君は……?」
ノパ听)「黙ってて。舌を噛むよ」
少女は人を二人抱えているとは思えないほどの身軽さで跳躍。
天井に空いていた穴―――恐らくそこから少女は進入してきたのだろう―――からその場を去った。
ミ,,゚Д゚彡「……ふん。俺が簡単に逃すとでも―――」
フサギコが後を追おうと同じ穴に向けて跳躍しようとするが、
ミ,,゚Д゚彡「!」
穴の奥から何かが飛来。
フサギコの足元付近にそれは刺さり、彼の動きを止めた。
- 141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 23:52:55.66 ID:fWh6nmexO
- そのすぐ後、トソンがフサギコの下にやってきた。
(゚、゚トソン「……申し訳ございません。正体不明の者に足止めをくらい、
まんまと逃げられてしまいました」
頭を下げ、謝罪の意を示すトソン。
ミ,,゚Д゚彡「いや、虚を突かれ逃げられたのは俺も同じだ。謝る必要はない」
(゚、゚トソン「……はい、有り難うございます」
フサギコが自分に怒りを見せていない事に安堵すると同時に、
トソンはつい先程の出来事について思い返す。
(゚、゚トソン(あの女、何者だったんだろう……。あれ程の実力者が我ら『COLOR's』以外にいたなんて……)
ミ,,゚Д゚彡「…………」
フサギコは無言で、地面に刺さっていた飛来物の三本の内の一つを拾い上げる。
- 142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 23:54:57.04 ID:fWh6nmexO
- ミ,,゚Д゚彡「珍しいモノを使う……。興味深いな。一度会ってみたいものだ」
手に握った銀色のメスを握り潰し、フサギコは静かに微笑んだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(゚、゚トソン「しかし……」
トソンは部屋の隅にあった、ある一点を見る。
そこにはギコに殴られ未だ気を失っているジョルジュの姿があった。
(゚、゚トソン「あのジョルジュをこうもアッサリと倒しますか」
極悪とも言える性能を誇る『Clay-G Gray』。
それを意に介さず、優に破壊して見せたギコの力はトソンの予想を大きく上回っていた。
ミ,,゚Д゚彡「フッ、当然だ。奴が以前の『銀弾』としての力を発揮すれば、ジョルジュなど敵ですら無い」
- 144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 23:57:28.65 ID:fWh6nmexO
- 満足そうにフサギコは笑う。
(゚、゚トソン「……嬉しそうですね」
ミ,,゚Д゚彡「む、そんな事は……」
ミ,,゚Д゚彡「……いや、確かに嬉しいのかもしれんな。
奴は、ギコはやはり俺の理想に見合う程の力を有している。
今回はその力欲しさに、つい足が前に出てしまったが……。
いい機会だ。我らの元に迎える前に万全の状態での奴と戦い、その力量を計るのもいいだろう」
(゚、゚トソン「また、来ますか? 彼らは。貴方の力の一端を目の当たりにして逃げるという可能性は?」
ミ,,゚Д゚彡「無いな。奴の事はよく知っている。アイツは昔からやられっぱなしが一番嫌いだ」
(゚、゚トソン「そうですか」
(゚、゚トソン(本当に嬉しそうですね。いつもより饒舌ですし)
珍しい姿が見れた、とトソンも顔には出さないように、笑った。
- 146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/21(火) 23:59:45.73 ID:fWh6nmexO
- ミ,,゚Д゚彡「さ、て。後始末をするとしよう」
そう言ってフサギコは横たわるジョルジュの元へと歩み寄った。
ジョルジュを眼下に置いて、先程の穏やかなものとは正反対の冷たい眼を光らせる。
ミ,,゚Д゚彡「所詮は物に頼らなければ人の上に立つ事が出来ない狐か……。
力こそが全てというのであれば、貴様には微塵の価値も無い」
フサギコの右腕がゆっくりとジョルジュに伸びる―――
ミ,,゚Д゚彡「―――何のつもりだ、『ピンク』」
从'ー'从「ふふふ〜。ちょーっと待って欲しいかな〜なんてねっ」
が、フサギコの腕は何も無い空間から幻のように出現した『ピンク』の手に掴まれ、止まった。
- 148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/22(水) 00:01:54.36 ID:QbdRgSUxO
- (゚、゚トソン「ピンクっ……! 何をするつもりですか!?」
急に現れ、フサギコの腕を掴んだピンクにトソンは詰め寄ろうとした。
だが、フサギコに片手で制され、その足を止める。
从'ー'从「どちらかと言うと『何をしているっ!』はコッチの台詞なんだけれどね〜、
お仲間をヤっちゃおうとしてるんだから。まあ今更なんだけど」
ミ,,゚Д゚彡「……で、何の用だ?」
ピンクはフサギコから手を離し、質問に答える。
从'ー'从「いや〜殺しちゃうくらいなら、ジョルジュ、私にくれないかなぁって、ね」
ミ,,゚Д゚彡「何に利用するつもりだ?」
从'ー'从「利用だなんて可哀想だよ〜。無くなっていい命なんて無いんだからっ!」
ミ,,゚Д゚彡「今まで散々俺の行為をスルーしといてよく言えるな、狸が」
从'ー'从「あ、ひっどーい! 女の子に狸だなんてデリカシーがないよ〜。
そんなんじゃトソンちゃんも苦労しちゃうよ〜。ね? トソンちゃん?」
(゚、゚;トソン「なっ! わ、私を愚弄するつもりですか貴女は!」
从'ー'从「いやいや〜」
- 150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/22(水) 00:04:03.88 ID:QbdRgSUxO
- ピンクの気の抜けた声に興が削がれたのだろうか。フサギコは一つ溜め息をついて、
ミ,,-Д-彡「好きにしろ」
と言い放つ。
从'ー'从「きゃ〜、おっとこまえ〜♪ じゃ、遠慮なく貰っていくね。それじゃ、バイバ〜イっ」
ひとしきり喜びを表現した後、ピンクはうつ伏せで倒れる
ジョルジュの背中に手を置き、残った手を二人に向けて振る。
すると次の瞬間、ピンクとジョルジュの体が透け始め出した。
次第にその姿は曖昧になっていき、やがて完全に姿を消してしまう。
(゚、゚トソン「……良かったのですか、みすみす見逃して。何やら良からぬ事を考えていたようですが」
ピンクの気配も感じ取れなくなってきた頃に、トソンが尋ねた。
- 153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/22(水) 00:06:49.65 ID:QbdRgSUxO
- ミ,,゚Д゚彡「こちらに直接関与しないのならば放っておいて構わん。
だがもし邪魔をするというなら、その時に潰せばいい」
(゚、゚トソン「判りました、そのように」
ミ,,゚Д゚彡「帰ろう。……決戦の日はすぐそこだ。トソン、お前にも手伝ってもらう」
(゚、゚トソン「はい、お任せ下さい。私は貴方の盾。
貴方に襲いかかる障害など、私が全て払いのけてみせましょう」
ミ,,゚Д゚彡「期待している」
二人は部屋を後にする。もうこの場所に用は無い。
ミ,,゚Д゚彡(ギコ、待っているぞ。お前の力、信念。残さず俺にぶつけてみろ……!)
用があるのは全ての終わりを迎えるステージ。
双方が遠慮なく力を解放できる、選ばれた聖地のみ。
- 155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/22(水) 00:09:01.44 ID:QbdRgSUxO
- .
―――結末は、近い。
第十一話-b 終わり
→第十二話へ続く?
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