ここは解決屋『シルバー&ブラック』本社のようです
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:01:58.09 ID:iiUvdgucO



薄暗い部屋の中。
静かな蚊帳の中。
背中が痛む。数えて七回

意識は取り留めもない思考の最中。
天井の真中に位置するアレは。

穴か、何かか。




(,,゚Д゚)(なかなかどうして下らねえ)


危うく現実逃避してしまいそうになったが、何とか身を『コカ』にして戻ってきた。



……あ、『粉』か。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:04:05.83 ID:iiUvdgucO
現在大の字になって床に仰向けに倒れている状況。

体の節々が結構痛い。
着ているスーツなんて見てられないほどボロボロだ。
この姿でパーティー会場に足を踏み入れた日には、
一秒で小さく悲鳴を上げられ二秒で早々と追い出されるのだろう。それくらいボロボロだ。


(,,゚Д゚)「さて……。クー? 生きてる?」


ギコはとりあえず自分の相方に声を掛ける。体は面倒なので伏せたままだ。

すると、ギコの頭が向いている方から答えが返ってきた。


「うーん……。あと五分」

(,,゚Д゚)「寝てんじゃねえよ、起きろ」


ガラガラと破片が落としながら、体を起こす音が聞こえる。
その雑音の中に「ちぇっ」という声が混じっていたのも、ギコには聞こえていた。

それに少し遅れて、ギコも身を起こす事にした。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:06:00.32 ID:iiUvdgucO
川 ゚ -゚)「それで、私たちはどうなったんだ?」


クーは体についたコンクリートの破片をはたき落としている。
しかし、ギコ同様にスーツがボロボロなので、あまり意味が無いように思えた。


(,,゚Д゚)「そうだな」


ギコはキョロキョロと周りを見た後、顔を上に向ける。
天井には先程見たとおり、巨大な穴が開いていた。


(,,゚Д゚)「どうやら爆発によって下の階に落とされたみたいだな」


そこまで言って、ギコは自分の発言により微妙な顔になった。

天井に出来た穴はざっと見で幅三メートルはある。
それほどの巨大な穴が開く程の爆発に巻き込まれながら、よく五体満足でいられたな、と思う。

口の端が引きつるのを、どこか呆けた頭が感じ取っていた。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:08:21.00 ID:iiUvdgucO
川 ゚ -゚)「ふう。それにしても何だか暑いなこの部屋。空調利いていないんじゃないか?」


クーがそんな事をぼやきながら胸部分のシャツをパタパタさせる。
スーツが所々破れているのでちょっぴりセクシー。


(,,゚Д゚)「アホか。ここどこだと思ってんだ。空調なんて稼働してるわきゃねーだろ」

川 ゚ -゚)「だよな。じゃあ何で暑いんだろうな?
     私の記憶が正しければ春はまだ先にあったハズなんだが」


ギコはちょいちょい、と右の人差し指を上に向ける。


(,,゚Д゚)「あの穴から垣間見える空を覗いてみろよ。
     真っ赤な太陽が俺たちを恨めしそうに睨みつけてるぜ」


クーが覗いてみると、確かにそこには太陽があった。
それにしてもヤケにリアルだ。メラメラと猛っている。
真夏の太陽より己を主張しているように見える。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:10:19.65 ID:iiUvdgucO
クーはしばらくそれを見つめた後、目を話さずにギコに話し掛ける。


川 ゚ -゚)「なあ、ギコ」

(,,゚Д゚)「なんだい?」

川 ゚ -゚)「一つ質問があるのだが、いいかな?」

(,,゚Д゚)「おk」

川 ゚ -゚)「どうしてビルの中に太陽あるんだ?」



(,,゚Д゚)「…………」

川 ゚ -゚)「…………」


無言でお互いの顔を見る。
見つめ合い意思を疎通し、どちらも一回頷いてから―――

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:11:57.38 ID:iiUvdgucO
                                              .









(,,゚Д゚) ここは解決屋『シルバー&ブラック』本社のようです 川 ゚ -゚)



第十話-b

「「逃げるぞっ!!」」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:14:21.13 ID:iiUvdgucO
同時に叫び、飛び退く。
次の瞬間、目の前に炎が巻き上がった。

炎は瞬く間に部屋中に広がろうとするので、二人は急いで部屋から逃れ廊下に飛び出す。

部屋を背に向けて走り出すと後方で爆音が聞こえた。振り向かずにその場を後にする。


(,,゚Д゚)「うおおお! メチャクチャ怖えぇー! どこぞのB級ホラーとか比べ物にならんぞ!」

川 ゚ -゚)「狭い空間で炎を撒かれるとどうしようも無いな」


会話しながらも足は止めない。それでも一定のリズムで爆音が聞こえる。
音の大きさもほぼ変化が無いので、こちらを追いかけているのだと判る。


(,,゚Д゚)「ぬおお! で! どうするよ!? このまま逃げても埒が明かんぞ!」

川 ゚ -゚)「むう……」


言い淀む。
良い解決策が思い付かない。
いつもなら力任せに押すのだが、炎の中に飛び込むのは流石にやりたくない。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:16:57.63 ID:iiUvdgucO
(,,゚Д゚)「!」

(゚Д゚,,)「クー! 横に飛べ!!」

川 ゚ -゚)「!」


ギコの言葉にクーは後ろを確認する事無く横っ飛び。体当たりでドアを突き破り室内に転がった。
そのすぐ後を追うようにギコも中に入る。

クーはドアの奥、廊下を巨大な火球が通り抜けるのを確認した。

それとは別に爆発音。
部屋の一部が白い煙で覆われ、その中から赤い鎚を持った少女が飛び出してくる。

少女は近くにいたギコを狙って、炎がたぎる鎚を横薙ぎに振り回す。
それをギコは両手を付き、這うように屈んで回避。
指に力を入れ地面を押して後方に逃れる。

しかし少女の攻めは止まらない。
ギコに追随、前に跳躍。
先程の攻撃の勢いそのままに空中で横に一回転。
パワーをより蓄えた一撃が襲いかかる。

壁を背にしているギコに後退の二文字は無い。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:19:20.82 ID:iiUvdgucO
(,,゚Д゚)「ならばっ……」


受け止めるのは論外。
そんな事をすれば両腕ごと持って行かれかねない。


(,,゚Д゚)「こうだ!」


真上に跳躍。
次いで後ろの壁を蹴って更に上昇。
三角跳びによって高々度に逃れる。

目標を失った鎚は壁に不時着。
コンクリートの壁はビスケットのように脆くも崩れ落ちた。


(,,゚Д゚)「チャンス到来!」


少女の背後を取るように着地したギコは一直線にその背中に向けて走り出す。
鎚は壁に埋もれてしまって身動きが取れない。

が。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:22:03.17 ID:iiUvdgucO
ノハ#゚听)「ウアアアアアアアァッッ!!!」


怒叫。
その声から生み出された少女の力は並外れていた。
コンクリートの抵抗など露とも気にせず、己の武器をムリヤリ発掘。後方に薙ぎ払う。


(,,゚Д゚)「!? やっぱ気のせいでしたー!!」


直前に危機を読み取ったギコは極前方に寄せていた重心を
一気に後ろに持って行き強制的にブレーキ。
ギリギリのところで右に跳び、回避に成功した。


「余り図に……」

ノハ#゚听)「ッ!?」


突如、上から声。
少女が顔を上げると。


川 ゚ -゚)「乗るなよっ!!」


クーが少女の視界の外から隙をついて空中から仕掛けていた。既に距離は目と鼻の先だ。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:23:58.11 ID:iiUvdgucO
少女は力任せに鎚を振り回していたので体が流れてしまっている。
これではすぐに動けない。


川 ゚ -゚)「そこっ!」


無防備な頭にクーの左足が突き出される。
完璧なタイミング。クーはクリーンヒットを確信した。



だが、次の光景はクーの予想から離れたところにあったものだった。


川 ゚ -゚)「!?」


結論から言えば、クーの蹴りは避けられた。
少女は倒れるように体を動かし、紙一重で躱したのだった。


川 ゚ -゚)(馬鹿な……。あのタイミングで動けるハズが……)


無い。
そう思ったクーだが、すぐさま理由に気付く。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:25:57.89 ID:iiUvdgucO
川 ゚ -゚)(鎚を……、手放した、のか……)


最初の登場時からずっと少女の右手に持たれていた鎚。
それは今、主人の手を離れてクーの真下に放置されていた。

そう。確かにクーの蹴りは少女には不可避だった。
ただ、それはかなりの重量を保持する鎚を手にしている、という事を前提とした考え。

元々、少女は重たい鎚を持つ事で重心をズラしていたのだが、
その鎚を手放せば重心は再び己の中に宿る。
また、単純な軽量化という事象も加えれば、より機敏な動きが可能となる訳だ。



とは言え、だ。


川 ゚ -゚)(自分から武器を放棄するなどと……!)


愚か。
目の前の危機に心奪われて、それよりももっと重要な事を蔑ろにする行為。

クーは着地と同時に足元の鎚を後方に蹴飛ばそうと考える。
この鎚さえ無効化できれば、少女は怖くない。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:29:58.90 ID:iiUvdgucO
さて、話は少し変わるのだが、この事柄―――



実はクーにとって、クーのこれからにとって、かなり重要なファクターとなった。



何故か。

それは。





下手を打てば、最悪、彼女の下半身は吹き飛んでいたのかもしれなかったからだ。



そう、彼女は気付いた。
それはとても幸運な事。



放置されていた鎚が非常に微かに、裸眼では見分けがつかない程
微かに振動しているのを、クーは感じ取る事が出来たのだ。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:32:07.19 ID:iiUvdgucO
川 ゚ -゚)(これは……)


それを確認した時、クーの脳裏にはある二つの文字が浮かび上がる。


川 ゚ -゚)(『危険』―――ッ!)


しかしそうは思っても支えが何も無い彼女の体は地面へ落下していく。

不穏な動きを見せる鎚に吸い込まれるように近付いていく。



やがてクーがその足に硬い感触を感じた頃。



間を置かずして、鎚が爆発した。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:34:14.05 ID:iiUvdgucO
(,,゚Д゚)「……ッ!!」


離れた距離から状況を見守っていたギコは思わず息を飲んだ。
クーの絶妙な蹴りが躱されたかと思ったら次の瞬間には爆風が彼女を包んでいた。



煙で見えなくなっていた場が次第に元通りになっていく。


ノハ#゚听)「…………」


少女は自分の足元に目を向けていた。
そこには己の武器と破壊されたコンクリートの欠片がある。
クーの姿は無い。

少女は下げていた目線を上げ、前方を見る。


川 ゚ -゚)「…………」


するとそこには片手・片膝を地面についたクーの姿が。
しかし、特に新しい傷はその体には見受けられない。

クーは着地と同時に両足の『圧空』を発動。その場を切り抜ける事に成功していた。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:36:07.27 ID:iiUvdgucO
(,,゚Д゚)「ふぃーっ。ったくビビらせんなよ。
     塵一つ残さず爆散しちゃったのかと思ったじゃねーか」


ギコは額を腕で拭うような動作を見せる。


川 ゚ -゚)「いや私の方が心臓バクバクだよ。涼しい顔してるけどすっごいテンパってたよ」


そう言ってるクーは、しかしそれでもほぼ無表情だった。
本当にビビってたのか怪しいところである。


ノハ#゚听)「…………」


少女はクーが無事である事は全く気にしていないようだ。
地面に置かれた鎚を拾い上げる。


川 ゚ -゚)「しかし……」


クーは座ったままの姿勢からゆっくりと立ち上がり、少女を見る。


川 ゚ -゚)「無傷、か。彼女も爆風に巻き込まれていたハズなんだがな」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:38:12.65 ID:iiUvdgucO
ダイナマイトでも投げ込まれたかのような爆発。
それはクーは勿論の事、近くにいた少女自身も範囲に入っていた。
しかも、すんでのところで退避したクーとは違い、少女はその場から動かずにいた。
なのに少女には傷はおろか衣服にコゲ後一つ見受けられなかった。


(,,゚Д゚)「ま、テメエの武器にやられてりゃ世話ねーからな。
     推測に過ぎんが、ある程度は自分の意思で爆発を操れんだろ」

川 ゚ -゚)「大味な武器に見えるが、アレはれっきとした精密機械という訳か」


火の玉も作れるしな、とギコは疲れたような顔を見せて言った。


ノハ#゚听)「ッアアアアアアアアアアア!!」

川 ゚ -゚)「っと」


そうこうしている間に体勢を立て直した少女が襲いかかってきた。
ギコとクーは左右に飛んで回避する。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:40:32.53 ID:iiUvdgucO
(,,゚Д゚)「さ、て。どうしようか?」


ギコは離れたクーに声を投げかける。


川 ゚ -゚)「そうだなあ……。やはりここは」

(,,゚Д゚)「逃げ回りますかね」


二人はその部屋から撤退。再び廊下を全力疾走し始めた。



ビル中を駆け回る。
真っ直ぐ続く廊下を突き抜けたり、階段を上がったり下がったり。
その間、二人の少し後ろからは絶え間無く叫び声と爆発音が鳴り響いていた。


(,,゚Д゚)「やれやれ。しっかしさっきからずっと
     アイツ叫びっぱなしだよなあ。よく喉が潰れないもんだ」

川 ゚ -゚)「……なあ、ギコ」

(,,゚Д゚)「……ああ、そうだな」


クーの身の回りの空気が重くなる。
それを敏感に感じ取ったギコは声のトーンを落として返した。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:42:40.38 ID:iiUvdgucO
川 ゚ -゚)「やはり彼女は」

(,,゚Д゚)「だな。真っ当な人間だろうね」


少女は叫んでいる。
『叫び』というものは元来、己を鼓舞したり、
体内では収まりきれない激情が外に放出される時に発せられる。

そのどちらにも、『感情』が深く関わっている。
『叫び』とは自らの『感情』を主張するモノなのだ。

人形に『感情』は必要無い。
確実な任務を旨とする彼らには、そのような不安定な要素など要らない。

時には己の実力以上のパワーを発揮し、
その一方で任務遂行が困難になる程の混乱を招く『感情』。

そのようなふれ幅は、むしろ危うい。
期待以上の成果など彼らには求められていない。

だからこそ人形に『感情』は要らない。彼らは叫ぶ事はしない。

もし我らの身の回りにある人形が突如叫んだら。
それは不要を通り越して只のホラーだ。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:45:02.20 ID:iiUvdgucO
しかし目の前の少女は叫ぶ。
人形には持ち得ない行為を有しているという事は、つまり彼女は―――


川 ゚ -゚)「人間だ」


だから、救う。
彼女を死の迷宮から解き放たなければならない。
クーは今一度、覚悟を決め直した。




川 ゚ -゚)「と、意気込んではみたものの……」

(,,゚Д゚)「! 来るぞ!」


もう何度目になるだろうか。
13までは数えたが、それから先は覚えていない。多分それプラス十数回位だろう。
ともかく、幾度目かの火球が後方から二人に迫り来ている。

ギコは地面に這いつくばり、クーは天井に貼り付くようにしてやり過ごす。

凌いだら、また再び二人仲良く併走し出す。
これを先程から何回も繰り返していた。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:46:58.01 ID:iiUvdgucO
(,,゚Д゚)「で、どーよ? そろそろこの状況をぶち壊すミラクルな方法思いついた?」

川 ゚ -゚)「あ、スマン。別の事考えてた」

(,,゚Д゚)「考えろよ! 今考えないでいつ考えるんだ! もっと熱くなれよ!」

川 ゚ -゚)「素直クールにそんな事言われても……。
     で、ずっと打開策を考えていたお前は何か良い案思いついたんだろ?」

(,,゚Д゚)「いや、何も」

川 ゚ -゚)「火葬されろ」

(;゚Д゚)「熱くなり過ぎた結果がこれだよ!」

川 ゚ -゚)「あ、火の玉来た」

(,,゚Д゚)「火葬されてたまるか!」


口を動かしながらも判断は速い二人。存外に器用である。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:49:07.72 ID:iiUvdgucO
足はセカセカと前へ前へと踏み出しながらも、ギコの顔は後ろを向いていた。


(,,゚Д゚)「ちっくしょー何時までも追いかけて来やがって。
     少しは体勢を立て直す時間をあげようかな、とかいう殊勝な考えは無いんかい」

川 ゚ -゚)「……ちょっと聞きたいが」

(,,゚Д゚)「んあ?」

川 ゚ -゚)「お前が彼女の立場でも嬉々として追いかけ回すだろ? 特上の笑顔で」

(,,゚Д゚)「もち。誰だってそーする。俺もそーする」

川 ゚ -゚)「そーですか」


後方で一際大きな爆発音が鳴る。


(,,゚Д゚)「あーもう、あの爆破狂が! 全く嫌になるぜ。スーツもボロボロになるしよう!」

川 ゚ -゚)「スーツ代も馬鹿にならないんだよなあ。経費とか落ちる訳ないし。自営業だから」

(,,゚Д゚)「このビルもそこら中穴だらけだぜ。せっかくまだ目新しかったのに……」



川 ゚ -゚)「!」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:51:01.62 ID:iiUvdgucO
川 ゚ -゚)(そう言えば、このビルはまだ新しかったな……。
     だったら『アレ』があるんじゃないのか?)

川 ゚ -゚)(だが、『アレ』があったのならば、さっきの説明がつかない……)

川 ゚ -゚)(いや、待て。もしそういう事なら……)

川 ゚ -゚)(試してみる価値は、ある)



川 ゚ -゚)「おい、ギコ」

(,,゚Д゚)「なんじゃらホイ」

川 ゚ -゚)「いいこと思いついた」

(,,゚Д゚)「お前、俺のケツの中でションbメメタァ!!」

川 ゚ -゚)「という訳で早速実行だ。合わせろ」

(,,゚Д(#)「アイアイサー!」


二人は互いの顔を見て頷き合うと、手近な部屋へと入り込んだ。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:52:57.98 ID:iiUvdgucO
続いで少女も室内に入り込む。
駆け込んだ勢いそのままに、二人に向けて鎚を振り回してきた。


(,,゚Д゚)「うおっ、あぶね! どこぞの茶々ブーみたいにブンブン振り回しやがって……!」


避ける。
限られた空間の中での回避。今まで以上に速く、鋭く動かなければならない。

そんな状況下において、クーは『ある事』を確認する。


川 ゚ -゚)(…………あった。位置はあそこか。後は……タイミングの問題)

(゚- ゚ 川(ギコ、少し攻めるぞ)

(,,゚Д゚)(おk)


アイコンタクトを取り、意思疎通をはかる。
数える事三度目の戦闘が幕を開けた。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:55:02.22 ID:iiUvdgucO
川 ゚ -゚)「はっ!」

ノハ#゚听)「アァアッ!!」


クーと少女は向かい合い、互いを打倒する為に拳と鎚を交わす。

クーは燃え盛る爆心地の中、つまり少女に密着しながら闘っている。覚悟を決めたようだ。
一撃さえ気をつければ接近戦は素手のクーの方が優勢なのは変わらない。
だが、一回でもマトモに喰らえばそれで終わりなので有利とは言えないだろう。


(,,゚Д゚)「よっ、と」

ノハ#゚听)「!!」

(,,゚Д゚)「うんうん、良い反応だ。ちゃんと避けられたか」


そのようなミスを防ぐ為にも、ギコは後方支援に徹する。
クーの攻撃の隙間を埋めるように鎖を飛ばせば、すなわち絶え間ない攻めとなる。
そうすれば少女は大振りな動作が自ずと出来なくなるのだ。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:57:08.54 ID:iiUvdgucO
状況はクーが押している。

少女の攻撃をいなし、捌き、未然に止めたりして無力化し、
隙が出来たところで拳を細かく当てていく。

その様子はまさに詰め将棋。
全ての行動パターンを把握しているかのようなクーの殴打が少女の体力を徐々に奪っていく。


ノハ#゚听)「ウアアッ!!」

川 ゚ -゚)「どうした? この程度か? 叫んでいるだけでは私は倒せないぞ。行動で示せ」


挑発するかのようなクーの発言に、炎の暴風は一段と激しさを増す。

が。


川 ゚ -゚)「甘い!」


その攻撃も叩き落として難を逃れる。


川 ゚ -゚)「力を入れるのは良いがモーションが大きすぎる。
     如何に強力な攻撃も当たらなければ意味が無いぞ……!」

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 21:58:57.98 ID:iiUvdgucO
ノハ#゚听)「ガアアアアッ!!」


もはや苛立ちを隠しきれない少女は鎚を振り上げ、『溜め』の動作を見せた。

その行動をギコは見逃さない。


(,,゚Д゚)「おっとそうはさせるかよっ!」


瞬時に鎖を飛ばす。

身を翻して躱すか、鎚で受け止めるか。
いずれにせよ、その行動で溜めはキャンセルされてしまうだろう。

だが、少女は第三の選択を選んだ。



ミシ、と骨が軋む音が。


(,,゚Д゚)「むっ!?」


少女は空いていた左腕を掲げて、鎖を受け止めた。
当たった場所が赤黒く変色し、腫れ上がっている。

少女は左腕を犠牲にする事で、鎚の溜めを続行させたのだ。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:00:58.07 ID:iiUvdgucO
川 ゚ -゚)「っ! だが目の前の私を忘れては困る!」

クーはとっさに右の掌底を繰り出す。
まだあの強大な一撃を放つほど充分には溜まってないはずだ。


ノハ#゚听)「っ!!」


しかし少女は構わず振り下ろす。
しかも狙いはクーではなく、クーの左足のそばの地面に、だ。

爆発。
流石に溜めが不充分だったせいか、前ほどの威力は無い。
しかしそれでもそこそこの爆発が地面を粉砕し、一瞬ではあるがクーは怯んでしまった。


川 ゚ -゚)「くっ!」


追撃が来る。
そう思ったクーは素早く両腕を上げてガードの姿勢を取るが、


川 ゚ -゚)「!?」


感じる痛み。
発生場所は右足。
見ると少女の左足とクーの右足が重なっていた。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:03:29.29 ID:iiUvdgucO
川 ゚ -゚)(ローキック……。蹴りも使えたか)


これまで少女は鎚による攻撃一本だったので完全に失念していた。
ダメージは大きくないが、それを理解した頃にはクーの体は既に崩れ落ちていた。

少女はその場で半回転。
続けて右の回し蹴りを、座っているような格好のクーの顔面に目掛けて発射した。


川 ゚ -゚)「ちっ!」


今度はちゃんと両腕で受け止める。
しかし座ったままでは踏ん張りが利かず、後ろに倒れ込んでしまった。

不味い、とクーは眉を僅かにしかめる。
絶好の隙が生まれてしまった。
はやる気持ちをそのままに急いで体を起こして前を見ると、もう眼前は光に包まれていた。


ノハ#゚听)「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!」


跳躍する少女。
手に持つ鎚は紅にまみれている。



準備、完了―――!

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:05:18.30 ID:iiUvdgucO
視界に広がるのは炎の海。
轟火を翼にする少女の姿はまるで永遠の命を万民にもたらす『フェニックス』のようだ。


ノハ#゚听)「『火之―――』」


武器の名を叫ぶ。
言葉というのは音にするだけで力になる。
名前には名付けられたその瞬間から魔力を有するのだ。
その魔力は全てを焼き尽くすエネルギーへと変換される。


ノハ#゚听)「『―――楽―――』」



川 ゚ -゚)「…………」


そんな圧倒的な力を前にして、クーはその場に立ち尽くしていたが。


川 ゚ー゚)


笑った。
彼女の性質上、その顔の動きはほんの僅かなものであったが、確かに笑った。
それは恐怖から来る狂気か、それとも―――

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:07:03.52 ID:iiUvdgucO
―――それとも、絶対的な自信によるものか。


川 ゚ -゚)「ギコ、飛ばせ!」

(,,゚Д゚)「! おうっ!」


クーのところに駆けつけようとしていたギコは、
しかしその言葉に足を止め、代わりに鎖をクーに投げつけた。

クーはそれをキャッチし、少女を地上から見上げる。


ノハ#゚听)「『――――――――ツ』」

川 ゚ -゚)「それが来るのを待っていた! 後は―――」


鎖の先の分銅を握り締め、振りかぶり。


川 ゚ -゚)「後は博打を打つのみ! ベットは……私の命を捧げよう!!」


天へ向けて力の限り投げつけた。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:09:01.35 ID:iiUvdgucO
鎖は天駆ける龍の如く上昇し、少女の顔に一直線に伸びる。


ノハ#゚听)「!!」


迫り来る鎖。
それは少女が鎚を振り下ろすよりも速く襲いかかる。
しかも空中にいる為、回避できない。


ノハ#゚听)「ッ!!!」


が、それはあくまで一般的な事。
常識の外に立つ少女はその重力に縛られない。

鎚を、何も無い虚空へ泳がせる。

重心の移動。
超重量の鎚を一回転させることで己の中心をズラした。

鮮血。
少女の左頬に赤い線が走る。
だがそれまで。分銅は少女の体を通り過ぎてしまった。

そして少女は回転による遠心力で限界超過の一撃を放つ―――!

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:12:58.46 ID:iiUvdgucO
ノハ#゚听)「『―――――――――チ』ィィィイイイイイイイイイ!!!!!」











川 ゚ -゚)「―――よく、避けてくれた」


微笑み。嬉しさを噛み締める声。


川 ゚ -゚)「そうだな、ご褒美として」


ピッ、と人差し指を立てて。




川 ゚ -゚)「汚れた体を清める『シャワー』なんてどうだろうか?」


黒炎宿る戦場に、雨が降り出した。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:15:16.17 ID:iiUvdgucO
ノハ#゚听)「!!?」


少女は突然の『雨』に驚きを隠せなかった。
『雨』は熱した空間を冷ますように降り続いている。


ノハ#゚听)「……ッ!」


右側から、熱い鉄板に水をかけた時のような音が聞こえた。
見ると、『雨』によって鎚が纏っていた炎が消されてしまっていたのだ。
代わりに多量の水蒸気が発生し、煙が室内を白に染め上げていく。


ノハ#゚听)「…………ッ」


疑問。
この『雨』は一体どこから―――。

少し考え、そしてある事を思い出し、顔を上に向けた。



そこにあったのは『スプリンクラー』。
見ると、それは不自然にへこんでいた。
先程クーが投げた鎖が当たったのだろう。

つまり、クーの狙いは少女では無く、初めからスプリンクラーだったのだ。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:17:58.88 ID:iiUvdgucO
しばし天井を見上げていた少女だが、やがてそれも白に埋もれて見えなくなってしまう。


ノハ#゚听)「!」


ふと、我に返り周りを見る。
既に視界の360°が、濃霧の中にいるかのように真っ白になっていた。

何も見えない。
倒すべき二人の姿も見えない。
物音一つも聞こえないのは、なりを潜めているのだろう。

だとすると、この場に留まっていては危険だ。
そう思い、少女は音を消して跳躍する。

だが着地した瞬間、チャプンと水がはねる音が聞こえた。
足元を見ると、スプリンクラーの水が地面に水溜まりを作っている。
その音で自分の位置が割れてしまったかもしれないと思い、用心の為もう一度跳躍。
今度は可能な限り音を抑え、細心の注意を払って着地した。

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:20:22.41 ID:iiUvdgucO
ノハ#゚听)「…………」


ギリ、と強く握り締める事で自分の武器を確認する。
少々濡れた程度ではこの熱量を封じ込める事は出来ないものの、
それでも十数秒のインターバルは必要だ。
よって少しの間、『楽鎚』のみの運用で行かなければならない。

それにしても攻撃に移る体勢は整えたはいいが、未だ視界は晴れない。
こちらから攻められないのは歯痒いが、焦りは禁物。
向こうも自分の位置は判らないハズだし―――


ノハ#゚听)「!!?」


斜め後方から、何かが飛来。
慌てて前方宙転する事で何とかやり過ごす。
そのまま今いる場所から音を立てずに飛び去り、同時に目を動かしてその正体を確かめた。

鎖。
見間違えようも無く、ギコが持っていた鎖だ。

それを見て最初に湧き上がる疑問。



『何故、自分がいる位置が判ったのだろう?』

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:22:17.67 ID:iiUvdgucO
鎖は正確に少女を縛ろうと飛んできた。
気付けたのは偶然。運が良かっただけだ。

移動した先でも、周りは深い霧に包まれている。
なのにどうして、相手は自分の位置が判るのか―――


ノパ听)「…………?」


何か、聞こえる。
シュン、シュンと風を切るような音が断続的に聞こえる。
よく判らないが、とにかくここにいては危険だというのは確かだろう。

早くこの場から逃れて……



そこまで考えて、しかし踏み出そうとした足を止める。


どうして?


その音が少女の退路の全てを塞いでいたからだ。

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:23:58.48 ID:iiUvdgucO
ようやく蒸気の霧が薄れてきて、謎の音はいったい何なのかが見えてくる。

鎖が縦横無尽に空を駆け巡っていた。
それは一本に非ず、無数の鎖が無限の方向から貫き走る。
さながら『檻』のような空間の中に少女は閉じ込められていた。


ノハ#゚听)「……ッ!!」


『檻』を打ち壊そうと鎚を振るう。
が、鎖は自我を持っているかのように難なく躱し、更にそのまま幾重にも鎚に巻きついた。


ノハ#゚听)「!」


空中で鎚が固定される。
少女はそれを力任せに引き千切ろうとし、


川 ゚ -゚)「油断大敵」

ノハ#゚听)「!? ガァッ……!!」


何時の間にか後ろに立っていたクーの右拳の一撃を脇腹にモロに喰らってしまった。

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:26:59.02 ID:iiUvdgucO
ノハ#゚听)「ク、アッ……ガハッ……!!」


痛みに顔をしかめる少女。
足は本人の意志とは関係なしに崩れてしまっている。

しかし目は上を。少女を見下ろしているクーの顔から離れる事は無い。

飽くなき闘争心。
操られているから、というのもあるだろうが、恐らく彼女の本質もそうであるのだろう。
その気質に敬意を払おうと、クーが口を開く。


川 ゚ -゚)「さて……、本来の君に言葉が届いているのかどうかは判らないが、ここらで解答にしよう。
     無論、問題は『如何にして我々は君の居場所を知り得たのか?』だ」

川 ゚ -゚)「当然私たちが特別目が良かったとか、そんな理由では無い。
     ある道具を利用させてもらった」


クーが左手の人差し指を指す。その先にあったモノとは。


ノハ#゚听)「…………?」


鎚。
少女と共に猛威を振るった白く朱い鎚。
それが決め手になったとはいったいどういう事か。

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:29:02.89 ID:iiUvdgucO
川 ゚ -゚)「判らないか? なら、よく見るんだ。その鎚と、地面をな」


地面?
地面にはただ、一面の水溜まりが……。


ノハ#゚听)「!」


そして気付く。
自分を中心、いや正確には鎚を中心として、『波紋』が生じている事に。


川 ゚ -゚)「この鎚は超高速振動をしているのだろう?
     その振動から発生するソニックウェーブが地面に波を作り、
     君の居場所を教えてくれていたのさ」

ノハ#゚听)「ッ……!」


息を呑む。
目の前の女は、そこまで見越した上で鎖を投げたというのか。

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:30:57.10 ID:iiUvdgucO
川 ゚ -゚)「さあ講義はここまで。後は―――」


少女の首の後ろに手刀を下ろす。


ノハ# )「ッ……―――」


少女は抵抗できずにそれを受け、意識を手放した。


川 ゚ -゚)「眠るんだ。夢の中で眠れば、目覚めた頃には現実に戻れるさ」


地面に倒れる前に、クーは少女の体を支える。
クーが少女を見る目は、聖母のような慈愛に満ちたモノだった。



室内を包み隠していた白煙が、晴れていく。

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:34:19.40 ID:iiUvdgucO



(,,゚Д゚)「おーぅお疲れさん」


クーが少女を抱きかかえ壁を背にして座らせると、ギコが声をかけながら近付いてきた。


(,,゚Д゚)「しかしスプリンクラーから水が噴き出した時は俺も焦っちまったぜ。事前に言えよ」

川 ゚ -゚)「何言ってるんだ。口で言ったらバレバレで策にならない」

(,,゚Д゚)「まあいいや。でもよくスプリンクラーを使おうなんて思いついたな」

川 ゚ -゚)「火といえば水だからな。それにこのビルはまだ真新しいから水が残っているハズだし」

(,,゚Д゚)「んーでもコイツが火を振り撒いていた時は作動しなかったじゃん」

川 ゚ -゚)「恐らくここのはコンピューターで管理されていたんだろう。
     だから火を探知できなかった」

(,,゚Д゚)「だったら力ずくでこじ開けよう、ってか」

川 ゚ -゚)「ああ」

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:36:04.15 ID:iiUvdgucO
(,,゚Д゚)「でもさぁ」

川 ゚ -゚)「ん?」

(,,゚Д゚)「作動しなかったのは水が無いから、とか考えなかった訳? なんか根拠が?」

川 ゚ -゚)「無いよ。まあ、運任せだな」

(;゚Д゚)「それなのにあんな自信満々だったのかよ……。その自信はどっから来るん?」

川 ゚ -゚)「ふっ。ギコよ」

(,,゚Д゚)「何だよ笑いやがって」

川 ゚ -゚)「『自分を信じる』と書いて『自信』なんだ。
     私は自分の直感を信じた。だから大丈夫なんだよ」

(,,゚Д゚)「はあ……、さいですか。ったく、重要な状況であるほど尻込みしない奴だよホントに」

川 ゚ -゚)「ダメか?」



(,,゚Д゚)「いいや? むしろ好きだ」

川 ゚ -゚)「そう。なら良かった」

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:38:06.31 ID:iiUvdgucO
(,,゚Д゚)「さて、これからこのお嬢ちゃんをどうするかだが……っ!?」

「ううっ……」



「うあっ、うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


それは急な事だった。
意識を失っているハズの少女が突如、叫び声を上げて苦しみだしたのだ。


川 ゚ -゚)「これは……?」


少女は両手で胸の部分を握り締め、痛みに耐えるかのように背中を丸めている。
その顔には尋常ではない程の汗をかいている。


(,,゚Д゚)「くっ、しゃあねぇな。いきなりでワケ判らんが、これで尚更放置できなくなっちまった。
     取りあえずハインのトコに持ってくぞ」

川 ゚ -゚)「そうだな、私たちではどうにも出来なさそうだ。急ごう、この苦しみ方は異常だ」

(,,゚Д゚)「よっし、頼むから暴れんなよ!」


ギコは未だ声を上げている少女を背中に担ぐと、クーと共に全速力で走り出し、
ビルの外に止めてあった車に飛び乗りその場を去っていった。

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:40:02.75 ID:iiUvdgucO
彼らが去って再び無音となったビル。
激しい戦闘に内部は凄惨を極めた光景となってしまったが。



その一部始終を観察していた者がいた。


ミ,,゚Д゚彡「…………」


ビルの屋上に一人の男。
彼はフェンスの外に立ち、ビルを出て行くギコたちを無言で見ていた。


(゚、゚トソン「……『赤』を始末しなくても良かったのですか?」


その背後には一人の女性―――トソンがいた。彼女は抑揚の無い声で男に質問する。


ミ,,゚Д゚彡「……邪魔者がいるからな。
      それに、奴はもう戻ってこないだろう。ならば、無理に殺す必要は無い」

(゚、゚トソン「そうですか」

ミ,,゚Д゚彡「帰るぞ。長居は無用だ」


男はフェンスを一足飛びで越え、トソンの横を通り過ぎて階段へ向かう。

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:42:19.47 ID:iiUvdgucO
その様子を視界の端に流して、トソンは外の、街の景色を見る。


(゚、゚トソン(『一人』……。『銀』と『黒』が勝つ事を始めから予測していたのですか……)


果たして彼がそう思った理由とは如何なるモノなのだろうか?
単純に双方の戦力を見極めての事か、それとも。


(゚、゚トソン(何か、別の思いがあったのでしょうか……?)


興味がある。
彼は、自分自身の事はめったに話さないから。


「トソン」

(゚、゚トソン「済みません。今行きます、フサ」



街を背にする。


―――それもまた、いずれ判ることでしょう。私はいつでも、フサの隣にいるのだから。


そう思いながら、トソンはフサギコの背中を視界に収め、歩き出した。

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:45:09.17 ID:iiUvdgucO



从'ー'从「で、どうするの? あの子、残念ながらやられちゃったよ?」

( ^^ω)「チッ……!」


は瀬川は周りを気にする事無く盛大に舌打ちをした。

それを報告した彼女は何が可笑しいのか、ニコニコ笑っていた。
まあ彼女がニコニコしているのはいつもの事ではあるが。


( ^^ω)(クソッ、せっかく良いように操れても勝てなければ意味が無いホマ……)

( ^^ω)(しかしどうする? もう駒が……。
       『奴』を出すか? いや、アレ一人では勝ち目は薄いホマ……)


眉間に皺を寄せ、考え事をするは瀬川に声がかかる。

  _
( ゚∀゚)「へっ、どうやら万策尽きたようだなぁは瀬川さんよ。次こそは俺が行かせてもらうぜ」


声を発したのはジョルジュ。
は瀬川に顔を向け、睨むような挑戦的な目をギラつかせている。

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:47:00.96 ID:iiUvdgucO
( ^^ω)「っ……、駄目だ。お前では―――」
  _
( ゚∀゚)「うっせえんだよ」

(;^^ω)「!?」


息が止まる。
喉が焼ける。
体が逆さまになったような浮遊感。
かと思えば全速力で走り抜けた後のように体が重い。

そんな奇妙な不快感がは瀬川を襲った。

そうさせたのはジョルジュだ。
鈍重な動きで彼に目をやると、禍々しいまでの何かが
体から溢れているような、そんな錯覚に陥った。

  _
( ゚∀゚)「俺はもうウンザリしてんだ。
     来る日も来る日もこんな埃くせぇところに待機させられてよ?」
  _
( ゚∀゚)「俺がここにいんのは人を殴る理由が欲しいからだ。
     その辺の道歩いてる奴殴っても面白くねえからな。もっと骨のある奴じゃなきゃあ」
  _
( ゚∀゚)「今まで一応テメエの面立ててやったがもう我慢ならねえ。
     サッサと『銀』と『黒』の顔を陥没するまで殴らなきゃストレスでどうかなりそうだ」

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:49:08.42 ID:iiUvdgucO
(;^^ω)「くっ、だから殺すなと……!」
  _
( ゚∀゚)「あ? 俺に指図すんのか?
     先にお前をパンチングマシーンにしてストレス解消すんぞ?」

(;^^ω)「〜〜〜〜っ!!」
  _
( ゚∀゚)「へっ、商談成立だな。俺は行くぜ?」


ジョルジュは座っていた椅子を蹴飛ばして立ち上がり、は瀬川に背を向ける。


(;^^ω)「ま、待て!」
  _
( ゚∀゚)「ああ? まだ何か―――」

(;^^ω)「『銀』と『黒』はお前の好きにしていい!
       だが『ナチュラル』だけは生きて連れてくるホマ!」
  _
( ゚∀゚)「あ〜そう言えばそんなんいたな。そうだな……」

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:51:59.69 ID:iiUvdgucO
ジョルジュはその言葉にやや考える姿勢を取るが、

  _
( ゚∀゚)「ま、二人を殴って満足できたら連れてきてやるよ。
     物足りなかったらソイツでも遊ばせて貰うけどな」


その時の事を考えているのか、ニヤニヤと顔を歪めて返答した。


(;^^ω)「なっ!? いかん駄目だ! そんな事は許さ―――」


バタン、とは瀬川の言葉を切るようにドアが閉まる音がけたたましく鳴った。
後に残ったのは静寂と、は瀬川とニコニコ顔の女性だけだ。


(#^^ω)「クソッ、クソォッ!! ……おいっ!!」

从'ー'从「ん? 私のことかな?」

(#^^ω)「奴について行け!
       そして万が一、奴が『ナチュラル』に手を掛けようとするなら
       どんな手を使ってでも止めるホマ!!」

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/02/25(水) 22:53:58.73 ID:iiUvdgucO
从'ー'从「え〜イヤだよコワいもん。ついては行くけど」

(#^^ω)「何故だ! 貴様の能力さえあれば可能だホマ! 違うか『ピンク』!?」


『ピンク』と呼ばれた女性は「ん〜」と困ったようなうなり声を上げた。
しかし顔は笑みを絶やさない。


从'ー'从「まあ何にせよ、貴方が出来る事はもう何も無いよ。
     後は指を加えて物事の経過を見守るだけ。
     頼るんだったら私じゃなくて神様にでも頼った方がお得だよ。精神的な意味で、ね」

(#^^ω)「なっ……! 貴様、この私を馬鹿にするか!」

从'ー'从「きゃ〜コワーイ〜♪ じゃ、私も行くとするね〜」


今にも掴みかからんと憤怒するは瀬川を通り抜けた彼女は、
軽やかにステップをするように小走りで部屋から出て行った。

最後に部屋に残ったのは、この世の全てを呪うかのような怒りの叫び。

しかしその怒りも、やがては静寂の闇に包まれ、消えていってしまった。



第十話-b 終わり

   →第十一話へ続く?


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