ここは解決屋『シルバー&ブラック』本社のようです
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:10:00.01 ID:u5lZnEvJO
- ※
( ^^ω)「フサギコ……。貴様一体どういうつもりだ!?」
は瀬川が目の前の男―――フサギコを睨み付けながら、握り締めた右手を下に叩き付ける。
ドン、という乾いた音。
同時に樫の木で作られた机から、悲鳴のような、か細い軋みが控えめに聞こえた。
ミ,,゚Д゚彡「…………」
鼻息も荒いは瀬川に詰め寄られているフサギコは、対照的に落ち着いていた。
ゆったりと椅子に座って腕を組んでおり、冷めた目をは瀬川に向けている。
自分には関係ない。そう言っているようだった。
(♯^^ω)「貴様っ……! 何とか言ってみたらどうだ!?」
癇癪を起こすは瀬川。
彼の声が無機質な室内に響き渡る。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:12:02.95 ID:u5lZnEvJO
- (-、-トソン「…………」
_
( ゚∀゚)「…………」
从'ー'从「〜〜〜♪」
部屋には彼ら二人の他に三人―――トソン、ジョルジュ、それともう一人。
(-、-トソン「…………」
トソンはフサギコの斜め後ろで、背筋をピンと張って立っている。
ただ、その両目は閉じられており、眼前の諍いに対しては我関せず、といった風だ。
_
( ゚∀゚)「…………」
は瀬川とフサギコから少し離れたところに座っているジョルジュ。
彼の目は二人の姿を映している。その目つきは歪んでいた。
从'ー'从「〜〜〜♪」
ジョルジュの隣に座っているもう一人の女性。
彼女はジョルジュとは逆にニコニコしながら事の顛末を見届けている。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:14:17.84 ID:u5lZnEvJO
- ビリビリと肌を刺すような緊迫感に包まれた部屋。
そんな中、今まで無言だったフサギコが口を開く。
ミ,,゚Д゚彡「いきなり人を呼びつけておいて何のつもりだ?
俺には事情を掴むことができんのだが」
重く、静かな声。
その未だに落ち着いている声質と、間の抜けた発言に、は瀬川の頭は更にヒートアップする。
(♯^^ω)「しらばっくれるつもりか! 私は知っているホマ。
『銀』と『黒』に破れ、弱った我が同胞たちを貴様が殺して回っている事を!!」
ミ,,゚Д゚彡「同胞? ……くくっ」
ふと、フサギコから笑いが零れる。
それを見たは瀬川は、赤くした顔を更に紅潮させながら怒鳴り散らした。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:16:04.56 ID:u5lZnEvJO
- (♯^^ω)「何がおかしい!」
ミ,,゚Д゚彡「何が、だと? 決まっているだろう。
お前が思いもしていない事を平然と言葉にする様が滑稽だったからだ」
(♯^^ω)「何ィ……?」
ミ,,゚Д゚彡「同胞だと? 笑わせるな。
お前にとって奴らは……、いや俺らも含めて、駒程度にしか思っていないだろう?
自分の都合に合わせて問題を無くしてくれる、便利な駒にしかな」
(♯^^ω)「っ……!」
ミ,,゚Д゚彡「そんな思いを前に出さず、他人に押し付けて自分は素知らぬ振り……。
意識的にやっか事かどうかは知らんが、やり方が狡いんだよ」
(♯^^ω)「このっ……、人が黙っていれば……! では貴様は違うとでも言うのか!?」
ミ,,゚Д゚彡「違わないな」
(♯^^ω)「!?」
ミ,,゚Д゚彡「俺も同様にお前を利用している。お前など仲間だとは到底思っていない。
ましてや、お前の言いなり人形になるつもりなど、な。
そしてそれは俺だけでなく此処にいる全員の共通意志だ。
俺たちはただ利害が一致するから固まっているだけに過ぎん」
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:18:00.23 ID:u5lZnEvJO
- (-、-トソン「…………」
_
( ゚∀゚)「…………」
从'ー'从「〜〜〜♪」
三人は今のフサギコの発言に対し、特に反応を見せなかった。
何も反応しないというのはつまり、『そんな事は当然だ』、と思っているからであろう。
(♯^^ω)「〜〜〜〜っ!! もういいホマ!
貴様らがそういうつもりなら私も自由にやらせてもらう!」
は瀬川はフサギコに勢い良く背を向け、憤慨しながら部屋を後にしようとする。
しかしそんなは瀬川に声をかける者が。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:20:00.08 ID:u5lZnEvJO
- 从'ー'从「あ〜待って待ってちょっと質問〜」
先生に質問する生徒のように右手を上げて、は瀬川を呼び止める彼女。
その問いかけに対し、は瀬川は彼女を横目で少し見ただけで、
立ち止まらずにドアノブに手をかけた。
从'ー'从「あーもー待ってって言ってるでしょ〜?
自由にやる、って言ってたけど具体的には何やるの〜?」
は瀬川の動きがドアを開いたままの格好でピタリと止まった。
そして一瞬の硬直の後、首だけを後ろに向けて答えを返した。
( ^^ω)「ふん……、私の思想を理解できない貴様らでは当てにならんからな……。
故に、『銀』と『黒』の下には『彼女』に行ってもらうホマ」
は瀬川は一旦ここで言葉を区切り、続きの言葉を顔を歪めさせ、笑いながら発した。
( ^^ω)「そう―――」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:22:03.54 ID:u5lZnEvJO
- .
(,,゚Д゚) ここは解決屋『シルバー&ブラック』本社のようです 川 ゚ -゚)
第十話-a
「正真正銘、私の操り人形に、な」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:24:01.58 ID:u5lZnEvJO
- ドアが閉まる。
辺りに束の間の静寂が訪れるが。
从'ー'从「ね、ね、ジョルジュ?」
_
( ゚∀゚)「……あ? なんだよ?」
隣にいたジョルジュに話しかける彼女。
从'ー'从「『操り人形』ってどんな子かなっ?」
_
( ゚∀゚)「…………」
笑顔を絶やさない彼女を脇に置いて、ジョルジュはしばし考える素振りを見せるが、
_
( ゚∀゚)「さぁな。知らねえし、興味もねえ」
面倒そうに言葉を吐き捨て、そっぽを向いた。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:26:01.34 ID:u5lZnEvJO
- 从'ー'从「え〜っ気にならない〜? 」
しかし彼女は素っ気ない彼の態度など少しも気にする様子もなく、朗らかに聞いてくる。
_
( ゚∀゚)「うっせえなあ、興味ねえって言ってんだろ……。
そんな気になんなら直に見てくれば良いじゃねえか。いつもみたいによ?」
从'ー'从「それは勿論見るんだけどね〜」
_
( ゚∀゚)「じゃあもういいだろ。話しかけんな」
そう言うとジョルジュは机に突っ伏して眠り出す。
彼女は「む〜」と唸って不満そうに口を尖らせていたが、
やがて彼に構うのを諦めたのか、席を立ち部屋を後にした。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:28:01.27 ID:u5lZnEvJO
- 彼女とジョルジュが会話していた時、同時にフサギコとトソンも話していた。
ミ,,゚Д゚彡「……トソン」
フサギコが相手―――トソンにようやく届く程度の大きさの声で話しかける。
トソンがいる後方へは振り向かず、視線は前に向けたままだ。
(゚、゚トソン「なんでしょうか、フサ?」
それに応対して、トソンも他の第三者には聞こえない程度の音量で返す。
目は、しっかりと見開かれていた。
ミ,,゚Д゚彡「……着いてこなくてもいいぞ。一人に対し、二人で行く必要は無い」
(゚、゚トソン「……いいえ、私も行きます」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:30:00.28 ID:u5lZnEvJO
- ミ,,゚Д゚彡「トソン」
(゚、゚トソン「済みません、フサ。ですが私は決めたのです」
トソンはフサギコの後ろ姿をじっと見ている。
その目に、迷いは一切無い。
(゚、゚トソン「私はいつ如何なる時も、貴方に付き従い、貴方の盾となる事を」
ミ,,゚Д゚彡「……俺に盾は必要無い。俺の手には、一つの剣が有ればそれで充分だ」
(゚、゚トソン「例えそうだとしても、です」
ミ,,゚Д゚彡「…………」
小さく溜め息。そして、
ミ,,-Д-彡「勝手にしろ」
(゚、゚トソン「ありがとうございます」
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:32:00.60 ID:u5lZnEvJO
- そこで会話は止まった。
フサギコは変わらず前を見続けている。
ジョルジュと話していた彼女が、部屋から出るドアの音を聞きつつ、トソンは思考を巡らす。
考えるのは、先程フサギコが漏らした言葉の一部。
(゚、゚トソン(『一人に対し』、か……)
その言葉の真意を、トソンはしばらく考えていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:34:00.40 ID:u5lZnEvJO
- ※
(,,゚Д゚)「今日も今日とてやってきましたよ〜、っと」
川 ゚ -゚)「もはや日常の一コマになってしまったか?」
(,,゚Д゚)「それはヤだな」
という訳でいつもの様に廃ビル(笑)にやってきた二人。
相変わらず内部は閑散としているが―――
(,,゚Д゚)「でもまだここ、わりと綺麗だよな?」
川 ゚ -゚)「ふむ、ついこないだまで営業していたようだな」
これまでの戦場であった廃ビルはそこら中がホコリにまみれていたが、
ここはそれほど汚れていなかった。
このままデスク等を運び入れれば真っ当な会社と言っても差し支えない程だ。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:36:01.15 ID:u5lZnEvJO
- (,,゚Д゚)「ま、綺麗に越したことはないね。ホコリだらけだと喉に悪いんだよ。
激しく動き回ってホコリ舞い上がるわ、
呼吸荒くなって余計に吸い込むわで、良いこと無いぜ」
川 ゚ -゚)「…………」
(,,゚Д゚)「なあ、クー?」
ギコは大仰に両腕を横に広げて、クーの方に向きつつ尋ねる。
しかしクーは右拳を唇に当てるような仕草をしている。何かを考え込んでいるようだ。
(,,゚Д゚)「クー? どうかしたのか?」
川 ゚ -゚)「……ギコ」
呼びかけに応じ、ギコの目を見るクー。
普段の彼女ならば見せる事は無い、迷いを孕ませた表情がそこにはあった。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:37:59.99 ID:u5lZnEvJO
- 川 ゚ -゚)「この間の話の事なんだか……」
(,,゚Д゚)「この間の話?」
ギコは少しの間、記憶を巡らせ
(,,゚Д゚)「ああ、弟者の話の事か」
川 ゚ -゚)「そうだ。その事について、今一度話し合っておきたい」
(,,゚Д゚)「おいおい、もう此処は敵陣の中だぜ?」
ギコが若干呆れ気味に返答する。
(,,゚Д゚)「やっこさんが既に俺たちを監視していてもおかしくは―――」
川 ゚ -゚)「それでも!」
(,,゚Д゚)「!」
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:40:00.59 ID:u5lZnEvJO
- 殆ど無い、戦闘中以外でのクーの叫び。
それによりギコの発言は途中で止まる。
しばしの無音。
そして数瞬後、クーが言葉を繋げる。
川 ゚ -゚)「それでも……、戦いの前に私の意思を伝えておきたいんだ」
どこか存在が希薄に感じられるクー。
その姿に、ギコは肩を竦めつつ
(,,゚Д゚)「良いぜ、話してみろよ」
しかし苦笑しつつ、促した。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:42:13.79 ID:u5lZnEvJO
- 川 ゚ -゚)「済まない。出来るだけ手短になるよう、私の本意だけを伝えよう」
一度の、ゆっくりとしたまばたきを挟んで
川 ゚ -゚)「私は、例え敵でもその命を散らせたくはない」
今度は迷いなく、つまりいつも通り芯の通った目を向けて言った。
川 ゚ -゚)「私たちは向かってくる敵は例外なく殴り飛ばしてきたが、
殺人までに至ったケースはない。
例え相手がこちらを殺すつもりで襲いかかってきたとしてもだ」
(,,゚Д゚)「……ああ、そうだな、その通りだ。俺たちは常にやり過ぎないよう加減してきた。
相手の鼻は両手じゃ数え切れないほどへし折ってきたが」
川 ゚ -゚)「……私はあまり鼻は折ってないぞ。
肋骨なら両足使っても数え切れないほど折ってきたが」
(,,゚Д゚)「対抗せんでもよろしい。さっさと続き話さんかい」
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:44:07.59 ID:u5lZnEvJO
- 川 ゚ -゚)「ゴホン。で、だ。私はこれからもそうしていきたい。どんな大悪党だろうと。
犯罪になるから殺したくないんじゃない。私が嫌だから殺したくないんだ」
(,,゚Д゚)「まあ俺も似たような考えだ」
川 ゚ -゚)「勿論『COLOR's』も気絶させる程度に抑えてきた」
川 ゚ -゚)「でも弟者の話によると、彼らは命を落としている。原因は、私たちに負けたから」
(,,゚Д゚)「……別にそれが理由って確定した訳じゃないぜ。
もっと言えば、弟者の話だって真実がどうか判らない。
もしかしたら俺たちを騙しているかもしれない」
川 ゚ -゚)「既に『COLOR's』を抜け出した弟者が、
ワザワザそんな嘘をつくメリットなどないだろう?」
(,,゚Д゚)「…………まあ、無い、な」
川 ゚ -゚)「となると、弟者の話は真実で、
それはつまり私たちによって彼らは死んでいるという事になる。
間接的にとは言え、私たちが殺しているようなものだ」
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:46:03.35 ID:u5lZnEvJO
- (,,゚Д゚)「ふむ、まあいい。お前の気持ちは判った。で、どうしたいんだ?」
川 ゚ -゚)「どうしたいか、か……」
(,,゚Д゚)「話し合いでもするか? 君の命が危ない、だからここから逃げなさい、とでも言うかい?」
川 ゚ -゚)「場合によっては」
(,,゚Д゚)「…………」
川 ゚ -゚)「……済まんな。ワガママだとは判っているんだが」
(,,゚Д゚)「やれやれだね」
ギコはかぶりを振って、少し笑った。
(,,゚Д゚)「ともかく、その辺はどうするかは―――」
突如、けたたましい音を鳴らせながら、二人がいた部屋の天井が割れた。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:48:01.99 ID:u5lZnEvJO
- 川 ゚ -゚) 「!」 (゚Д゚,,)
二人は同時に音が発された方へ振り向く。
其処には一つの人影。こちらに背を向けて立っていた。
見たところ、女性。僅かに茶の混じったロングの黒髪。
しかし、それよりも。
最も目に付くポイントがある。
彼女が右手に携えている、白を基調とした大型の金鎚だ。
全長一メートルはある金属製のそれを片手で持っている彼女は、やはりただものでは無いだろう。
間違い無く、『COLOR's』の一員だ。
ギコが先程の続きを口に出す。
(,,゚Д゚)「―――どうするかは向こうの出方次第だぜ」
油断無く、淀み無く、腰を落として戦闘態勢に入った。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:50:11.55 ID:u5lZnEvJO
- 彼女の体がこちらへと振り返る。
ノハ )「…………」
何も話さない。
ただこちらをぼうっと見ているだけ。
ノハ )「…………」
いや、本当に見ているのだろうか。
その目には光が灯っておらず、焦点もあやふやなようだ。
まだ幼さの残るその顔には、本来の年齢に見合うような活力は無い。
川 ゚ -゚)「っ……!」
ギリ、と歯を鳴らす音が聞こえるような。
そんな、苦虫を噛み潰したような表情をクーが見せる。
そう。目の前にいる『敵』は、まだ幼かった。
つーと同じくらいか、少し上か。いずれにせよ、まだ高校生くらいにしか見えなかった。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:52:04.93 ID:u5lZnEvJO
- クーはこの状況を恨む。
年端もいかぬ少女に傷を負わす事に罪を覚えるのでは無い。
気は進まないのは確かだが、彼女も此処に立つ以上は非凡な体を有しているのだろう。
多少乱暴に扱ったとしても後の生活に支障は出ないはずだ。
そう、懸念のポイントはその延長線上。
『彼女が命を落としてしまうかもしれない』という事。
もしクーたちが目の前の少女と戦い、勝利したら。
恐らく彼女は『COLOR's』の手によって処分されるだろう。
それは耐えられない。
こんな、まだまだ世の中を知らないような子が……。
かと言って大人しくやられる訳にもいかない。
こちらにも戦う理由があるから。
だから。
川 ゚ -゚)「私の話を聞いてくれないか?」
交渉。
武力による制圧ではなく、談合による和解。
クーが考える最良の手はこれだった。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:54:01.82 ID:u5lZnEvJO
- ノハ )「…………」
答えは無し。
しかしクーは意に介さず、話を進める。
川 ゚ -゚)「いいか。君は知らないかもしれないが、もしここで君が敗れたら、君の命は失われる。
それは私たちによってでは無く、君が所属している『COLOR's』の手によってだ」
ノハ )
何も返さない。
続ける。
川 ゚ -゚)「敵である者の口からこんな事を言っても信用に値しないのは承知の上だ。
だが、現にこれまで私たちと戦った奴らは君らのところに戻ってきてはいないはずだ」
ノハ )
無言。
ただずっと、最初の姿勢のまま動かない。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:57:09.70 ID:u5lZnEvJO
- (,,゚Д゚)「…………」
そんな少女の様子をじっと見つめるギコ。
既に戦闘態勢は解いており、腕を組んで壁に背を預けていた。
(,,゚Д゚)(何のリアクションも起こさない……。聞いてないのか?
だが話を無視して襲いかかる事も無い、な)
クーの言葉に、少女は眉一つ動かすこともない。
ポーカーフェイスもここまで来れば大したものだが。
(,,゚Д゚)(しかしアレは感情を出さないようにしていると言うより……)
ギコが少女に疑念を抱きだしていた頃、遂に場が動き出す。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 20:59:00.24 ID:u5lZnEvJO
- 事の始まりのキッカケはクーの言葉の一つ―――
川 ゚ -゚)「―――。私たちは理由も無しに君を傷つけるようなマネはしない。
この場を赤く染める必要なんて―――」
ノハ ) ピクッ
(,,゚Д゚)「!」
これまで何の反応も無く、1mmも動かなかった少女が動作を見せた。
といってもそれはほんの僅か、痙攣程度のモノだったのだが。
その少女の動きに同調するようにギコが壁から背中を離した。
(,,゚Д゚)(動いた……。何故? 何に反応した? クーの言葉か?)
理由を考える。
それと同時に、今まで以上にギコは少女を凝視した。
彼女の次なる動きを見逃さぬように。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:01:05.99 ID:u5lZnEvJO
- ノハ )「…………」
そして少女は活動を始める。その様は機械にスイッチが入ったかのようだ。
右手に持った白い鎚。
重力に従い、体と平行にぶら下げていただけのそれを、腕を伸ばしたまま後方に持って行く。
その動作は非常にゆっくりと。間断無く。
やがて鎚は地面と平行となり、そこでピタリと止まる。
片手で、しかも肘を張った状態で鎚を平行に持つ。恐るべき筋力だ。
鎚がどれほどの重さかは判らないが、武器として存在する以上、それなりの重量はあるはず。
それを細腕で顔色を変えずにやり遂げる。彼女の並々ならぬ力が容易に見て取れた。
再び静止する空間。
しかし時間はジリジリと歩き出す。
それはまるでジェットコースター。
山の頂上に立ったトロッコは、走り出すのを今か今かと待ち望んでいる。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:02:59.79 ID:u5lZnEvJO
- 少女の体が前に倒れ出す。
ゆっくり、ゆっくりと少しずつ前へ。
直立したまま倒れるように前へ傾く。
そして体の重心が地面とスレスレになり、鎚の先端部が上を向いた頃。
彼女の足下の地面が爆発したかのように弾け飛んだ。
川 ゚ -゚)「!」
既に言葉を止め、少女の動向を見ていたクー。
そのクー目掛けて、少女は一直線に飛んできた。
川 ゚ -゚)「むぅっ!」
もはやこうなっては言葉など意味が無い。
説得を放棄し、ひとまず迎撃の体勢に入る。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:05:00.39 ID:u5lZnEvJO
- クーと少女の距離が5メートル程に縮まった時、少女が追加の動きを見せる。
少女の隅々までを漏らさず目視していたクーは、その予兆に気付いた。
川 ゚ -゚)(右腕に力が込められた! 攻撃? しかし―――)
まだ遠い。
そのまま手に持つ鎚を振り回しても空振りをしてしまう距離だ。
川 ゚ -゚)(投擲? それとも武器に何か発射型の仕掛けが?)
ともかく何かを狙っている事は間違いない。
そうなると、この場に留まっていては危険だ。
何をするか判らないこの状況では退いた方が良いだろう。
そう考え、クーは右に飛んだ。
右に飛べば少女の左側に回り込む事になる。これでは右手に持つ鎚は使いにくいだろう。
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:08:15.97 ID:u5lZnEvJO
- しかし少女は、そんなクーの行動など見えていないかのように、構わず鎚を振り回し始めた。
鎚の先端は元の場所から反時計回りに下方螺旋を描き出す。
だが当然ながら、鎚が届く場所にクーはいない。
クーは気を抜かずに動向を見守る。
白の軌跡が270°を廻ったところで
まるでそれが当然であるかのように
鍵穴に鍵がカチリと入り込むかのように
ごく自然に、一切のブレなく止まった。
それが生み出す効果。
運動ベクトルの変更。
少女の体が元の進行方向からズレて、クーが移動した場所に吸い込まれるように吹き飛ばされた。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:10:08.07 ID:u5lZnEvJO
- 物体が動くというのは、詰まるところ重心の移動だ。
そして人間の重心とは正中線上にある。
これはどんな姿勢になろうとも、ほとんど位置は変わることは無い。
この理由は、人の体重のほとんどが中央に寄っているからである。
しかし、この重心を正中線上から大きく引き剥がす方法がある。
無手でどうしようもないのなら、外的要因を加えれば良い。簡単に言えば重いモノを持てば良い。
出来れば長い方が良い。
もっと言えば、先端部に質量の大部分があるようなものが理想だろう。
―――そう、例えばハンマーのような。
それを、自分の体から出来るだけ遠ざけるようにして持てば、重心が中央から離れる。
まあ普通の人間がそんな事をしたら立ってられないだろうが。
しかしながら、目の前の少女はその難題をクリアし、成し遂げている。
これにより少女の体は―――
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:12:25.39 ID:u5lZnEvJO
- 川 ゚ -゚)(こちらに向かってきた……っ!)
何かが来るとは思っていたが、まさか体ごとやってくるとは予想外だ。
とっさの事に足が地から離れない。
少女は回転の反動で、クーに背中を向ける形で突っ込んでいる。
このままでは攻撃方法が体当たりくらいしか無い。
だが、勿論そんな事はしない。
流れる体に逆らわず、むしろ加速させる。
右腕は未だ伸ばしたまま。
踏み込んだ足を軸に、独楽のように一回転。
ノハ )「…………っ!!」
その勢いを全て鎚に乗せた、遠心力タップリの一撃を動けないクーにお見舞いした。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:15:03.50 ID:u5lZnEvJO
- 白と黒が重なる。
次の瞬間、オレンジの火花が散る。
続いて甲高い音と、辺りを吹き飛ばすような衝撃波が一面に広がった。
川;゚ -゚)「くうあっ!!」
少女の運動エネルギーを丸々引き継いだかのように、クーの体が宙に舞った。
2、3メートルばかり空を飛び、着地してからも更に同じくらい地面を引きずってようやく止まる。
川;゚ -゚)(腕、は……!)
パッと自分の両腕を見る。
ある。
しっかりとくっついている。
急遽両腕でガードしたが、その腕ごと破壊されるような感覚に陥っていた。
川 ゚ -゚)(なんて威力だ……。この腕もそう何度も持たんぞ……)
頑丈さには自信がある機械腕でも防ぎ切れないのだろう。
実際、両腕から這いずり上がってくる嫌な痺れが現在進行形で体全体を駆け巡っている。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:17:01.15 ID:u5lZnEvJO
- そんな、まだ立ち直っていないクーに更なる追撃を入れようと、少女が飛び出す。
鎚を両手で持ち、下段に構えて突進する。
が、少女の右側から何かが飛来してきた。
ノハ )「!」
それに気付いた少女は鎚を振り上げて、それを弾く。
少女を襲ったモノの正体は。
(,,゚Д゚)「コラコラ。このナイスガイを無視するとは随分と罪が重いぜ?」
鎖。
ギコはこちらを向いている少女にニヤリと笑いかけた。
ノハ )「…………」
勢いを止められた少女は後ろに飛び退き、二人から距離を置いた。
その隙にクーも横に飛び、ギコの隣に着地する。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:19:01.02 ID:u5lZnEvJO
- (,,゚Д゚)「おう、大丈夫か?」
川 ゚ -゚)「ああ、戦闘には支障ない」
(,,゚Д゚)「うし、じゃあ倒しにかかるが……、いいな?」
川 ゚ -゚)「異論は無い」
(,,゚Д゚)「お? いいのか? てっきりまだ話したいと言い出すかと」
川 ゚ -゚)「もう戦いは始まってしまったしな。それに……」
クーは少女の方を見て、
川 ゚ -゚)「どうやら彼女には私の声が届いていないようだ」
と、実直な感想を述べた。
(,,゚Д゚)「うむうむ。そうだな、あれは……」
ならば、とギコも思ったことをそのまま口に出す。
(,,゚Д゚)「まるで人形、だな」
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[>>59 訂正] 投稿日:2009/01/26(月) 21:23:00.55 ID:u5lZnEvJO
- 川 ゚ -゚)「ああ、私も同じ印象だ。私の言葉に何も反応しないのはまだしも―――」
(,,゚Д゚)「攻撃の時ですら無表情、ってか」
そう。今までの一連の行動。
その間、少女の顔は変化することは無かった。
闘争とは力の衝突であると同時に、感情・思想のぶつけ合いでもある。
故にその瞬間が無表情というのは有り得ない。
いくら冷静に対処しようとする者でも、眼は闘気に溢れているはずだ。
しかし、その少女にはそれがない。その両眼には、生気が感じられない。
例えるならば、それは能面を被っているかのようで―――
川 ゚ -゚)「―――まるで『No』だな」
『No』。
『COLOR's』の産んだ人工生命の機械兵士。
目の前の、一見可憐そうな少女は、主の命令を忠実に遂行する操り人形のそれとダブって見えた。
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:25:16.54 ID:u5lZnEvJO
- (,,゚Д゚)「『No』の新型タイプか?」
川 ゚ -゚)「それなら、遠慮なく叩き潰せるんだが……」
そう、答えは他にもある。
人形である事は間違い無いだろう。
しかし、だからといって彼女も人工生命体であるとは言い切れない。
(,,゚Д゚)「つまり、アイツ本来の自我が封じ込められているパターン、か……」
川 ゚ -゚)「ああ。もしそれなら私は―――」
助けたい。
そうクーは言った。
人を操る。
それはつまり、操られる者の意に関係無く、操る者が好きなように動かすという事だ。
となると、この少女は現在の戦いに否定的である可能性が高い。
肯定的で有るならば、一々操る必要など無いからだ。
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:27:02.85 ID:u5lZnEvJO
- 川 ゚ -゚)「……どうする?」
尋ねる。
目の前の少女の命は本物か否か。
そして本物だった場合、どうやって少女を救済すれば良いか。
それをクーはギコに聞いた。
その問いに、ギコはしばし考える素振りを見せる。
そして確認するかのように一度頷くと、自信満々にクーの顔を見る。
で、一言。
(,,-Д-)+「ぶん殴る」
キリッ
歯を輝かせながら爽やかに言い切った。
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:30:03.72 ID:u5lZnEvJO
- 川 ゚ -゚)「そーかよーし歯を食いしばれ。私が修正してやろう」
(;゚Д゚)「待て待て待て待て落ち着きたまえ。
ちょっと簡単に言い過ぎた。俺が言いたいのはだね」
くらいくらーい笑みを浮かべながら黒く怪しく輝く左腕を掲げるクー。
そんなクーにブンブンと両手を振りながらギコは話を続ける。
(,,゚Д゚)「どの道、打倒しなければアイツは止まらないぞ。
だったらやり過ぎない程度に打ちのめすしかない。
ひとまず行動不能にさせとけば後はやりたい放題だろ?」
川 ゚ -゚)「む」
ブスッとした顔になるクー。どうやら、一理あるな、と思ってしまったらしい。
川 ゚ -゚)「大ざっぱにも程があるほどの策だが……、他に良策が有る訳でも無い、か」
(,,゚Д゚)「だろ? ま、結局はいつも通り行きましょうや、って事で」
川 ゚ -゚)「はあ……。では、行こうか」
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:32:01.42 ID:u5lZnEvJO
- 二人が前を見る。
その先には少女。
(,,゚Д゚)「空気読んで待っててもらってありがとーねー。お返しにブッ飛ばしてあげるからねー」
川 ゚ -゚)「主人公とは思えんぞ、その発言」
二人は軽口を叩き合う。
コレも、いつもの事。
そして、地面を蹴る音が鳴った。
クーが前衛、ギコが後衛のポジションだ。
動き出した二人を見て、待機していた少女も活動を再開する。
衝突。響く甲音。
竜騰虎闘の三重奏が脳に溶ける。
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:35:14.77 ID:u5lZnEvJO
- クーは機械の手足を突き出し、ギコが鎖を投げ、少女が鎚を振り回す。
三者三様の攻防は更に激しさを増す。
(,,゚Д゚)「クー! 一撃に気をつけろよ! 直撃したら体も意識も持ってかれんぞ!」
川 ゚ -゚)「大丈夫。文字通り、骨身に染みて理解している……!」
少女の空を押し潰す鎚の一撃。それを喰らえば、たちまち行動不能になっても不思議では無い。
よって、余り前に出ず後手に回ろうと考えるのが普通だ。
だがクーは前へ。
それも生半可ではなく、肌が触れ合う程の超クロシレンジで、だ。
無論、コレは気迫負けしないように、などの精神的な理由からでは無い。
ちゃんとした理論的なモノからだ。
少女の持つ武器である鎚。
コレが最も効果を発揮するのはミドルレンジ。
つまり相手と一歩から二歩分空いた程度の距離が一番望ましいのである。
鎚の柄は一般的にはそこそこの長さがある。
持ち味である破壊力。それを更に生かすための遠心力を味方につける為だ。
故に標的が自身の体に密着されると思うように振り回せない。
一応、使い方によっては近接でも使用可能だが、
素手とどちらがより速く攻撃できるかは説明するまでも無いだろう。
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:37:08.85 ID:u5lZnEvJO
- 川 ゚ -゚)「ふうぅっ!」
ノハ )「…………」
相手の息がかかる程の位置から打突を繰り返すクー。
この距離での戦闘を嫌う少女はバックステップで引き剥がそうとするが、
クーは獲物に喰らいつく蛇のように離れない。
それでも何とか逃れようと、少女はもう一度後ろに退こうと試みる。が
(,,゚Д゚)「そうはいかんざき、ってね」
ノハ )「!」
移動しようとした先の地面に飛来した鎖が突き刺さる。
行く手を阻まれた少女の足は止まってしまった。
その隙をクーは逃さない。
川 ゚ -゚)「貰った!」
左腕と右腕の両方を前に突き出した、奇特な構えで突進する。
少女はとっさに右手に持つ鎚の石突をクーに向けて突くが、
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:39:00.44 ID:u5lZnEvJO
- ノハ )「……ッ!」
クーの前に出した左腕に弾かれ、いなされてしまう。
残ったのは、無防備な少女の体とクーの右腕のみ―――!
川 ゚ -゚)「はあああっ!」
息吹。
震脚。
腰の捻り。
それらにより生じた勁を右腕に流し、撃ち出す。
クーの右の掌は少女の鳩尾を的確に貫いた。
ノハ )「――ッ―――!」
力無く後ろに吹き飛ぶ少女。
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:41:00.67 ID:u5lZnEvJO
- だが、それに追随する影が。
川 ゚ -゚)「も一つ!」
クーは一足飛びで少女に追いつき、駄目押しの左の掌低を同じところに叩き込んだ。
少女の体は更に加速。
向かいの壁まで飛ばされ、背中を打ちつけ、その場に崩れ落ちる。
そして戦場から音が消えた。
(,,゚Д゚)「おーおーお見事」
パンパンと両手を合わせて拍手する。
(,,゚Д゚)「でもやり過ぎじゃね?」
「じー」という効果音が鳴りそうな目をして、ギコはクーを見る。
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:43:00.20 ID:u5lZnEvJO
- 川 ゚ -゚)「ふっ……。あの程度なら問題ないさ。きっとピンピンしてるよ」
(,,゚Д゚)「…………」
じー。
川 ゚ -゚)「大丈夫だよ。全然大丈夫だよ。二撃目は心無しか力抜いたような気がするし」
(,,゚Д゚)「…………」
じー。
川;゚ -゚)「いや、ホラ、その、何というかね……」
(,,゚Д゚)「…………」
じぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
川;゚ -゚)「スイマセン。ついつい気分が乗ってやり過ぎちゃいました。てへ☆」
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:45:01.56 ID:u5lZnEvJO
- (,,゚Д゚)「はあ、まったく近頃の若いモンは加減ってのを知らんのかねぇ。
しかもあんないたいけな少女を……」
川;゚ -゚)b「いやあギコ君! 先程のアシスト、絶妙だったよ。グッジョブ!」
(,,゚Д゚)「あらやだ奥さん。アレが野蛮ってウワサの女の人よ。
人は見かけによらないってホントねぇー」
川;゚ -゚)「くぅー。何だ? 何が望みだ? タイヤキか? 羅雲字堂のタイヤキか?」
(,,゚Д゚)ノ「我々はー! 暴力団に屈しないー!
この街に暴力団は要らないー! この街から出ていけー!」
川;゚ -゚)「三個か? タイヤキ三個欲しいのか? 三個……いやしんぼめ!」
(,,゚Д゚)「…………………………………………八個入りの特選タコヤキもつけて」
川;゚ -゚)「オーゥケーェイ承知したぁ! いやーお兄さん商売泣かせねー!」
どうやら商談は成立したようだった。
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:48:00.59 ID:u5lZnEvJO
- (,,゚Д゚)「さて、おフザケはここまでにして……どうなった?」
少女はまだ倒れたままだ。気を失っていてくれたら二人にとって都合がいいのだが。
川 ゚ -゚)「!」
しかし、やはりそれは虫が良すぎる話だったようだ。
腕を動かし、立ち上がる少女。
ノハ )「―――、――――」
だが、流石にダメージはあるらしい。
頭は俯き、膝は折れ、鎚を杖代わりにしている。
その姿はさながら朽ちたマリオネットのようだ。
川 ゚ -゚)(ふむ。今なら意識を断つ一撃が楽に入れられるか?)
腹に力を入れ、足下のコンクリートのかけらをジャリと鳴らす。
隙あらば飛びかかる準備は万全だ。
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:50:02.37 ID:u5lZnEvJO
- しかし、ここで少女の様子に変化が訪れた。
ノハ )「―――ッ、ぅ―――ぁ―――」
それは、耳に意識を集中させないと届かないくらいの微かな声。
ノハ )「―――ぁ―――ぁぁぁ」
だけれど、それは徐々にハッキリと、次第に大きくなってきて
ノハ#゚听)「ぅぅぅあああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ――――――――――――ッッッ!!!!!!」
辺り全てを飲み込むかのような咆哮へと変わった。
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:52:29.17 ID:u5lZnEvJO
- (,,゚Д゚)「!?」
川 ゚ -゚)「…………」
少女の雄叫びに対し、ギコは驚き、クーは虚空を睨む。
そしてもう一つの変化。
川 ゚ -゚)「『赤』、か……」
そう。今まで濁ったような黒色をしていた少女の眼。現在は燃えるような赤色になっている。
つまり、彼女の称号は『赤』という事になる。
(,,゚Д゚)「しかし急に一体……。クーの攻撃にブチ切れたのか? いや、そんな事よりも―――」
ギコは己の頭の中に生まれた疑問を口に出そうとする。
しかしそれよりも速く、
ノハ#゚听)「ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォッッ!!!!」
二度目の咆哮。
それと同時に右手の鎚を天高く掲げる。
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:54:10.63 ID:u5lZnEvJO
- ノハ#゚听)「ッッ!!」
それを何もない地面に一気に振り下ろす。
コンクリートがガラスのように簡単に砕け散った。
すると、白かった鎚に石突の方から走るように赤い線が浮かび上がる。
縦横無尽に巡らされた赤い線は模様を型どり、鎚に命を宿らせた。
線が浮かび終えると、鎚は更なる変化を見せる。
川 ゚ -゚)「む」
(,,゚Д゚)「うお、マジかよ……」
炎。
鎚の頭の部分に赤い炎が纏わりついている。
少女とは10メートル以上離れているというのに、こちらにまで熱気が届いていた。
(,,゚Д゚)「オイオイ、この季節にはピッタリな武器じゃねーかよ」
川 ゚ -゚)「暖まるどころか身を焦がすぞアレは。私は遠慮しておくよ」
言葉は割と余裕そうな二人だが、眼はしかと炎が揺らめく鎚を見ていた。
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:56:01.62 ID:u5lZnEvJO
- ノハ#゚听)「…………ッ」
少女は燃えたぎる鎚を両手で持ち、担ぐような姿勢を取る。
ノハ#゚听)「オオオ……」
熱の籠もった息を吐き出す。すると鎚の炎が更に激しく、巨大化していく。
既に鎚の頭の二倍程の体積にまで膨れ上がっていた。
ノハ#゚听)「ッ!」
そして一歩大きく踏み出し、
ノハ#゚听)「アアアアアアアアアアアアッッ!!!」
力をこれでもかという程に振り絞り、鎚を袈裟に下ろした。
すると炎の塊は鎚から分離し、
巨大な火球としてギコとクーの下へと迫ってくる事となった。
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 21:58:00.36 ID:u5lZnEvJO
- 川 ゚ -゚)「っ!」
(,,゚Д゚)「ぬおっ!」
斜め45°から一直線に降り注いでくる火の球。
それはさながら隕石のような圧力感だ。
二人は同時にバックステップ。
そのすぐ後に、二人がいた場所に火球が落下する。
それが地面と接地した次の瞬間、火球は火柱となる。
目の前は赤一色。
他の色は全て炎で覆われてしまった。
(,,゚Д゚)「うおぉ……。なんつー炎だ。直撃したら全身火傷間違い無しだぜ?」
川 ゚ -゚)「これほどの出力を単体で出すか……」
眼前の光景に軽い戦慄を覚える。
あの少女が持つ力は、二人の予想の上にあったようだ。
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 22:00:00.70 ID:u5lZnEvJO
- ―――だから、気付かない。
二人は猛威を振るう一面の炎に眼を奪われ、気付かない。
この炎。
少女にとっては只の煙幕でしか無かった事を。
本命はその次。
炎に隠されたその奥で、既に準備は完成していたのだ。
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 22:02:00.16 ID:u5lZnEvJO
- ―――ゾクッ
(,,゚Д゚)「!?」
その異変にようやく気付いたのはギコ。
(,,゚Д゚)(これは……)
前方から嫌な気配を感じ取る。
(,,゚Д゚)(炎……、に、何か仕掛けが……? いや違う。何だこの耳鳴りは……)
常人には気付けない些細な異変。
そして真の脅威は眼に見える炎では無く。
(,,゚Д゚)(その向こう―――!)
(゚Д゚,,)「クー!」
- 92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 22:04:17.06 ID:u5lZnEvJO
- 川 ゚ -゚)「!」
(゚Д゚,,)「何かヤバイ! 気をつけ―――」
失策。
ギコの呼び掛けによって、ほんの一瞬だけ二人の意識が前方から離れてしまった。
一秒にも満たないその隙間は。
少女が炎の壁を飛び越えて姿を現すには充分な時間。
「「!?」」
息を呑む。言葉は出ない。そんな暇は無い。
少女は天井スレスレまで掲げた、炎が暴れ渦巻く鎚を両手で抑え込むように持っている。
鎚が小刻みに震えている。
牙を剥くのを今か今かと耐え忍んでいる。
―――その髪も、燃えるように真っ赤に染まっている。
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 22:06:01.76 ID:u5lZnEvJO
- 少女が叫ぶ。
叫んだのは名前。
己が身を任せ、活火激発に荒れ狂う鎚の名前。
敵の体を、心を、策も何もかも全てを灰と化す『火之鎚(ヒノツチ)』。
鎚内に取り付けられた高周波発生装置により超高速で振動し、
破壊力を上乗せする『楽鎚(カグツチ)』。
その二つを合わせた、一撃必倒の武器。それが―――
.
- 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/01/26(月) 22:08:10.69 ID:u5lZnEvJO
- 『火之―――』
ヒ ノ
『―――楽―――』
カ グ
『―――鎚ィィィィィィィィイイイ!!!!!』
ツ チ
その言葉と同時に。
閃光が発生し、目の前の全てが白く光る世界へと変貌した。
第十話-a 終わり
→第十話-bに続く?
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