ここは解決屋『シルバー&ブラック』本社のようです


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 19:58:07.68 ID:pS1MvkmlO
プルルルル……

プルルルル……



部屋に、特有の電子音が鳴り響く。



プルルルル……

プルルルル……



その電話は自分の仕事をしっかりとこなしていた。
人がそれにいわゆる『電話』としての機能を求めていたのならば、
文句なしに合格点が与えられるほどの働きである。



プルルルル……

プルルルル……



しかし非常に残念な事に、その健気な彼の努力に答えようとするものはいなかった。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 19:59:16.45 ID:pS1MvkmlO
プルルルル……

プルルルル……



じゃあこれは無駄な行為だったのかと言えば、そうでもなかった。



ここで一人の男が現実へと引き戻されたからだ。





「……ん?」



プルルルル……

プルルルル……



「……電話が鳴っている」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:00:39.79 ID:pS1MvkmlO
「むう……。人がせっかくいい感じてまどろんでいたというのに……」

その男は頭をボリボリとかきむしり、一つ大きなあくびをする。



「何で誰も取らないんだよ……。モララー、は、まだ来てねえか」

男はもたれかかっていたソファーから体を起こし、
ブツブツと独り言を言いながら面倒そうに階段を降りる。



「おーい! クー! いねーのかー!!」

男は階段を降りながら、顔を上に向けて叫びだした。

「クー! いるのは判ってんだぞー! 返事しろー! そしてさっさと降りてきて電話を取るんだー!」



だがその声に返答はない。聞こえるのは相も変わらず下からわめいている電話の音だけだ。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:02:10.66 ID:pS1MvkmlO
「おーい! ホントにいねーのかー!」

返答はない。



「クー! クーちゃーん!!」

返答はない。



「クーちゃーん! 返事してくれたらお兄さん君にシュークリームを
 あげようかなーって思ってたりするかもしれないんだからねっ!!?」



返答は、ない。





「チッ、いないのかよ……」

ようやく、諦めたようだ。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:03:31.12 ID:pS1MvkmlO
「しょーがないか。後でモララーに文句言ってやろう」

妙に納得した顔をしつつ、男は未だに鳴り続けている電話のある部屋のドアを開けた。





(,,゚Д゚)「さぁーて、仕事の依頼でありますように……」

男は黒で統一されたスーツ姿をしており、ビシッとした格好をしていた。
だが、整っているのは首から下だけでその黒髪はボサボサ、
しっかりと見開けば精悍な感じがするであろう黒い瞳は未だにまどろんでいた。
顔立ちはまだ若く、20代前半といったところだろうか。



男はじっと電話を見てから、両手を顔の前で合わせて一度お辞儀をする。

そして、少々疲れの見える電話から受話器を取り上げ、お決まりのセリフを発した。



(,,゚Д゚)「お待たせいたしました。お電話ありがとうございます。―――」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:04:49.70 ID:pS1MvkmlO
                                  .





(,,゚Д゚) ここは解決屋『シルバー&ブラック』本社のようです 川 ゚ -゚)










第一話

「こちらはアナタのお悩み即解決! 解決屋『S&B』本社でございます。本日はどのようなご用件でございましょうか?」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:06:10.09 ID:pS1MvkmlO



(,,゚Д゚)「―――はい。それでは失礼いたします」

男は相手側の電話が切れた事を確認してから、受話器をゆっくり置いた。

(,,゚Д゚)「……うーん。でも、まあ」

顎に手をおいて少し考える。先程の電話の内容について思うところがあったのだろう。



男が唸り始めてから少しした後、下の階段から足音が聞こえてきた。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:07:17.63 ID:pS1MvkmlO
(,,゚Д゚)「お、来たな」

男が入口の方を振り返ると同時に、ドアが開かれた。



( ・∀・)「おはよーございます!」

川 ゚ -゚)「今帰った」



中に入ってきたのは二人。

一人は目の前にいる男と同様に、黒で統一されたスーツを着ている。
ただその男と違うのは、首から上もしっかりしているところだ。

歳はちょうど20か少し下か。しっかりと整えられた髪に生気が溢れる表情。
『好青年』という言葉がぴったりと当てはまる。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:09:31.58 ID:pS1MvkmlO
もう片方は女性である。これまた黒で統一されたスーツ姿だ。
しかし、それは女性用のスーツではない。他の二人同様に、男性用のを着ている。
また、彼女だけは手に黒の革手袋をしている。

こちらも20代前半だろうか。顔立ちは非常に整っているが、僅かに威圧感を覚える。
背も女性にしては高めなようで、少々近寄りがたい雰囲気だ。



服装のせいもあって、ともすれば男性に見られそうだが、そんな事は起こり得ないだろう。
なぜなら彼女は見事な黒髪をしているからだ。
長く、腰のあたりまで届きそうな程なのに、癖もつかずに真っ直ぐ伸びている。
さながら日本人形のような、美しく艶やか髪を彼女は持っていた。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:11:04.04 ID:pS1MvkmlO
                                  .


(,,゚Д゚)「……」

川 ゚ -゚)「む、どうかしたのか? 上の方を見上げているが」

(,,゚Д゚)「いや。何か不公平だな、と」

川 ゚ -゚)「? 何の話だ?」

(,,゚Д゚)「こっちの話だ。気にするな。つーかそんな事よりお前はどこに行ってたんだ?」

川 ゚ -゚)「ちょっとその辺を散歩に。そしたら偶然モララーと会ったから一緒に来たんだ」

(,,゚Д゚)「……おい。何で仕事中に散歩に行くんだよ?」

川 ゚ -゚)「良いじゃないか。まだモララーも来ていなかったし。気持ちのいい朝だったしな。
     どうせやる事も無いし。お前だっていつも通り二度寝してたんだろう?」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:12:35.73 ID:pS1MvkmlO
(,,゚Д゚)「アホか! ちゃんと仕事してたっつーの!!
     ……いやまあ確かに二度寝はしてたけど、電話があってな。依頼を引き受けたぞ」

(*・∀・)「えっ、本当ですか!」

(,,゚Д゚)「おう本当だ。……何か今日テンション高くね? ちょっと気持ち悪いんですけど」

( ・∀・)「今日こそは依頼を取ろうと思って気合いを入れてたんですよ。
      気持ち悪いとか言わないでください」

川 ゚ -゚)「で、ギコ。その依頼の内容は?」

(,,゚Д゚)「おっとそうだった。えーとだな……」

ギコと呼ばれた男は先程あった電話の内容を二人に話しだした。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:14:06.21 ID:pS1MvkmlO



(,,゚Д゚)「と、いったところだ」

川 ゚ -゚)「なるほどな」

そう言ってその女性――クーは、腕を組んで天井を見上げた。



もう一方の男は何やら頭を抱えている。

(゚Д゚,,)「お、どうしたモララー?」

ギコが話しかけると、モララーと呼ばれた男はバッと顔を上げてギコを睨む。

(#・∀・)「どーしたもこーしたも無いですよ! 何でそんな仕事引き受けたんですか!」

モララーがギコに向かって早口でまくし立てる。相当怒っているみたいだ。

(,,゚Д゚)「どうどう。まあ落ち着けよ。いや俺もどうかと思ったんだがな」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:15:37.69 ID:pS1MvkmlO
(#・∀・)「じゃあ何で引き受けるんですか!?
      ああもう、あれほどヤクザが関わる仕事は取らないでくれって言ったのに……!」

(,,゚Д゚)「まあまあ、ヤクザなんて大した事無いって」

(#・∀・)「そりゃアンタはそうでしょうけど僕はどうするんですか!」

(,,゚Д゚)「またまた〜。お前も余裕だって」

( ・∀・)「僕と貴方みたいな超人と一緒にしないで下さい」

(,,゚Д゚)「何言ってやがる。お前の『アレ』があれば問題ないじゃん」

( ・∀・)「ああ、駄目だこの人。さようなら、僕の平穏な日常……」

(・∀・ )「クーさんも何か言ってやってくださいよ、この単細胞に」

(,,゚Д゚)「誰が単細胞だゴルァ」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:17:11.51 ID:pS1MvkmlO
モララーから話を振られたクーは視線を天井から二人の方に向ける。

川 ゚ -゚)「ふむ。確かにヤクザ共と関わるのは極力避けたい」

(・∀・ )「ほら、クーさんもこう言ってる」

川 ゚ -゚)「まあ待て。話は最後まで聞くんだ」

( ・∀・)「え?」

川 ゚ -゚)「関わりたくないが、現状として困っている人がいるのだろう。だったら、助けるべきだ」

(;・∀・)「あ、いや、しかしですね……」

川 ゚ -゚)「しかもそれが私たちにしか出来ないというのならば尚更だ」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:18:47.02 ID:pS1MvkmlO
(;・∀・)「えー、でもー……」

(,,゚Д゚)「二対一だなモララー。それに俺の話も最後まで聞けよ」

(・∀・ )「え?」

(,,゚Д゚)「ちょっとこっち来い」

ギコはモララーに向けて手招きをした。

(・∀・ )...「な、何ですか……」

モララーが近づくとギコはモララーに耳打ちをする。



「この仕事の依頼料なんだがな、―――」
「…………!!!?」



川 ゚ -゚)「……」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:20:05.29 ID:pS1MvkmlO
(,,゚Д゚)「と、いった具合なんだがどうする?」

( ・∀・)「是非引き受けましょう」

川 ゚ -゚)「随分と変わり身早いな」

( -∀-)「いやー、最近ロクに仕事が無かったからやりくりが大変でして……」

(,,゚Д゚)「じゃあ決まりだな。さっさと行くとしよう」

( ・∀・)「はい! 頑張ってください!」

(゚Д゚,,)「え? お前行かねーの?」

( ・∀・)「行くわけ無いじゃないですか、そんな危険なとこ」

(,,゚Д゚)「お前なら死なないって」

( ・∀・)「嫌です」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:21:37.05 ID:pS1MvkmlO
(,,゚Д゚)「はくじょう者め……。まあいい。行くぞ、クー」

ギコはドアに向けて歩き出す。だが、それについてくる足跡は無かった。

(゚Д゚,,)「クー?」

ギコが振り返るとそこには難しい顔をしたクーがたたずんでいた。

川 ゚ -゚)「……」

(,,゚Д゚)「どうした? まさかお前も行かないとか言うんじゃないだろうな?」

クーはそれでも黙っていたが、やがてポツリと、



川 ゚ -゚)「……依頼料」

(,,゚Д゚)「は?」

川 ゚ -゚)「なんでひそひそ話なんだよ……。私にも話せよ……」

(,,゚Д゚)「……」

川 ゚ -゚)「……話せよ」



(,,゚Д゚)「……いや、その場のノリで……。なんかごめん」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:22:51.31 ID:pS1MvkmlO



ある住宅街の一角に、軽ボンネットバンタイプのグレーの車が一台入り込んできた。

車を道路の端に止めて、中から二人の男女が出てくる。

(,,゚Д゚)「ここ、のようだな」

川 ゚ -゚)「あの白いマンションがそうだろう」

二人の正面には五階建ての、まだ目新しいマンションがあった。資料の写真と一致する。

(,,゚Д゚)「静かだな。この時間帯ならガキ共が遊び回っていてもおかしくないんだが」

ギコの言う通り、周りは住宅街と思えないほど静かだ。通行人もほとんどいない。
その様子はさながらゴーストタウンのように不気味だ。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:24:19.47 ID:pS1MvkmlO
川 ゚ -゚)「既にこの辺りをヤクザがうろついていることが噂で広まっているんだろうな」

(,,゚Д゚)「……つーか警察に通報しろよ。普通に不法侵入じゃん」

川 ゚ -゚)「ああ、その事については資料がある」

(,,゚Д゚)「そういやもらったな、そんなもん」

川 ゚ -゚)「読むか? 何か色々と書いてあるが」

(,,゚Д゚)「……三行で」

川 ゚ -゚)「しょうがないな。ええと……、」



◎依頼主はマンションの不動産屋
◎ヤクザが居座っている
◎事を荒立てたくないので警察はダメ



川 ゚ -゚)「こんなとこだな」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:25:59.29 ID:pS1MvkmlO
(,,゚Д゚)「何だよ、最後の」

川 ゚ -゚)「入居人が決まってない内に警察が来たら、
     イメージが悪くて誰も住もうとは思わないからな」

(,,゚Д゚)「もうイメージなんて底辺になっているだろうに……」

川 ゚ -゚)「噂でしかないしな、ヤクザがいるっていうのは」

(,,゚Д゚)「あーもうどうでもいいからさっさと行こうぜ」

川 ゚ -゚)「そうだな。で、どうする?」

(,,゚Д゚)「何が?」

川 ゚ -゚)「どこから入るんだ?」

(,,゚Д゚)「……」



(,,゚ー゚)「決まってるだろ。玄関があるんだからな」

川 ゚ -゚)「まあ、そうだろうな」

そして二人は談笑しながら、正面玄関へと向かった。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:27:42.39 ID:pS1MvkmlO
正面から入ってすぐのところに、ガラの悪そうなチンピラが二人座っていた。

チンピラ達はギコ達に気付くと、吸っていた煙草を地面に押し付け、
ガンを飛ばしながらこちらに近づいてきた。

珍1「おう、なんだてめえら。ここのマンションの回しもんか?」

しかしチンピラの問いに二人は答えることなく、
まるでチンピラ達がそこにいないかの如く奥に進もうとする。

珍2「オイコラ待てや! なに勝手に中に入ろうとしてんじゃゴラァ!!」

チンピラの一人が引き止めようとクーの肩を掴もうとする。

後少しでその手が触れようとした時―――

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:29:02.44 ID:pS1MvkmlO
バシッ、っという乾いた音が辺りにこだまする。

そして一瞬の静寂の後、



川 ゚ -゚)「汚い手で私に触れるな、ゲス野郎」

随分な言葉をごく自然に、無表情でクーは言い放った。

手をはたかれた男はしばし呆然としていたが、すぐにその顔が怒りに歪む。

珍2「こっのアマっ……! ぶっ殺してやる!!」

理性が爆発した男がクーに両手で掴みかかろうとする。

だが、男が襲おうとするその前に、クーは次の行動に移っていた。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:30:35.39 ID:pS1MvkmlO
珍2「うげぇ……!」

男のみぞおちに深く、クーの左足が突き刺さっている。

クーの横蹴りは男に反撃の余地を与えず、男はたまらずその場に両膝をついた。

クーは足を降ろさず、逆に上に持ち上げた。

そしてクーの目の前でちょうど頭を下げているような格好になっている
男のその頭に左足を一直線に、



振り下ろした。



グジャッ、っと何とも生々しい音がした。

男は床に血の池を作り出す。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:32:29.84 ID:pS1MvkmlO
珍1「テ、テメェ〜っ! なにやっとんじゃボケがぁ!!」

残った一人がクーに殴りかかろうとする。

だが届かない。何故なら殴りかかろうとした男の顔面を、ギコの手が掴んでいたからだ。

ギコは力を入れてチンピラの顔を締め上げる。

珍1「あがっ……、痛、やめっ」

うめくチンピラを無視してギコはその顔を壁に勢いよく叩きつけた。

ギコが手を離すと男は力無く床に倒れ込んだ。

(,,゚Д゚)「さて、先に進もう」

川 ゚ -゚)「ああ」

二人は階段を使って上に上ることにした。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:33:51.95 ID:pS1MvkmlO
二人は最上階の五階に着く。

川 ゚ -゚)「何で真っ直ぐ五階に来たんだ?」

(,,゚Д゚)「馬鹿とナントカは高いところが好き、ってよく言うだろ」

川 ゚ -゚)「ああ、なるほど」

二人はそのフロアで一番広い部屋の前に行く。

遠慮なくノブに手をかけようとして、

(,,゚ー゚)「中にいるかどうか賭けるか?」

ギコが楽しそうにクーに尋ねる。

川 ゚ -゚)「乗った。……と言いたいとこだが、賭けにならんな」

(,,゚ー゚)「違いねえ。じゃあモララーに奢らせることにしよう」

川 ゚ -゚)「了解」

ノブを回してドアを開けた。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:35:06.87 ID:pS1MvkmlO
中に入ると、そこにはいかにもなヤクザが10人程度たむろっていた。

全てのヤクザ達がギコ達を睨みつける。その内の一人が話しかけてきた。

ヤクザA「なにもんだ、テメエら?」

その問いにギコが無表情に答える。

(,,゚Д゚)「ここの主にあんたらの立ち退きを依頼されたんだよ」

その言葉を聞いたヤクザ達は、ある者はへらへらと笑い出し、
またある者はより一層睨みつけてきた。

最初に尋ねた男が再び口を開く。

ヤクザA「へぇ、そいつはわざわざご苦労なことで。で、何だ? 金でも持ってきたのか?」

(,,゚Д゚)「あいにくと俺達は金欠なものでね」

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:36:40.79 ID:pS1MvkmlO
ヤクザA「金が出せねぇってんなら何を出してくれるんだい?」

(,,゚Д゚)「そうだな……」

今まで無表情だったギコの口の端が少しつり上がる。



(,,゚ー゚)「少々古典的ではあるが」

話しながら右手をほぼ水平に上げ、拳を相手の方に向け、



(,,゚ー゚)「俺達の拳で払うってのはどうだい?」

そう、言い放った。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:37:49.22 ID:pS1MvkmlO
部屋の雰囲気が凍りつく。いつ爆発してもおかしくない
緊迫した状況の中、最初の男が凄みをつけて言う。

ヤクザA「たった二人しかいないのに正気か?」

そう言われたギコは、場違いなほど明るい様子でクーに話を振る。

(゚Д゚,,)「だとさ。どう思う、クー?」

川 ゚ -゚)「一分もかからずにケリがつくだろうな」



張りつめていた空気が、壊れたような感じがした。

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:38:50.94 ID:pS1MvkmlO
(,,゚Д゚)「こう言ってるぜ」

ヤクザA「いいだろう、やれ、お前らァ!」

他のヤクザ達が待ってましたとばかりに動き出す。
木刀や鉄パイプ、匕首など、それぞれが各々の獲物を手にしている。

それらの武器を見ても特に気にした様子もなくギコは話し出す。

(,,゚ー゚)「勝負だ。どっちがより沢山ヤクザを倒すか」

川 ゚ -゚)「いいぞ」

ヤクザB「オラァッ! 呑気に話してんじゃねーぞ!」

会話をする二人にお構いなしに、二人のヤクザが迫ってきた。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:39:57.90 ID:pS1MvkmlO
ギコの方には、匕首を腰の位置に固定して突っ込んでくる男が。

クーの方には、木刀を両手で持って大きく振りかぶり、
今にも脳天に降り落とさんとしている男が来ていた。

川 ゚ -゚)「では、始めようか」

(,,゚Д゚)「あんまり張り切りすぎんなよ!」

川 ゚ -゚)「判っているさ」



クーの頭に木刀が振り下ろされる。

それを確認したクーは、拳が自分の額の上に来るように右腕を掲げた。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:41:33.30 ID:pS1MvkmlO
木刀が迫る。
刃の先がクーの手首辺りに襲いかかる。

木刀が腕に触れるか触れないかのところで、
クーは体を少し左にずらしつつ、弧を描くように右腕を降ろした。

結果、木刀の力のベクトルは少し右にずれ、甲高い音を立てて床を叩いた。

ヤクザB「あ……?」

要するに、受け流したのだ。木刀を。

返す刀でクーは男の顔面に右フックを叩き込んだ。

その一撃で男は沈黙。後方に倒れ込んだ。



川 ゚ -゚)「まず、一人」

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:43:34.99 ID:pS1MvkmlO
匕首を持って突っ込んでくる男を、ギコは体の右側を前にして待ち構えていた。

匕首とギコの体が目と鼻の先になった時。
ギコは匕首を握り締めている男の両手を、右手を逆手にして上から押さえつける。

それと同時に右足を軸にして半回転。
二人が背中合わせの格好になる。

ギコは男の左腕を脇で挟むようにしてロックする。

半歩右足を前に出し、相手の体勢を崩した上で。



男の腕を体ごと巻き込むようにして後方にひねり上げた。



体の奥底に響く、嫌な音が聞こえた。

左腕があり得ない方向に曲がっている男は声にならない叫び声をあげてのたうち回っている。

ギコはその男のわき腹を蹴り上げてから、辺りを見渡して一言。



(,,゚ー゚)「さあ、次は誰だ?」

楽しそうに、言う。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:44:59.08 ID:pS1MvkmlO
その後は凄惨なものだった。

ギコとクーはヤクザ達を殴り、蹴り、固めて、折る。

たまに投げたり。

ギコがテンション上がっちゃってジャイアントスイングぶちかましたり。



よーするにてんやわんやですわ。







(,,゚Д゚)「と、言うわけで後二人だな」

川 ゚ -゚)「いいのか? こんなんで」

(,,゚Д゚)「いいんだよ。あんな堅苦しい文をいつまでも書いていられるかよ。
     手を抜けるところは全力で手を抜く。それが俺のポリシーだ」



じゃあ気を取り直して。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:46:04.64 ID:pS1MvkmlO
(,,゚Д゚)「さて、後二人だが……。どうする?」

ギコは残った二人に向けて話し掛ける。

ヤクザA「……随分と喧嘩慣れしているようだが、調子に乗るのもここまでだ。……おい」

二人のヤクザはアイコンタクトを取ると、
ほぼ同時に懐から何かを抜き取り、それぞれがギコとクーに向けられた。



(,,゚Д゚)「!」(゚- ゚ 川





ニヤニヤと余裕の笑みを浮かべる男達の手には―――拳銃が握られていた。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:47:02.35 ID:pS1MvkmlO
ヤクザA「ま、お前達は頑張ったよ。好き勝手に暴れてくれた分は
     しっかり落とし前つけさせてもらうけどな」

ヤクザは笑い続ける。自分達の圧倒的有利を信じて疑っていない。

この不利な状況で二人は―――!







(゚Д゚,,)「あんな事言ってますけど? クーさん」

川 ゚ -゚)「そろそろ一分経つから早く終わらせよう」

めっちゃ余裕そうでした。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:48:01.92 ID:pS1MvkmlO
悠然とヤクザに近づく二人。拳銃を認識していないかのようだ。

想像していた反応と違い、ヤクザは焦り出す。

ヤクザA「な、なんだテメエら!? これが見えねえのか!?」

(,,゚Д゚)「あ? 見くびるなよ? 両目とも2.0だっつーの」

川 ゚ -゚)「私はそれ以上だ」

いまいち成立していない会話を交わしつつ、尚も近づこうとする。

ヤクザA「このイカレ野郎共がっ……! いいぜ、お望み通りっ……」

ヤクザ達は手に力を入れ、狙いを付ける。



ヤクザA「死ねぇっっ!!!」

発砲音が二つ、室内に響いた。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:51:22.15 ID:pS1MvkmlO
少しの静寂。

その後。



ヤクザA「は、はは、はーはっはっはっはっ馬鹿共がっ!! カッコつけてんじゃねーよ!!」

ヤクザは、うつ伏せで倒れてピクリとも動かない二人の姿を見て笑い狂う。

そしてひとしきり笑う。

多少奇妙だったものの、所詮は人間。拳銃に適うわけがないのだ。
ヤクザは滑稽な二人を笑い、でも心の中で少し安堵しつつ二人を見る。

やがて興奮も冷めて冷静さを取り戻してくる。





そう。冷静さを取り戻して、







初めてその異常に気付いた。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:52:50.13 ID:pS1MvkmlO
ヤクザA「あ、れ……?」

血。

血が、出ていない。



二人が倒れてからしばらく経つのに、血が全く流れていない。

得も言われぬ不安がヤクザ達を襲い、そして―――





「ふむ。気付かれたな」

「まあ流石にバレるよな」

ヤクザA「!!??」



もはや動かないと思っていた二人が、立ち上がる。

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:53:59.53 ID:pS1MvkmlO
川 ゚ -゚)「しかし、お前が倒れた時は何事かと思ったぞ」

(,,゚ー゚)「よく言うよ。俺の姿見てから直ぐに自分も倒れた癖に」

体についたほこりをパンパンとはたきながら、二人は何でもないかのように話す。



ヤクザA「な、な、」

ヤクザ達は目の前の光景が信じられない。

実は外れていた――?
いや、そんな事はない。間違いなく当たったはずだ!



(,,゚ー゚)「んで、どう? どう? 死んだと思った?」

川 ゚ -゚)「……まったく、子供か君は」

ギコは混乱しているヤクザ達に嬉しそうに話し掛け、クーはそんなギコの言動に呆れていた。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:55:02.15 ID:pS1MvkmlO
ヤクザA「な、なんで……」

(,,゚Д゚)「ん?」

ヤクザA「なんで生きているんだぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!!」

叫びとともに再び発砲。
完全に錯乱しているのに狙いは外れていないのだから、かなり腕が良かったのか。





だが、そんな事は関係ない。

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:55:59.01 ID:pS1MvkmlO
先程と同じように襲いかかる凶弾を、





ギコは隠していた白銀の鎖で―――





クーは隙間からわずかに覗く漆黒の腕で―――





先程と同じように弾丸をはじいた。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:57:28.64 ID:pS1MvkmlO
ヤクザA「なっ……!?」

(,,゚Д゚)「『蜂』」



驚愕に目を見開くヤクザに向けて、ギコは手にした鎖を投げつける。

鎖は目にも留まらぬスピードで一直線に男に飛んでいき、
先端についていた分銅が男の手に突き刺さる。

ヤクザA「がっ……!」

ヤクザはたまらず拳銃から手を離す。

(,,゚Д゚)「アーンド、『蛇』」

ギコは鎖を持っていた腕を真横に薙ぐ。

それにつられて鎖は横に飛び、もう一人のヤクザの腕に巻きついた。

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 20:59:59.50 ID:pS1MvkmlO
(,,゚Д゚)「クー! あとよろしく!」

川 ゚ -゚)「任された」

(,,゚Д゚)「じゃあいくぜ! ぃよぃっしょぉぉおおっ!!」

ギコは鎖を両手で持ち、勢いよく引っ張る。

ヤクザC「うわぁっ!!」

手に鎖が巻き付かれていたヤクザは、そのあまりの力に前方に投げ出される。

それに合わせてクーが飛び出し、男の顔に左拳を上から下へ振り下ろすように叩きつける。

クーはそのまま奥へと駆け込んで、
もう一方のヤクザに向けて走った勢いそのままに飛び蹴りをお見舞いした。



かくしてその部屋に立っているのは二人だけになった。

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 21:01:21.36 ID:pS1MvkmlO
(,,゚Д゚)「うっし! 依頼完了!」

川 ゚ -゚)「無事解決だな」

(,,゚ー゚)「いやー、一仕事終えた後は気分がいいな! さ、帰るか」

川 ゚ -゚)「あ、ギコ。待て」

(,,゚Д゚)「何だ? 何か忘れ物?」

川 ゚ -゚)「ああ、忘れ物だ。……お前何人倒した?」

(,,゚Д゚)「!!」

川 ゚ -゚)「私は6人だ。ギコは確か……、4人、だったかな」

(;゚Д゚)「いや、ちょ、ちょっと待」

川 ゚ -゚)+「この勝負、私の勝ち、ということだな」

(;゚Д゚)「待てぇぇぇぇえ!! 最後! ほら最後アシストしたじゃん俺!!」

川 ゚ -゚)「勝負は倒した数、だろ?」

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 21:02:25.85 ID:pS1MvkmlO
(;゚Д゚)「いや、そうだけども! せめて!
     せめてアシスト点も加算してくれてもよくないですか!?」

川 ゚ -゚)「しょうがないな。じゃあアシスト点は0.5ポイントとして……」

(;゚Д゚)「えっ!?」

川 ゚ -゚)+「6対5でやっぱり私の勝ちだな」

(;゚Д゚)「た、タンマ! 納得いかねぇ!!」

川 ゚ -゚)「判った判った。そこまで駄々をこねるなら同点扱いにしてやってもいいぞ」

(;゚Д゚)「上から目線UZeeeeeeeeeeee!!!」

川 ゚ -゚)「――――――――」

(;゚Д゚)「―――――――――――!!」

「――――――――」

「―――――――!!!!!」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 21:03:56.55 ID:pS1MvkmlO



(*・∀・)「お疲れ様です。いやー、何だかんだで良かったですね」

(,,゚ー゚)「だろ? この仕事受けて良かったろ?」

(;・∀・)「うーん、でもやっぱりほどほどにしておいて下さいね」

(,,゚Д゚)「このチキンめ」



川 ゚ -゚)「それにしてもあのマンション、入居希望者が出るのだろうか」

(,,-Д-)「まず無理だろうなぁ……。ご近所に発砲音が響き渡ったっぽいしな」

川 ゚ -゚)「結局あの後警察来てたしな」

(;・∀・)「えっ、そうなんですか!」

(,,゚Д゚)「そうなんだよ。……絶望的だな」

(;・∀・)「いや、それもそうですけど、僕達が警察に追われる事のないようにしてくださいよ」

(,,゚Д゚)「大丈夫さ。警察なんてひとひねりだって」

(;・∀・)「…………………ジョークですよね?」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 21:05:11.88 ID:pS1MvkmlO
(,,゚Д゚)「はっはっは。……おっとそうだった」

( ・∀・)「何ですか? 急にガサガサやりだして……、って、その大きな箱は?
      そういえば帰ってきたときに抱えてましたけど」

(,,゚ー゚)「ふっふっふっ。見て驚くなよ……。……どうだ!」



( ・∀・)「……ヘリコプター?」

(,,゚ー゚)「おう! リモコンヘリだ! いやー、前々から欲しかったんだよねー」

( ・∀・)「またそんな無駄遣いを……」

(,,゚Д゚)「さーて、早速……、操作説明書は……、面倒だ。俺様のフィーリングをなめんなよ」

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 21:07:47.07 ID:pS1MvkmlO
(;・∀・)「って事務所の中で飛ばすつもりですか? 流石にそれは危険……っ!!」



(;-∀-)キュピーン



(,,゚Д゚)「発・進!」

(;・∀・)「ちょっ、ギコさんストップ!!」

(゚Д゚,,)「え? なに?」





がっしゃーん

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 21:09:57.61 ID:pS1MvkmlO
(,,゚Д゚)「…………」

(;・∀・)「…………」


ぱらぱら……





(,,゚Д゚)





(,,゚Д゚)





(;゚Д゚)「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!?」

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 21:10:51.63 ID:pS1MvkmlO
(;・∀・)「あー……」

(;゚Д゚)「うわああああああ!! 俺の夢がああああ!!」

(;・∀・)「夢って……」

(;゚Д゚)「6万8000円もしたのにいいいいいい!!!」

( ・∀・)





(・∀・ )







(;・∀・)「ろくっ……!? なんだとおおおおおおおお!!!」

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 21:11:45.55 ID:pS1MvkmlO
(#・∀・)「なにやってんだあんたぁぁぁぁぁぁあ!!!」

(#゚Д゚)「うるせええええ!!
     第一テメーがいきなり大声出すからだろうがああああああああ!!!!」

(#・∀・)「つーかこんな狭いところで飛ばしてんじゃねええええええええ!!!!!」

(#゚Д゚)「うがああああああああああああ!!!!!!」

(#・∀・)「ぬわああああああああああああ!!!!!!!」










川 ゚ -゚)

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/11(金) 21:12:36.37 ID:pS1MvkmlO
川 ゚ -゚)



川 ゚ -゚)つ旦~

川 ゚ -゚)ズズ…

川 ゚ -゚)つ旦~







川 ゚ -゚)「…………♪」



第一話 おわり


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