( ^ω^)荒野のサムライ×ガンマンのようです
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 22:25:19.50 ID:GpCr1wKB0
* * * * *
その日、サルーンに現れた
旅装束の流れ者
人相も見えぬほど、目深に被ったカウボーイハット
埃で染め上げられた旅装束
そして、その腰には――
* * * * *
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 22:26:50.96 ID:GpCr1wKB0
Prologue : 暴言には暴言だ
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 22:28:57.52 ID:GpCr1wKB0
――セント・ジョーンズ・シティ。
サルーン"ラスカル"。
荒々しく押し開かれたウェスタンドアは、荒野の乾いた空気と共に。
ぎらつく日光の縞と、砂埃、飼葉の切れ端をサルーンに招き入れた。
ついでに、来訪者を一人。
/:::::,,. ゚)「……」
小柄な、旅人だった。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 22:30:56.95 ID:GpCr1wKB0
- ポンチョの肩には砂と枯葉。
裾から除くジーンズは色褪せ、重ね履きのチャップスには所々擦り切れの跡。
その太腿で、千切れて不揃いの飾り紐が揺れた。
そのまま、カウンターへ。
床に投げ出したずだ袋が、また。
もうもうと埃を立てる。
――奥のテーブルにたむろす、荒くれ男の無遠慮な視線。
その視線が、ポンチョの脇から覗く腰の、鈍色の物体に集中した。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 22:33:13.58 ID:GpCr1wKB0
- (`・ω・´)「注文は」
店主は腰に手を当て、見慣れない旅人を見下ろす。
指差す棚にはラム、バーボン。
並ぶ酒瓶は数こそ多いが、どれも同じ安酒ばかり。
旅人、ボトルを差して硬貨を投げ出す。
すかさずカウンターにショットグラスが叩き付けられた。
できそこないのプディングにぶちまけたシロップ色の液体。
/:::::,,.-)「……」
埃まみれのぬるい酒は、香りもないし味も最悪。
十分なのは、アルコール分だけだ。
一口に呷る。
空のグラスをカウンターへ。
ことり、乾いた音がサルーンに響く。
/:::::,,. ゚)「人を、探している」
小柄な身体に似つかわしからぬ、掠れ声。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 22:35:11.59 ID:GpCr1wKB0
- /:::::,,. ゚)「小柄な男だ。
ウィンチェスター銃よりも長い包みを持った男。
そいつを、探している」
(`-ω-´)「……」
店主、黙って首を振る。
グラスを磨きながら、奥の一角を指さした。
(`-ω-)「人探しなら、あいつらに話を通せ。
聞く度胸があるならな」
その先には丸テーブル。
投げ出されたカードと酒瓶、遊戯用の投げナイフ。
囲む男は三人。
いずれもにたにた笑いを浮かべ、闖入者を見る。
( ^Д^)「よお、ボクちゃんよぉ。
人、捜してんのかぁ?」
その小柄に付け込んだ、下卑た野次。
意に介さず、テーブルに歩み寄る。
/:::::,,. ゚)「ああ、そうだ」
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 22:37:59.42 ID:GpCr1wKB0
- ( ^Д^)「探してどうすんだよ、お子ちゃまカウボーイさんよぉ。
ケツでも貸してやんのか? まあ、教えてやってもいいぜぇ……」
( ^Д^)9m「お前がオレにケツ貸してくれんならな!!」
(=;ω;)「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
('A`)「……へっ」
奥に座る痩せぎすの男。
テーブルに足を投げ出しカードに目を落としたまま、笑う。
旅人はしばし、押し黙る。
ブーツの拍車が床板を打った。
かつんッ。
/:::::,,. ゚)「馬は、好きか?」
余りに突拍子のない質問。
男も毒気を抜かれた表情で、肩の高さのカウボーイハットを見下ろす。
( ^Д^)「ははは……はぁっ?
何だよ。馬がどうしたよ?」
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 22:40:37.29 ID:GpCr1wKB0
- 揺れる入り口のドアを、親指で指し。
/:::::,,. ゚)「馬小屋に馬を繋いでいる。
貸してやるから、好きなだけ使って来い」
――サルーンの空気が、一瞬で凍り付いた。
(#^Д^)「……な……ナメてんのかてめぇ!!」
/:::::,,. ゚)「生憎だが、クソまみれの獣姦野郎を舐める趣味はない」
(#^Д^)「このガキッ!!
その首ブッ飛ばして馬のケツに突き刺して――」
('A`)「――近頃は」
制したのは、ひとり座ったままの痩せぎすの男。
('A`)「どこも物騒だ。
素性も知れねえ余所者が吊るされたところで、誰も騒ぎゃしねえ」
(#^Д^)「ドクオさんッ。
構うこたぁねえ、やっちまいましょうぜ!」
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 22:44:42.57 ID:GpCr1wKB0
- /:::::,,. ゚)「何度も言っている。人を探しているだけだと」
痩せぎす、ゆっくり首を振る。
('A`)「弟分にナメた口叩かれて、はいそうですか、って訳にゃいかねえんでな」
絵柄を揃えたカードをテーブルに、ぱさり、と投げ出した。
そして、立ち上がる。
ゆらり、と。
/:::::,,. ゚)「……」
手足は細く妙に長い。
だらりと垂らされた両手の先端は膝に届くかと見えるほどだ。
その右腰に、磨かれた革のガンベルト。
縫い込まれた鉄板はメタルライニング――早撃ちのための加工。
('A`)「抜けよ」
/:::::,,. ゚)「……」
/:::::,,. -)「断る」
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 22:48:20.76 ID:GpCr1wKB0
- ('A`)「何だよ。腰のモンは飾りか?」
ポンチョの裾が風に揺れ、旅人のチャップスの腰に。
そこに痩せぎすの男――ドクオと同じガンベルト。
/:::::,,. ゚)「抜く理由が、ない」
('A`)「俺の弟分をコケにしたろ?」
/:::::,,. ゚)「暴言には暴言で返したまでだ」
(-A- )「そうか。なら――」
腰の銃に手をかける。
('A`)「抜かなきゃ死ぬ。
これでも理由にならねえか?」
距離は6フィート、わずか1.8メートル足らず。
躱すことも逃げることも、可能な距離ではない。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 22:50:30.32 ID:GpCr1wKB0
- (#^Д^)「ちッ、構やしねえですってこんなヤツ。
ココの親父だって、クソ保安官のヤツにチクったりゃしませんや。
なあッ!?」
(;`-ω-)「……」
店主、脂汗を浮かべ目を伏せ、動かない。
(#=゚ω゚)「そうだょぅ、ドクオの兄貴っ。
いっそアイツが戻ってくる前に、こんなガキ蜂の巣にして――」
言いながら腰に手を伸ばす、比較的小柄の男。
いきり立つ三人に囲まれた旅人は、ただ。
カウボーイハットのつばを下げ、うつむいた。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 22:52:22.46 ID:GpCr1wKB0
――哀れ小さな旅人は、流れ着いたこの街のサルーンで早くも生涯を終え。
その屍は街を見下ろす、小高い丘の奇妙な果実となり果てる――
――と、思えたが。
そこまで行いは悪くはなかったと見える。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 22:54:52.81 ID:GpCr1wKB0
ばんッ――。
ウェスタンドアが轟音とともに押し開かれ。
壁に叩きつけられてサルーンに響き渡る。
木棚の酒瓶がごとごと、ごとりと揺れ。
男たちは一様に身体を強張らせた。
(; ^Д^)「っ……!」
('A`)「――ち」
だが。
ζ( 、 ;ζ「……」
太陽を背負って立っていたのは、小柄な。
旅人にも輪をかけて小柄な、少女としか思えぬ背格好の女だった。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 22:59:03.83 ID:GpCr1wKB0
- ζ(゚、゚;ζ「っ……はあ、はあっ……」
焦燥した様子で肩で息をする女の髪と瞳は、黒く。
肌は、三人の男共よりはなお濃い肌色で。
( ^Д^)「あいつ。あの小娘……アレか。チャイニーズ?」
(;=゚ω゚)「……初めて見たょぅ」
奥の混乱をよそに。
娘は呼吸を荒げたままスカートの裾を払い、襟をしっかと合わせ。
それから涙を溜めた目で、サルーンじゅうを見回した。
ζ( 、 *ζ「……」
その目が、旅人に留まるや否や。
ζ( 、 *ζ「……っ!」
歪んだ顔から大粒の涙を、ぼろぼろとこぼして。
ζ(;、;*ζ「ひ…ひ………」
ζ(TдT*ζ「姫さまああああああああああぁぁぁぁぁッ!!!!」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 23:02:01.19 ID:GpCr1wKB0
- 猛然と、突進した。
先程までは見せなかった狼狽をあらわにした、その顔の見えない旅人に向かって。
/:::::,,. ゚)「ちょっ、待て、おま……がふッ!」
掠れ声ではない。
高い、慌て声。
ポンチョがはだけ、カウボーイハットが宙を舞う。
そして、その中身が。
川;゚ -゚)「……っ!」
――黒く長く、豊かな髪が。
背中まで流れ落ちた。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 23:04:18.51 ID:GpCr1wKB0
- 川;゚ -゚)「デレっ。お前という奴は……!」
ζ(;、;*ζ「クーさま、姫さま姫さま姫さまあああああああぁぁぁ!!
怖かったよおおおおぉ!」
女――デレは抱き留められたまま、一気にまくしたてる。
川;゚ -゚)「お前な。姫はやめろと言っているだろう、姫は!」
ζ(;、;*ζ「だってっ! だってだって、怖かったんですもんっ!!
外歩いてたら、いきなりコワいお兄さんたちが寄ってたかって……ううっ」
川 ゚ -゚)「知るか。自分で何とかしろ」
胸に押し付けた、頭を振り振り。
ζ(゚、゚;ζ「そんなのムリですよう。
わたしの二倍ぐらいおっきいんですよっ?」
川 ゚ -゚)「二倍は言い過ぎだ。それにお前……まあいい。
だから、派手な格好は避けろと言っただろう。ただでさえ目立つというのに」
ζ(゚д゚;ζ「でも、わたしたちぐらいの背丈じゃ、どっちみち大して変わらないですよっ?」
川 ゚ -゚)「そんなことはないぞ。
現に今だって、上手くいっていたんだ。それを、お前が――」
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 23:06:07.76 ID:GpCr1wKB0
- 言葉を切る。
抱き合ったその姿勢のまま、はた、と周囲を見回した。
('A`)「……」
(=゚ω゚)「……」
( ^Д^)「……」
(;`・ω・)「……」
呆気にとられた三人男とバーテンダー。
ならず者、その手は銃に伸びたままの姿勢。
ζ(’、’*ζ「……」
彼らの顔をたっぷり二度、見回し。
クーから身を離し、衣服をはたく。
ζ(’、’*ζ「……うん。えーっと……こほん」
おもむろに、腰に両手を当て。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 23:10:43.20 ID:GpCr1wKB0
ζ(゚д゚#ζ「狼藉者ども!!
そ こ に 直 り な さ い ッ ! !」
テーブルの酒瓶がびりびりと震える、大音声。
ζ(゚д゚#ζ「ここにおわす方を、どなたと心得ますか! そこの、あなた!!」
手近な男を、ぴし、と指差す。
(; ^Д^)「え……お、オレ?
いや知らねえし、誰だよこいつ」
ζ(゚д゚#ζ「痴れ者が!!
このお方こそは美津府(びっぷ)藩主、杉浦浪漫濘淑(すぎうらろまねすく)様が
ご息女、九兎姫(くうひめ)様にあらせられるぞ! 下郎ども、頭が高いッ!!」
(; ^Д^);=゚ω゚);'A`)「……」
川 ゚ -゚)「……」
酒瓶が丸テーブルから落ち、がしゃんと割れた。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/12(土) 23:13:49.54 ID:GpCr1wKB0
* * * * *
ときは幕末、ところは新大陸
世は、まさに開拓時代
去る者あれば追う者あり
鎖国の姫はいかにしてか、流れ流れて西部の荒野
その旅路やはたして、いかに――
* * * * *
戻る