( ^ω^)荒野のサムライ×ガンマンのようです
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 22:39:04.74 ID:ELisYN1e0





               ( ^ω^)荒野のサムライ×ガンマンのようです

                      5th Lesson : 帰らざる丘







3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 22:41:32.61 ID:ELisYN1e0

――AA牧場、夕刻。
   元使用人宅、離れ。



屋敷で話し合いが行われた、翌日である。

玄関のポーチにあわただしい靴音が聞こえた。
と、思う間もなく。

ドアが、ばたんと開かれる。

(; ´∀`)「も、モナっ!」

ドアノブを握り、野良着姿のモナー。
泡を食った様子で、室内を見る。

(; ´∀`)「ギコっ! ギコはいるモナか!?」

部屋の隅から隅までを見回したかと思えば、床に這いつくばる。
止めなければ、ベッドの下の隙間まで覗き込みかねない勢いである。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 22:45:17.49 ID:ELisYN1e0
ζ(-、-#ζ「……」

川 ゚ -゚)「……」

室内の二人。
クー。そして、デレ。

無言で、モナーを睨み付ける。

( ´∀`)「……」

(; ´∀`)「あ、あれ?」

モナー、ようやく二人に目を留める。

部屋の中央の椅子に、クー。
シャツの襟を大きく緩め、テーブルに肘を突く。

その後ろで、デレ。
漆塗りの櫛を、姫の黒髪に通している。

川 ゚ -゚)「騒々しいな。何事だ」

ζ(-、-#ζ「それ以前に!
        女性の部屋にいきなり入るとは、どういう了見ですかっ」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 22:48:21.62 ID:ELisYN1e0
(; ´∀`)「ご、ごめんだモナ! これは、えーと、その……モナ……」

尻すぼみになる、モナーの声。
デレ、対照的に眉をきりきりと吊り上げる。

ζ(゚д゚#ζ「"ごめん"で済めば火付盗賊改は要りませんッ!!
       下賤の身で姫さまの肌を覗こうなどとは、この――」

川 ゚ -゚)「デレ、止めろ。ここでは下賤も何もあるまい」

遮り、クー。
片手を上げ、言う。

川 ゚ -゚)「厠を覗かれたわけでもあるまいに。そう、目くじらを立てるな」

ζ(゚ー゚#ζ「しかしですね。姫さま……」

デレ、反論しかけるが。
口を止め、不承不承、頷く。

ζ(゚−゚*ζ「……承知しました。それが姫さまのお望みなら」

( ´∀`)("かわや"って……何だモナ?)

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 22:50:27.50 ID:ELisYN1e0
疑問もさておき、モナー。
改めて、口を開く。

( ´∀`)「食堂に、流石兄弟とフサギコが集まってるモナ。
      明日の計画を立てる、って。それでギコを探してるモナよ」

川 ゚ -゚)「明日の計画?」

( ´∀`)「そうだモナ。久しぶりの遠征モナよ。
      "アンカー・ヒル"だそうだモナ」

その言葉に、クー。
姿勢をやや改め、身体を起こし頷く。

川 ゚ -゚)「アンカー・ヒル……か。なるほどな」

( ´∀`)「知ってるモナ?」

川 ゚ -゚)「知らん。なんだそれ?」

(; ´∀`)「ズコー!」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 22:52:28.41 ID:ELisYN1e0
(; ´∀`)「ま、まあ。
      クーたちは新入りだから、知らないのも無理はないモナ」

再びくつろぐ姿勢のクーに、モナー、身振りを交え説明する。
その彼女の背中から手を回し、デレが衣服を整えた。

( ´∀`)「アンカー・ヒルはヴィッパーズ・クリークの南東側モナ。
      "丘"って言っても、西側の半分は岩場になってるモナよ」

モナーの説明によれば。

アンカー・ヒルは丘陵とは言うものの、主に西側は岩場が多く。
"奇岩"と称される奇妙な形の岩が突き出ているのを、各所に見ることができるという。

ζ(゚ー゚*ζ「遠征……って言っても、農地の開拓でしょう?」

( ´∀`)「そうだモナよ」

ζ(゚−゚*ζ「そんなところを切り拓いても、放牧なんてできないんじゃないでしょうか?」

( ´∀`)「それは、そうだけど……モララーさんの決めたことモナ。
      モナたちは、黙ってそこに行くだけモナよ」

川 ゚ -゚)「主命とあらば、仕方あるまいな。口を挟む筋合いはない」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 22:57:59.77 ID:ELisYN1e0
デレ、疑問を口にするが。
一方のクーは気にする様子もない。

( ´∀`)「気にはなるけど、ま、いいモナよ。
      モナたちは、パトロンに従うだけだモナ」

ζ(゚−゚*ζ「そういうものですか?」

(* ´∀`)「そういうものだモナ」

(,,゚Д゚)「だな。雇われの身じゃ、しょうがねぇわな」

( ´∀`)「そうだモナ……」

腕組みし、頷くモナー。
背後からの声に軽く答え。

そして、一拍置いて。



(; ´∀`)「……って、ギコっ!? どこ行ってたモナ!」




10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:00:03.91 ID:ELisYN1e0
モナーの背後、離れの入り口に立ち。
ギコ、面倒くさげに手を振り払う仕草。

(,,゚Д゚)「るせぇな。お前はオレのオフクロかよ?」

(; ´∀`)「ギコ……モナがギコのお母さんに見えるモナ?」

(,,゚Д゚)「お前は、オレがお前の息子に見えるか?」

(* ´∀`)「見えないモナ」

(,,-Д-)「ならオレも違ぇよ。
     マジに答えんなよ……ったく」

ギコ、モナーの肩を軽く叩く。
モナー、照れ笑いし頭に手をやった。

川 ゚ -゚)「……」

ギコと、モナー。
クー、静かに二人を見る。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:02:55.54 ID:ELisYN1e0
川 ゚ -゚)「ふむ」

モララーの前にいる時、食堂で流石兄弟と話す間。
それよりも、遥かに打ち解け合っているように見える。

(,,゚Д゚)「あいつら、食堂か?」

( ´∀`)「そうだモナ。みんな待ってるモナ」

(,,゚Д゚)「悪ぃな、すぐ行く。待たしといてくれや」

( ´∀`)「了解だモナ!」

答えるや、モナー、走り出していく。
後にはギコ、そしてクーとデレ。

(,,゚Д゚)「ま、そういうワケだ。お前らも来てもらうぜ」

と、二人の顔を見て。
ギコ、僅かに顔をしかめる。

(,,゚Д゚)「……お前、何やってんだ」

AA牧場に来た時から変わらぬ、泰然自若とした態度のクー。

そして、デレ。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:05:50.50 ID:ELisYN1e0
ζ(゚、゚*ζ「……」

妙に眉をひそめ。

そして、なぜか両手で顔の下半分を。
顎から鼻にかけてを、押さえている。

(,,゚Д゚)「……?」

ギコ、腕を上げてジャケットの袖の臭いを嗅ぐ。
最近洗ったもので、特に不潔な様子もない。

(,,゚Д゚)「なんだよ、お前。服なら洗ったばっかだぜ?」

ζ(゚、゚*ζ「……」

川 ゚ -゚)「どうした、デレ。風邪でも引いたか?」

ζ(゚ー゚*ζ「……あ、いえ。気にしないで下さい。
       では、クー様。参りましょうか」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:08:18.26 ID:ELisYN1e0
川 ゚ -゚)「ああ。行こう」

立ち上がり、クー。
机に置かれたふたつのガンベルトを両腰に巻き、ジャケットを羽織る。

銃は右腰に、そして椅子に立てかけられた大小は、左腰に。
左腰のベルトは、刀の鞘を通して固定できるよう改造されている。



――その左の腰元で。
   "草に兎"……草陰に座る兎を彫り込まれた大刀の鍔が、静かに揺れた。




16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:10:43.78 ID:ELisYN1e0
使用人宅を、ギコ、デレと共に出て。
クー、歩きながら問う。

川 ゚ -゚)「あのモナーという男とは、仲が良いのだな」

(,,゚Д゚)「ああ、あいつか」

ギコ、軽く頷く。

(,,゚Д゚)「あいつとは、前からの付き合いだからな」

(,,-Д-)「長ぇんだ。ここに来る前……ずっと前、ガキの頃からさ」

その声には。
過去をただ振り返るよりも複雑な感情が、見え隠れする。

川 ゚ -゚)「そうか」

(,,^Д^)「ま、昔っから何の役にも立たねえがな。ギコハハハハハ!」

一転、快活に笑い。
それから、思い出したようにクーを振り返る。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:12:40.91 ID:ELisYN1e0
(,,゚Д゚)「っと、そうだ。
     お前に頼みがあるんだがよ。聞いてくれるか?」

川 ゚ -゚)「内容によるな」

(,,゚Д゚)「なに、難しいことじゃねぇよ。そいつさ」

クーの腰の刀。
それを、指差す。

(,,゚Д゚)「"笑い男"の対抗法を、オレの部下に教えてやってくれ。
     同じ"カタナ"使いなら分かるんじゃねぇのか?」

ζ(゚−゚*ζ「それは……」

声を上げる、デレ。
クー、構わず頷く。

川 ゚ -゚)「ああ、分かるさ」

先日聞いた、負傷者の特徴。
手の指を切り落とされた者、足の骨を折った者。

想像は付く。

だが。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:15:40.29 ID:ELisYN1e0
川 ゚ -゚)「だが、それで奴を倒せるかは分からんな」

(,,゚Д゚)「そいつぁ、何でだぜ?」

川 ゚ -゚)「簡単な話だ。奴は私よりも、遥かに強い」

(,,゚Д゚)「なんで、んなコトが分かんだよ?」

川 ゚ -゚)「当たり前だ――」

朱塗りの鞘に、鼠色の下げ緒。
それに手を置き、クー、静かに答えた。



川 ゚ -゚)「――私に剣術を教えたのは、その"笑い男"だからな」



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:21:20.78 ID:ELisYN1e0

――翌日、昼。
   アンカー・ヒル、集落跡。



数頭の馬。
そして後方の馬車から荷を降ろす、農夫たち。

(,,゚Д゚)「……ま、こんなトコか」

先頭で手綱を握り、ギコ、独りごつ。

(,,゚Д゚)「モナー。いいか? 超特急で終わらせろよ」

( ´∀`)ノ「了解だモナ!」

農夫の先頭に立つモナー、答えて手を振り返す。
服装はあいも変わらず野良着だが、その背中にはライフル銃。

( ´∀`)「ほらほら、みんな。急ぐモナよ」

( ><)「わ、分かったんです!」

(゚」゚)「アイヨー」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:23:54.41 ID:ELisYN1e0
その馬車の近くに、二棟の廃屋。

いずれも朽ち果てた壁板は所々が倒れ、天井もなく。
辛うじて住居の形跡を残しているに過ぎない。

(´<_` )「あいつ……なんで野良仕事してんだよ?」

( ´_ゝ`)「撃ち合いが苦手なんだとよ」

ギコの後で、呆れ声の兄弟。
気障な仕草で揃いの柄のスカーフを整え、帽子のつばを上げる。

左右対称に、同じ動作で。

(´<_` )「あっそ。
      さすがギコの大将。人脈豊富で羨ましい限りだぜ」

( ´_ゝ`)「ま、俺らもあいつの部下だがな。今は」

(´<_` )「おお、そうだった。そこに気付くとは流石だな兄者」

相変わらずの悪態。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:26:50.51 ID:ELisYN1e0
(,#-Д-)「てめーらは黙って見張ってろ。
      それともあいつの代わりに手伝うか?」

(´<_` )「ふざけろよ、大将。
      俺らは銃撃ちに来てんだ。杭打ちに来た訳じゃねえっつの」

モナーと同じ、ウィンチェスター・ライフル。
兄者は右手に、弟者は左手に握ったそれを振り上げる。

所々が露出した赤土の。
ごつごつとした石が突き出る、丘陵地帯。

ここはちょうど、その土肌と。
丈の長い草が伸びる草原を、東西に分ける境界になる。

すなわち。

シベ超、そしてヴィッパーズ・クリークに面した西側は、岩場に。
そしてAA牧場側の東は、草原に。

川 ゚ -゚)「……」

馬を降りたクー、周囲を見渡す。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:29:17.39 ID:ELisYN1e0
空は高く、深く青い。

背後には廃屋と草原。
目前には広がる荒野、突き出た様々な形の岩。

川 ゚ -゚)「良い場所とは言えんな」

AA牧場の面々が立つ草原側には、目立った遮蔽物はない。

一方、ヴィッパーズ・クリーク側の荒れ地は岩で見通しが悪く。
そして、付近一帯が西に向かって緩い上りの斜面。

川 ゚ -゚)「守るに難く、攻めるに易い。危険だぞ」

(,,゚Д゚)「ああ――」

ギコ、答えて馬のあぶみを踏み、勢いを付けて跳び降りる。

(,,-Д-)「――オレも同意見だよ」

川 ゚ -゚)「ならば、何故こんな危険な場所に留まる?」

(,,゚Д゚)「お優しい牧場主さんのお達しでな。
     なるべく広く草地を確保しろとよ」

川 ゚ -゚)「愚策だな。そこまで牧草地が大事か」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:31:51.60 ID:ELisYN1e0
ミ,,゚Д゚彡「大事だろうよ。少くなとも、俺達の命よりはな」

葉巻の端を噛み切り、フサギコ。
クーを除く全員が、ライフル銃を持っている。

ミ,,゚Д゚彡「警戒するしかないな。
      "梟"に狙い撃たれでもしたら堪らんぞ」

作業に取りかかる農夫たちを顎で指す。
大きな木槌を持った二人が、生木の杭を地面に打っている。

( ><)「よっこら……せっと!」

(;゚」゚)「ギャー!」

(; ><)「ああっ! ご、ごめんなさいなんです!」

その後ろに、別の農夫たち。

巻いた有刺鉄線の束を運び、杭の脇に下ろす。
杭に巻き付けて固定すると、また担ぎ上げた。

川 ゚ -゚)「……ふむ」

クー、興味深げにそれを見る。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:34:25.96 ID:ELisYN1e0
(,,゚Д゚)「初めて見る、って顔してんな。珍しいか?」

川 ゚ -゚)「ああ」

(,,゚Д゚)「ああやって、囲いを作るのさ。
     作り終えたら、牧場の名前を書いた札を立てる」

川 ゚ -゚)「勝手にやって良いものなのか?」

(,,゚Д゚)「今は土地の開拓が最優先だからな。
     ちょっと前まで空き地は公有地だったが、今は耕した奴のモンさ」

モナーが先頭に立ち、腕を振って音頭を取る。
草地と荒れ地の境界線に立つ農夫たち、次々と杭を打ち始めた。

(,,-Д-)「もっとも、こいつのお陰で自由に放牧なんかできなくなっちまったがね」

ギコ、遠い目で空を見る。

(,,-Д-)「家畜も鉄道で運ぶようになったしな。
      昔ながらの牛追いは、商売上がったり、さ」

川 ゚ -゚)「カウボーイ……か」

クー、頷く。
新大陸に来たばかりの頃、学んだことを回想する。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:36:52.81 ID:ELisYN1e0



――私有地の増加、鉄道の敷設。
   それによって、伝統的な牛追いは姿を消した。



土地が有刺鉄線で区切られる前。
牛飼いたちは、西部一帯を移動して過ごしていた。

何十頭もの牛を馬で追い立て、何百マイルもの道のりを旅する。
牛を養えるだけの草地を見付けると、そこに即席の家を建てて住み。

そして。
牛たちが辺りの草を食べ尽くしてしまうと、またあてどもなく旅に出る。

過酷な西部での長旅に適した衣服を身に付け。
そして旅路で身を守るため銃を持つ。

それが本来の意味の"カウボーイ"。

今では、家畜泥棒、銃を持ったチンピラ。
下手をすれば、その程度の意味でしかない。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:41:59.05 ID:ELisYN1e0
(,,゚Д゚)「ま、仕事は仕事だ。今は、やるコトやるしかねぇな」

革手袋の手を擦り、自分に言い聞かせるように。
農夫たちをぐるりと見回し、ギコ、声を張り上げた。

(,#゚Д゚)「ゴルァ! そこの粗チン二人! 怠けてんじゃねぇ!!」

その視線の先で。
ウサギを追い回して遊んでいる兄弟がいた。

クー、微笑ましげにそれを見。
思い出したように、左腰の刀の鍔を見た。

(,,゚Д゚)「面白ぇ飾りだな。高いのか?」

川 ゚ -゚)「この世に一振りしかない刀だ。値は付けられん」

(,,゚Д゚)「へぇ――お、こいつもウサギの模様か」

鍔の彫りに目を留め、ギコ、眉を上げる。

川 ゚ -゚)「"草に兎"。私のために彫られたものだ。
     私の名前にも"兎"の字があるからな」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:45:12.46 ID:ELisYN1e0

(,,^Д^)「ウサギ? お前が? ははっ。
     かわいいじゃねぇか。ウサちゃん」

川 ゚ -゚)「黙れ。次言ったら叩き斬る」

クー、刀を半分ほど抜き。
その刃を流麗に波打つ、"乱刃(みだれば)"の刃紋を見る。



――刃長はぴたり二尺二寸。反りはやや深く、重さを抑えるため樋が入る。
   先代剣術指南役、西川谷重州礼(にしかわやおもすれい)の手による刀。
   銘を、"八葉重州礼(やつはおもすれい)"。



川 ゚ -゚)「……内藤」

刀を見る度に。
あの男の笑い顔が思い出される。

内藤の持つ、刀。
彼女のものと対になる、その"鈴生(すずなり)"の鍔。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:47:56.64 ID:ELisYN1e0

――"九守鈴褄宗"(このしゅれいつまむね)。
   彼女のそれとは対照に、刃は厚く実直な"直刃(すぐば)"の刃紋。
   重州礼の刀匠としての号を付された、遺作。



片時も、疑ったことはない。

だが。

川 ゚ -゚)「……勝てるのか」

クー、刀に問いかけるように。
隣のギコにも聞こえぬ声で、呟いた。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:50:52.01 ID:ELisYN1e0
(,,゚Д゚)「……」

ギコ、そのクーの顔を見て、押し黙り。
次いで西側を、荒れ地の方角を見る。

(,,゚Д゚)「……ふん」

ふいに。

(,,゚Д゚)「――なあ、ウサちゃんよ」

川 ゚ -゚)「死ぬか?」

ギコ、答えない。
その遠くを見透かそうとする目は、軽口とは反対に真剣。

(,,゚Д゚)「いや、悪ぃな。世間話はもう終わりだ」

川 ゚ -゚)「……何だと?」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:53:28.24 ID:ELisYN1e0
(,,゚Д゚)「あの辺だ。見ろ」

指差すギコ。
クー、その言葉に従い斜面の先を見る。

陽炎がのたうつ斜面の先に、砂埃。

川 ゚ -゚)「砂が舞っているな。風のせいか」

(,,゚Д゚)「だといいんだがな。
     ……多分、違うぜ」

言うが早いか。

ギコ、ライフルを素早く装填すると農夫たちを振り返り。
今までにない大声を、張り上げた。

(,#゚Д゚)「作業してるヤツ、今すぐ荷物畳め! ずらかるぞッ!!」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 23:55:30.00 ID:ELisYN1e0
( ><)「な、なんですって?」

(゚」゚)「アイヨー」

騒然とする農夫たち。
モナー、それを押さえ声を張り上げる。

(; ´∀`)「とにかく馬車に戻るモナ! 荷物は後回しモナ!」

( ><)「でもっ。このままにしたら、道具の持ち主がわかんないんです!」

(; ´∀`)「いいから早く! もしかすると――」



――その言葉を遮り。
   丘に成り響く、銃声。




42 名前:×成り ○鳴り 投稿日:2012/06/24(日) 23:57:39.78 ID:ELisYN1e0
ひょう、と微かな風切りの音を鳴らし。
鉛の塊、すなわち銃弾が。

傍らの杭に食い込んで木片を散らす。

(; ><)「わわわっ、わっ!?」

(;゚」゚)「ギャー!」

慌てて走り出す。
手にした道具を放り出し、停められた馬車に向かって一斉に。

モナーは彼らとは、逆方向に。
前方の、また別の廃屋の壁に飛び付き、身を隠した。

(; ´∀`)「ひええ……やっぱり、怖いモナ……」


44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/25(月) 00:00:19.74 ID:ELisYN1e0
離れた場所で。
ギコが、再び声を張り上げる。

(,#゚Д゚)「モナー、そっちは任せんぞ!
     お前は死んでもいいから、そいつら帰らせろッ!」

己も近くの廃屋に身を隠し。
農夫たちを、なおも急き立る。

(,#゚Д゚)「死にたくなきゃ、さっさと戻れ!
     おら、急げ急げ急げッ!!」

遅れて、クーとフサも同じ物陰に走り込んだ。
帽子を押さえ、一足飛びに飛び込む。

川 ゚ -゚)「予想通りか。良く見えたな」

(,,゚Д゚)「なに、慣れってな。
     本モンのカウボーイなら、牛や馬が立てる音やら砂埃は一発で分かるさ」

ミ,,゚Д゚彡「ったく……今日はツイてねえな」

川 ゚ -゚)「――いや」

コルトS.A.Aを抜き、クー。

川 ゚ -゚)「逆だ。私にとっては」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/25(月) 00:03:05.02 ID:+9DEzthD0
ミ,,゚Д゚彡「良く言うな、お嬢ちゃん。
      "笑い男"の面倒、任せちまうぞ」

川 ゚ -゚)「私は、一向に構わん」

フサギコ、顔をしかめ、ライフルに弾を込める。

ミ,,-Д-彡「こうなりゃ、やるしかないがな。
       "梟"と"笑い男"がいたら、ずらかるしかないぞ。ギコ」

(,,゚Д゚)「……そうだな。
     一丁、賭けでもするか?」

鼻を鳴らし、ギコ。
フサギコの言葉には答えず、出し抜けに。

ミ,,゚Д゚彡「何? いきなり何言い出しやがる」

(,,゚Д゚)「まあ、聞けよ。
     このボロ家の壁が、何発の弾に耐えられるか。どうだ?」

ミ,,-Д-彡「……下らねえ。
       一番配当が高いのはいくつだ?」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/25(月) 00:06:48.54 ID:+9DEzthD0
川 ゚ -゚)「気乗りはしないが――」

こん、と壁を叩き、クー。

川 ゚ -゚)「――"一発も耐えられない"に賭けるのが順当そうだ」

フサギコ、それを聞き、肩をすくめる。
ギコ、首を振り笑った。

(,,゚Д゚)「悪いな。そいつは配当が付かねぇんだ」

馬車に乗り、あるいは走って。
散り散りに去っていく、農夫たちの後姿を見遣り。

(,,゚Д゚)「下手に顔は出せねぇな。
     そろそろ――来るぜ」

大きく、一度息を吐き。
ギコ、ライフルのグリップを握りしめた。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/25(月) 00:08:49.11 ID:+9DEzthD0

――アンカー・ヒル、集落跡西側。



馬上、硝煙を立ち上らせるライフルの銃口。
肩から下ろし、ハイン、蓬髪を乱暴に撫で付けた。

照準の先では。
杭に撃ち込まれた弾丸に、周囲の人間たちが慌てふためく。

从 -∀从「おー……危ねえな。当てっちまうとこだったぜ」

.∧ ∧
(・∀ ・)「えー、当てないの?」

从 ゚∀从「戦う気ねー奴にムダ弾使う必要はねえよ。
      弾代もタダじゃねーんだ」
.∧ ∧
(・∀ ・)「へー」

ハインの隣に、不満げなまたんき。
その馬の扱いは、まだ拙い。

背後に控える、こちらも数名のガンマンたち。
ライフルを、拳銃を手に手に馬を駆る。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/25(月) 00:12:04.17 ID:+9DEzthD0
゙シ ・∀・)「こんなところまで来るとはね。全く、油断も隙もないな」

ミ´<_` ミミ「構わんさ。ここで潰せば、それで終わりだ」

ただし。

ミルナ、そして内藤。
二人の姿は、ない。

.∧ ∧
(・∀ ・;)「……」

遅れて、またんき。

何かを言いかけ、言葉を飲み込む。
手綱を握る手は、それと分かるほど震えている。

从 -∀从「……」

横目でそれを見、ハイン。
速度を落とし、またんきに並ぶ。

从 ゚∀从「おい、ガキ」

.∧ ∧
(・∀ ・;)「……あ。えっと……」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/25(月) 00:14:26.63 ID:+9DEzthD0
从#゚∀从「マタンキニコフ! てめー聞こえてんのか!」

.∧ ∧
(・∀ ・;)「のわっ!?」

ハイン、器用に足を上げ、またんきの膝を蹴りつける。
少年は馬上で大きくよろけ、抗議の声。

.∧ ∧
( ∀ #)「な、なにすんだよ!」

从 ゚∀从「……」

从 -∀从「お前は来るな。戻れ」

.∧ ∧
(・∀ ・;)「え……」

安心か、落胆か。
何とも言えぬ表情を浮かべ、それでもまたんき、反論する。

.∧ ∧
(・∀ ・;)「あ、や……やだよ! ボクだって、みんなと!」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/25(月) 00:16:50.12 ID:+9DEzthD0
从 ゚∀从「るせえ。迷惑なんだよ。
      おめーみてえなドヘタクソに来られんのは」
.∧ ∧
( ∀ ;)「……」

面と向かって否定され。
またんき、うつむく。

その顔を見て。
ハイン、静かな声で続けた。

从 ゚∀从「こっから北西、丘を登り切った所だ。
      ミルナ達と、そこで合流するはずだった」

ハイン、頷き後ろを指差す。
たった今、彼ら自身が通ってきた荒地。

.∧ ∧
(・∀ ・)「……」

無言のまたんき。
ハインの真意を計りかね、ただハインを見つめる。

从 ゚∀从「お前は、今すぐ引き返してそっちに向かえ。
      んで、ミルナとあのチビ共を呼んで来い」

チビ。
すなわち、内藤。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/25(月) 00:19:50.99 ID:+9DEzthD0
.∧ ∧
(・∀ ・)「……」

从 -∀从「その後は――まっすぐシベ超に帰れ。
      帰って、ショボンのおっさんに報告だ。分かったな?」
.∧ ∧
(・∀ ・)「でも。ボク――」

ハイン、有無を言わせぬ口調で。

从 ゚∀从「命令だ」

.∧ ∧
(・∀ ・)「……」

またんき、しばらく黙っていたが。
馬の足を止め、そして。

.∧ ∧
(-∀ -)「……うん、分かったよ」

小声で返事を返すと。
彼らとは反対方向に、ゆっくりと進ませた。

それ以上は何も言わず。
ハイン、馬の足を速めた。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/25(月) 00:21:50.63 ID:+9DEzthD0
再びペースを上げ集団に合流したハインに。
一人が、声をかける。

゙シ ・∀・)「いいのか? 頭数はこっちが不利だぞ」

从 ゚∀从「なに、少しばかり持ちこたえりゃあいいさ」

なだらかな斜面の上に立ち、付近には点在する岩の遮蔽物。
シベ超側は、防衛には有利。

対するAA牧場側には。
廃屋と草原、数か所の地面の窪み以外には身を隠す場所もない。

从 ゚∀从「ミルナにゃおあつらえ向きの場所だ。
      合流さえすりゃあ、こっちの勝ちも同然よ」

゙シ ・∀・)「なるほどな」

ハイン、馬上で、ひとつ。膝を叩き。
ライフルを脇に挟み、掌をこすり合わせる。

从 ゚∀从「――うっし、行くか!」

鋭い目で。
眼前の草原、廃屋を見渡した。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/25(月) 00:25:01.60 ID:+9DEzthD0
从 ゚∀从「岩陰に入るまで、とにかく撃ちまくれッ。
      当たらなくても構わねー、とにかく反撃させるな」

隊列を、横に広げ。
前方の地面、突き出た様々な形の岩を指し、ハイン。

从 -∀从「いいか――」

そして。
右手に握ったライフルを突き上げ、号令する。



从#゚∀从「――あの短小ヤンキー共に、シベリア魂叩きこんでやろうぜッ!!
      行くぞッ! 野郎ども!!」



――その号令、一下。
   並走するシベ超のガンマンたちのライフルが、一斉に火を噴いた。




                                            - 5th Lesson : つづく


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