( ^ω^)荒野のサムライ×ガンマンのようです


3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 22:44:28.88 ID:Bi3YF/Yy0






               ( ^ω^)荒野のサムライ×ガンマンのようです

                     3nd Lesson : AA牧場の私斗







4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 22:46:56.75 ID:Bi3YF/Yy0

――西部、AA牧場。
   時刻は、昼まで半刻足らず。



簡素な木組みの門には「A.A.Corral」の看板が揺れ。
左右には、なだらかな斜面の先にまで木柵が続く。

丈の短く、柔らかな草が生い茂る草原には、所々に低木。

川 ゚ -゚)「ここが、入り口か。遠回りしたな」

ζ(゚ー゚*ζ「ほええ……ずいぶん、いいところですねぇ」

馬を曳くクーに、デレ。
手をかざし、南に入った陽を避けて周囲を見る。

遠くには、牛舎。そして高く、大きな屋敷。
西部に多い、切り立った屋根と突き出た煙突。

川 ゚ -゚)「ああ。あちこち回ったが、牧草地に入ったのは久しいな」

ζ(^ー^*ζ「草の地面を見ると、お昼寝がしたくなります。ね、姫さま?」

川 ゚ -゚)「いや。別に」

ζ(゚−゚*ζ「……」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 22:49:56.29 ID:Bi3YF/Yy0
さて。
門の柱にもたれる人影、ひとつ。
二人を見ると帽子のつばを上げ、首をかしげる。

( ´∀`)「モナモナ。どなた様モナ?」

川 ゚ -゚)「ここは、AA牧場で間違いはないな?」

( ´∀`)「そうだモナよ。ほら、あそこに書いてあるモナ」

頭上を指さす男。

ゆったりとしたシャツにやはり大きな、綿のズボン。
野良着、農夫のていをした、何とものどかな雰囲気。

が、全身を見れば。
腰に巻かれた刺繍入りのガンベルトなどは、とても農夫の持ち物ではない。

川 ゚ -゚)「セント・ジョーンズの保安官の紹介で来た。
     主人に取り次いで貰えるか」

ζ(゚ー゚*ζ「よろしくお願いしますね」

デレ、ぺこりと頭を下げる。

8 名前:>>6×3nd ○3rd 死にたい。 投稿日:2012/05/26(土) 22:52:01.36 ID:Bi3YF/Yy0
( ´∀`)「えっと……あー……分かったモナ。
      案内してあげるから、ついて来るモナ」

得心が言った風で、一つ手を叩くと。
男は疑うでもなく、門の内側へと二人を促す。

( ´∀`)「助かるモナよ。最近、怪我人が多くて大変だモナ」

その後に従いながら。
デレ、クーに囁く。

ζ(゚−゚*ζ「……ね、姫さま」

川 ゚ -゚)「何だ、小声で」

ζ(゚−゚*ζ「なんだか、ずいぶんあっさりですね。疑われたりとか、してないのかな」

川 ゚ -゚)「別に、構うこともあるまい」

ζ(゚−゚*ζ「そうですけど……紹介状なんか、いらなかったんじゃ?」

クーの衣服は、ポンチョにカウボーイハット。
結わえた髪を帽子の中にまとめ、セント・ジョーンズを訪れた時と出で立ち。

ただ、男のなりをしていても。
当然、デレよりも僅かに高いばかりの身長は隠しようもない。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 22:57:15.60 ID:Bi3YF/Yy0
気付いていないのか、それとも気にしていないのか。
男、立ち止まり屋敷を指す。

門からも見えた、大きな屋敷。

( ´∀`)「ほら、あそこだモナ。
      この時間なら、モララーさんにもすぐ会えるモナよ……あ」

言葉を止め、一拍。

( ´∀`)「えーと、一つ気を付けてほしいモナ」

川 ゚ -゚)「何にだ」

( ´∀`)「……」

(; ´∀`)「これは、モナが言ったって言わないでくれモナよ。
      あ、モナってのはモナのことモナ。モナーだモナ」

ζ(゚ー゚;ζ「……えっと、その、えー。
       お名前が、モナーさん……でいいのですか?」

(* ´∀`)「そうだモナ。よろしくだモナ!」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:00:45.05 ID:Bi3YF/Yy0
川 ゚ -゚)「で、何に気を付ければいい」

(; ´∀`)「えっと……」

モナー、言いよどむ。

( ´∀`)「モララーさんは、怖い人モナ。
       失礼がないように、よく気を付けてほしいモナ」

川 ゚ -゚)「礼儀作法には詳しい。心配するな」

ζ(゚−゚*ζ「姫さまが詳しいのは、他人に礼儀を強いる方の作法なんじゃ……」

川  - )「何か、申したか? デレ」

ζ(゚д゚;ζ「い、いいいぃぃえっ! 何でもございませんですハイ!」

川 ゚ -゚)「良かろう。許す」

( ´∀`)「……」

(; ´∀`)「不安極まりないモナ……」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:04:04.99 ID:Bi3YF/Yy0

――AA牧場、屋敷。
   時刻はやや遡り、応接間。



白塗りの調度、織りの入った絨毯で飾られた応接室には。
先駆けて、二人の男の姿があった。

一人は、クーと同じく、カウボーイの。
そしてもう一人は、見るからに高級なコットンの上下。

カウボーイの男、せわしなくブーツの先で床を叩き。
腕組みをし、テーブルに座る男を見下ろす。

(,,゚Д゚)「モララーさんよ。
     あんたも、たいがい疑り深ぇな」

相対する、ジャケットの男。
テーブルに肘を突き、睨み返す。

( ・∀・)「疑う? 冗談じゃない。
      僕は、ただ君に聞いているんだよ。ギコ」

組まれた両手の人差し指は、神経質に上下する。
冷静な声だが、そこにはやはり苛立ちの色。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:10:10.63 ID:Bi3YF/Yy0
( ・∀・)「農夫も、君ら用心棒も負傷者が増えてるのはとっくに知ってる。
      だから何だ。これ以上の開墾を止めろと?」

(,,゚Д゚)「止めろ、とは言ってねえ」

ギコ、手を振り首を振る。

(,,゚Д゚)「だがな、このままやり合いが続いちゃ人手不足だ。
     ついこの前だって、夜襲で何人もやられてる」

( ・∀・)「当然だろう。君らは身体を張って僕の土地を守れよ。
      僕は慈善事業をやっているわけじゃないんだ」

(,,゚Д゚)「そこには異論はねえよ。だがな」

苛立ちの声。

(,,-Д-)「オレらの人手が足りないんだよ。"領地"が広すぎる。
     農夫も、敷地に杭を打つ工夫も危険にさらすハメになるぜ」

(,,゚Д゚)「このままじゃ、いずれ――」

( ・∀・)「――もういい。君の寝言は聞き飽きた」

ぴくり、と。
ギコの片眉が吊り上る。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:13:46.10 ID:Bi3YF/Yy0
(,, Д )「寝言……だと?」

( ・∀・)「なら、教えてくれよ。
      これが寝言でなくて何だというんだい? え?」

モララー、立ち上がる。

( -∀-)「金と寝床をせしめておいて、命は惜しい、か。見上げた根性だよ」

(,#-Д-)「……命が、惜しいわけじゃねえ」

怒りの色を、唇ににじませ。
だがギコ、抑えた声で。

(  ∀ )「そうかい。で、次は何を言い出すんだ? 聖書でも読むかい?
      シベ超の奴らに聞かせてやりなよ。"汝、殺すなかれ、奪うなかれ"ってね。
      はははッ――」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:17:59.32 ID:Bi3YF/Yy0



――モララー、やおらギコの胸倉を掴む。
   両手でゆすり、声を荒げた。



(# ・∀・)「――面白いじゃないか、やってみろよ! なあ!!」

モララーよりも長身のギコ。
その顔をねめ上げ、歯を剥き出し。

(# ・∀・)「いいか? 僕の経営方針に口を出すな。僕の指示に逆らうな!
      嫌なら今すぐ消えろ。今すぐに!!」

入り口のドアを指差す。
ギコ、うつむき、モララーとも視線を合わせない。

(,, Д )「……」

細身のモララーに比べ、一回り以上大きく精悍な身体。
その腰に帯びた大型の拳銃。

それでも、雇う者、雇われる者。
その差は体格よりも、拳銃よりも、大きく重い。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:22:26.03 ID:Bi3YF/Yy0
(# ∀ )「ふーっ、ふーっ……」

モララー、何度か大きく肩で息をし。
ギコの胸倉を突き放した。

(# ・∀・)「……いいか。僕は、君を高く買ってる」

ギコ、うつむいたまま。
だが皮肉気に、唇を歪ませる。

(# ・∀・)「だから、クソの役にも立たないクズ共のまとめ役を任せてるんだ。
      もう一度言う。僕の仕事に口を出すな。君は、君の仕事をやれ」

(,,-Д-)「……」

(,,゚Д゚)「……ああ。分かったよ、旦那」

ギコ、低い声で答えて身を翻す。
若き牧場主に背を向け、ドアに一歩。



――その時、突然。
   ノックもそこそこに、入り口のドアが開いた。




24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:25:02.40 ID:Bi3YF/Yy0
(* ´∀`)ノ「モララーさん? お邪魔しま……」

(,,゚Д゚)「……」

(# ・∀・)「……」

(; ´∀`)「……」

(,#゚Д゚)「モナー。
     てめえ……」

(; ´∀`)「……。モ、モナ……」

間の悪いことに。

姫君の一行が屋敷を訪れたのは、ちょうどこの時だった。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:28:07.84 ID:Bi3YF/Yy0
(# ・∀・)「モナー」

(; ´∀`)「はっ、はい! ……だモナ」

(# ・∀・)「僕の許可なく人を入れるな、と言ったはずだよな?」

一段低い声で、モララー。
虫の居所については、言うまでもない。

(; ´∀`)「あ、いや。あの、その……」

(# ・∀・)「……この、ウスノロが」

(# -∀-)「いつもいつも、君という奴はっ……!」



――全身を震わせ、モララーは下を向く。
   またもや。その怒りが爆発する――かと思われた、が。




31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:34:11.02 ID:Bi3YF/Yy0
川 ゚ -゚)「まあ、そういきり立つな。寿命が縮むぞ」

事も無げに、モナーを押しのけ口を開いたのは。
クーだった。

(# ・∀・)「なんだ、君は」

川 ゚ -゚)「用心棒を探しているそうだな。
     世話になりに来た」

クー、懐から封筒を取り出す。
蝋の封印には、セント・ジョーンズ・シティ、保安官の印。

(# ・∀・)「……」

( -∀-)「まあ、いい。こちらも困っていたところだ」

封筒をひったくり、開く。
視線が、便箋を往復した。

( ・∀・)「"この二名、銃士クー、従者デレ。AA牧場の用心棒として。
      異邦人の女だが腕前は確か。当方の保証するものなり。
      なお"――」

目が止まり。
一瞬、言いよどむ。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:37:32.06 ID:Bi3YF/Yy0
(; ・∀・)「……」

川 ゚ -゚)「どうした。見せてみろ」

クー、モララーにつかつかと歩み寄り。
その手からひょいと便箋を取る。

(; ・∀・)「あっ、おいっ」

川 ゚ -゚)「どれどれ。
     "なお、この二名のおっぱいを触った者がいれば、その色、形。
     感触、匂い等々、仔細に報告されたし。謝礼は以下の通り……"」

ζ(゚−゚*ζ「……」

川 ゚ -゚)「……」

(; ・∀・)「……」

ζ(゚−゚*ζ「最低ですね。あのひと」

川 ゚ -゚)「ああ。クズだな」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:40:11.47 ID:Bi3YF/Yy0
クー、おもむろにその後半部分を破り取る。

(; ・∀・)「あっ」

それをポケットに押し込むと。
何事もなかったかのように、残りを牧場主に返した。

(; ・∀・)「……ま、まあ。あいつの紹介なら、言うことは特にないね」

モララー、鼻白んだ様子で。
便箋の上半分を折り畳むと、懐に収めた。

( ・∀・)「ギコ、案内を」

(,,゚Д゚)「ああ。分かってる」

( ・∀・)「女か……まあ、いい。素性は問わない。
      話はギコに聞いてくれ。あと――」

モナーを睨み付け。

(; ´∀`)「ひっ!」

(# ・∀・)「この屋敷に、勝手に入るな。部屋が汚れるからね。
      それだけ、肝に銘じておけ」

それだけを言うと。
肩をいからせ、奥の部屋に姿を消した。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:42:56.66 ID:Bi3YF/Yy0

――AA牧場、宿舎。
   およそ半刻の後、昼。



(,,゚Д゚)「――やってもらうのは、話した通りだ。
     農夫の護衛、朝晩の見回り。それに、出入り」

馬を繋ぎ、荷物を部屋にしまった二人。
ギコに説明を受けながら、付いて歩く。

(,,゚Д゚)「それだけだ。仕事がねぇ時は、好きにしてろ。
     外出も勝手だが、逃げんなよ」

二人には、使用人の使っていた離れがあてがわれた。

その離れには、元はメイドが控えていたが。
モララーに一人残らず解雇され、今は空家という。

今は、宿舎の中。
一階の隅にある食堂へ向かう。

(,,゚Д゚)「俺たちはこっちにいる。
     三度の飯はここの食堂だ。間違っても、屋敷には入るなよ」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:46:07.20 ID:Bi3YF/Yy0
ζ(゚ー゚;ζ「は、はいっ」

川 ゚ -゚)「承知している。行けといわれても行かんさ」

現在の内容、仕事の内容。
主だった話を終え、ギコは二人を伴い食堂へ。

(,,゚Д゚)「全員じゃねえが、お仲間を紹介してやる。
     覚えとけよ。人違いで撃たれちゃシャレにならねえからな」

言い、戸を開いた。



――薄暗い室内に、酒と焼けた小麦の臭い。
   まばらにテーブルにつき、あるいは立つ男達。
   ギコの後に従う二人の女を見、思い思いの表情を浮かべた。



( ´∀`)「あ! 待ってたモナよ。
      ささ、入って入って」

真っ先に声を上げたのは、モナー。
初対面の時に同じく、満面の笑み。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:49:08.52 ID:Bi3YF/Yy0
ミ,,-Д-彡y-~「ふん――」

奥に腰掛けた、年かさのガンマン。
黙って葉巻をふかし。

( ゚∋゚)「……女」

その隣で、巨体の男。
たった一語だけ、呟く。

( ゚∋゚)「小」

そして、入り口近くの壁にもたれ。

( ´_ゝ`)「おっ、見ろよ兄者。女だぜ」

(´<_` )「チャイニーズのガキじゃねえか。つまらん」

ビールのビンを下げた男が、二人。
鏡に映したように瓜二つの、その顔。

兄者と呼ばれた男は、くわえ煙草。
それだけが、違いに見える。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:52:40.62 ID:Bi3YF/Yy0
ζ(゚ー゚;ζ「いやあのっ、私たち、日本人……なんですけど」

(´<_` )「ニホンジン? 何だそれ。弟者、知ってるか?」

( ´_ゝ`)「いや、知らね」

兄弟、互いに腕を上げ、顔を見合わせ肩を竦める。

(´<_` )「つーかギコ、何なんだよこのガキは。
      俺らに酌でもしてくれんのか?」

(,,゚Д゚)「今日からここに加わることになった。
     セント・ジョーンズの保安官とやらの紹介だとよ」

兄弟、めいめいに頷く。

( ´_ゝ`)「……ふむ」

(´<_` )「当然、使えるんだろうな」

(,,゚Д゚)「いや。知らねえな」

(´<_` )「なんだ、そりゃ」

後ろに控える、デレを見る。
値踏みするような、遠慮のない視線。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:54:49.77 ID:Bi3YF/Yy0
ζ(゚ー゚;ζ「う……ううっ」

次いで、クーを。

ガンマンの装いをした、長い黒髪の。
小柄な、濃い色の肌をした女。

川 ゚ -゚)「……」

腰にはコルトS.A.A.、アーティラリー。
それを見、目を細める。

(´<_` )「ったく、何の冗談だ? こんなガキ共に背中預けるのは勘弁だぞ」

( ´_ゝ`)「ああ。俺らに死ねとでも言っているのか?」

ζ(゚ー゚;ζ「えー……あの。わたしたち、いちおう子供じゃないんだけど……」

(,,-Д-)「……」

ギコ、黙して語らず。
肯定も、否定もない。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:58:11.69 ID:Bi3YF/Yy0
(; ´∀`)「も、モナっ。喧嘩はよくないモナよ? ね、ギコ」

ζ(゚ー゚;ζ「あ、あの……ギコさん?」

焦るモナーに、彼らをくるくる見回すデレ。
ギコ、兄弟を止める様子はない。

その様を見、ひとつ頷いて。
にやりと笑い、兄者が指を立てる。

( ´_ゝ`)b「ま、折角だしな。俺たちがテストしてやろうぜ、弟者」

d(´<_` )「流石だな兄者」

クーを横目で見て、口の端を歪める。

兄者に促され、弟者はテーブルの上に。
持っていたビンを置いた。



――湯気を立たせるボウルの隣に、一本。
   少し離れた場所に、もう一本。



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:01:06.65 ID:I312D4Bc0
置き終え、ビンの脇でまた大袈裟に両腕を広げる。

(´<_` )「さ、狙ってみろよ。できるだろ?」

濃い侮りの声音。

嘲りの笑い。

(´<_` )「なんなら、トリガーの引き方から教え――」



――瞬間。
   言葉を遮り、動く。



48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:04:09.09 ID:I312D4Bc0
クーの右手、右腰へ。
流れるような動作で、ガンベルトから拳銃を抜き放つ。

川  - )「ふ――」

滑らかで。
そして、疾い。

左のビンに向けて、一発。

銃弾の衝撃でビンが砕け散るよりも、早く。
トリガーは引いたまま、左手の指でハンマーを起こして弾く。

撃針は板バネの反動で六分の一回転した弾倉の雷管を叩き。
そして黒色火薬の破裂で推力を得た弾丸が。

二本目のビンをも、粉砕した。
弟者の身体のすぐ脇――数インチほどの場所で。

(´<_` )「――え?」

それに留まらず。
さらにハンマーを起こし銃口を横へ振る。

――三発目。
   狙いは、壁際の男。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:06:37.12 ID:I312D4Bc0





――.45口径の弾丸は、あやまたず撃ち抜いた。



――壁際の兄者がくわえた、ビール瓶の胴を。






51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:12:27.34 ID:I312D4Bc0
( ´_ゝ`)「あ――」

撒き散らされたビールが、腰から膝にかけてをずぶ濡れにし。
兄者の口から、ぽろりと煙草が落ちた。

床のビールの染みに落ち、じゅう、と音を立て消える。

川 ゚ -゚)「――何がテストだ。たわけ共が」

拳銃を、抜いた腰の位置で保持したまま、クー。
左手はハンマーに被せ、発射の準備姿勢のまま。

川 ゚ -゚)「私はビンを撃ちに来たのではない。
     何を撃ちに来たか……そこまで試さねば分からんか?」

腰に構えた拳銃の照準は。
兄者の顔面から、2インチと離れていない。

(; ´_ゝ`)「あ……い、いや」

(´<_` ;)「……」

兄弟、凍りついたように、動かない。
引きつった静けさが、食堂を満たした。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:15:40.56 ID:I312D4Bc0
(,,-Д-)「……くっ」

そこに、ギコの、声。



(,,^Д^)「ギコハハハハハッ!!」



心底楽しげな、笑い声。

(; ´∀`)「も、モナっ?」

(,,^Д^)「はははっ。いや、気に入ったぜ。クー。
     流石兄弟がアワ食った顔なんざ、そうそう拝めるモンじゃねえ。だろ?」

ギコ、笑いながら。
モナーの肩をばしばしと叩く。

(; ´∀`)「いたたたっ!」

(,,^Д^)「腕前の方は問題ねえようだな。
     な、失禁兄者。文句はねえな? ははッ」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:18:16.52 ID:I312D4Bc0
(; ´_ゝ`)「……」

黙って、ズボンの染みを見下ろす兄者。

ミ,,-Д-彡「――はッ」

( ゚∋゚)「藁」

奥に控えたガンマンたちも、笑う。

(,,゚Д゚)「ま、そういうワケだ。
     一丁よろしく頼むぜ。だがな」

煙に霞む、室内。

黒色火薬は、発火すると大量の煙を吐く。
締め切った室内で連射したのでは、相当なものだ。

(,,゚Д゚)「次からドンパチは外でやれ。
     焦げ臭いメシも酒も、オレは勘弁だぜ。分かったな?」

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:20:48.52 ID:I312D4Bc0
川 ゚ -゚)「私は悪くない。奴らに言え」

ζ(^ー^;ζ「わ、分かりましたから。ね、姫さま」

川 ゚ -゚)「ふん」

やや憮然として。
クー、拳銃を収めて兄弟を一瞥。

(; ´_ゝ`)「……」

(´<_` ;)「……ちっ」

二人、憤懣やるかたなしといった顔で、視線を落とした。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:24:05.50 ID:I312D4Bc0

――翌朝、日の出頃。
   宿舎から、ほど近く。



朝靄の中に、人影ふたつ。

ζ(-。-*ζ「ふあ……あああ〜……むにゃ」

木の柵に腰掛ける、丈の長いスカート。

デレ、口に手を当て大欠伸。
くくった髪は、ところどころ寝癖ではねている。

ζ(-。-*ζ「姫さま、朝も早くから精が出ますねえ。
        ……ところで、"精が出る"って、なんかアレですよね」

川 ゚ -゚)「……」

草地に裸足で正座するのは、クー。
服装は普段通りだが、ガンベルトは左腰に。

そして。
そこに収められているのは、拳銃ではない。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:27:24.07 ID:I312D4Bc0
長く伸びた、刀の鞘。
大小の鞘が通され、固定されている。

服装こそ洋装だが。
背筋を伸ばし座るその居住まいは、紛れもなく剣術の。

呼吸を整え、肩の力を抜き。
大刀の柄に、指を掛ける。

川 ゚ -゚)「――」

正座から。
右膝を立て、膝行の姿勢に移る。

その腰の動きに合わせて刀を鞘走らせ。
右上へ、斬り上げの逆袈裟。

止まらずに右足を引き付け、左足を出しながら袈裟に斬り下ろす。
更に半歩引き、切っ先を返して、突き。

一連の動作に、澱みはなく。
ゆるりとした動きでありながら、太刀筋は揺れていない。

体の裁きを確かめるように。
正座から、あるいは立ち上がり。
刀を振り、そしてまた収める。

川 ゚ -゚)「……ふむ」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:31:27.58 ID:I312D4Bc0
身体に馴染んだ剣術の型。
時間をかけ、幾度も繰り返す。

ζ(゚ー゚*ζ「……」

そのクーの様を、デレは暫く黙って見つめていたが。
刀を収めたクーに、声をかけた。

ζ(゚ー゚*ζ「姫さま。この牧場のこと……どう思われますか?」

川 ゚ -゚)「まだ、何とも言えんな」

ζ(゚ー゚;ζ「わたし、不安です。
       なんか、あまり歓迎されてそうじゃないし」

川 ゚ -゚)「新入りの、しかも異国の女だ。無理もあるまい」

ζ(゚−゚;ζ「それはそうですけど。
       それにあの、モララーさんも……」

二人は、ギコとの会話までは聞いていない。
だが当然、良い印象はない。

川 ゚ -゚)「ああいう手合いは、どこにでもいる」

ζ(゚、゚*ζ「むー……」

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:34:33.80 ID:I312D4Bc0
川 ゚ -゚)「私には私の目的がある。ここの事情に深入りする気はない」

少し表情を緩め、クー。

川 ゚ ー゚)「気になどせんよ。お前も、あまり気に病むな」

ζ(゚−゚*ζ「……はい。そう、ですよね」

と。

デレが腰掛ける、柵のすぐ隣に。
革のジャケットに包まれた両腕が置かれた。

(   )「へえ……面白えこと、やってんじゃねえか」

ζ(゚ー゚;ζ「あ……!」

隣を見たデレ、目を見開く。

(,,゚Д゚)「早起きってな、してみるもんだな。
     ――で、何して遊んでやがる?」

ギコ、頭を掻き掻き。
薄く笑って、クーを指差した。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:36:10.79 ID:I312D4Bc0
川 ゚ -゚)「遊んでいる訳ではない。刀の稽古だ」

(,,゚Д゚)「そいつは"カタナ"ってのか?」

柵をまたぎ、クーに歩み寄る。

(,,゚Д゚)「ま、呼び方は何でもいいけどよ。
     オレが分かるのは、その得物が"あいつ"と同じもの、ってぐれえだな」

その顔は、もう笑っていない。

川 ゚ -゚)「……"笑い男"か」

(,,゚Д゚)「大した奴だぜ。"梟"の奴とつるんで、好き放題やってくれやがる」

ζ(゚ー゚*ζ「フクロウさん……ですか?」

(,,゚Д゚)「狙撃手だよ」

短く答える。

(,,-Д-)「暗かろうが遠かろうが、狙いを外しちゃくれねえ。
     さんざ痛い目見させられて、こっちは奴の顔も見れちゃいねえ」

川 ゚ -゚)「それで、"梟"か」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:41:35.85 ID:I312D4Bc0
(,,゚Д゚)「ああ。遠けりゃ狙い撃ち、バラけて近寄りゃ"カタナ"で滅多打ちだ」

忌々しげに、吐き捨て。
拾い上げた石を、投げるギコ。

(,,-Д-)「"笑い男"に指を落とされた奴もいりゃ、両脚をヘシ折られた奴もいる」

川 ゚ -゚)「指に、足、か」

相対するギコを見る、クー。
内藤の太刀筋は、容易に想像が付いた。

(,,-Д-)「銃が、剣に負けるなんてよ……悪い夢みてえだよ。
     目の前で仲間がやられんのを見ても納得いかねえぜ」

川  - )「……」

クー、目を閉じ、顔を伏せる。
内藤の動き、剣捌き。それを回想する。



――内藤の強さは、第一にその人並み外れた脚力。
   そして西川流剣術の強さは、その内藤が用いてこそ真に発揮される。




66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:47:02.54 ID:I312D4Bc0
遠い間合いから走り込んでの斬撃。
剣術を学ばぬ人間には、影を捉えることすらできまい。

川 ゚ -゚)「……ふむ」

狙撃で浮足立った敵に、回り込み。
その脚力でもって走り抜けながら打ち込む。

雇われのガンマンに、命懸けで戦いに挑む覚悟は薄い。
銃を奪えばそれだけで無力化できる。

(,,゚Д゚)「で、だ。お前ら、一体何もんだ?
     あの"笑い男"となんか関係でもあんのか?」

疑っている、とまでは行かない。
しかし油断のない、ギコの眼光。
それを流し、クー、答える。

川 ゚ -゚)「"笑い男"――内藤。
     私たちは、奴を追ってここに来た」



――保安官ジョルジュにも話した、身の上。
   かいつまんで、それを説明する。




68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:51:53.08 ID:I312D4Bc0
(,,-Д-)「ふん……敵の敵は味方、ってとこか。
     裏切る気はねえ、そう思っていいんだな?」

川 ゚ -゚)「そう信じられるならな」

だが、ギコ。
一瞬の迷いもなく、答える。

(,,゚Д゚)「信じるさ」

川 ゚ -゚)「物分かりが良いのだな」

(,,゚Д゚)「お前はオレの子分だぜ。親分は子分を信じるモンだろ?」

それを聞いて、クー、微笑む。

(,,^Д^)「ま、裏切ったらその場でブッ殺すしな。それはそれで問題ねえ」

ギコも笑い、そしてあっさりと言う。

ζ(゚ー゚;ζ「ひええ。この人、怖い……」

川 ゚ ー゚)「いや、気に入った。
     阿呆揃いかと思っていたが、まんざらでもない」

ζ(゚−゚;ζ「えー……」

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:55:04.08 ID:I312D4Bc0
(,,゚Д゚)「へッ、言ってくれるぜ。否定はしねえがな」

腰のガンベルトを外し。
草地に腰掛ける、ギコ。

(,,-Д-)「若造に金でつられて、悪党どもが命がけで地ならしだ。
     どう考えてもアホだろ? 笑っちまうぜ」

拳銃を取り出し、日光にかざす。
空の弾倉と、銃身の具合を確かめた。

その拳銃は、クーのコルトS.A.A.よりも長大。
細部は似ているものの、銃身は肉厚で、無骨。

今では古く、主流の型式ではない。
その長大さと2kg近い重量から、本来は腰に差す銃ですらない。

それは"龍"の名を冠する、シングル・アクション・アーミーの始祖。
コルトM48、ドラグーン。

(,,゚Д゚)「下らねえぜ……アホに死ぬまで付き合うってな」

不意に、呟く。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:58:26.69 ID:I312D4Bc0
(,,-Д-)「それこそ、死ぬほどな」

自虐か。それとも、牧場主に対する揶揄か。
或いは、それ以外の何かか。

川 ゚ -゚)「……」

それを判断する術は、今はない。

遠くの丘に、狙いを付け。
ギコ、拳銃のトリガーを引く。

ハンマーが空のシリンダーに落ち。
かちり、と、金属音を鳴らした。





                                             - 3rd Lesson : 終


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