( ^ω^)荒野のサムライ×ガンマンのようです


4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/19(土) 23:42:42.56 ID:2NE4NArP0





               ( ^ω^)荒野のサムライ×ガンマンのようです

                      2nd Lesson : 捜索者たち






5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/19(土) 23:46:00.35 ID:2NE4NArP0

――セント・ジョーンズ・シティ。
   宿屋"バギマ"。



日も沈み、夜。

狭い室内には二つのベッド。
テーブルにはランプの灯。他には、何もない。

質素な。
いや、貧しい木造の部屋で。

川 ゚ -゚)「なあ、デレ」

ζ(゚ー゚*ζ「はい、姫さま」

川 ゚ -゚)「だから"姫"はやめろと言っている。ここでは、私は姫ではない」

親しい者にしか察することができないほどのかすかな苛立ち。
それに気づいているであろうデレ、それでもすまし顔で答える。

ζ(^ー^*ζ「いいえ。姫さまは、いつでもわたしの姫さまですよ?」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/19(土) 23:49:13.71 ID:2NE4NArP0

川 ゚ -゚)「……もう、いい。
     風呂を使いたい。焚け」

ζ(^ー^*ζ「はい。それもムリです」

川 ゚ -゚)「なぜだ」

ζ(゚ー゚*ζ「だってこの宿、お風呂ないですし」

川  - )「……」

ζ(゚ー゚*ζ「それに、お水は貴重品です。
       お風呂のためだけに、たくさんは買えませんよ?」

クー、僅かにすねた面持ちで。
固いベッドに腰を下ろす。



――西部の夜は暗く、静寂。
   時折、鳥、何者とも知れぬ獣の遠吠え。




8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/19(土) 23:51:45.91 ID:2NE4NArP0
川 ゚ -゚)「分かったよ。言ってみただけだ。
     風呂など面倒なだけだと思ったが、ここまで入れんとなると堪える」

ζ(゚−゚*ζ「わたしは、お食事の方が困りますよ。
       パンとかいうぱさぱさのかたまりと、あとはお豆ばっかり」

木椅子に後ろ前にまたがり、デレ。
座ったそれをがたがたと揺らして、遊ぶ。

ζ(゚、゚*ζ「あーあ。白いご飯とお味噌汁が恋しいなあ……」

川 ゚ -゚)「お前、それを言うのは何度目だ。
     しつこいぞ。私だって我慢しているというのに」

ζ(゚ー゚*ζ「えー……姫さまだって、お風呂の話ばっかりじゃないですか。
       私だって、我慢してるのになあ」

手持ちぶさたに、足を揺らす。
きぃきぃ、と床が鳴る。

川 ゚ -゚)「私はいいんだ。
     それよりお前、私の側仕えだろ。何とかしろ」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/19(土) 23:53:46.74 ID:2NE4NArP0
ζ(^ー^*ζ「はいはい、分かりました分かりました。
        じゃあおあいこですから、両方とも我慢するってコトで」

川 ゚ -゚)「……。
     ……分かった」

宿に泊まるたびに、この会話。
もはや、何度目とも知れない。

ζ(゚ー゚*ζ「明日は、もう発たれますか?」

川 ゚ -゚)「そうだな。保安官とやらに会える保証もない。
     知っているとも限らんしな」

ζ(゚ー゚*ζ「次は、もっと西に?」

川 ゚ -゚)「ああ。今度は、鉄道沿いに出ようと思う」

言い、クーは立ち上がる。
壁に掛けられた地図。
手書きで書き加えられた鉄道の路線を指でなぞる。

近年敷設が進む鉄道は。
徐々にその路線を大陸の内側に伸ばしていた。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/19(土) 23:57:04.52 ID:2NE4NArP0
川 ゚ -゚)「人の行き来が活発な場所なら、情報もあるだろう」

ζ(゚ー゚*ζ「では、明日も早いですね。
       そろそろ、お休みの準備をしましょうか」

川 ゚ -゚)「うむ」

ベストを脱ぎ、ベッドに放る。
ジャケットとスカーフは椅子の背に掛かっている。

ζ(゚ー゚*ζ「お身体、拭いて差し上げますね。
       お水を貰ってきますから、待っててください」

川 ゚ -゚)「ああ。頼む」

鷹揚に頷く、この辺り。
言うな、と言う割には、しっかり姫の振舞いである。



――と。




14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 00:00:56.22 ID:Ksuv2js+0
(   )「――おぉ、いいねぇ。
     それ、オレも見学させてもらっていいかい?」

入り口のドアの陰。
そこから、聞き鳴れぬ男の、声。

川 ゚ -゚)「……」

腰の銃は、寝る直前まで外さない習慣。
抜き放ち、ドアにぴたりと狙いを付ける。

(   )「どうだい?
     何なら、最初っから最後まで任せてくれても、構わねえけどよ」

川 ゚ -゚)「品性下劣はこの街の流行か。
     明日と言わず、今すぐ発ちたくなったな」

うんざり、といった様子で。
ぼやく、クー。

ζ(゚ー゚#ζ「何者ですか! 姿を現しなさいッ!!」

(   )「おッと――失礼。
      何分、シャイなもんでね」

ぎぃ――。
ドアがきしみ開く。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 00:05:20.48 ID:Ksuv2js+0


  _
( ゚∀゚)「よッ、可愛いプリンセスさまご一行。
     初めまして、だな」



糊のきいた三つ揃え。襟の高い、ボタンダウンのシャツ。
磨かれたブーツのつま先がランプの光を反射する。

――その胸には、六芒星の金属バッジ。
   まごうかたなき、保安官の印。
  _
( ゚∀゚)「話は、バカどもから聞いたぜ。
     まずは、感謝を」

大きな指輪をはめた指で、帽子をつまみ一礼。
  _
( -∀-)「クソバカどもの鼻ッ柱をへし折ってくれてありがとよ、ってな」

川 ゚ -゚)「感謝など要らん。貴様のためにやったことではない。
     だが、それ以前に――」

音を立て、コルトS.A.A.のハンマーを起こす。

川 ゚ -゚)「――保安官だろうが将軍だろうが、名乗りもせん無礼者と会話する気はない」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 00:08:48.11 ID:Ksuv2js+0
素っ気ない返答。
法の権力など、どこ吹く風の。
  _
( ゚∀゚)「そうかい、そうかい」

帽子のつばを上げる。
  _
( ゚∀゚)「俺ぁ、ジョルジュってんだ。
     見ての通り、このセント・ジョーンズの保安官。満足かい?」

川 ゚ -゚)「……」

無言。
ハンマーを戻し、だが銃は手元に残す。
  _
( ゚∀゚)「……ふむ。ちっと鼻が低いが、カワイイじゃねえか。
     何より、身長のワリにこのおっぱいは――」

部屋着のデレの、顔、身体。シャツのボタンを外したクーの胸元。
ジョルジュ、それらを遠慮なく覗き込む。

川 ゚ -゚)「――用件を聞いている。答えろ」

無視。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 00:13:20.46 ID:Ksuv2js+0
  _
(; ゚∀゚)「……」
  _
( -∀-)「へへッ。ここまで堂々と逆らわれんのは初めてだぜ。
      保安官バッジってのは、女の前じゃ無力らしい」

軽口、ひとつ叩き。
諦めた様子で帽子を脱ぐ。

そのまま部屋に踏み込み
クーの正面のベッドに、どっかと座った。
  _
( ゚∀゚)「知りたいんだろ?
     長い荷物を持った、笑顔の男」

ζ(゚、゚;ζ「あ……!」

川 ゚ -゚)「……」

ジョルジュ、にやり、と笑い。
指を立て、続ける。
  _
( ゚∀゚)b「知ってるぜ、そいつのこと」

二人を、交互に見て。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 00:16:11.33 ID:Ksuv2js+0


  _
(  ∀゚)「そいつが、"笑い男"がどこにいるのか、教えてやるよ。
     タダで……とは、いかねえけどよ?」



ζ(゚、゚;ζ「ひ、姫さまっ」

川 ゚ -゚)「……うむ」

尊大に頷く。

川 ゚ -゚)「よかろう。話してみよ」
  _
(; ゚∀゚)「……あー……」

ジョルジュ、ぽかんと口を開けてクーの顔を見る。

泰然としてベッドに腰掛ける、異邦人の女。
顔も髪も埃に汚れ、服装はガンマンそのものの男装。

そこにはしかし、何とも言えぬ威厳が同居している。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 00:20:36.72 ID:Ksuv2js+0
その様を見て、保安官、あいまいに頷いた。
  _
(; ゚∀゚)「……ああ、わーったよ。話さしてもらうぜ」

ζ(^ー^*ζ「あら、あら。
        よかったですねえ、姫さま」

状況を理解できているのか、いないのか。
デレ、にこやかに手を叩く。
  _
( ゚∀゚)「だがよ。その前に、一つだけ聞きてぇ」

姿勢を正し、保安官。
  _
( ゚∀゚)「あんたら、何だってあの"笑い男"を探してんだ?」

ζ(゚ー゚;ζ「それは……」

言い淀むデレ。
視線を送られたクー、瞑目する。

川  - )「……あの男は」

やがて、首を振った。



川  - )「あの男は――私の全てを奪った裏切り者だ」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 00:25:38.94 ID:Ksuv2js+0
無表情で。

川  - )「私を裏切り、家宝を奪い、そして……病床の父上を見捨て。
     一人、この新大陸に逃げおおせた」

クー、立ち上がり、窓辺に寄る。
外は暗闇、今宵は月もなく。

川 ゚ -゚)「美津府藩、剣術指南役――内藤蓬莱蔵蕪薀(ないとうほうらいぞうぶうん)。
     奪われた宝は、宝刀"斑麗須執ツ雉万(はんれいすとれっちまん)"――」

窓辺の衣装箱の上に、二本の刀。
朴の木で設えられた、漆塗りの鞘の大小。

ランプの明かりを照り返すそれが、洋室の中で異彩を放つ。

木の窓枠を、握り締め。
月隠れの闇夜を、クーは仰いだ。

川  - )「――奴を探し出し、そして全てを償わせる。
     そのために……私は、ここまで来た」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 00:30:55.63 ID:Ksuv2js+0

――思い出されるのは、夏。城の、青々とした畳の臭い。
   そこに伏せる父、杉浦浪漫濘淑(すぎうらろまねすく)。



(; ФωФ)「な、内藤は……内藤は、いずこへ」

川  - )「今は、まだ。刀の行方も同じく」

杉浦、大きく咳き込む。

(; ФωФ)「……探しなど、せずとも良い。私は、お前さえ……」

川  - )「何も申されますな。今はただ、お休みめされよ」

控えるデレ、膝を揃え深々と一礼。二人を残し、クーは寝室を辞す。

(; ФωФ)「……」

(;  ω  )「あやつを、恨んではならぬ。クー、お前は……」

苦しげな、父の声。
それを背に、襖を閉じる。

川 ゚ -゚)「申し訳ありませぬ。父上――」

川# - )「――父上のお言葉といえど、それだけは聞けませぬ」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 00:35:20.61 ID:Ksuv2js+0
ζっ、-*ζ「ああ、姫さま……おいたわしや」

その背中を見、そ、と目端を拭うデレ。
  _
( -∀-)「ホライゾン……ブーン、か。
      へッ。こんなイイ女を怒らせるたぁ、罪な男だ」

ζ(゚−゚*ζ「……」
  _
( ゚∀゚)「オーケイ。事情はまあ分かった」

保安官、膝を叩き立ち上がる。
  _
( ゚∀゚)「安心したぜ。そんなら、力になってやれそうだ」

ζ(゚ー゚*ζ「本当? 姫さま――」

だが、クーは無表情のまま。
逆に問い返す。

川 ゚ -゚)「――では聞こう。
     貴様は、対価に何を望む?」
  _
( -∀-)「そうだな……」


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 00:40:16.89 ID:Ksuv2js+0
ジョルジュは二人の顔を見る。
顎に手を当て、思案顔を作った。
  _
(* ゚∀゚)b「あんたのおっぱいを一晩、好きにさせてくれるってのはどうだい?」

川 ゚ -゚)「断る」
  _
(; ゚∀゚)b「じゃ、じゃあ。そっちのコでいいや」

川 ゚ -゚)「許す」

ζ(゚д゚;ζ「許さんわッ!」
  _
( ゚∀゚)「へッ、冗談だよ、ジョーダン」

立ち上がり、襟を正すジョルジュ。
ベッドの脇、壁に貼られた地図に歩み寄った。
  _
(  ∀ )「……」
  _
( ;∀;と「異国の女の……おっぱい……。
       ……ぐすっ……」

ζ(゚ー゚;ζ「冗談じゃないじゃん!」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 00:43:37.42 ID:Ksuv2js+0
  _
( ゚∀゚)「だが、ひとつ。この先は、あんたらが話を呑むと誓ってからだ」

川 ゚ -゚)「……」

クー、無言でジョルジュを見る。
その視線には、もはや疑惑はない。
保安官のの意図を探る、眼。
  _
( ゚∀゚)「ンな目で見るなよ。話して、そのままドロンされちゃ困るだろ?」

腕を広げ、ジョルジュ。
  _
( -∀-)「何、悪い話じゃねェよ――」


  _
( ゚∀゚)「あンたらの腕を見込んで、"AA牧場"の助太刀を頼みてぇ……それが、条件だ」



川  - )「……ふむ」

川 ゚ -゚)「他に、手はない。
     その話、受けよう」

保安官。
会心の笑みを浮かべ、頷いた。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 00:47:43.17 ID:Ksuv2js+0
地図の前に立つジョルジュ、その一点を掌で叩いた。
そこはセントジョーンズの西、新大陸の中央部に近く。

広野と牧草地が、斑に広がる平野。
記された地名は、まばらだ。
  _
( ゚∀゚)「この辺りじゃ、先住民の居留地送りも一段落だ。
     鉄道も開通して、移住者の数も増えてきた」

二人は頷く。

新大陸では、白人と先住者の間で激しい戦いが続いていた。
それは、旅路の中で幾度も聞いている。
  _
( ゚∀゚)「代わりに始まったのが、身内同士のナワバリ争いさ」

拳で、地図をとん、と叩く。
  _
( ゚∀゚)「異邦人のあんたらも、事情は分かるだろ?」

川 ゚ -゚)「ああ。承知している」
  _
( -∀-)「俺たちにゃ荒野は試練でもあるが、授かりものでもある。
      "誰のものでもない"土地を切り拓くのは、まさにそう――"天命"ってヤツさ」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 00:52:53.29 ID:Ksuv2js+0
ζ(゚、゚*ζ「……」

クーの横に座ったデレ、浮かぬ顔をする。
が、言葉にまでは出さない。
  _
( ゚∀゚)「ここから二日ほど西だ。
     最近のしてきた大牧場が――ふたつ」

赤インクで囲まれた"St.Jones"。
そこから始め、地図をなぞる。
セント・ジョーンズから緩やかにカーブし、鉄道沿いをまた西へ。
  _
( ゚∀゚)「ひとつは、本題の"AA牧場"」

とん、と叩く。
地図には、"A.A.Corral"の文字。
  _
( ゚∀゚)「牧場主のモララーは若造だが、頭が切れる奴でな。
     カウボーイやら、金で抱き込んだ悪党を使って庭を広げてやがる」

川 ゚ -゚)「ここのドクオのような連中か」
  _
( ゚∀゚)「まあ、そんなトコだ。で、もうひとつが――」

さらに西を差し指す。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 00:56:55.64 ID:Ksuv2js+0
  _
( ゚∀゚)「――"シベリア超牧場"。
     詳しくは知らねェが、どうもロシアから流れてきた奴ららしい」

川 ゚ -゚)「"ろしあ"? 知らんな」
  _
( ゚∀゚)「俺も、ロシアのことは良くは知らねェよ。
     一年中雪が降ってるとか、ストーブの燃料を飲んで寒さをしのいでるとかぐれェだな」

ζ(゚ー゚*ζ「雪かぁ。蝦夷みたいなところなのかな?
       行ったことないけど」

川 ゚ -゚)「ストーブの燃料って……飲めるのか?」

めいめいに腕を組み、考え込む。
二人とも、あまり、想像の付いていない様子。
  _
( ゚∀゚)「で、だ。そのシベ超と、AA牧場だがな。
     とある街を挟んで、小競り合いが続いてる」

手を上げる。拳を作り、地図を叩いた。
西のシベリア超牧場、東のAA牧場。
その中間地点に位置する、川沿いの街――"Vippers' Creek"。
  _
( ゚∀゚)「それが、ここ。"ヴィッパーズ・クリーク"だ」

肥沃な土地と、そして水源。この二つが、争いの種となる。
大和の国でも新大陸でも、変わることのない真理だった。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 01:00:15.55 ID:Ksuv2js+0
  _
( ゚∀゚)「で、こっからが本題だ。
     この抗争……最近、ちと事情が変わってな」

地図から顔を離し。
二人の顔を、見る。
  _
( ゚∀゚)「シベ超に、凄腕の助っ人が加わったのさ」

いったん言葉を切り。
反応を確かめるように、二人を見る。

川 ゚ -゚)「……」

ζ(゚ー゚;ζ「……」
  _
( ゚∀゚)「そいつは銃を使えない。
     だが不思議なことに、どんなガンマンが束になってかかっても敵わねえんだとさ」
  _
( -∀-)「奇妙ないでたちで、見たこともねェ、サーベルみてえな刃物を使ってな。そう――」

窓辺の刀を見る。
  _
( ゚∀゚)「――ちょうど、そこにあるソイツみてぇな武器で、だ」

いつの間にか差す、月光。
刀の鍔はそれを照り返し、静かに光った。
  _
( ゚∀゚)「奇妙な姿と武器。どんな戦いでも、緊張感のねぇニヤケ面。
     付いたあだ名が、薄気味悪ィ"笑い男"――ってワケさ」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 01:03:57.43 ID:Ksuv2js+0
ζ(゚ー゚;ζ「ひ、姫さまっ」

川 ゚ -゚)「……成る程、な」

捜し求めるあの男、敵方、ということになる。
保安官、大げさに両手を上げて扇ぐ仕草。
  _
( ゚∀゚)「あんたは、"笑い男"とご対面のチャンス。
     AA牧場は助っ人を手に入れて、どっちも満足。円満解決だろ?」

川 ゚ -゚)「だが、貴様はそれで何を得る?」

なおも問うクー。
ジョルジュは指を広げ、手にはまった指輪を指し示す。
  _
( ゚∀゚)「俺が興味あんのは、カネだけさ。
     AA牧場に人を入れりゃ、仲介者のサイフが膨らむようなってる。それに――」

川 ゚ -゚)「それに?」

ジョルジュ、冗談めかして。
帽子を外し、胸に当てて頭を垂れる真似。
  _
( ゚∀゚)「これでも、愛国心は人並み以上でね。
     ロシアンに土地をブン盗られるのは、我慢ならねェのさ」

川 ゚ -゚)「得心は行くな――良かろう。案内してもらうか」
  _
( ゚∀゚)「まあ、そう焦るなって。女子供は寝る時間だぜ?」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 01:06:46.39 ID:Ksuv2js+0
デレを見て、保安官。

ζ(゚−゚#ζ「わたし、子供じゃありませんっ」
  _
( ゚∀゚)「ははッ、悪ぃな。続きは明日にしてくれや」

川 ゚ -゚)「なぜだ」
  _
( ゚∀゚)「紹介状、書いてやるよ。
     腕が立つってお墨付きでもなきゃ、女は入れねェよ。だろ?」

どちらも、はた目には少女そのものの女。その上、異邦人
初対面の人間には、「戦力」とみなされまい。

ジョルジュ、手を広げ、ぱんと叩く。
  _
( ゚∀゚)「さ、明日また来るからよ、逃げんなよな?」

ドアまで歩き、振り返る。
にやり、と笑って、言った。
  _
( ゚∀゚)b「なんなら、気変わりしねェように見張っててやろうか?
      一晩中……しっぽり、とね」

ζ(゚д゚#ζ「間に合ってますッ!!」

言い返しつつ、枕を投げるデレ。
ドアを盾にしてそれをかわし、保安官は笑いながら去って行った。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 01:09:41.92 ID:Ksuv2js+0

――深夜。



川 ゚ -゚)「……」

寝間着の身体をベッドから起こし、クーは窓を見た。
隣のベッドからは、規則正しい寝息。

川 ゚ -゚)「ようやく、か」

ようやく。
あの男に続く、道が見えた。

川 ゚ -゚)「待っていろ、内藤」

白く大きな満月。
それが、窓の外に大きく映る。

川 ゚ -゚)「……」

川  - )「……私は。
     貴様を、必ず――」



必ず――――。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 01:15:27.11 ID:Ksuv2js+0

――同時刻。
   西部、牧草地帯。



真白い月が、冴え冴えと照らす夜。
背の高い草に身を埋めるように、座り込む姿がある。

(    )「――」

濃い色の、裾の別れた馬乗袴。
小袖も同様、その姿は夜の草陰に溶け込んでいる。

草を掻き分ける、足音。
和装の男、思い出したように顔を起こし、そちらに顔を向けた。



――現れたのは、痩身、長身の男。
   裾の長いジャケットを羽織り。
   ボタンを上まで留めたシャツに、几帳面に巻いたタイ。



( ゚д゚ )「……また、寝ていたのですか。
     大した神経ですね。私も見習いたいものだ」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 01:18:59.00 ID:Ksuv2js+0
(  ω )「ん……あー……そろそろ、始まるかお?
      ミルナコフさん」

( ゚д゚ )「こちらは、位置に付いています。
     あとは、いつも通りに」

右手にはライフル銃。
そして、その肌はより白く、その瞳はより青く。

同じライフル銃が、さらに三丁。
束ねられ、その肩から提がっている。

(  ω )「気が進まないけど……やるかお」

膝を払い、腰に手を当てる。
左腰には、大小。

( ゚д゚ )「そのわりには、貴方も義理堅いものですね。
     宿代分の働きはとうに済んでいるでしょうに」

(  ω )「ん……まあ。やっぱり、どうにも――」

从 ∀从「――おいおい、てめー待ちだチビ。急げッ」

また、別の男の声が降る。
同時に、和装の男の腰を、先の尖ったブーツが小突く。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 01:21:56.16 ID:Ksuv2js+0
( ゚д゚ )「止しなさい、ハインリッヒ。人を足蹴にするものではありません」

从 ゚∀从「っせーよ。文句はこいつに言えよな」

( ゚д゚ )「全く……そろそろです。
     見えたら、私が撃つ。後は、手筈通りに」

从 ゚∀从「はいはい、りょーかい、っと」

蓬髪を掻き毟り、腰の拳銃を取り上げる。
明るい髪の色は月光で白く光って見えた。

(  ω )「……」

空を見る男。
返事は、返らない。

眉をひそめ。
ミルナ、再度同胞を呼ぶ。

( ゚д゚ )「よろしいですか? ――ナイトウ」



( ^ω^)「ん――承知だお。始めてくれお」



56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 01:24:20.21 ID:Ksuv2js+0
内藤、応えて膝に手を置き、立ち上がる。
草を衣にまとわりつかせたまま、軽く腕を伸ばし、ほぐす。

( ^ω^)「……」

再び、黙し。
月を見上げ、目を細めた。

( ^ω^)「綺麗な、月だお」



――まさに、この時。
   二人、同じ月を見上げようとは、互いに知る由もなく。



――程なくして。
   銃声は夜空に響き、悲鳴と怒号が後に続き。
   青々とした草地に、男達の血が滴る顛末と、相成った。




57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 01:26:44.05 ID:Ksuv2js+0

――翌朝。
   セント・ジョーンズ・シティ、街外れ。



川 ゚ -゚)「世話になったな。礼を言う」

ζ(゚−゚*ζ「イヤらしいのさえなければ……ですけど」

葦毛の馬に乗る、クー。
その後ろでは大荷物を抱え、デレ。

馬の鞍には、革の紐が結び付けられ。
そこに大小の刀が一揃い、通されている。
  _
( ゚∀゚)「礼にはおよばねェよ。あっさり死なねェで頑張ってきな」

気障な仕草で片手を上げ、保安官。
くわえた煙草から煙が薄く細く、風下に流れる。

川 ゚ -゚)「言われるまでもない。
     では、さらばだ」

片手で手綱を繰り、馬首を、街の外。
地肌の広がる荒野に巡らせた。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/20(日) 01:29:57.24 ID:Ksuv2js+0



――二人を乗せた馬は、街門をくぐり歩きだす。
   目指すは、AA牧場。


  _
( ゚∀゚)「……へっ」

それを見送り、保安官。
ちびた煙草を、投げ捨てた。

土埃に早くも霞む、その馬の背を眺め。
  _
( -∀-)「頑張ってくれや――期待してるぜ?
      お前らの働きっぷりにゃあ、な」



                                             - Lesson 2 : 終


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