( ^ω^)は荒野の腹パニストのようです
- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 22:05:01.14 ID:L9d278rf0
「ねぇ、ししょー」
「…………」
「ねぇってば!」
「…………」
「もーっ!耳ついてるでしょー!?ぬー!!」
「なんだ、耳は見た通りついているぞ」
「でしょー!?」
「ああ」
「で、だ!ほらほらあそこ!」
「また何か動物か?」
「オレも最初は動物かと思ったんだ、でもあれは人だよ!」
「……人、ね」
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 22:10:43.01 ID:L9d278rf0
「ねぇねぇ。あれどんな人かな?商人さんかな?村の人かな??アヤシイ人かな??」
「…………」
「それとも旅の人かな!?そうだったらオレ、色んな話聞きたいなー!」
「…………」
「ねー!!ししょー!!聞いてる!?」
「ピーピー喚くんじゃねぇ、黙ってな。つー」
「何さ!」
「そんなに騒ぐとあいつらが俺達に気づいちまうだろ?何のための見張りだ」
「あ!!」
とある村の郊外にある、木よりも大きな岩の上の2人。
男は岩肌に寝そべり長い銃身を荒野へ向け、鋭い眼差しで全てを見据え、じっと時を待つ。
そんな男を尊敬と期待と憧れの混じった眼差しで子どもは見つめる。
男は何かを発見すると、咥えた煙草に火をつけ、大きく煙を吐き出した。
煙が白髪混じりの髪へふりかかり、一層白く見える。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 22:15:04.81 ID:L9d278rf0
「えふっえふ!」
幼い肺に侵入した煙を拒絶し、子どもが抑えた声で抗議する。
「ししょー!」
「なんだ」
「タバコのケムリ!」
「それがどうした」
「ケムたい!!」
「お前がここにいるのが悪いんだろう?」
視線も向けずにそう言い放つ男をしかめっ面で睨みつける子ども。
お構いなしに再び煙を吐き出す男。
男の視線の先には、植物の点在した荒野に自然に作られた道を歩く2つの影。
「ふむ……」
「ししょー?」
「……商人って風貌じゃねぇな。少し隠れてな」
期待の感情を顔に一瞬見せてから、子どもはさっと器用に岩の窪みに身を潜めた。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 22:18:17.57 ID:L9d278rf0
_、_
( ,_ノ` )y━・~「さぁて。どう転んでくれるか……?」
第六話「一度だけ」
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 22:21:58.53 ID:L9d278rf0
‐‐‐−−−―――━━━
ξ;゚听)ξ「ひー」
登った丘から見える広大な風景を見て、ツンが裏返った声で啼いた。
( ^ω^)「ひーじゃないお。ひーじゃ」
ξ;゚听)ξ「歩けど歩けど荒れた土地……申し訳程度に生えてる雑草が逆に鬱陶しいわ」
ξ;゚听)ξ「どうせなら生えんな! みたいな」
( ^ω^)「まあ非常食として活用できるからそう言うなお」
ξ;--)ξ「ひー」
ツンがぐいとビンを傾け水を口に流し込み、残り少ない生命線をさらに少なくした。
あのオアシスを発って以来踏みしめるものが歩き応えのない砂から、
叩けば音が返ってくる固く、しかしどこかもろい地面に変わっていた。
遠くには赤茶けた山々、崖、起伏の激しい丘。
荒廃した大地が手荒くお出迎えしてくれている。
自然の出迎えに流されつつ、俺達は今まで人々が踏みしめて出来た道をただひたすら歩く。
休憩の数が増えたのは言うまでもない。もうツンのギブ宣言には慣れた。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 22:25:16.16 ID:L9d278rf0
これまでの旅でソウサク大陸にワンパニストはいないと確信し、
それならともう一つの大陸である、ヴィップ大陸を目指して港へ歩みを進めている。
ξ゚−゚)ξ「ねぇブーン、ほんとに行くの?」
( ^ω^)「……」
ξ゚−゚)ξ「私達の目的には何も関係ないわけだし、わざわざ危ない目に遭わなくとも……」
段になった地面に座り、草を指で弄りながらツンが言った。
( ^ω^)「面白そうな場所には行きたがるくせに、危ない噂には飛びつかないんだお?」
ξ゚听)ξ「当然!死にたくないもの!」
( ^ω^)「さいですか」
昨日の夕方に挫いた足が今朝には治っていたツン。
はたしてそんな化物のような女が死ぬことはあるのだろうか、なんて思った。
"神の目"。
俺達は途中立ち寄った街で数々の賊情報の中に、そんな異名を持つオッサンの噂を聞いた。
なんでも、点でしか視えないような遠くの物ですら撃ち抜く、凄腕の銃使いらしい。
今はその能力を活かしてとある村を守っていると語られた。
そして俺は猛烈にその男に会ってみたい衝動に駆られたのだ。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 22:29:07.94 ID:L9d278rf0
今の俺ではワンパニストに勝つ自分という、漠然としたイメージですら描けない。
だから少しでも多く強者と出会い知を吸収し、経験を得て"世界"での俺の位置を見定める必要があると思った。
自分で"世界"を歩き、自分で"世界"を広げるしかない。
いつかツンに眠る情報を引き出した後に待ち受ける奴との死闘に備え、俺にできそうなのはそんなところなのだ。
ξ--)ξ「あんたって見かけより物知りだけどそれ以上に馬鹿よね」
( ^ω^)「褒めるかけなすかどっちか一つにしろお」
ξ゚听)ξ「この馬鹿」
( ^ω^)「けなす方選びやがったお」
ξ゚听)ξ「有無を言わさず撃たれたらどうすんのさ?」
( ^ω^)「その時はその時、避ける」
_,
ξ゚听)ξ「…………そう」
( ^ω^)「そんな肉にされる牛を見る眼で俺を見るなお」
_,
ξ゚听)ξ「あんた一回死んだ方がいいかもしれないわ」
おもむろに残りのツンの水を惜しみなく飲んでやると、
紅潮した顔から飛び出た鋭い叫びが渇いた空気を切り裂いた。
ざまぁ。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 22:33:32.74 ID:L9d278rf0
陽が傾き始めた頃。
代わり映えのしない風景が続いた荒野に、明らかに異質な、反り立った壁のような岩があった。
地面と同じく存在感のない茶色をしたその巨大な岩壁は、
続くまだら模様の山の威圧感も相まって、何か秘密を囲っているようにも見える。
ξ゚−゚)ξ「……ブーン、あれがそうなのかしら?」
( ^ω^)「ああ。聞いた通りの無骨な自然の壁。十中八九その通りだお」
その内側に秘めた物こそ、俺が目指していた村だ。
ξ゚−゚)ξ「何と言うか、噂通りねぇ」
ξ゚听)ξ「人を寄せ付けない感じと言うか、部外者お断りみたいな」
( ^ω^)「ふむ……丁度陽も暮れてきたことだお」
( ^ω^)「とりあえずちゃっちゃと辿りついて宿でも確保するお」
ξ;--)ξ「どーか、近づいたら問答無用で殺されませんように……」
ツンが大げさに手を合わせて願う。
"世界が世界として機能していた時代"の宗教が廃れてしまったこの世界なら、
案外暇な神が願いを聞き入れてくれるかもしれない。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 22:37:09.89 ID:L9d278rf0
「止まりな」
ふいに前方・上空から声が聞こえた。
低く落ちついた、しかし通る声。
ξ;゚听)ξ「な、なになに!?止まった!止まったわよ!!」
( ^ω^)「誰だお」
慌てふためくツンを背に隠し、声の主と対峙しようと徐々に視線をあげる。
道の先の脇に鎮座している剥き出しの岩の上から何かがこちらを覗いていた。
顔は見えない。こちらを覗いているのは銃口だから。
「それ以上進むと俺の銃が火を吹く事になっちまう」
男はこちらに銃口を向けたまま、膝立て姿勢で起き上がった。
顔には長い年月を生きてきた証拠が刻まれている。
_、_
( ,_ノ` )「まだ、この世の砂の混じった空気を堪能し足りないだろう?」
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 22:41:00.31 ID:L9d278rf0
ξ;゚听)ξ「あわわわわわゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサ」
( ^ω^)「質問に答えるお。お前は誰だお?」
ツンの謎の謝罪を断ち切るように、細目で特徴的な鼻立ちをした男に問いかける。
_、_
( ,_ノ` )「……男、こいつが何かわかるか?」
( ^ω^)「銃だお。 それも拳銃とは違う、そこからでも確実に俺を狙い殺せる、遠距離射撃型の」
_、_
( ,_ノ` )「…………クッ」
男が口の端を上げて笑った。
奴が構えている、夕日に照らされた長い銃身の凶器は決して綺麗には見えなかった。
_、_
( ,_ノ` )「ご明察、俺が引き金を引いちまえばお前さんと後ろの嬢ちゃんを殺せる」
_、_
( ,_ノ` )「ならば優位な立場である、俺の質問が優先されるのが道理だろう?」
ξ;--)ξ「どどど道理ですぅ道理ですぅ」
(;^ω^)「ツンちょっと黙ってろお」
_、_
( ,_ノ` )「何をしに来た。そんな少ない商品引っ提げて、商売しにきたわけではあるまい?」
じろり、と薄く開かれた瞼から覗く瞳。
俺は奴を見上げる形ではあるが、そう遠くない距離。
少し濁った目。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 22:44:50.51 ID:L9d278rf0
( ^ω^)「その通り、俺達は商人じゃないお」
_、_
( ,_ノ` )「ならば――― 賊、か?」
それまでも張りつめた空気ではあったが、"賊"という単語を出した途端、
唐突に明確な殺意を真正面からぶつけられ、少し怯んだ。
しかし呑みこまれるわけにはいかない。何も怯むことはない。俺は賊ではないのだから。
( ^ω^)「待て。立場はお前が優位ではあるが、問答に関しては同等だお。今度は俺の番だお」
_、_
( ,_ノ` )「……」
( ^ω^)「お前は誰だお?」
_、_
( ,_ノ` )
( ^ω^)
ξ;゚听)ξ
背中で縮こまっていたツンがぶるりと身震いした。
冷たい風が時間の経過を報せる。
_、_
( ,_ノ` )「――― 俺は」
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 22:49:12.64 ID:L9d278rf0
( ^ω^)「 "神の目"。」
_、_
( ,_ノ` )
_、_
( ,_ノ` )y━・「ふん……」
_、
( ,)━・
_、_
( ,_ノ` )y━・~~
( ^ω^)「どうだお?」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「……相手を知り、銃を向けられてなおその態度とは、肝の据わった男だ……!」
可笑しそうに口元を歪める。
_、_
( ,_ノ` )y━・~「そうだ、俺は"神の目"シブサワ。この村を守る者だ」
シブサワと名乗った男は銃を下ろし、タバコの煙を燻らせた。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 22:53:50.69 ID:L9d278rf0
ξ;゚ヮ゚)ξ「あ、あのぉ、私達、別に怪しいもんじゃ……」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「怪しい奴に限ってそう言うもんさ、お嬢さんよ」
ξ;゚ヮ゚)ξ「ですよねー」
( ^ω^)「俺はブーン、こいつはツン。訳あって共に旅をしているお」
ξ;゚ー゚)ξ「そう、それ!旅人よ!」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「……嘘ではなさそうだな」
ξ゚听)ξ「こんな善良そうな女の子捕まえて何言ってるのよ!」
銃を向けられていないのを良いことにむちゃくちゃ言いやがる。
この状況では腹パンできるほどの近距離戦に持ち込むことはまず不可能だろう。
俺に壁を駆け登る程の曲芸ができれば話は別だが、流石に無理だ。
故にシブサワが早まって撃ってくるようなせっかちな男じゃなくて助かった、というのが本音だ。
話せば分かり合えるものだ、うん。
_、_
(;,_ノ` )y━・~「あ、おい、おま」
と、突然シブサワが岩上でもぞもぞと動き始めた。
必死に何かを抑え込んでいるような動きを繰り返し、果てには黄色い声が上げられた。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 22:57:57.46 ID:L9d278rf0
(*゚∀゚)「旅人!?旅人さん!?わぁ、強そうな男の人ときれーな女の人だ!!」
_、_
(;,_ノ` )y━・~「つー、落ちつけ!危ないから、おい」
少年とも少女ともとれる顔の子どもが興奮気味にひょこっと顔を出した。
少し前まで殺気漂う荒野だったが、子どもの喧騒に場を奪われ今やそんな雰囲気はない。
(*>∀<)「今日はこの村に泊まるの!?泊まるんならウチおいで!!ししょーと2人だとタイクツなんだ!!」
_、_
(;,_ノ` )y━・~「何俺に失礼なこと言ってんだお前!追い出すぞ!」
(*゚∀゚)「何さ!元はオレの家だったじゃない!追い出されるのはししょーの方さ!」
_、_
(;,_ノ` )y━・~「た、確かにそれはそうだが」
(*゚∀゚)「いーじゃないのさ!!泊めてあげるよ!旅のお話聞かせてよー!ねー!」
_、_
(;,_ノ` )y━・~「ぬ、ぬぅ……」
おっさんのしかめっ面ほど面白くないものはない。
つーと呼ばれた子どもは、おっさんと俺達とを交互に見ながら活き活きと説得を続けている。
( ^ω^)「……なんかよくわからんがシブサワが劣勢らしいお」
ξ゚听)ξ「みたいね」
ξ゚ー゚)ξ「そして、なんだかよくわからないけど早くも今日の宿が決まりそうね」
( ^ω^)「だお」
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 23:02:14.80 ID:L9d278rf0
(*゚ロ゚)「あ?」
突如、つーがすっとんきょうな声を上げて不可解なポーズをとる。
_、_
( ,_ノ゚ )y━ 「あ」
・~
シブサワの細目が見開かれた。
ξ゚□゚)ξ「あ」
子ども故のせわしなさが原因といったところか。
つーが体勢を崩し、岩から落ちたのだ。
あの高さじゃ、落ちたら助からないだろう。まだ小さいのに、可哀そうに……
(;^ω^)「とか思ってる場合じゃねぇお!!」
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 23:07:37.69 ID:L9d278rf0
事態を把握するまで、誰もが口をぽかんとあけたように思う。
三段跳びの要領で駆け出し、落ちるつーの落下予想地点へ飛び込む。
腕の中への軽い衝撃の後、砂煙を撒き起こして俺は地面に着地した。
(*゚ロ゚)「あぎゃっ!?」
つーはぱちぱちと瞬きを繰り返した。
下から見るより小さな体はさらに驚愕に身を縮こまらせ、すっぽりと収まっている。
そして大きな目をくりくり動かし事態の把握。案外長いまつげだ。
_、_
(;,_ノ` )y━「…………ぶはぁ〜〜〜〜〜…………心臓に悪い、俺が死ぬかと思ったぜ」
お前は死にはしないだろ。
まあ、何にせよ。
(;´ω`)「…………危なかったお」
‐‐‐−−−―――━━━
そうして日も沈んだ頃、まばらに灯りの見える村の中へと案内された。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 23:11:20.92 ID:L9d278rf0
彼らの家は入り口に近い部分にあり、村の全貌はわからなかったが、
村の周囲は反り立った崖に囲まれている……というか崖に囲まれた狭い場所に村を作ったらしい。
賊が攻め入ろうにも、攻め入る場所は入り口の一点しかなく、そこさえ守っていれば難攻不落。
そんな場所の見張りを1人で任されていたことからも、あの男の噂通りの実力がうかがえる。
質素な木造作りの二階建てがシブサワの家(正しくはつーの家らしい)である。
_、_
( ,_ノ` )y━・~「いや、本当にすまなかった、恩にきる」
つーを助けた礼を、つーが慣れた手つきで四人分の飯を作ってる時、
全員で小さなコックの作った美味い飯を食ってる時、
飯を食い終わって果物をつつきながらのんびりしてる時に思い出したように言われた。
落ちた張本人のつーもその度に慌ててぺこぺこと頭を下げてきて、俺は逆に居心地が悪かった。
(;^ω^)「いや、だからもういいって言ってるお」
ξ゚听)ξ「そうそうブーンに礼なんてもったいないわ」
( ^ω^)「それはどうかと思うお」
(*゚∀゚)「そーそー、せっかくのオレの飯がゲロまずくなっちまうぜー!」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「誰のせいだと……というかなんだその言葉は」
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 23:14:37.48 ID:L9d278rf0
(*゚∀゚)「まーな。オレだって日々勉強してんだ!」
へへん、とつーが胸を張る。
見た感じではまだ10歳越えたか越えてないか、といったところだろう。
( ^ω^)「健やかに育つといいお」
ξ゚ー゚)ξ「それが一番ね」
(*゚∀゚)「健やかに育つぞー!」
つーが机の上に残っていたパスタを一気に自分の皿へ盛った。
(*゚∀゚)「へへー、うまい!オレの飯!」
ξ゚ー゚)ξ「ねー。すごいねつーちゃん、このトマトパスタすっごいおいしいよ」
( ^ω^)「確実にツンよりうまい」
ξ゚听)ξ「ふんっ」
(;^ω^)「いでっ!足踏むな!事実を言ったまでだお!」
(*゚∀゚)「……ツンちゃん、よかったら料理、教えようか?」
おずおずとつーがツンに提案した。
思わず噴き出しそうになった。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 23:19:33.05 ID:L9d278rf0
ξ゚听)ξ
ξ゚ー゚)ξ「よ、よろしくお願いしようかしら」
(*゚∀゚)「うん!」
一瞬ツンの笑顔が凍ったのを俺は見逃さなかった。
子どもに同情されるのは子ども好きなツンも流石に堪えたらしい。
_、_
(*,_ノ` )y━・~「俺と出会った頃はまだ全然料理もできなかったくせによ」
_、_
(*,_ノ` )y━・~「いつの間にかうめぇ飯を作りやがる」
_、_
(*,_ノ` )y━・~「子どもってのは気づかねぇうちに随分とでかくなるもんだな……」
突然語り始めたシブサワを見ると、手に酒瓶を持っていた。
岩場で見かけたシブサワは"神の目"と称されるのもわかるほどのプレッシャーを放っていたが、
今のシブサワが放つのはただのアルコール臭。ただのオッサンである。
(*;゚∀゚)「げ、ししょーは酒飲むと、いっつもカラミザケなんだよ!」
つーが顔を真っ赤にしたシブサワを見てパスタをかっこむ。
酒瓶は半分くらいしか空いておらず、それなのに顔が真っ赤ということはシブサワは酒に弱いようだ。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 23:25:10.47 ID:L9d278rf0
(*゚∀゚)「ツンちゃん、オレの部屋で旅の話聞かせてよ!」
ξ゚ー゚)ξ「ええ、いいわよ。期待に添えられる楽しい話ができればいいけど」
(*>∀<)「ヤッター!」
素早く飯を食って、つーが体よく逃げ道を作りだした。
目の前のオッサンの酒癖の悪さを暴露された後だ、これに乗る他あるまい。
( ^ω^)「あ、じゃあ俺も話してやるお。俺の話は長いお〜?」
(*゚∀゚)「ブーンはししょーの面倒見ね!」
( ^ω^)「うそん」
_,
ξ゚ー゚)ξ
ツンがざまぁみろと言わんばかりの憎たらしい笑みを向けた。クソが。
_、_
(*,_ノ` )y━・~「まあまあお前さんも飲め、ブーン。"神の目"の話なんざ滅多に聞けないぜ?」
( ^ω^)「うそん」
( ^ω^)「というか自画自賛すんなお、酔っ払い」
ぱたぱたと去っていく足音の中に、グラスに液体が注がれる音が入り混じる。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 23:29:18.75 ID:L9d278rf0
━━━―――−−−‐‐‐
(*゚∀゚)「ん?オレとししょーがどうして一緒に暮らしてるのかって?」
くすんだ赤色の絨毯、ピカピカに磨かれた鳥をかたどった金属の小物、散らばる子ども服。
二階の部屋はどうやらつーちゃんの部屋らしい。
部屋の椅子に腰かけ、私のこれまでの旅の話をしてあげる前に気になったことを聞いてみた。
いい歳をしたシブサワを"ししょー"と呼ぶからには親子というわけではあるまいが、
親子でないなら2人の関係が良く分からない。
(*゚∀゚)「んーっとね、オレがししょーを拾ったんだ!」
ξ゚−゚)ξ「……拾った?」
(*゚∀゚)「うん!拾った!」
一瞬路地裏でうずくまる犬耳のシブサワを想像したが、気持ちが悪かったのでなかったことにした。
(*゚∀゚)「んーとね、オレのかーちゃんととーちゃんは数ヶ月前に死んじゃってるん」
ξ゚−゚)ξ「あら……」
重い内容をあっけからんと話すつーに少し驚いた。
もう悲しみはふっきれた、ということなのだろうか。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 23:32:04.46 ID:L9d278rf0
(*゚∀゚)「その後すぐにししょーが家の前でたおれてたんだ!」
ξ゚听)ξ「生き倒れねぇ……なんかしっくりくるわ」
"神の目"の蓋を開けて見れば、ただのおっさんだったことを思い返す。
(*゚∀゚)「ししょーは"神の目"って呼ばれるくらいすごーい銃使いなんだよ!」
ニコニコしながらつーちゃんが話す。
(*゚∀゚)「この村の奥にこんもりした山があるの、知ってる?」
ξ゚听)ξ「ええ。おっきいわねぇ、あれ」
(*゚∀゚)「あの山はキンゾクがサイクツできる鉱山で、すっごい賢い人がそれ使って銃の弾作ってるんだ!」
(*゚∀゚)「その弾を使ってししょーが悪人退治!」
銃を構えて引き金を引く動作を大げさにして見せる。
(*゚∀゚)「すごいんだよぉ!神の目だって言ってから足元パンパーン!ってうつだけでみーんな逃げちゃうの!」
ξ゚听)ξ「そういえば私も逃げようとしたわね……」
(*゚∀゚)「いつかオレも、ししょーみたいな有名で強くてすごい銃使いになりたい!」
きらきらと目を輝かせ自分の夢を語るつーは、まさに子どもそのものだ。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 23:34:48.42 ID:L9d278rf0
そういえばいつだったか、ブーンにも師匠がいたと言っていた。
ブーンと師匠もこんな風に微笑ましい関係だったのだろうか。
ξ゚ー゚)ξ「頑張ってシブサワを超えるすっごーい銃使いになるのよ?」
(*^∀^)「うん!きっとなるよー!」
つーちゃんはころころと笑った。
心の底からシブサワを尊敬し、信頼し、信用している笑顔だ。
‐‐‐−−−―――━━━
_、_
(*,_ノ` )y━・~「……と、いう風に俺は思われているだろうな」
_、_
(*,_ノ` )y━・~「百発百中、人間も一撃で死に至らしめる必殺の射撃……まあ間違いじゃあない」
シブサワが空になったグラスを手の中で弄ぶ。
言いたいことを言いだせない子どものようだ。少しシワの目立つおっさんのくせに。
_、_
(*,_ノ` )y━・~「だがな、……それは過去の俺だ。 今の俺じゃ、ない」
( ^ω^)「ふーん」
薄く切ったぱりぱりのポテトを口に運ぶ。塩が効いててうまい。
ポテトを食べる手が止まらない。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 23:38:11.00 ID:L9d278rf0
- _、_
(*,_ノ` )y━・~
( ^ω^)
_、_
(*,_ノ` )y━・~
( ^ω^)
( ^ω^)「これおいしいお」
_、_
(*,_ノ` )y━・~「別に食っててもいいから俺の話にも食いついてこいよ」
話したがりのオッサンだ。
( ^ω^)「はいはい。聞いてやるから話したいこと話せお」
( ^ω^)「いい年こいたオッサンがもやもやしてちゃ気味が悪い」
_、_
(*,_ノ` )y━・~「クッ……!なかなか辛辣なことを言いやがる」
ぐいとグラスを煽る。
飲んでみてわかったが、これはあまり強くない酒だ。
_、_
(*,_ノ` )y━・~「俺は若い頃、別の地域で賊として荒野を生きていた」
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 23:42:34.91 ID:L9d278rf0
( ^ω^)「ほう」
ただの銃の扱いに長けた男ではないとは思っていたが、そうくるか。
_、_
(*,_ノ` )y━・~「来る日も来る日も奪っては殺し、殺しては奪い……」
_、_
(*,_ノ` )y━・~「自由気ままに何も気にしない、暴力に依存すればいいだけの生活」
_、_
(*,_ノ` )y━・~「それはそれでいいものだった」
( ^ω^)「なかなかのクズだったんだな」
_、_
(*,_ノ` )y━・~「自慢じゃないが自慢になっちまうぐらいにはな」
ふふん、とシブサワが昔を懐かしむような笑みを浮かべる。
_、_
(*,_ノ` )y━・~「賊の縄張り争い、街へ奇襲、女漁り……若いというのは恐ろしいな、何でもできてしまう」
_、_
(*,_ノ` )y━・~「いつしか賊集団を転々とする俺は射撃の腕を恐れられ、"神の目"という通り名がついた」
_、_
(*,_ノ` )「ま、調子にも乗るぜ」
金属の器にタバコの火を押し付け、また酒を飲む。
酔うことで舌を饒舌にしているように思える。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 23:45:46.54 ID:L9d278rf0
- _、_
(*,_ノ` )「そのうち巨大で強大な集団を率いる賊の頭に気に入られ、引き抜かれた」
_、_
(*,_ノ` )「それからは他の賊どもと縄張り争いを繰り返す日々だ」
_、_
(*,_ノ` )「狙いを付け、引き金を引き、人を殺す」
_、_
(*,_ノ` )「シンプルだ。実に分かりやすい。生きる目的にこれ以上複雑なもんはいらねぇ」
_、_
(*,_ノ` )「そう思ってすらいた」
( ^ω^)「まあ……否定も非難もしないお」
シブサワが苦々しげに笑い、ポテトを口に放り込んだ。
塩味が効きすぎている、と小言を言った。
_、_
( ,_ノ` )「ある抗争の時、俺と同じくらいの歳の父親とその娘が巻きこまれた」
_、_
( ,_ノ` )「戦場に入った愚かな羊を、頭の命令で殺したのは他でもない。俺だ」
シブサワはコツコツ、と机を指で叩き、黙りこんだ。
やがて決心がついたのかその動きを止めた。
_、_
( ,_ノ` )「それから俺は人を殺せなくなった」
_、_
( ,_ノ` )「……"神の目"はその時死んだ」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 23:49:05.49 ID:L9d278rf0
( ^ω^)「……」
_、_
( ,_ノ` )「あの親子を殺して以来、人の脳天に狙いをつけるとどうしても照準がブレちまうんだ」
、_
( ,_ノ )「……思い出すのさ」
、_
( ,_ノ )「顔を。子を護らんとする父親の顔を。涙と鼻水でぐちゃぐちゃの子の顔を」
、_
( ,_ノ )「争い事とは無縁そうな親子だった。ちょっと遠出して遊んでいたのかもしれない」
、_
( ,_ノ )「隣の村へ遊びに行く途中だったのかもしれない、先の人生の夢を見ていたのかもしれない……」
、_
( ,_ノ )「――― 撃てなくなっちまった」
散々人を殺してきた男が、その時初めて"死"の意味を理解したのだろう。
他人の未来を自らの指が決する、大きすぎる選択肢の意味に恐れを抱いたのだろう。
"神の目"。神が人を殺す。
_、_
( ,_ノ` )「結局、抗争の途中で俺は逃げ出した。長い間彷徨い放浪し、気づけばこの村で倒れていた」
_、_
( ,_ノ` )「そして両親を亡くしたばかりで、涙の跡の絶えないつーに拾われた」
( ^ω^)「そこでつーの話と繋がるわけかお」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 23:51:44.90 ID:L9d278rf0
( ^ω^)「つーにはそのことを?」
_、_
( ,_ノ` )「話せていない。情けない話だがな、ずるずるここまできちまった」
_、_
( ,_ノ` )「あいつが信じているのは俺じゃない、俺に似た誰かなんだ」
_、_
( ,_ノ` )「俺は"神の目"を名乗って、あいつを騙し続けている」
_、_
( ,_ノ` )「それなのに……いや、だからこそつーは過去の栄光に縋るクズみてぇな俺に優しくしてくれる」
_、_
( ,_ノ` )「それに応えたくてまた騙す。"俺は凄腕の銃使いだ、村を守ってやるぞ"……ってな」
_、_
( ,_ノ` )「笑っちまうだろ?」
( ^ω^)「……笑う気にはならんお」
_、_
( ,_ノ` )「そいつはありがたいな……」
シブサワはプライドが高い男なのだろう。
理想の自分が存在し、その理想をひたすらに追い求める。
"酒を好み、タバコを咥え、達人レベルの銃の腕前を持つ、渋い男"
今さら後には引き下がれないということか。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 23:54:39.31 ID:L9d278rf0
- _、_
( ,_ノ` )「俺の話はこんなもんだ」
_、_
( ,_ノ` )「眠けりゃ寝てもいいが、旅の話は俺も聞いてみたい」
( ^ω^)「そりゃ構わんが」
( ^ω^)
( ^ω^)「そもそも、さっき出会ったばかりの俺にそんなことを聞かせてどうしたいんだお?」
_、_
( ,_ノ` )「知らん。俺にもわからん。訊くな」
_,
( ^ω^)「愚痴言う相手が欲しかっただけかお」
_、_
( ,_ノ` )「……"神の目"の噂を聞いてただ会いに来た馬鹿を、信じてみたくなったのかもな」
( ^ω^)「馬鹿言うなお」
噂の真実というのはこういう裏が多々ある。
少々肩すかしを食らった気分ではあるが、まあこれも経験だ。
‐‐‐−−−―――━━━
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/17(金) 23:57:52.76 ID:L9d278rf0
( ^ω^)「リョナラー……ねぇ」
ξ゚听)ξ「そーよ」
それなりに人の入った昼時の飯屋。
店内の一角でパンを頬張ったまま湯気の立つトマトスープをすする。
つーの料理はこれを目指しているのだろうか、少し味が似ていた。
当然まだこっちの方が美味い。
ξ;゚听)ξ「まあ、ご飯中にする話でもないけれど」
( ^ω^)「ま、そりゃそうだお」
ξ;゚−゚)ξ「でもさぁ……嫌な感じじゃない?」
( ^ω^)「ふぁにが?」
咀嚼咀嚼。
ξ;゚−゚)ξ「だって……どんどん情報が濃くなってきてるもの」
( ^ω^)「"濃く"、ねぇ」
ξ;゚听)ξ「そう、濃いの!!」
( ^ω^)「言い得て妙なり」
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 00:00:10.70 ID:A0x1+fBi0
"リョナラー"なる、人を痛めつけて快楽を得る変態共の噂を初めて聞いたのは、
あのモララーと闘ったオアシスだ。
あれからぼちぼち旅を続けていたが、その情報量は村を渡る毎に多くなってきていた。
故に、嫌でもその悪評が頭に残り続け、意識せざるを得ないここ最近。
曰く、
"奴らは強い"
"人の生き血が主食"
"1人でも手に負えないのに、この世界には何人もいる"
"腕に自信のある者数人が倒しに行って未だ戻ってこない"
"どんな攻撃も受け付けない"
"一瞬で村を破壊した"
"一山ほどの大きさ"
"全身真っ黒、顔すら確認できない"
などなど。
噂が一人歩きして、リョナラーの実態がどんどんありえないモノへとなっている。
ツンはそんなあり得ない設定にまでいちいち驚くもんだから、人生楽しいんだろうなぁと。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 00:03:59.37 ID:A0x1+fBi0
ξ゚听)ξ「この村のしゅうかーく」
( ^ω^)「ここはリョナラー、"不死鳥"とやらの支配する街に近いお」
( ^ω^)「この村の周辺には鉱山が点在していて、武器や農具作りも発達しつつあるお」
( ^ω^)「賊もそれを狙って近辺の村や街を襲うとかなんとか」
( ^ω^)「名産はトマト。トマトジュースが美味いお。絶妙な酸っぱさと甘さ」
( ^ω^)「あと、割と銃関連の産業も発達してるお……こんなもんかお?」
ξ゚听)ξ「終わりー」
( ^ω^)「うむ」
ξ゚−゚)ξ「……この銃は未だ謎と。 なんなのかしら、これ」
( ^ω^)「ハローの言った通り、ヴィップ大陸に行くまでお預けかもな」
ξ゚ 3゚)ξ「きーにーなーるぅー」
と、いうのがここ二、三日で集めた情報である。
鉱山のある村や弾丸を製造する現場というのはなかなか珍しかったから、
見物できたことの方に俺は喜んだ。
そろそろ次の目的地へ――― リョナラーの支配する街へと向かおうか。
ただの俺の興味本位だし、ツンは嫌がるだろうから、秘密で。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 00:06:41.76 ID:L9d278rf0
‐‐‐−−−―――━━━―――−−−‐‐‐
_、_
( ,_ノ` )y━・~「ん、どこか行くのかつー」
(*゚∀゚)「うん!ツンちゃんに外でサバイバルがなんたるかを教えてあげるんだ!」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「……よくわからんが気をつけるんだぞ。俺の目の届かない範囲は危ない」
(*゚∀゚)「じゅーじゅーしょーち!」
(*゚∀゚)「ししょーもミハリ頑張ってね!オレがいないからってサボるなよ!!」
(*゚∀゚)「見張り仕事はシンライからなりたってるのだー!」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「……どこでそんな言葉覚えたんだ」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「まあいい、大体お前がいない分集中できるんだ」
(#゚∀゚)「なにをぅ!まるでオレが邪魔だって言い方するな!?」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「それ以外に聞こえてなくて良かったぜ」
(#>∀<)「んぶー!」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「はっはっは」
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 00:09:31.07 ID:A0x1+fBi0
(*゚∀゚)「見てろーししょー!」
(*゚∀゚)「いつか技術ぬすんで、ししょーに謝らせてやんよ!」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「ほう。そろそろ銃のいろはくらい教えてやろうと思っていたが」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「そこまで言うなら止めておこう。盗まれるのが楽しみだ」
(*;゚∀゚)「あ!ナシ!今のナシナシ!おせーて!!」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「きこえんなぁ」
(*;゚∀゚)「ぬぬぅ」
(*゚∀゚)「!」
(*゚∀゚)「おっと、ししょーに付き合ってちゃ日が暮れちまう!」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「クッ……付き合わせて悪かったねぇ」
(*゚∀゚)「今日の晩飯は野菜フルコースだ!楽しみにな!!じゃー!」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「おう」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「……師匠、ね」
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 00:12:46.18 ID:A0x1+fBi0
つーのいない見張り仕事は静かなものであった。
_、_
( ,_ノ` )y━・~「……」
暇になると話しかけてくるつーの存在は煩わしいものであったが、
数か月そんな状況が続いた今では、逆にじっと待つだけというのは手持無沙汰に感じていた。
開いた眼前に静かに広がるのは、果てしない荒れた土地。
_、_
( ,_ノ` )y━・~「…………」
変わり映えのしない世界の僅かな変化を、つーは大事件だと言わんばかりに騒ぎ立てる。
花が咲いているだとか、曇り空がどこまでも続いているだとか、知らない鳥が飛んでいるだとか。
そういった少女の瞳に映る新鮮な世界へのアプローチは、シブサワの鈍った心を少しずつ解きほぐしていた。
そしてこの日も、シブサワは無意識に歓喜と驚嘆に満ちた声を期待してしまっていた。
_、_
( ,_ノ` )y━・~「……どうも調子が狂っちまう」
本当の意味で"神の目"と呼ばれていた頃では考えられないことだ。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 00:17:13.83 ID:A0x1+fBi0
- _、_
( ,_ノ` )y━・~「ブーンか」
シブサワは振り返らず、岩の上へ登ってきた誰かを言い当てた。
( ^ω^)「よう。暇だから遊びに来たお」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「クッ……今日は静かだと思ったが、つーに代わってお前が俺の邪魔をするのか」
1つ鼻で笑ってから、ブーンがシブサワの隣に胡坐をかいた。
( ^ω^)「まあな。 ――― 良い眺めだお」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「そうだろ?俺が見張りの仕事を引き受けたのもこの景色が目的なんだ」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「つーもよく眺めている」
( ^ω^)「ほう」
その言葉を最後に黙ったシブサワは、これまでのこととこれからの事に思いを馳せる。
シブサワはその射撃の腕と確かな仕事の腕から世間一般では、守り神と言われる程の高評価である。
しかしシブサワは元々賊であったことを村の人間にも話していない。
自分に賊としてこの村を襲う気などさらさらないことを理解していたし、
わざわざ妄りに村人を不安にさせることはないと考えていた。
シブサワは悪人がこんなことを望むのは都合が良いとは思いつつ、願っていた。
できればこのまま平穏な日々を。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 00:20:33.25 ID:A0x1+fBi0
――― 彼の人生に変化が訪れるのはいつも突然であった。
_、_
( ,_ノ` )y━・~「!」
( ^ω^)「どうしたんだお?」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「……あそこ、何か来ている」
ブーンは言われた地点へ目を凝らす。
始めは地表を蠢く棒だったそれらが、徐々に人型へ変わってゆく。
( ^ω^)「ふむ……あの見るからに粗暴なファッションは賊かお」
( ^ω^)「お前の名前を出せばいつも通り撃退できるんじゃないかお?」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「いや、今回こそはそれが通用しない」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「奴らは逃げんだろうな……全く、忘れた頃にクソ懐かしい顔が見れるとは」
シブサワの頬を一筋の汗が流れた。
_、_
(;,_ノ` )「最悪の同窓会の始まりだ」
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 00:23:45.19 ID:A0x1+fBi0
ノノメ"゚−`]「……"神の目"」
ノノメ"゚ー`]「懐かしい名前だなァ、おい?」
先頭の一際大柄な男がシブサワへ邪悪な笑みを向ける。
シブサワは依然、村への唯一の道に立ちふさがり、銃を構えている。
_、_
( ,_ノ` )「そうだな」
ノノメ"゚−`]「おいおいおいおいィ?それが元・ボスの俺に対する言葉かァ?」
ノノメ"゚−`]「あの時はごめんなさいだとか、お元気そうですねだとか」
ノノメ"゚−`]「なんか言うことがあるだろ?」
_、_
( ,_ノ` )「ああ」
_、_
( ,_ノ` )「あの時はすまなかった、カルロ。元気そうで何よりだ」
どっ、と30人ばかりの男達が笑いだした。
カルロと呼ばれた傷だらけの男も大声で笑う。
笑っていない眼は冷たく、じっとシブサワを見下ろしている。
ノノメ"゚ー`]「俺ァ元気だぜェ? てめェの射撃の腕はどうだ、"神の目"!?」
その問いかけにシブサワは答えない。答えられない。
目の前の男は、まだ自分が人を撃てないことを承知の上で訊いていると直感したのだ。
カルロは反応に満足したのか、顔を歪ませてほくそ笑む。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 00:26:52.56 ID:A0x1+fBi0
- _、_
(;,_ノ` )「それで、俺に何の用だ」
ノノメ"゚ー`]「まあそう慌てるな。ちょっと昔話をしようや」
_、_
(;,_ノ` )「……」
ノノメ"゚−`]「お前が俺達を裏切り、逃げだしたという情報は仲間に伝わり、動揺は伝染した」
ノノメ"゚−`]「認めたくないが、巨大な戦力の一角が突然消えたんだ。当然だわなァ?」
ノノメ"゚−`]「それからどうなったと思う」
_、_
(;,_ノ` )「……」
ノノメ"゚−`]「はん、敗北だ。 縄張り争いに敗れた俺達は皆殺しにされるか、吸収されるか」
ノノメ"゚−`]「その二択だった」
ノノメ"゚−`]「ま、俺ァ誰かの下につくなんざ御免だったんで反発して逃げさせてもらったがな」
ノノメ"゚−`]「…………逃げたんだ」
ノノメ"゚−`]「俺が、この俺がァ、おいィ?」
ノノメ#"゚皿`]「逃げたんだァ!!!!」
_、_
(;,_ノ` )「!!」
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 00:30:32.69 ID:A0x1+fBi0
叫びと共にカルロはシブサワへ接近し、鈍く光る棘の付いた巨大な棍棒を力任せに振るう。
突然の事に反応の遅れたシブサワの顔面へ棍棒が――
(#^ω^)「おらァ!!!!」
ノノメ"゚皿`]「ぬゥ!!?」
上空から降ってきたブーンが棍棒を握る手を蹴り飛ばした。
棍棒は手を離れ、大地に突き刺さった。
( ^ω^)「おー痛て、慣れねぇことはするもんじゃないお」
ノノメ"゚皿`]「テメェ……シブサワの手下かァ?」
( ^ω^)「ん? ああ、まあそうだお。このシケたおっさんのお仕事の手伝い中だったお」
( ^ω^)「まあ俺の事はどうでもいいお。お前らの用は?」
ノノメ"゚皿`]「未だに"神の目"なんて呼ばれて良い気になってる、そこの天狗をぶっ殺そうと思ってなァ」
ノノメ"゚ー`]「だがただ殺すだけじゃもったいねェ。今はその村を破壊する様を見せてやりてェ」
冷たい感覚がシブサワを駆け抜けた。
あの平和な村が壊滅する未来を想像してしまったのだ。
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 00:33:26.18 ID:A0x1+fBi0
( ^ω^)「じゃ、困るな」
ノノメ"゚−`]「あァ?」
( ^ω^)「村を守るという俺の短期お仕事の邪魔されちゃあ、お駄賃がもらえねーんだおッ!!」
ノノメ;"゚〜`]「ぬッッ!!!」
ブーンが放った、ノーモーションから繰り出されるパンチ。
常人なら反応もできない恐るべき速さのそれを、カルロは咄嗟に腕で防御することに成功した。
当然腕力だけが攻撃力へと換算されるため、防がれてしまうとダメージなど期待できない。
しかし、元よりブーンは傷を負わせることなど考えていなかった。
(#^ω^)「邪魔ああああァァァァ!!!!!」
ノノメ;"゚皿`]「ぬおおおおおおおおおッ!?」
カルロの小柄な体躯が放物線を描き、背後の烏合の衆の中心へ叩きこまれた。
_、_
(;,_ノ` )「あ、あのカルロを素手で吹き飛ばす……!? お、お前、無茶苦茶強いじゃねぇか」
( ^ω^)「まあな」
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 00:36:57.36 ID:A0x1+fBi0
ノノメ;"゚皿`]「ぶへッ!! な、なんだァ、今のはァ……!!」
(#^ω^)「村を襲いてぇなら、シケたこのおっさん殺してぇならまず俺を殺して見せろ!!」
ノノメ#"゚皿`]「チッ……!チィッ!!! あいつら連れてこい!!!」
カルロがそう叫ぶと賊達が脇に避け、カルロとブーン・シブサワの間を空けた。
そして縄に縛られた、よく知った顔の2人が前線へと姿を現す。
ξ;--)ξ「ごめーんブーン」
(*;゚∀゚)「ししょー!オレにかまわず、いつもみたいにやっちゃってよー!!」
_、_
( ,_ノ゚ )
( ^ω^)
カルロが2人の関係者を人質にとったのは偶然である。
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 00:41:03.12 ID:A0x1+fBi0
カルロ達は村の近くにいた2人を捕らえ、何かあった時のための人質として利用しようと考えた。
過去の"神の目"が戻っているなら、人質による勝率は五分五分と見定め、
人質が確実にカルロに勝利をもたらすとは想定していなかった。
しかし。
"神の目"が戻っていなかったことと、偶然が重なることにより、
してやられたと言いだしそうな顔が人質の効果の程を表している。
(#^ω^)「ツゥーーーン!!お前ーーー!!!!ちゃんとつーを守れえええええ!!」
ξ;゚听)ξ「ゴメンってばぁー!」
_、_
( ,_ノ゚ )
(;゚∀゚)「し、ししょー……?」
ノノメ*"゚□`]「ぎゃあっはっはっはっは!!!こりゃあ傑作だァ!!!」
ノノメ*"゚□`]「こんな急ごしらえのクソみてぇな策が大成功とはなァ!!!」
下手に動けば2人の命はない、ということをブーンとシブサワは理解した。
シブサワは、彼の平穏と未来の象徴であったつーが束縛された姿を見ただけで放心してしまった。
それほどまでに精神は平和ボケしていたのだ。
シブサワの射撃の腕があれば、あるいは現状を打破できるかもしれない。
2人を捕獲している賊を撃ち抜き、ブーンが接近戦、シブサワが遠距離戦。
これが理想であるが、そもそも放心しているシブサワにそんなことはできない。
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 00:45:26.07 ID:A0x1+fBi0
ブーンはどうすればいいか考える一方で、もう一つのifを考えていた。
"つーさえいなければどうにかなる"
つーは普通の少女である。
記憶を失っていたり、謎の銃を所持しているなんてことはない。
決して、傷が早く治る、なんて非現実的な体質ではない。
ξ;゚听)ξ
だがツンは違う。
彼女の驚異的な治癒速度はこれまでの旅で何度か目にしてきた。
切り傷も、折れた骨も、虫刺されもも、被れも、何もかも短期間で治っていった。
故に彼女のみが人質にとられていた場合、話は簡単である。
"ツンに何が起きても構わず蹴散らせばいい"
"どうせすぐに治るのだから"
ブーンにとって、ツンは人質としての価値は皆無と判断していた。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 00:49:25.40 ID:A0x1+fBi0
ノノメ"゚ー`]「そう言うことだァ、お2人さん。そのまま何もせず、大人しくしててくれるかィ?」
(#^ω^)「グッ……」
じりじりと賊が距離を詰め始めた。
カルロの勝ち誇った笑みがブーンを腹立たせる。
(#^ω^)「シブサワ!目ぇ覚ませ、"神の目"なんだろうが!」
_、_
(;,_ノ` )「だ、だが、こ、こうなってしまっては、あ、あうぅ」
(#^ω^)「大の大人が、何があうぅだ馬鹿たれ!!てめぇならあいつら助けられるんだろお!?」
2人を捕らえようと迫りくる賊となおも対峙しながら、ブーンが背後のシブサワへ向けて叫ぶ。
(#^ω^)「てめぇは誰に拾われた!!誰に助けられたんだお!!」
_、_
(;,_ノ` )「つ、つー……だ」
(#^ω^)「見ろ、ちっせえガキじゃねぇか!!!お前恥ずかしくないのか!!"神の目"のくせに!!」
_、_
(;,_ノ` )「グゥ……」
(#^ω^)「おら!まだぐぅの音は出るんだろ!!まだやれるお!?」
ノノメ"゚ー`]「……」
カルロは敢えて2人のやりとりを見ている。
腑抜け切ったシブサワが再び引き金を引く事はないと確信し、処刑人の気分を味わっているのだ。
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 00:52:51.73 ID:A0x1+fBi0
(#^ω^)「てめぇは誰だお!!!」
_、_
(;,_ノ゚ )「……し、シブサワ……」
(#^ω^)「違う!!!そうじゃねぇお!!!俺は誰の噂を聞きつけててめぇに会いに来た!?」
ツンは心配そうに成り行きを見守り、つーはじっとシブサワを見つめている。
その瞳に込められているのは、いつも通りの尊敬と期待と憧れと、それを塗り潰さんとする恐怖。
(#^ω^)「もう一度訊く!!!"てめぇは誰だお"!!!!」
_、_
(;,_ノ゚ )「お、俺は―――」
ごう、とシブサワの体を熱が駆け巡った。
思い出せと心が叫ぶ。視界が白む。視界が白く―――
あなたはだぁれ?
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 00:56:35.94 ID:A0x1+fBi0
<……俺、は>
"オレ"っていうの?
<いや、違う。 俺は……シブサワだ>
ふーん……シブサワ。 わたし、つー。
<そうか。 ここはつーの家か?>
ううん。お父さんとお母さんとわたしの家。 でもね。
お父さんとお母さん、この前死んじゃった。
みんな言ってた。"今日からここはつーちゃんの家"、って。
だからわたしの家。
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 00:59:31.21 ID:A0x1+fBi0
わたしだけの、お母さんも、お父さんもいない
ひとりだけの、い、家、な
<…………>
……ウグ、ヒッ、
……ぅ…………。
<…………おい。顔拭いてやる、こっちこい>
…………。
<……あのな>
<俺はな、"神の目"って呼ばれてたんだ。 どうしてだかわかるか?>
……?
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 01:02:21.52 ID:A0x1+fBi0
<この銃で、どれだけ遠くの物でも撃ち抜けちまうからだ>
……うそ。
<嘘じゃない。後で見せてやる。いくらでも見せてやる>
じゃ、そういうことにしてあげる。
<そして、どうだ。そんな俺がこの家にいれば、心強いぞ?>
<何が起きても俺だけはお前を護ってやれるしな。>
<そうだな……2人ぼっちだ。 どうだ、洒落てるだろう?>
……よくわかんない。
<そ、そうか>
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 01:05:22.81 ID:A0x1+fBi0
でも、わかった。 シブサワがいれば、わたし、1人じゃない。
<ああ。お前が苦しくて泣いててもすぐわかる>
<俺は"神の目"、何でも視えるからな>
"神の目"……。
信じて、いいの?
――― フラッシュバックから現実へと、意識を戻したシブサワの"神の目"が1人の少女をとらえる。
恐怖に包まれ、怯え、震え、今にも泣きそうな顔で、それでも。
(*;゚∀゚)
いつもと変わらないまっすぐな瞳がシブサワを見つめていた。
_、_
( ,_ノ` )「――― ッッ!!」
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 01:09:15.65 ID:A0x1+fBi0
空気が変わったのをブーンは背中で感じた。
覇気も何も感じなかったただの中年が、今は1人の戦士となっているのを感じた。
隙のない、しかし緩慢な動作でシブサワが煙草を咥え、火をつける。
_、
( ,)━・
_、_
( ,_ノ` )y━・~
_、_
( ,_ノ` )y━・~「感謝する、ブーン。 大事なことを思い出した」
( ^ω^)「感謝の言葉なんざ腹の足しにもならんお。 後でつーの飯食わせるお」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「クッ……そりゃあいい」
ノノメ;"゚−`]
カルロは2人の会話を断ち切るべきだったと猛烈に後悔していた。
悪寒が蟲のように体中を這いずり回り、汗が至るところから噴き出す。
賊達は動けない。動く事ができない。
場の空気全てに殺気が含まれているから、そして。
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 01:13:22.55 ID:A0x1+fBi0
動けば、撃たれる。
その漠然とした恐怖が彼らを地面に縫い付けていた。
もっとも、動かなくとも撃たれるであろうという予測が彼らの頭からは抜け落ちていたが。
_、_
( ,_ノ` )y━・~「俺ぁ、つーを騙していた。 本当は"神の目"と名乗る資格なんざなかったのに」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「だがあいつぁ……"神の目"を持つ俺を信じている」
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( ,)━・
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( ,_ノ` )y━・~
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( ,_ノ` )y━・~「今まで、俺は心底きたねぇことをしてた。ただのクソッタレだ」
( ^ω^)「シブサワ。 もう引き金は引けそうかお?」
ブーンが振り返らず、背後から流れる煙に息を吹きかけ、シブサワへ問いかける。
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 01:17:48.45 ID:A0x1+fBi0
- _、_
( ,_ノ` )y━・~「あァ。 人を殺すって、根元は同じだ。何も変わっちゃいねぇ」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「だが、撃つ目的は、ただ殺すことが目的だったあの頃とは違う」
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( ,_ノ` )y━・~「あの嬢ちゃんと、何より―――」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「つーを護るために」
シブサワが遠く離れたつーと目を合わせる。
つーは狭められていた目をいっぱいに開いて、シブサワを見た。
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( ,_ノ` )y━・~「一度だけ」
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(#,_ノ` )y━・~「一度だけでも!」
_、_
(#,_ノ` )y━・~「俺を、"神の目"シブサワを!!!」
_、_
(#,_ノ` )y━・~「つーに信じさせてやりてぇんだよ!!!!」
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 01:20:56.26 ID:A0x1+fBi0
( ^ω^)「ふん」
ブーンはニヤリと笑い、大地にずしりと構え、いつでも敵陣へ殴りこめる用意をする。
シブサワの指を止めていた親子の亡霊は姿を見せない。
銃口の向き、まずはつーを捕獲している賊。
ノノメ;"゚ロ`]「お、おい、待―――」
カルロの制止の声。
賊達の息を呑む一瞬の呼吸。
ブーンの大地を蹴りだす音。
ツンの状況を呑めないという抗議。
つーの思わず呟いた一言。
シブサワの咆哮。
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 01:24:05.99 ID:A0x1+fBi0
それらは、どこまでも響き渡る、澄んだ銃声に掻き消された。
後に、腕利きの銃使いと騒がしい少女の2人組が荒野の各地で目撃されるが、
それはまた別の話である。
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/18(土) 01:26:19.27 ID:A0x1+fBi0
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