( ^ω^)は荒野の腹パニストのようです
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 20:50:18.17 ID:m+07sVdS0
(6~_6~ )「まーたその名前か」
「また?」
(6~_6~ )「ああ、そいつについて尋ねてきたのは今日で2人目だ」
(6~_6~ )「まだお天道さんが昇りきったばかりだってのに」
「へぇ、そうなのかい? 今日ってことは……まだこの街にいるかな」
(6~_6~ )「そいつは有名人かなんかかい?」
「尋ねてきた奴、どんなやつだった?」
(6~_6~ )「そっちかよ。 えー、冴えない色のマントを羽織った男だ。あまり夜に出会いたくねぇな」
「ふむ……オヤジ、男の得物は?」
(6~_6~ )「得物……特に何か持っていた風じゃなかったなぁ」
「ということは何もなしか?」
(6~_6~ )「腕についた筋肉、鍛え上げられた迫力のある肉体……ありゃあ、そう」
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 20:53:57.90 ID:m+07sVdS0
(6~_6~ )「得物なんざ持っちゃいねぇ、その身一つだ」
「!」
「……ほほーう」
(6~_6~ )「頼れるのは己のみって感じでさぁ。おっかねーけど、渋く強い感じでさぁ」
(6~_6~ )「あんたもなかなかのもんだけどよ」
「へぇ!オヤジ、なかなか見る眼があるぅ!」
(6~_6~ )「当然。俺ぁ女の胸のサイズをピタリと当てられるくらいだぜ?」
「はは、胸のサイズは知らないけど、確かにあんたの目はいい!僕が言うんだから間違いない!」
(6~_6~ )「じゃ、いい加減教えてくれよ。その……なんつったっけ?パン屋?」
「ああ…………いや、オヤジ、あんたは知らなくていいよ」
(6~_6~ )「ふーん……ま、言いたくないなら別にいいけどよ」
「じゃあな、欲しい情報じゃなかったけど、いい事を知れた」
(6~_6~ )「あのマントの男、追うのかい?」
「ん、ああ。少し話してみたくなってね」
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 20:57:12.06 ID:m+07sVdS0
( ・∀・)「僕と同じ、ワンパニストを追う者と……ね」
第五話「復讐者達の邂逅」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 21:00:05.12 ID:m+07sVdS0
‐‐‐−−−―――━━━
( ^ω^)「うお、流石オアシスだお!」
ξ*゚听)ξ「水がいっぱいあるわ!飲んでいいの!?」
( ^ω^)「水浴びしてるオッサンとかいるけど、それでもいいなら」
ξ゚听)ξ「もう少し様子を見るわ」
賢明な判断だ。
後ろを向けば砂地の終わり、前を向けば荒野の始まり。
その境目として眼下に広がる、大きな湖を持つオアシス。
澄んだ水が強い陽射しを反射し、まるでこの一帯だけ別世界のようにきらめいている。
ξ゚ー゚)ξ「水は人の生命源ねぇ。人、人、人、人に人……活気に溢れてるわ」
( ^ω^)「生きやすい場所に村や町を構えるってのは当然だお」
( ^ω^)「隊商やら商人、旅人が行き交う場所だお。期待できそうだお」
ツンは期待外れだったからなぁ……。
ξ゚听)ξ「何よ」
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 21:03:08.21 ID:m+07sVdS0
街に入って少し経った後、ひとまず二手に別れることにした。
別れることにした、というか別れた。
何故なら。
ξ゚−゚)ξ
( ^ω^)「ふむ、まあ最初だからこんなもんかお……」
ξ゚−゚)ξ
( ^ω^)「まあ都合良く当たりを引けるわけでもなし」
ξ゚−゚)ξ
( ^ω^)「そんなにポンポン情報が出てきたらこの数年の旅は何だったのかと」
ξ゚−゚)ξ
( ^ω^)
ξ゚−゚)ξ
( ^ω^)「おい?ぼちぼち次行くお?」
ξ゚听)ξ「これ綺麗ねー……」
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 21:06:39.91 ID:m+07sVdS0
(;^ω^)「……高っ!」
ξ*゚ー゚)ξ「ねぇブーン!これ」
(;^ω^)「買わん!」
ξ#゚听)ξ「いいじゃん!このネックレス!!見てこの宝石!綺麗でしょ!?」
(;^ω^)「というかそんなもん旅に必要ねぇお!?」
こんな風に。
ツンはオアシス周辺に展開した出店の珍しい品物を見て目を輝かせた。
移動しようにもその場を動こうとせず、不毛な会話を繰り返すだけだった。
しびれを切らして落ち合う時間と場所を決め、最低限の金を持たせて俺は一人で移動した。
女の買い物は長い。
そんなものに付き合っていると日が暮れてもほとんど聞きまわれないなんてことがありそうだ。
( ^ω^)「ほぉー。これはまた、よくできたもんだお」
ロノ+x+)「む、そいつに目をつけたか」
とはいえ俺だって少しは店先の商品に目移りしたりする。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 21:09:31.93 ID:m+07sVdS0
ごろん、と置かれた機械仕掛けの腕。
色を人間のものに近付ければ本物の腕が転がってると勘違いさせることができるのではないか。
ロノ+x+)「それはかつて大国として名を馳せたソウゴウ国の機械さ」
( ^ω^)「ソウゴウ国……サイボーグ化を進めてたって国かお」
ロノ+x+)「お?兄ちゃんよく知ってるな。見かけによらず物知りなんだな」
( ^ω^)「見かけによらずとは失礼な」
ロノ+x+)「あっはっは!すまねぇ! 学があるようには見えなくてよ!わりぃな!あっはっは!」
さも愉快そうに失礼なことを言い、商人は膝をぱしんと叩いた。
かつてソウゴウ国は兵のサイボーグ化の研究をしていた、とハローは言っていた。
別に疑っていたわけじゃないがこの機械の腕のおかげでより真実味を帯びてきている。
"世界が世界として機能していた時代"、それはどうやって終わりを告げたのか。
ワンパニストも気になるがこっちもなかなか興味深い。
ロノ+x+)「で、どうだ?」
( ^ω^)「?」
ロノ+x+)「兄ちゃんの第三の腕として。あ、第三はもうあるか」
商人はニヒヒと笑いながら股間を指さした。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 21:12:22.68 ID:m+07sVdS0
それからは情報収集に精を出した。
活気あふれる街並みに気をとられてすっかり忘れていたが、本来の目的はそっちだ。
人の行き交うここならば、何か情報があるかもしれないと淡い期待を抱いていた。
リリ "〜">「いやぁ〜……聞いたことないねぇ」
(6~_6~ )「ワンパニスト?珍しい名前だなぁ。 パンの名前か?違う? ま、そりゃそうか」
( ┰┰)「ワンパ……なんだって?パンツはここにないぜ」
冫、「…………さぁ」
´ソ;^ー^)「あ、あう、すみません、きいたことないですぅ……まだ商売始めたばかりでしてぇ……はぁい」
(ψ゚ ゚)「それより兄さん、良いカラダしてるねぇ。どう?うち可愛い子いっぱいいるよ〜?」
( φιφ)「シャッチョサーン、マッサジドッスカー」
ゼロ。
(;^ω^)「……人生そううまくはいかねーってわけかお」
ワンパニストのワの字すら出てこなかった。
過度な期待を寄せすぎた、と休みがてら適当に買った黄緑色のフルーツジュースを飲む。
なかなか爽やかな後味でよろしい。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 21:16:04.69 ID:m+07sVdS0
奴は一体どこで何をしているのだろうか。
誤解を招きそうな表現だが、まさか恋い焦がれるているわけではない。
むしろ憎しみを持ってそう思ったのだがしかし、今の気持ちはむしろ前者に近い。
"愛憎"という言葉があるくらいだ、この二つは似ているのかもしれないな。
( ^ω^)「じゃ、なくてだ」
いい加減、少しぐらい情報が欲しい。
ぶらぶらと散策しながら次のターゲットを探して街道を歩いていると、目の前が突然開けた。
先では巨大な水たまりのような湖が広がっている。
澄んだ水を凝視し、距離が相当あるにも関わらず底が見えないか試してみたくなった。
( ^ω^)「……おー」
ゆらりゆらりと脈打つ波紋の感嘆の声だって漏れる。
浅瀬では子ども達が服が濡れるのもお構いなしにはしゃいでいる。
一人の少年が他の少年を追いかけているから、あれは鬼ごっこだろう。
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「鬼ごっこ、ねぇ」
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 21:19:37.32 ID:m+07sVdS0
近くの木陰に座り、遠くで笑い合っている少年たちをぼんやりと眺める。
( ^ω^)「…………」
ゆっくり。
入道雲が立ち昇っていくみたいにゆっくりと、子どもの頃の記憶が蘇る。
俺はまだ小さかった。
アラマキ師匠の腹パン道場へ通い始めた頃だったと思う。
そうだ、そこに"あいつ"がいたんだ。
"あいつ"は俺と歳が近く、よく一緒に遊んでいた。
――― どうしてだっけ?
もう一つ、何か理由があった気がする。
"あいつ"の身の上に関係していた気がする。
( ^ω^)「…………?」
しかし余りにも昔の事すぎて、そして"あいつ"のことを憎みすぎて、忘れてしまった。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 21:23:32.42 ID:m+07sVdS0
ただ、楽しかった。
そのことだけは覚えている。
鬼ごっこをした。球蹴りをした。覚えたての腹パンで勝負したりもした。その後アラマキ師匠に怒られた。
( ^ω^)「……」
懐かしい。
今にもあの頃のにおいを思い出せそうな、そんな深さまで記憶を遡る。
浮かんでくるのはあののどかな故郷の風景。
かつて崖の上から俯瞰した故郷は、荒野に在りながら緑に溢れていた。
俺にもあの水辺で遊ぶ子ども達のように純粋な時期があったのだ。
そして、あの頃共に過ごした友人は、今はいない。
いるのは―――
( ゚ω )「――― ワンパニスト」
最後に見た、狂った笑顔の"あいつ"。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 21:27:38.41 ID:m+07sVdS0
( ゚ω )
( ^ω )
(;^ω^)「……ふぅ」
思わず手に力が入っていた。
( ^ω^)「こんな平和な所で殺伐としちゃいかんおー」
( ^ω^)「おっおっおっ」
先程の殺気を他人事のように笑い飛ばした。
( ^ω^)「……お。涼しいお」
ひんやりとした風が吹いた。
これまで刺すような暑さや息苦しい蒸し暑さばかりを体験してきたからこういう風はありがたい。
色褪せたマントが風を楽しむようにそよいだ。
そうだ、そろそろこのマントをくれたモナーさんに会いに行こうか。
俺がどれぐらい強くなったか見てもらうのもいいだろう。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 21:31:29.19 ID:m+07sVdS0
恐らく今の俺がワンパニストと対峙しても、負ける。そのことを第三者から判断してほしい。
漠然と奴と闘うイメージをしてみても勝つビジョンが視えないのだ。
"腹パン道とは、己の正義のために腹パンを行使する武道"
アラマキ師匠はそう何度も、口癖のように俺達に教えた。
( ^ω^)「"正義のために"……ね」
実のところ、俺に"正義"があるのかどうかはわからない。
気に食わない奴をぶん殴る、そこに後付けとして師匠の"正義"が上塗りされているだけだ。
そう、俺が掲げる"正義"はアラマキ師匠からの借り物。
賊を倒すだけなら何の問題もない"正義"。
( ^ω^)「…………ならば」
俺の"正義"はどこにある?
俺の"強さ"はどこにある?
自分の強さに迷いがある。
こんな状態でワンパニストに勝てる道理があるだろうか?
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 21:36:40.99 ID:m+07sVdS0
確固たる信念なしで、過去の憎しみだけでワンパニストを斃せるのだろうか。
( ^ω^)
( ^ω^)
( ´ω`)「ぶはぁ――――――っ」
深く考えてもしゃーねーわ。
立ち上がり、ぐっと背伸びをする。
持て余していた行き場のなかった力が発散されたように、すっきりした。
そうだ、ごちゃごちゃ考えるのは面倒くさいし辛気くさい。
( ^ω^)「今はただあいつを探すのみだお」
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 21:39:39.30 ID:m+07sVdS0
( ^ω^)「俺は強い。ワンパニストを斃すために今まで修行し、旅をしてきたんだお」
( ^ω^)「正義だとか、強さだとか、そんなのは今はどうでもいいお」
( ^ω^)「悩むのは壁にぶち当たった時だけ―――」
「へーぇ、壁かぁ」
( ^ω^)「お?」
俺に向けられた声に反応し、振り返る。
( ・∀・)
頭の悪そうな原色の服を着て、ニコリと微笑んだ男が立っていた。
( ・∀・)「や、初めまして」
すっと右手が差し出される。
指がピッチリと揃えられた気持ち悪いぐらいに几帳面な右手。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 21:43:48.42 ID:m+07sVdS0
( ^ω^)「……どうも」
その手を握る。
( ・∀・)「おっ!すげえ!見かけあんまりゴツくないのに手はすげえゴツいね!!」
( ・∀・)「うーん筋骨隆々ってのはこういう腕のことを言うんだねぇー!」
( ・∀・)「青い血管!固い手!ボロボロの服!! これぞ闘う男って感じでいいよぉー」
( ^ω^)「そりゃどうもだお」
握手しただけですごい褒められた。
とりあえずお礼を言っておく。
( ・∀・)「ふーん、そっかぁー」
( ^ω^)
(・∀・ )「へーぇ、ほーん」
( ^ω^)「???」
ぐるぐる回りながらじろじろ俺を眺めてくる。
何かの儀式の品定めだろうか。活きのいい男一人を生贄に捧げるみたいな。
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 21:47:10.78 ID:m+07sVdS0
男を観察し返すと、筋肉のつき方が常人のそれではなかった。
俺の筋肉を"岩"と言うなら、こいつは"鞭"。しなやかでしたたか。
間違いなくこいつも俺と同じく何かの武道の一派だ。
ふいに男が口を開いた。
( ・∀・)「ね、ワンパニストって知ってる?」
( ^ω^)「!!」
( ・∀・)「いい反応だ」
ニコリではなく、ニヤリと男が笑う。
( ^ω^)「…………」
( ・∀・)
( ・∀・)「くくくっ、そんなに固くなるなよ」
( ^ω^)「何故その名前を出したお」
( ・∀・)「何故って?君も追ってるって噂聞いてさ、確かめようと思ってね」
( ^ω^)「"も"……お前が追う理由は何だお?」
( ・∀・)「さぁ何でしょう」
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 21:51:21.40 ID:m+07sVdS0
( ・∀・)「君はどうなんだい? 人に尋ねる前に自分から答えるべきだよ、うん」
( ^ω^)「……俺は復讐のためにあいつを追っている」
( ・∀・)「ふーん……そっかー」
( ^ω^)
( ・∀・)
( ・∀・)「……ほら、さっきみたいに尋ねてみなよ僕に」
(#^ω^)「っ」
( ・∀・)「ん?」
いちいちイラつく男だ。
作った笑みが顔に貼りついている。
そしてわざと俺に喧嘩を売るような話し方をしている。
短い邂逅ではあるが根本的な部分ではっきりとわかった。
俺はこいつが好きになれそうにない。
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 21:55:27.74 ID:m+07sVdS0
(#^ω^)
( ・∀・)「おおこわ」
そう言うと男は笑みを薄くし、声のトーンを落とす。
( ・∀・)「そうだ、僕も復讐のために奴を追っている」
先程までの男とは別人のような冷ややかな空気を発し、また笑顔に戻る。
( ^ω^)「……」
こいつの言うことを信じるなら、奴を斃さんとする者と会ったのはこれが初めてになる。
せっかくだから情報の交換をしたいところだがそうもいかない。
気に食わない。
( ^ω^)「それで?」
( ・∀・)「奴に恨みを持つツワモノはたくさんいるだろうね?でも―――」
( ・∀・)「斃せるのは一人だけ」
( ・∀・)「そう、早い者勝ちだ」
なるほど、こいつの言わんとしていることがわかった。
( ^ω^)「同じ目的を持っていても味方というわけではない、と」
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 21:59:48.02 ID:m+07sVdS0
誰もが奴に復讐を願っているのだろう。
"誰かが斃してほしい"ではない。
"誰よりも先に斃したい"なのだ。
( ・∀・)「斃すのは君か、僕か」
( ・∀・)「その判断を早い者勝ちだけで決めるのは、いささかつまらないとは思わないかい?」
酔狂な人間に勝負を挑まれたことは何度もある。
しかし何故だろう、今までよりも遥かに胸がざわついている。
( ^ω^)「……どうだろうな?」
ごきり、と指を鳴らす。
( ・∀・)「どーなんでしょーね」
男はぐるりと肩を回す。
そう言いながら、俺の顔には問いの答えが貼りつけてあるのだろう。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 22:03:17.90 ID:m+07sVdS0
( ・∀・)「……ま、そんなにマジにならなくてもいいよ、軽ーくさ」
( ・∀・)「互いのレベルがどのくらいなのか、ちょーっと測ってみよう」
嘘をつけ、お前の纏う雰囲気は"ちょっと測る"なんて生易しいもんじゃない。
その笑顔の奥底にはどす黒いものが積もっているくせに。
( ^ω^)「ふん、奇遇だお。俺も実は同じことを思っていたお」
( ・∀・)「くくくっ! 気が合うねぇ」
( ^ω^)「おっおっおっ」
しかしそれは俺もだ。
どす黒いものが心の奥底で渦巻いているのが自分でもわかる。
( ^ω^)「お前は、俺の"壁"になれるかお?」
( ・∀・)「"俺も実は同じことを思っていたお"」
( ・∀・)「……声真似うまいっしょ? ククッ」
( ^ω^)「腹が立つぐらいだお」
湖からの涼しい風が体を撫でる。
しかし睨みあいの中で仄かに火照った体は、冷めることはなかった。
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 22:06:18.47 ID:m+07sVdS0
ばしゃん、と遠くで何かが水に落ちる音がした。
その音を皮切りに俺と奴は動いた。
(#^ω^)「ふんっ!!」
( ・∀・)「!」
何の捻りもない腹を狙ったパンチを繰り出す。
が、空を切る音だけがした。
当然、一直線に放たれるそれは簡単に避けることができる。
元より当たるとは思っていない。
言わば俺の手の打ちを早い内に明かしておきたかったのだ。
( ・∀・)「ひゅぅ。いいパンチだ」
( ^ω^)「そりゃどうも」
そのまま相手の出方を待つ。
見た所丸腰。
何を"武器"として闘うのか見極める必要がある。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 22:09:28.51 ID:m+07sVdS0
奴がこちらの意図を理解したのか、それとも間を好機と見たのか。
( ・∀・)「おりゃっ!」
口角を少し上げた後、指先まで伸ばされた手刀が真一文字に振られた。
武器はない。
こいつの"武器"は素手だ。
俺の攻撃が避けられたのと同様、奴の攻撃をしゃがんで避ける。
カウンター気味に再び腹にパンチをいれようとしたが読まれており、それもまた避けられた。
( ^ω^)「……ふむ」
( ・∀・)「どうだい? 僕は"壁"になれそうかい?なれそうだろ」
男が自信満々に問いかけてきた。
( ^ω^)「さあな。そんなことを訊く前に俺に一発当ててみたらどうだ」
( ・∀・)「一発?……くくくっ」
さも愉快そうに男が笑いだす。
俺は特にギャグを言ったつもりはなかったが。ひょっとすると笑いの沸点が相当低いのかもしれない。
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 22:12:35.81 ID:m+07sVdS0
( ・∀・)「一発スパッと当たっちゃうと、君もそうなるよ?」
_,
( ^ω^)「は?」
同時に、俺の背後で何か重い物が倒れた音がした。
奴に隙を見せることになるのを忘れ、恐る恐る振り返る。
木が、丁度首くらいの高さで綺麗な断面を覗かせていた。
(^ω^ )
(^ω^;)
(;^ω^)「マジで?」
( ・∀・)「マジで」
(;^ω^)「……冗談じゃねぇお」
こいつは素手で木を切りやがったのだ。
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 22:16:05.15 ID:m+07sVdS0
( -∀-)「鍛え上げ、研ぎ澄まされた己が肉体で全てを断絶する―――」
( ・∀・)「"無刀流"」
(;^ω^)「…………」
"次はお前の番だぞ"
剥き出しの木の断面がしわがれた声でそう言った気がした。
( ・∀・)「理解できたかい?」
奴が冷たい微笑みを携えて問いかけた。
(;^ω^)「なるほど」
(;^ω^)「随分物騒でステキな"武器"だお」
( ・∀・)「そうだろう? 難点を挙げるなら……手加減できないってことかな?」
(;^ω^)「ふざけやがって」
思わず馬鹿みたいな悪態を吐いた。
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 22:19:43.76 ID:m+07sVdS0
しかし俺はまた、知らず知らずのうちに笑っていたことに気づいた。
攻撃の危険性に怖気ついたことによる引き攣った笑いではない。
まして、真っ二つに切られることを恐れた苦笑いでもない。
( ・∀・)「と、自己紹介をしておこう」
( ・∀・)「"無刀流"のモララー。よろしく」
( ^ω^)「……"腹パニスト"のブーンだお」
( ・∀・)「へぇ!腹パニスト! 珍しい、今まで出会ったことがないタイプだ!」
俺に喧嘩を吹っ掛けてきたこいつ――― モララーのことだ。
きっとこれまで何人もの復讐者達と闘ってきたのだろう。
( ^ω^)「今まで出会ってきた復讐者達と戦って、どうだったお?」
男がニッと不敵に笑った。
ころころと幾つもの笑みに変わる、表情豊かな男だ。
( ・∀・)「全勝」
( ^ω^)「ほーう」
( ^ω^)「なら、"壁"が必要なのは俺だけでなく、モララー、お前もだお」
モララーの片眉が反応した。
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 22:23:35.92 ID:m+07sVdS0
( ^ω^)「今のお前には奴どころか俺すら倒せない」
会話が途絶え遠くのざわめきだけが聞こえてくる。
おしゃべりだったモララーが何も言わないのは不気味である。
( ・∀・)「……これまで負けたことのない僕がかい?」
( ^ω^)「だからだお。 半端な実力は自分の立ち位置を勘違いさせるお」
( ・∀・)「それなら君だって」
( ^ω^)「俺は自分の実力に疑問を抱いている。越えなければならない"壁"が見つかっていないだけだお」
_,
( ^ω^)「もう一度問うお。 お前に、俺の"壁"になれるだけの実力があるのかお?」
モララーが口元を歪め、歯を噛みしめたのがわかった。
どうやらモララーは自分の強さに相当自信があるらしい。
だからそこを煽ってみると今のように笑みが消える。面白い。
( ^ω^)「おしゃべりはここまでだお。 それとも、日が暮れるまでこのまま語り合ってみるかお?」
( ・∀・)「語り合い! それもいいかもねぇ、賛成だよ。大いに」
(#・∀・)「――― ただし、非言語での語り合いだ!!」
(#・∀・)「行くぞ!!ブーン!!!」
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 22:28:12.19 ID:m+07sVdS0
初手とは違い、感情的な直線が寸前まで俺のいた空間を両断した。
動きについていけず馬鹿みたいに立っていたら今頃体が半分になっていただろう。
だが当たらなければどうということはない。
(#・∀・)「後悔させてやるよ!!あまりにも高すぎる"壁"ができたってね!!!」
( ^ω^)「ふん!是非とも後悔させてくれお!!」
そして俺はまた笑みを浮かべた。
目の前の好敵手に対する恐怖や侮蔑からではなく、
これから久々に始まるであろう、楽しい闘いへの手向けである。
(#・∀・)「ちぇいっ!!!」
真正面から袈裟に振るわれた手刀。
それを難なく後退してかわし、逆に懐へ飛び込む。
(#^ω^)「甘ァい!!」
握り固めた右の拳をアッパー気味に繰り出す。
(#・∀・)「ふん!!」
突き出されたそれが奴の腹をとらえることはなく、豪快な風圧だけを起こした。
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 22:31:41.81 ID:m+07sVdS0
モララーは咄嗟にジャンプしたのだ。
そして上昇する俺のパンチを踏みつけ、バネのようにして宙を舞った。
( ・∀・)「はっはー!!」
(#;^ω^)「な、なんだその避け方!? ――― わぷっ!」
( ・∀・)「汚いかい?しかし何でもアリが基本さ、そうだろう!?」
着地したモララーが投げつけてきた砂を避けようとはしたが、右目に食らった。
襲い来る眼への異物感、辛うじて視界をこじ開ける。
霞んだ世界の中でモララーが走りこんでくるのが見えた。
(;::´ω^)「ぬぐっ!!!」
はっとして意識を音へ寄せる。
(#・∀・)「ほらほらどうしたどうしたぁ!?」
(;::´ω^)「うおおおお!!?」
声を頼りにモララーの位置を把握し、なんとか手刀を回避する。
しかし連発されると、一度のまぐれ回避では意味がない。
(;::´ω^)「ぐぅ……!」
(#;・∀・)「チッ、ちょこまかと……!!」
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 22:36:12.73 ID:m+07sVdS0
右腕。 左腿。 左手の甲。 脇腹。 腰。 頬。
(#・∀・)「逃げるのは上手いようだね、君!」
指先に与えられたいくつもの浅い切り傷が、じわじわと熱を持つ。
あの切断された木のようにならなかった分、
攻撃範囲に入らないよう泥臭く逃げ回ったかいがあるというものだ。
それに、目的を持って移動していたことに奴が気づいた節はない。
(::メ´ω^)「――― ふっ!」
(#;・∀・)「あいた!」
姿勢を低くし、モララーの脚をがむしゃらに狙った弱い蹴りはスネに命中した。
(#;・∀・)「〜〜〜〜〜〜!! こんにゃろ、腹パニストのくせに蹴りやがって!」
(#・∀・)
(;・∀・)「はっ!」
ざぼん、と冷たい水が頭部を包んだ。
澄んだ水で瞬きを繰り返し、砂地で悔しげにしているモララーと向き合う。
( メ^ω^)「ふっかーつ」
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 23:02:51.22 ID:m+07sVdS0
( メ^ω^)「ぷぅーッ! ……もう同じ手は食わんお?」
(;・∀・)「ちっ」
ここは湖の近く。
少し前に無邪気にはしゃいでいた子ども達は既に遊び場を変えていた。
( メ^ω^)「眼潰しなんて小細工がないと俺を打倒できないかお?」
返答の代わりにモララーは素早く接近し、大きな踏みこみとともに手刀を振るう。
それを小さい挙動でかわし、開いた正面、突き出された片膝を踏み台にマントを鳴らしながら背後へ跳ぶ。
(;・∀・)「んなっっ!!」
慌てて振り返ったモララー。それが運の尽きだ。
(#メ^ω^)「うおらぁッ!!」
(;;゚∀・)「 っ ぬがフッッッッ!!!!!」
モララーの常人より鍛え上げられた腹へ、更に鍛え上げられた俺の拳が音を立てて捻じこまれた。
━━━―――−−−‐‐‐
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 23:07:22.28 ID:m+07sVdS0
ξ゚−゚)ξ「……」
私の目の前にあるのは、皮でできた細長いしょんぼりした色の入れ物。
腰から拳銃を取り出し、大きさを見比べてみる。
ロノ+x+)「お、嬢ちゃんなんか気に入った物あるかい?」
ξ゚−゚)ξ「このガンホルダー?ってやつなんだけど……」
ロノ+x+)「おうおう!そいつぁ嬢ちゃんが持ってる片手拳銃を入れておくのに丁度いいやつだ!」
ロノ+x+)「機械時代の頃はそういうのはふぁっしょんの一部だったって噂さぁ!」
ξ゚听)ξ「ほー」
ふむ。なるほど。へぇ。ほうほう。
強いて言えば私みたいな美少女が持つにはちょっと飾りっ気がない――― 言ってしまえば地味だけど。
無造作に腰に差しておくよりなんか良いんじゃないかしら。
ξ*゚ー゚)ξ「よし!おっちゃんこれちょうだい!」
ロノ+x+)「あいよー!嬢ちゃんに良く似合ってるぜこれ!」
ξ゚ー゚)ξ「……ありがとう」
笑顔がひきつる。地味と思ってしまった手前、素直に喜べない。
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 23:12:19.66 ID:m+07sVdS0
早速ホルダーを腰に装着してみる。
あつらえたかのように拳銃はぴったりと収まった。
やはり物はあるべきところにあるべきのようね。
ロノ+x+)「そうだ!そんな骨董品買ってくれた可愛い嬢ちゃんに良いこと教えてやるよ!」
ξ゚听)ξ「あら、そんな本当のことを……何です?」
ロノ+x+)「嬢ちゃん、旅人だろ?今後もこの辺を旅するなら知っておいた方が良い情報さ」
にいっとおっちゃんが目を細めて人の良さそうな笑顔を見せる。
この街の商人は皆明るくて接しやすいし親しみやすい。
心を浄化させるような自然のオアシスの存在が大きいのかしら。
あのガサツ馬鹿もこれくらい愛想が良かったらいいのに。
ロノ+x+)「"リョナラー"と名乗る人間達を知ってるかい?」
_,
ξ゚听)ξ「リョナ……ラー? 多分……知らないわ」
ロノ+x+)「そいつらはな、人を痛めつけて楽しむとんでもねーヘンタイ野郎共だ」
ξ゚听)ξ「ヘンタイ……」
ロノ+x+)「しかも世界のあちこちにいやがるって俺達商人の間じゃもっぱらの噂でさぁ」
ξ;゚听)ξ「あ、あちこちにヘンタイが……」
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 23:16:19.82 ID:m+07sVdS0
ロノ+x+)「一人で行動してる奴が多いらしいけど、奴ら独自のネットワークで情報交換してるとかしてないとか」
_,
ξ;゚听)ξ「そ、それで?」
ロノ+x+)「ここに近い、荒野地帯のとある街がリョナラーたった一人に占拠されちまったらしい」
_,
ξ;゚听)ξ「せ、占拠されたらどうなるの……?」
ロノ+x+)「そりゃあ…………奴らが欲望を満たすために、住民は非人道的なことをたんまりされ……おっと」
ξ;゚Д゚)ξ
怖すぎ笑えない。
ロノ;+x+)「わりぃ嬢ちゃん、女の子に聞かせる話じゃねーなこりゃ」
ξ;゚Д゚)ξ
ξ;゚听)ξ「あ、い、いえ、ありがとおっちゃん」
想像上のリョナラーは私の頭の中で咆哮を上げながら大暴れしている。
身長は木よりも高く、岩肌よりも筋骨隆々、笑顔で人を捻り潰し真っ赤に染まった血を舐めとるリョナラー。ニヤリ。
こわっ。
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 23:20:59.75 ID:m+07sVdS0
ξ;゚听)ξ「気をつけてどうにか……なるものでもなさそうだけど、なるべくその街を避けて旅するわ」
ロノ+x+)「おお、それそれ、俺ぁそれが言いたかったのよ、うん」
申し訳なさそうな顔をしておっちゃんが笑った。
店を離れ、独りで通りを歩く。
ξ゚听)ξ
ξ;゚听)ξ
ξ;゚听)ξ「うー……」
そんな話を聞いた後なもんだから、一人でいるのがものすごく不安で寂しくなった。
別にブーンがいれば安心するわけではないけれど、いないよりいた方がマシね。
腕っ節だけは確かだから、もし運悪くリョナラーに襲われても、あいつなら何とかしそうだ。
というか何とかしてくれないと困る。
ξ;゚−゚)ξ「……寒くなってきたわねぇ」
主に背筋が。
すれ違う人達の視線まで恐くなってきたわ。
腕をさすっていると道の先の人だかりに気がついた。
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 23:25:17.44 ID:m+07sVdS0
ξ゚−゚)ξ「何かしら……大安売りとか?」
ブーンから渡された財布をチェックする。
小銭が不景気な音を鳴らした。
ξ゚听)ξ「ちっ……あのケチ」
悪態をつきながら人の輪に近づく。
「いいぞー!もっとやれー!」 「おいおい今の視えたか?」
「うわ、血まみれだぞあいつ」
「すっげえ……」 「物騒なことはよしてほしいねぇ」
「キャー!あの人カッコよくなーい? あっちはそうでもないけど」
「何がどうなってんだか……」 「若いねぇ」
野次馬の声を聞き分けると、どうやら円の中心では壮絶な喧嘩が起きているらしい。
「うわっ!すっげえパンチ!」
どよめきの中にそんな声も聞こえ、ふとあの一見人畜無害そうな顔を思い出す。
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 23:30:01.71 ID:m+07sVdS0
嫌な予感がした。
ξ;゚听)ξ「ちょ、すいませーん、通してくださーい」
見世物を見るような少し楽しげな雰囲気の人混みをかきわけ、その中心の二人を確認した。
(;メ^ω^) (・∀-;;)
(;メ^ω^)「二発目、食らった気分はどうだお」
(;;-∀・)「ッああ――― いいパンチ、持ってるじゃん」
(;メ^ω^)「……そりゃどうも」
(;;・∀・)「命中で言えば、僕の方が遥かに、多いけどな」
(;メ^ω^)「なんだそりゃ。こんなかすり傷、いくらあっても数に入らんお」
(#;・∀・)「おいおい、全身血まみれだぜ?とんでもないぜ?このまま続けたら、君、死んじゃうよ??」
(#;メ^ω^)「そりゃてめーもだお?俺なんかまだまだ大丈夫だお」
- 92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 23:35:15.02 ID:m+07sVdS0
嫌な予感は見事的中した。
体中に切り傷をこさえたブーンと、苦々しげに歪んだ、元は綺麗だったであろう顔の男が睨みあっている。
(#;・∀・)「バーカ!バーカ!強がってんじゃねー!」
(#;メ^ω^)「何を!?てめーこそもう脚ふらっふらじゃねーかお!」
(#;・∀・)「脚ふらふらなのはお前、昨日寝てないからだよ!寝不足だ!!」
(#;メ^ω^)「ちゃんと寝ろ馬鹿たれ!!」
二人は肩で息をしながら口論をしている。
野次馬達はそのやり取りを笑いながら見守っている。
誰も止める気配はない。
当の本人たちはそれを気にする様子はない。
片方は血まみれで片方はだくだくと汗を流している。
傍から見れば殺し合いだが、二人の間を飛び交う罵詈雑言は間違いなく子どもの喧嘩のそれだ。
ξ;--)ξ「…………」
私はどうすればいいかしら?
- 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 23:39:38.86 ID:m+07sVdS0
(#;メ^ω^)「よーしわかった、次で終わりだお、次!次だお!?」
(#;・∀・)「いいぜ!僕もついに全力を出す時が来たみたいだね!!」
(#;メ^ω^)「そりゃ俺のセリフだお!今まで75%の本気だったお!」
(#;・∀・)「なにぃ!?僕は60%の本気だったよ!僕の方が手を抜いてたね!」
(#;メ^ω^)「いーや俺の方が手抜いてた!!75%じゃなくて57%の間違いだったお!」
(#;・∀・)「んなわけあるか!どうやったらそんな馬鹿みたいな全力調整できるんだよ!!」
(#;メ^ω^)「できるもんはできるんだお!!え、何、お前もしかしてできないの?」
(#;・∀・)「でーきーまーすぅーー!やってないだーけーでーすぅーーー!!」
(#;メ^ω^)「はんっ、苦しい言い訳だなおい!」
(#;・∀・)「君もだろ!!!」
(#;メ^ω^)「んぬおおおおおおおおおお!!!」
(#;・∀・)「タアッッッッッ!!!」
ξ#゚听)ξ「どっせ―――――――――――――ッ!!!!!!」
(#;メ゚ω゚)「めゴッッッッッ!!!!」
- 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 23:43:49.11 ID:m+07sVdS0
拳銃のグリップと呼ばれる部分を全力でブーンの頭へ振り下ろした。
いまにも飛びかからんと前へ出されていた脚はかくんと折れ、そのまま地面へぶっ倒れた。
ξ#゚听)ξ「こんのぉ…………」
(;;メ゚ω゚)
(;;・∀・)
(*;・∀・)「えっ誰っ!?何っ!?何がどーなって……あ、綺麗なひと」
ξ#゚听)ξ「喧嘩両成敗アタ―――――ック!!!」
(;;゚∀・)「ンごっっっっっっ!!!!」
同上。
連れが公衆の面前でこんなことをしていて、恥ずかしいやら何やらな気持ちで私はいっぱいだった。
とった行動は、とりあえず二人の愚行を止めるために両方を正気に戻すこと。
誰かもわからない男もついでに殴ってしまったが、別に構わないでしょう。
ξ#゚听)ξ「ふーっ、ふーっ」
荒い息を吐きながら辺りに睨みを効かせ、野次馬を散らせる。
そして地面へ投げ出された二人の足を引きずり、湖へ叩きこんだ。
- 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/27(水) 23:47:47.04 ID:m+07sVdS0
‐‐‐−−−―――━━━
(//-ω-)( -∀-)「すみませんでした」
ξ#゚皿゚)ξ
(//-ω-)( -∀-)「ごめんなさい」
ξ#゚皿゚)ξ
(//-ω-)( -∀-)「もうしわけごめんすみませんでした」
ξ#゚皿゚)ξ
( -∀-)「……ねぇ、なんとかしてよ、あの麗しき女性を」
(//-ω-)「……そう言われても、ってなんだおその呼称」
ξ#゚皿゚)ξ
(//-ω-)
(//-ω-)「あ」
(//^ω^)「ツン、喉渇いてないかお?」
- 103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/28(木) 00:00:18.75 ID:hj3H6bXJ0
ξ*゚听)ξ「これなかなかおいしいわね!!」
そう言ってツンは上機嫌に黄緑色のフルーツジュースを飲み干す。
その様子を見て俺とモララーは密かにガッツポーズをした。
復讐者達の鍔迫り合いは鬼女によりあっけなく幕切れ。
湖にぶち込まれた俺達は比喩でなく心身を清めた後、
その縁で夕暮れの陽を浴びた水のうねりを眺めながら事の経緯を話していた。正座で。
そして一しきり二人で謝った後、機嫌を直すためジュースを買ってきた。ダッシュで。俺の金で。
ξ゚听)ξ「それにしてもあんた達、馬鹿なことしてたわねぇ」
いやしかし、と苦笑いを浮かべながら心の中で言い訳をする。
闘ってみたくなったのだから、仕方ない、と。
そして今まで抱いたことのなかった感情を元に作られたその言い訳に、俺は少し驚いた。
復讐のことを考えている時よりずっと、心は軽かった。
( ・∀・)「男とはそういうものなのです、ツンさん」
俺が無言でいると、顔を無駄に煌めかせながらモララーが言った。
そういうものなのだろうか。
……そういうものなのだろう。
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/28(木) 00:05:27.91 ID:hj3H6bXJ0
( ・∀・)「――― で、この腹パン野郎とツンさんはどういったご関係で?」
( ^ω^)「わけありで」
流石にこいつがワンパニストに関する俺の切り札だと言うわけにもいかず、適当に濁す。
適当すぎた気もするが。
( ・∀・)「ならば男女の関係ではないと……?」
ツンが盛大にむせた。
(//^ω^)「そういうことになるお」
モララー、少し考えたのち。
( ・∀・)「ツンさん!」
ξ;゚听)ξ「ほぇ?」
急に名前を呼ばれ奇妙な声を上げた。
( ・∀・)「いつか僕はこの腹パン野郎に勝ちます!!」
( ・∀・)「その時!!!僕はあなたに愛の告白をするでしょう!!一目惚れです!!完全に!!!!」
ξ*;゚听)ξ「んな゙っ!!!」
( ・∀・)「僕と永遠に旅をしましょう!!!」
- 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/28(木) 00:08:50.56 ID:hj3H6bXJ0
(//^ω^)「……モララー、お前俺に勝つつもりかお?」
( ・∀・)「当然」
ニヤリと白い歯をむき出しにして笑う。
こいつがやると世の女はワイルドな一面が良いと言うんだろうが、俺がやると猛獣と形容されるんだろうな。
一つ、鼻で笑ってから。
_,
(//^ω^)「俺が負けるわけがないだろうが」
ξ*;゚听)ξ「んな゙ァ゙っ!!」
何故かツンが口をパクパクさせている。何をしているんだ。酸素でも足りないか。
モララーが勢いよく俺に指を突きつけた。
( ・∀・)「ワンパニストを追う限りまた邂逅することになるだろう!!宿敵・ブーンよ!!」
( ・∀・)「君が僕に敗れるその時まで、しっかりツンさんを守れよ!!!」
(//^ω^)「へいへい」
( ・∀・)「ではっ!!また会いましょうツンさん!!!」
ぶんぶんと手を振り、ふいに大きくくしゃみをして街の雑踏へ消えていった。
- 107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/28(木) 00:12:26.59 ID:hj3H6bXJ0
"壁"。
俺の目の前に立ちはだかる、今はまだ視えない壁。
その向こうにワンパニストが待ち構えている。
不敵に口元を歪めながら、堂々と。
モララーは"壁"としてふさわしいとは言えない。
だが、今の俺ではまだワンパニストに勝てないであろうことを教えていった。
奴の言う通り、俺達はもっと人間的な"宿敵"という存在ではあるだろう。
(//^ω^)「……感謝するお」
今日という日全てをひっくるめてまとめるように、突き出した拳をぐっと握った。
ξ*;゚听)ξ「急に言われたからびっくりしたわ……」
(//^ω^)「何がだお?」
ξ*;゚听)ξ「な、何がって…………ふ、ふんっ!別にわからないならそれでいいわよ!」
(//^ω^)「?」
ぷいとそっぽを向くツンを不思議に思い、
そういえば濡れたままだと気づいた時には既に気温も下がり始めており、無性にくしゃみがしたくなった。
- 108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/28(木) 00:15:32.86 ID:hj3H6bXJ0
← 第五話「復讐者達の邂逅」
第六話「一度だけ」 →
戻る