( ^ω^)は荒野の腹パニストのようです
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 21:03:22.05 ID:sGg/OzlJ0
(ヽ^ω^)「ほい、全員捕まえたお?」
足元には体を縛り上げられ、呻き声を呪詛のように垂れ流しながら芋虫のように丸まる賊達。
このダサいマントの男は信じられないことに、屈強な賊達を一人で倒してしまったのだ。
人はみかけによらないというやつだろうか。
(ヽ^ω^)「で、あの約束、覚えてるおね?」
私がどう切り出せばよいかわからず黙りこんでいると男から話しかけてきた。
ξ゚听)ξ「え、ええ、腹いっぱいのご飯でしょう?」
(ヽ^ω^)「よすよす」
男が満足気に頷く。
そしてかくんと首が下がったかと思うと、そのまま前のめりに倒れてきた。
ξ;゚听)ξ「わーーーーーーーっ!!ど、どうしたのよ!!怪我!?」
(ヽ´ω`)「…………はら」
ξ;゚听)ξ「え?」
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 21:06:40.58 ID:sGg/OzlJ0
(ヽ´ω`)「はら、へった、お……」
━━━―――−−−‐‐‐
(0゚^ω^)「っげふぅ」
ξ゚听)ξ「……ようやく食べ終わり?」
あの後、隊商は賊とマントの男を連れて目的の街に辿りついた。
行商人達は空腹に目が回っている男に口々にお礼を言い去っていった。
どの顔にも"商品を差し出したくない"と書いてあったことを覚えている。
助けてもらっておいてなんという奴らだ。
だから結局私が報酬を払うことになった。
まあ、私がこいつに用があるということも関係しているのだけれど。
そして今の今まで男はずっとご飯をかっ食らっていた。
橙色だった空はもう陽が落ちて紺碧色になっている。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 21:10:44.08 ID:sGg/OzlJ0
(0゚^ω^)「いやぁ、満足満足だお」
(0゚^ω^)「街独特の味を楽しめる料理はいいおねぇ」
(0゚^ω^)「このアスパラとベーコンとレモンのやつとかトマトと豆と黒コショウ?のスープ」
(0゚^ω^)「あとこの端はカリカリ中はふんわりのパン、これ美味いおねぇ」
(0゚^ω^)「バター?マーガリン? よく知らんけどこれがまたねぇ」
ξ||゚听)ξ「は、はは、そりゃ良かったわ……」
(0゚^ω^)「? なんでそんなに引き笑いしてんだお?」
ξ||゚听)ξ「……食べ過ぎで、値段がさぁ」
(0゚^ω^)「ああ」
ξ||゚听)ξ
(0゚^ω^)「?」
ξ#゚听)ξ
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 21:13:11.10 ID:sGg/OzlJ0
ξ#゚听)ξ「――― 高すぎんのよッッッ!!!」
第三話「輝き」
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 21:16:34.01 ID:sGg/OzlJ0
‐‐‐−−−―――━━━
女が吠えた。
( ^ω^)「それが報酬だって約束だお?」
ξ#゚听)ξ「だからってねぇ、この値段はないわ!?」
ξ#゚听)ξ「見て見てこの領収書!! 0がいくつくらいある?数えてみてよ!!」
ぐいっと数字の並んだ紙を目の前に突きつけられる。
ひーふーみー……
…………面倒だ。
( ^ω^)「いっぱい」
ξ#゚皿゚)ξ「見りゃあわかるわよーーー!!!」
金髪の女がだんだんと拳を机に叩きつけている。
店の物なんだから大切にしろよ。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 21:20:42.31 ID:sGg/OzlJ0
しかしこの料理屋には酔っ払いの客達がそこら中にいてあまり俺たちは目立っていない。
この街は今まで訪れた集落の中でも活気がある方に分類される。
人々は松明に火を灯し、夜の闇に対抗するよう至る所に掲げている。
それに加えて地面やレンガ造りの壁、道の置物などの一部分が不思議とチカチカと薄く光っている。
眠らない街、とでも言うのだろうか。いいことだ。
( ^ω^)「しかしまぁ、お前もよくそんなに金持ってたおねぇ」
パンパンの腹を撫でながら訊いてみた。
ξ;--)ξ「といってもそれがほぼ全財産なんだけど……」
ξ゚听)ξ「女の子の一人旅は危険だからね」
ξ゚听)ξ「みんな何かと恵んでくれるのよ」
( ^ω^)「全部乞食して稼いだのかお」
ξ#゚皿゚)ξ「そのお金だけじゃないわよ!!人聞きの悪いことを言うな!!」
よく怒る女だ。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 21:24:18.21 ID:sGg/OzlJ0
もらうもんはもらったし、このまま一緒にいてもやかましいだけだから別れることにしよう。
今日はせっかくだから野宿じゃなくて宿に泊まるのもいい。
ワンパニストの情報を集めるのは明日でもいいだろう。
ただ今まで旅をしてきたこの東の大陸ではほとんど情報が手に入っていない。
あいつはこの辺ではあまり活動してないのかもしれない。
それとも、もう死んでいるのか。
……もっと別の地域に行ってみることも視野に入れよう。
情報のないところで時間を無駄にしてもしょうがない。
( ^ω^)「じゃ、そゆことで」
ξ゚听)ξ「あ、待ってよ、ねぇ!!」
( ^ω^)「ん?まだ何か用かお? 金は持ってないお」
ξ#゚听)ξ「だから乞食じゃないって言ってんでしょ!!」
( ^ω^)「なら……?」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 21:28:15.07 ID:sGg/OzlJ0
ξ゚听)ξ「あんた、"ワンパニスト"って知ってる?」
俺の耳は聞き間違いをしてないな?
数度瞬きをする。
騒がしい店内の上、誰かに聞かれて困る内容というわけではない。
しかし事の重大さから、思わず声を潜めて返答した。
( ^ω^)「……何故その名前を」
ξ゚−゚)ξ「知ってるのね?」
質問のし合いになって先へ進まない。
歯がゆい思いから自然と握りこぶしが強くなる。
( ^ω^)「どこだ」
ξ゚−゚)ξ「?」
( ^ω゚)「奴はどこにいる……!」
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 21:31:36.98 ID:sGg/OzlJ0
ξ゚−゚)ξ「……どこか、別の場所で話すわよ」
ξ゚−゚)ξ「ここはうるさくてとてもそんな雰囲気じゃないわ」
ξ-听)ξ「……多分あんたの期待には応えられないけどさ」
( ^ω^)「?」
言ってる意味がよくわからない。
ワンパニストの情報を持ってるということじゃないのか?
なら何故ワンパニストの名前を出した?
……まあいい、落ちつけ俺。
ξ゚听)ξ「ごちそうさまー」
§*'ー`§「あ、はーい! 御代金は……こちらになりまーす!」
ξ;゚听)ξ「……うう」
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 21:34:35.10 ID:sGg/OzlJ0
夜風が吹く。
街中はある程度地面が石畳で舗装されているからか、あまり砂は混じっていない。
そのため店内で蒸されて火照った体を冷ますのに丁度いい。
ξ゚−゚)ξ「高いのが街の料理屋の問題点よねー……」
ξ゚−゚)ξ「その点やっぱり田舎町の方が経済的に優しいわ」
ξ゚−゚)ξ「やっぱりこんなとこでご飯食べるんじゃ」
( ^ω^)「で、どこに行くんだお?」
このままだとぶつくさ文句を言われ続けそうだったため言葉を遮る。
俺は早く情報がほしい。
ξ゚听)ξ「まあどこでもいいわ」
ξ゚听)ξ「その辺歩きながらでも―――」
( ^ω^)「んお?」
どん、と何かが俺の腰にぶつかってきた。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 21:41:17.40 ID:sGg/OzlJ0
(;><)「あうっ、わ、ごめんなさいぃ!」
_,
( ^ω^)「お、ちゃんと前見て走れお?少年」
余程走ることに集中し前を見ていなかったのか、
困った顔の少年が勢いそのままにひっくり返ってしまった。
起き上がろうともがいているが焦り過ぎてひょろ長い手足がこんがらがっている。
ξ゚ー゚)ξ「あらら、大丈夫?」
(;><)「あ、 ありがとうございますなんです!!」
手を貸した女に口早に礼を述べて、少年がたったかたったかと走っていく。
子どもは風の子元気の子ってね。
( ^ω^)「……しかし、陽が落ちてるのに外出とはあんまり感心せんお」
ξ゚听)ξ「ん? あ、確かに」
そう言ってる間にも少年の小さな背中は街の出口の方へと遠ざかっていく。
ξ゚听)ξ「案外常識的ね、あんた」
お前は俺の何を知っている。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 21:44:27.00 ID:sGg/OzlJ0
さあ歩きだそう、と一歩踏み出した瞬間に再び腰のあたりに何かがぶつかった。
( ^ω^)「……二度目だお」
ξ゚听)ξ「大当たりね」
( <●><●>)「謝罪すべきなのはわかってます」
( <●><●>)「ごめんなさい」
(;^ω^)「お、おう」
きっちりした言葉が返ってきて思わずたじろぐ。
さっきの少年より少し大きいくらいの背丈なのに随分と威圧感を感じる。
大人びているというのだろうか。
……いや、目がデカいからか。
( <●><●>)「あの、一つ尋ねたいのですが」
ξ゚ー゚)ξ「なぁに、どうしたの?」
金髪の女が少年と目線を合わせるように腰を屈める。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 21:49:14.86 ID:sGg/OzlJ0
( <●><●>)「先程困った顔の少年がここを通りませんでしたか?」
ξ゚听)ξ「まさにそんな顔の少年がさっき通ったわ」
(;<●><●>)「……やはりですか」
( ^ω^)「それがどうかしたかお?」
少年はいっぱしの大人のように腕を組み、うんうんうなり始めた。
そして何か答えが出たのか、俺たちに向き直る。
(;<●><●>)「……あのう、お二人様」
( ^ω^)「何だお?」
(;<●><●>)「子どものお願いを聞いていただけませんでしょうか」
表情の変化はあまりわからないが心なしか申し訳なさそうな顔だ。
正直、俺としてはさっさと金髪の女から話を聞きたいのだが、
ξ゚ー゚)ξ「どうかしたの? 私"たち"で良かったら聞いてあげるわ」
こう言われてしまうと急かすことも出来ない。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 21:53:12.61 ID:sGg/OzlJ0
ξ゚听)ξ「その困った顔の子どもに関係することかしら?」
( <●><●>)「! ……わかってましたか」
ξ゚−゚)ξ「いや、まあ、そりゃ、ねぇ」
( ^ω^)「そりゃねぇ」
( <●><●>)「……あいつ、ビロードって言うんですけど」
( <●><●>)「ビロードには好きな子がいるんです」
ξ゚听)ξ「あらま」
( <●><●>)「ちんぽっぽちゃんって言うんですけど」
思わずその名前が本名かどうか問おうかと思ったが止めておいた。
( <●><●>)「彼女、誕生日が近いんですね」
( <●><●>)「それでビロードに頼まれてさり気なく欲しいものを聞いたところ」
( <●><●>)「『綺麗に光るものがほしいっぽ』……と」
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 21:58:12.61 ID:sGg/OzlJ0
ξ゚−゚)ξ「光る……?」
( <●><●>)「それでこの辺りには機械時代の頃の珍しい物が多く残った場所があるのです」
( <●><●>)「でも大人たちからは、大昔の物で何があるかもわからないし」
( <●><●>)「危ないから近寄っちゃ駄目と口を酸っぱくして言われているんですが」
( <●><●>)「ビロードはそこからプレゼントを取ってくるんだって興奮してしまって」
( ^ω^)「なるほどね」
機械時代の頃はその名称通り、機械に囲まれて暮らしていたらしい。
荒野化したと言っても当時の物の全てが壊れ、大地に還ったわけではなく、
今の時代にとってのはみ出し者のように歪な文明が地表に姿を現し続けている。
言わば"機械時代の跡"が未だ残っているのだ。
それがこの周辺にもあるらしい。
( ^ω^)「で、光る物を探すなら夜」
ξ゚听)ξ「ビロード君は今それを取りに行った、ってことね」
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 22:02:17.14 ID:sGg/OzlJ0
( <●><●>)「その通りなのです」
( ^ω^)「まあ行動力の高さは褒めるお」
( <●><●>)「今日の昼間からやる気満々だったのです」
(;<●><●>)「だから僕は止めようと見張ってたのですが、この有様です」
少年が肩をすくめてみせた。
( <●><●>)「それで、ここで会ったのも何かの縁」
( <●><●>)「お二人様も一緒にビロードを捕まえてほしいのです」
ξ゚ー゚)ξ「よし、任せ―――」
( ^ω^)「待った」
有無を言わさず返事をしようとした女を止め有無を言う。
ξ゚听)ξ「何よ」
( ^ω^)「やるならお前一人だけでやれお」
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 22:06:15.30 ID:sGg/OzlJ0
- _, ._
ξ゚听)ξ
"こいつは何を言ってるんだ"と言いたげな顔をされた。
( ^ω^)「俺に得がないし、お前と行動する理由もないし、何よりめんどくさい、腹いっぱい」
ξ#゚听)ξ「ワンパニストの情報欲しいなら来なさいよ!」
( ^ω^)「俺が求めてる情報かわからないって言ってたやつだお?」
いや、本当はそれでも喉から手が出るほど欲しいのだが、強がってみせる。
ξ#゚听)ξ「だから……!!」
ξ#゚听)ξ「……」
口を噤み、こめかみに青筋を浮かべて睨みつけていたが、やがて何も言わず大きく息を吐いた。
ξ-听)ξ「……分かったわ、じゃああんたこの通りで待っといてよ」
ξ゚听)ξ「私一人で探してくるから」
( ^ω^)「了解」
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 22:10:31.45 ID:sGg/OzlJ0
ξ゚ー゚)ξ「さ、探しに行くわよ。 ……えーっと、お名前は?」
( <●><●>)「皆からはワカって呼ばれてます」
ξ゚ー゚)ξ「私はツンよ、行きましょワカ君」
二人は宝石をバラ撒いたように薄く光る地面を歩いて行った。
━━━―――−−−‐‐‐
ξ#゚听)ξ「全く、あいつったら、あんなに薄情な人間だとは思わなかったわ!」
薄らと光が漏れる、ビロード君が向かった場所へ。
カンテラの明かりに照らされた砂上を移動しながら思い出し笑いならぬ思い出し怒り中。
ξ#゚听)ξ「ちょっと強いからって何よ、あいつぅ」
ξ#゚听)ξ「そういえば会った時も交換条件突きつけてたし、なんて意地汚い奴かしら!」
ξ#゚听)ξ「ふんだ、死んでもあんなやつになりたくないわ!ねぇワカ君!!」
(;<●><●>)「え、はい、わかってます」
同様した返事で物凄い剣幕で迫っていたことに気づいた。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 22:14:39.24 ID:sGg/OzlJ0
ξ;゚听)ξ「ご、ごめんね、つい」
(;<●><●>)「どうどう」
小さい子になだめられるなんて。
恥ずかしさと申し訳なさで頭を抱えてしまう。
( <●><●>)「……ツンさん達はどれくらい一緒に旅してるのですか?」
ξ゚听)ξ「え……あー」
ξ゚−゚)ξ「私たちは今日の昼ごろに会ったばっかりよ?」
ξ゚听)ξ「そういえばあいつの名前知らないわ私」
ξ゚听)ξ「後で聞いておこうっと」
(;<●><●>)
ワカ君が目に見えて呆れた顔をしている。
適当な大人でごめんね。こうはならないでね!
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 22:18:16.87 ID:sGg/OzlJ0
ξ゚听)ξ「あれ、というか私たちが旅人だってわかってたの?」
( <●><●>)「わかってました。 見慣れない格好ですから」
あいつは趣味の悪いマントに私は一般人には見えない、動きやすい服装。
確かに見慣れない。
ξ゚听)ξ「なら尚更こんなこと頼みそうにないけど……」
( <●><●>)「お二人とも悪い方にも見えませんでしたし、こんなこと守衛さんにバレると怒られますし……」
( <●><●>)「ですから声をかけさせていただきました」
見かけによらない頭の回転の速さに驚かされたけど、まだ子どもらしい考えが残っていて微笑ましい。
ξ゚−゚)ξ「でもあいつ愛想悪くてごめんねぇ。……」
そして人の金で飯をたらふく喰ったあの男のつやつやした顔を思い出す。
ξ#゚听)ξ「……」
おっと、またイライラしそうになった。落ちつけ。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 22:22:07.69 ID:sGg/OzlJ0
ξ゚ー゚)ξ「ワカ君とビロード君とちんぽっぽちゃんは仲いいの?」
( <●><●>)「はい。 昔から友達ですから、兄弟みたいなものです」
ξ゚听)ξ「へぇー……ワカ君はちんぽっぽちゃん好きじゃないの?」
(*<●><●>)「僕はもっと大人っぽい女性が好きです」
ξ゚ー゚)ξ「……だろうねぇ」
すごくしっくりくる答えだ。
( <●><●>)「……ビロードは普段は大人しいんです」
( <●><●>)「でもちんぽっぽちゃんのことになると周りが見えなくなるんです」
( <●><●>)「ちんぽっぽちゃんもなんかふわふわしてるし……」
( <―><―>)「だから僕がしっかりしないとって思うんです」
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 22:25:46.34 ID:sGg/OzlJ0
ξ゚ー゚)ξ「大人みたいね、ワカ君」
( <●><●>)「あの二人が子どもすぎるんです」
ワカ君が口を尖らせて非難めいたことを言う。
その様子が、可笑しい。
( <●><●>)「……? なんでニヤニヤしてるのですか?」
ξ゚ー゚)ξ「んーん、別にー」
空の星はいつもと変わらず仲良く寄り添いあい、
私たちの声と砂を踏む音と遠吠えがこれまたいつものように聞こえている。
明かりが近付くにつれてワカ君は早足になり、訊かずともビロード君が心配なのがわかる。
どれだけ大人っぽくてもまだまだ子どもなんだから。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 22:29:48.84 ID:sGg/OzlJ0
‐‐‐−−−―――━━━
( ^ω^)「……暇だ」
どれくらいで帰ってくるかもわからないし、ここを離れるわけにもいかない。
しょうがないので通りに置いてあった長椅子に腰かける。
この夜更けに通りを歩いているのは酔っ払いばかりではなく、
兜だけ装備、鎧だけ装備、挙句の果てには武器だけ持ってるような、ちぐはぐに武装した人間もちらほらいる。
じろじろとこちらを眺めてくるそいつらはこの街の守衛だろう。
未だ旅人が宿に泊まらず外にいることは相当に怪しいらしい。
彼らに完璧な武装が整っていないところを見ると、
普段使わない武器防具を引っ張りだす必要性に迫られたのか?
たまにその守衛も千鳥足だし、平和ボケから覚醒していないのか。
まあ俺には関係のないことだ。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 22:33:51.37 ID:sGg/OzlJ0
そんなことをぼーっと考えていると守衛から声をかけられた。
|*´[][]|「よう兄弟ぃ!」
凹みの目立つ貧相な鎧だけを装備している。
手には松明、武器はない。
( ^ω^)「そんな角ばった兄弟を持った覚えはないお」
|*´[][]|「そう言うなって兄ちゃ〜〜〜〜ん」
肩に手を回され、うりうりと指を頬に押し付けられる。
真面目に相手するのは無駄なようだ。
|*´[][]|「あ〜ん……? この辺じゃあ見ない顔だなぁ……?」
|*´[][]|「あんた、旅人かぁ? こんな趣味悪いマントとか羽織っちゃってるしぃ」
(;^ω^)「……その通り、旅人だお」
前々から気になっていたがこのマントはそんなに趣味が悪いのか?
確かに色はハゲてきたしボロボロになってきたけど……。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 22:38:27.56 ID:sGg/OzlJ0
気になりついでに一つ聞いてみる。
( ^ω^)「最近この辺りでなんかあったのかお?」
|*´[][]|「なんか?なにが?」
( ^ω^)「賊に襲撃された村が近くにあるとか、行方不明者が多いとか」
|*´[][]|「あぁ〜、なるほどね〜そういう系ね〜」
うんうんと頷いてから、どこから取り出したのか酒瓶をあおる。
|*´[][]|「あ、これはやらんぞ!?俺の酒だからな!?」
(;^ω^)「いや別にいらん、それよりもだな」
|*´[][]|「んあ、最近だろ? 最近ね……」
|*´[][]|「そうだな、最近この辺りは物騒でなぁ〜、さっさと宿に帰った方が吉だぜ〜?」
やはり何か起こって見回りを強化しているらしい。
( ^ω^)「何があったんだお?」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 22:41:26.19 ID:sGg/OzlJ0
| ´[][]|「う〜ん、そうだなぁ」
| ´[][]|「この街の名物! 何だと思う?」
( ^ω^)「名物?だらけきった守衛かお?」
|;´[][]|「おいおい兄ちゃんなかなかエグってくるねぇ」
| ´[][]|「そうじゃなくてだな、ヒント! なんか夜なのに眩しくない?」
言われて思い出す。
( ^ω^)「ああ、なんか所々光ってるやつかお?」
| ´[][]|「正解!」
あちこちに埋めこまれた、発光する小さくて不揃いな四角形のことだ。
| ´[][]|「これ、日中の光を蓄えて夜に光る珍しい金属なんだよねぇ」
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 22:45:28.11 ID:sGg/OzlJ0
| ´[][]|「大昔はこれをうまく利用して洒落た照明みたく使ってたんだとさ」
( ^ω^)「へぇ。 じゃあこれは再現してるのかお?」
| ´[][]|「近くの遺跡から拝借して設置してみたら綺麗と好評で、町長の鼻高々」
| ´[][]|「……だから単に調子に乗っただけじゃないか」
趣があるとか少しでも思った自分が恥ずかしい。
| ´[][]|「で、好評なのは良かったんだけど」
| ´[][]|「最近、光に誘われて群れからはぐれたオオカミが街の中に迷い込むようになったんだ」
( ^ω^)「ほー」
| ´[][]|「だから一応武器を持って、松明振り回して追い払ってるわけさ」
| ´[][]|「ケモノだから火が怖いのよ」
( ^ω^)「なのに酔っ払ってたのかお」
|;´[][]|「エグるねぇ」
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 22:51:32.65 ID:sGg/OzlJ0
ふと、嫌な予感が頭を過る。
オオカミが光に誘われる?
( ^ω^)「……遺跡にどのくらいの金属が残ってるんだお?」
| ´[][]|「これが金塊ならなぁと何度思ったか」
| ´[][]|「それぐらいいっぱいあったぜ」
( ^ω^)「ならオオカミはそっちに誘われていくかもしれんおね?」
| ´[][]|「あー、俺はこんな夜中に見に行ったことねぇが、そうかもしれねぇな」
| ´[][]|「この辺りは兄ちゃんも見てきたとおり、荒野よりひでぇ砂漠地帯だ」
| ´[][]|「肉なんざ滅多に食えねぇだろうし」
| ´[][]|「同じく光に誘われた食い物の匂いを嗅ぎとってそっちに行くかもな」
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 22:55:01.93 ID:sGg/OzlJ0
予感的中だ。
万が一、あいつらとオオカミがかち合ったとしたら?
弱肉強食、自然の掟だろうな。
もちろんあいつらが"弱"でオオカミが"強"。
そこはもちろん覆らない。
松明を持っていたとしたらどうだ?逆転し得るか?
群れを成したオオカミに勝てるか?
……別に俺はあいつらがどうなろうと困らない、困らないけど。
( ^ω^)「……」
| ´[][]|「? どうした、黙りこんで」
金髪の女の持ってる情報は必要だ、だから。
しょうがねぇ。
|;´[][]|「っておい兄ちゃんどこ行くんだ! ついでだし酒付き合―――」
地面を蹴り、走る。
守衛の言葉は遠く、聞こえなくなっていった。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 22:58:24.80 ID:sGg/OzlJ0
━━━―――−−−‐‐‐
光の根元へ辿り着いた時、ワカ君が鋭い声を上げた。
(;<●><●>)「!! ビロード!」
。゚(||;><)゚。「わ、ワカ!? た、助けてほしいんです!!!」
ξ;゚听)ξ「ま、マジすか」
ビロード君は唸る狼の集団に囲まれて、大きな光る物体に抱きついていて身動きできない状態だ。
足元に落ちた松明は火が消え、煙がくすぶっている。
周囲の機械から発せられる光で顔面蒼白、汁まみれな顔がよくわかる。
狼はじりじりとビロード君ににじり寄っていて、
このままだととても子どもに見せられない光景が広がってしまう。私も見たくない。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 23:02:06.07 ID:sGg/OzlJ0
(;<●><●>)「何か、何か……! ツンさん何とか何かできませんか!」
ξ;゚听)ξ「ぬ、ぬぐぐぐぐ……」
大きな目に涙を溜めたワカ君が私に訴えかける。
私だって何とかしたい。
でも足は震えてるし、体は動かないし、狼は怖いし、痛いのイヤだし、何も持って―――
その時、腰にやった手が何か硬いものにあたった。
そうだ、銃だ。
私は記憶を失う前から持っていた、"機械時代の名残"である銃を持っている。
それを引き抜き、構える。
そしてまた思い出す。
これ弾入ってないじゃん。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 23:05:26.81 ID:sGg/OzlJ0
いや、正確には本物同様のつくりだが、弾を入れるスペースだけがなかった。
いやいやどっちにしろ、この状況で役に立つはずがない。
何、何をどうするの、これで!
ξ;゚听)ξ「う、」
二人の子どもを見やる。
(;<●><●>)
。゚(||;><)゚。
ξ;--)ξ
ξ;゚听)ξ「ええい、ままよっ!」
ξ;゚听)ξ「ごめんねっ!」
ワカ君を乱暴に狼とは逆の方向へ突きとばす。
使えない銃しかなくても、私がなんとかするしかない!
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 23:08:38.09 ID:sGg/OzlJ0
ξ#゚皿゚)ξ「こっちだあああああああああああああああああ!!!!!!!」
爛々と輝く幾つもの双眸が私を捉えた。
狼に向けた役立たずの銃は、ガタガタと震えている。
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 23:12:44.54 ID:sGg/OzlJ0
‐‐‐−−−―――━━━
(#^ω^)「おっっっらああああああああああああ!!!!!!」
夜の荒野を淡い光を目印に全速力で走った。
幸いあまり距離がなく辿りつくまでそう時間はかからなかった。
(#^ω^)「生きてるかお!?」
激しい砂煙を立てながら場へ滑りこんだ。
ξ;゚皿゚)ξ「え……うん」
(#^ω^)「そりゃようござんしたしゃがんどけお!!」
ボケっと突っ立っていた女にそう叫ぶと、持ってきた松明に火を付ける。
そして片手に2本ずつ、計4本の松明をオオカミへ向けて振り回し始める。
∬ ∫
┃ ┃
ミ━\(#^ω^)ノ━∝ 「うらああああああああああああああああ!!!!」
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 23:16:53.48 ID:sGg/OzlJ0
ξ;゚皿゚)ξ
(;<●><●>)
(;><)
∬ ∫
≡ ┃ ┃
≡ ミ━\(#^ω^)ノ━∝ 「ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふん」
≡.,:; ( ┐ノ
≡.;.:。; /
奇妙なもの見る眼で3人が凝視しているのがわかる。見なくてもわかる。
変な男がオオカミ相手に踊り狂ってたら俺だって見るわ。
悲しいことにその光景を作りだしているのは俺なんだけども。
自分でも驚くような勢いで松明を振り回しオオカミ達を退けていく。
奴らもまた奇妙なものを視る眼で俺を見ているが気にしない。
そして群れは関わってはいけないモノに関わってしまったと言わんばかりに吠えて去り、
残ったのは肩で息をする俺。
(;^ω^)「はぁ、ぜはぁ、ゲホッ、うぇっほゲホッ」
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 23:20:15.69 ID:sGg/OzlJ0
俺はビロードとワカ・金髪の女に挟まれ、燃え盛る松明を所在なさ気に掲げている。
奴らとは微妙に距離が離れている。
誰も何も言わない。
伝わる炎の熱は熱いのに空気は冷たい。
俺が何か悪いことしたか。
(;^ω^)「……おい」
ξ )ξ「ぶっ」
ξ*゚听)ξ「ぶっはははははあははははっはははっははっはっは!!!!!」
ξ*゚听)ξ「何アレ、何今の!!!!ぶえっへっへっはっへっへっはは!!!!」
((( <○><○>)))
(*><)「クヒヒヒヒヒッ……!」
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 23:23:21.69 ID:sGg/OzlJ0
本当はオオカミ相手にも腹パンはできたが、子どものトラウマになると思って安全策をとったのに。
とったのに!
(#^ω^)「おおい!!人が折角助けてやったのに笑うたぁどういう了見だお!!」
ξ*゚听)ξ「ぶぶぶっ!ご、ごめん、あんた何だかんだ言いながら結局来てんじゃない」
ξ*゚听)ξ「た、松明振り回してぶぶぶっ!!」
(#^ω^)「……このクソアマ……」
憤怒と恥辱に耐え、拳を握りしめて震えていると腰のあたりを引っ張られた。
振り返るとそこには全ての元凶の2人の子どもがいた。
( <●><●>)「あの、……助けてもらってありがとうございました」
(*><)「ありがとうざいましたなんです!!」
( ^ω^)
( ^ω^)「……ああ、気にすんなお」
( ^ω^)「そこの女に死なれちゃ困るから、ついでに助け」
俺の言葉尻は心から殺したいと思った女の笑い声に掻き消された。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 23:27:05.09 ID:sGg/OzlJ0
‐‐‐−−−―――━━━
( ^ω^)「ここでいいかお?」
(*><)「はい! わあ、すごく綺麗に光ってるんです……!!」
一しきり笑い転げられた後、ビロードが抱きついていた、
丁度こいつらと同じくらいの大きさの金属を持ち帰って家の外に置いた。
親が見たらなんと言うかわからないが、とりあえずやってやれることはやった。
これをどうするかはこいつら子どもの未来と同じく、未知。
そこまで面倒見きれないし好きなようにするといい。
( <●><●>)「お二人とも、改めて本当にありがとうございました」
( <●><●>)「僕だけじゃビロードは今頃どうなっていたことか……」
(;><)「わかんないです!」
相変わらず困り顔のビロード。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 23:30:40.11 ID:sGg/OzlJ0
ξ゚听)ξ「これからはちゃんと大人の言いつけは守るのよ?」
ξ゚听)ξ「思いがけない所に危険があるんだから……」
( <●><●>)( ><)「はい!」
( <●><●>)「反省するべきなのはわかってます」
ξ゚ー゚)ξ「よろしい!」
まるで親子のようだ。
( ><)「あ!そうだ!マントの方も名前を!」
ほんわかしたムードに耐えきれず、その場を離れようとしたが声をかけられてしまった。
かけられてしまったからには答えるしかあるまい。
( ^ω^)「……まあ別に覚えなくてもいいけど、ブーン、だお」
( ><)「へぇ……なんだかかっこわる……もが」
(;<●><●>)「あはは」
……子どもは正直だ。
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 23:33:59.31 ID:sGg/OzlJ0
(;<●><●>)「ブーンさんとツンさんですね……一生忘れませんよ」
(;><)「なんです!!」
ξ゚ー゚)ξ「うふふ、ちんぽっぽちゃんと3人、仲良くするのよ」
( <●><●>)(*><)「はい!」
元気に返事をしてニコニコとこちらへ笑顔を向けてくる。
ツンもじろっと俺を見る。
何か言え、ということか。
……こういうのは苦手だな。
( ^ω^)「……松明の件は忘れてくれお」
噴き出す音が3つ。
2人の小さくて大きな笑顔は、何よりも明るく輝いていた。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/04/18(水) 23:37:46.35 ID:sGg/OzlJ0
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