ξ゚听)ξこちら妖の便利屋兼退治屋のようです( ^ω^)


2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 00:39:25.91 ID:Ed1b694s0
<_フー )フ「う〜ら〜め〜し〜やあ〜」

<_フー )フ「この恨み……晴らさで、おくべきか……」

<_フー )フ「ああ、うらめs」


      ガシッ
( ^ω^)つ<_プー゚)フ!?



 この世には、目には見えない闇の住人たちが居る。


 某地獄先生の言葉だ。
 闇とは限らないのだけど、僕たちはそんな世界で生きている。

.

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 00:41:27.12 ID:Ed1b694s0
ξ゚听)ξこちら妖の便利屋兼退治屋のようです( ^ω^)


             【第3話】



.

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 00:43:48.23 ID:Ed1b694s0
( ^ω^)つ<_;プー゚)フ「ちょっ、痛いっておいいいい!」

ξ゚听)ξ「そういうの止めなさいって言ったわよね?」

( ^ω^)つ<_プー゚)フ「えーだって久々だしー、挨拶みたいなもんだしー」

ξ゚听)ξ「ブーン」

     ギリギリ
( ^ω^)つ<_;プー゚)フ
  「うん」     「いたいいたいマジでえええええ」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 00:46:10.64 ID:Ed1b694s0
 喫茶店『おばけやしき』

 その名の通り、ここには妖がいる。


<_プー゚)フ「ったくよー、もー、ふざけんなよー」


 喋る人魂、エクスト。
 彼もその一員だ。
 ツンが作ってくれたペンダントの石、あれを報酬に受け取った喫茶店もここだ。
 一般の人も来るには来るけど、自然と係わりのある人や妖が、よくやって来る。


( ^ω^)「モナーさんは居ないのかお?」

<_プー゚)フ「あー、あいつらなら――」

( ´∀`)「ただいまモナ」カランカラン


 おっと。噂をすれば影。

 
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 00:48:45.72 ID:Ed1b694s0
<_プー゚)フ「おっかえりー」

( ´∀`)「あ、ツンちゃんにブーンくん、来てたモナ。いらっしゃいませモナ」

ξ゚听)ξ「ええ」

( ^ω^)「お邪魔してますお」

( ´∀`)「出ててごめんモナー。お仕事モナ?」

ξ゚听)ξ「いえ。最近来てなかったから」

( ´∀`)「モナモナ。ありがとモナ」


 モナーさん。
 名字は知らないけど、そう呼んでいる。この喫茶店のマスターだ。

 
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 00:50:27.65 ID:Ed1b694s0
( ´∀`)「エクスト、お茶だしてくれモナ」

<_プー゚)フ「はいはいっと」


 浮遊しているエクストと同様、二つのカップもふわふわと宙に浮く。
 正直、危なっかしい事この上ないので、止めた方がいいと思うのだけど。
 いわゆるポルターガイストという奴だ。
 そしてモナーさんもまた、視える人なのだ。


ξ゚听)ξ「……ん、おいしい」

( ´∀`)「よかったモナ」

( ^ω^)「ツンはここのお茶、好きだおね」

( ´∀`)「ブーンくんは嫌いモナ?」

( ^ω^)「勿論好きですお」

( ´∀`)「嬉しいモナ」


 ツンは熱いコーヒーが好きで、ぬるいのは嫌い。
 だからいつも、ふうふう吹きかけながら、すぐに飲んでいる。
 その仕草が好きで、ついつい見入ってしまう。
 僕は猫舌なので、ゆっくりと紅茶を飲む。
 
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 00:53:05.93 ID:Ed1b694s0
<_プー゚)フ「なあなあ、最近何か面白いことあったか?」

( ^ω^)「んー……どうだったかお」

ξ゚听)ξ「特に変わりはないわ」

<_プー゚)フ「えー」

ξ゚听)ξ「……ああ、そういえばあんたみたいな妖とは会ったわ」

<_プー゚)フ「何!? オレみたいに愛くるしい奴が居たのか!!」

ξ゚听)ξ「あの社に住むことになったから」

( ^ω^)(スルースキル発動)


 こいつの自己認識は一体どうなっているんだろう。
 あの社、とは三柱の神が住む、小さな神社のことだ。
 あまり妖と変わらないというか、かみさまーって感じはしない、まあフレンドリーな神様達だ。
 
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 00:55:51.67 ID:Ed1b694s0
 
( ´∀`)「学校はどうモナ?」

ξ゚听)ξ「……普通よ」

( ^ω^)「特に変わりはないお」

( ´∀`)「そうモナ? 年が明けたら、二人とも高三モナね」


 そういえばそうでした。
 受験なり就職なりを考えないといけないけど。
 ……危機感が薄いのは自覚している。

 生活はしていけるだろう。おじいちゃんも、妖や視える人に関わりながら生きている。
 でも。
 このままで、僕は、いいんだろうか。

 ツンを、このまま縛り付けて。

 ちらりと横を窺うと、ツンは最後の一口を飲み干す所だった。

 
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 00:57:16.17 ID:Ed1b694s0
 僕は妖が嫌いじゃない。ドクオのような、ぃょぅのような、優しい妖が居るのを知っている。
 じゃなければ、元の身体に戻る為、ドクオに再び会う為とはいえ、便利屋なんてやってない。

 同じように。
 多分、もっと大切に、僕はツンのことが好きなのだ。
 彼女と居られる時間が好きで、嬉しくて、同時に申し訳ない。
 僕の為に、時間を縛ることが。

 僕の為でなくて、ドクオの為なのかもしれないけど、それでも彼女は僕のメンテナンスをかかさない。
 それだけで僕は――


ξ゚听)ξ「……そうね」

( ;^ω^)「っ」

ξ゚听)ξ「受験、なのよね」


 びっくりした。
 思考が漏れたのかと。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 00:59:15.02 ID:Ed1b694s0
 

ξ--)ξ

( ^ω^)「……?」


 ぎゅっと、ツンがカップを握りしめた。


( ^ω^)「……ツン?」

ξ゚听)ξ「何?」

( ^ω^)「や、何でも」


 ない、ことはない。
 けれど既に、ツンは元通りの表情だった。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 00:59:59.81 ID:Ed1b694s0
 

ξ゚听)ξ「そろそろ帰りましょうか」

( ^ω^)「お、だお」

<_プー゚)フ「じゃーなー」

∧  ∧
ミ,,´∀`彡 モサ

∧ ∧
';´∀`'; モサ

( ´∀`)「また来てモナー」


 …………。
 何か増えてた気がするけど、今は気のせいにしておこう。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/04/02(火) 01:01:44.53 ID:Ed1b694s0
 
 からんからん、とベルが鳴る。
 この音は喫茶店の名前とは裏腹に、とても軽やかだ。


o川*゚ー゚)o「あれー、津出さん?」

ξ゚听)ξ「……あら」

o川*゚ー゚)o「おー、えーとないとーくんも居る」


 出た所で声をかけられた。
 確か、ツンと同じクラスの……、


( ^ω^)「素直さん?」

o川*゚ー゚)o「うん、だよー。なーに、デート?」

(;*^ω^)「っち、」

ξ゚听)ξ「違うわ」

o川*゚ー゚)o「そなの?」


 ……うん、違うんだけど、断言されるとちょっと悲しい。
 
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:04:42.30 ID:Ed1b694s0
 
(`・ω・´)「邪魔しちゃだめだろ、キュート」

( ^ω^)「おっ」


 後ろから声をかけられた。
 振り向くと、これまたツンと同じクラスの崎シャキンくん。


o川*゚ー゚)o「邪魔してないもーん」

(`・ω・´)「本当か?」

o川*゚ー゚)o「シャキンしつこーい」

(`・ω・´)「こいつがごめん、津出さん、内藤くん」

( ^ω^)「おっ、僕たちは別に」


 そういう二人こそ、デートじゃないのだろうか。
 そう言うと、


o川*゚ー゚)o「「それはない」」(`・ω・´)


 ユニゾンで返された。
 
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:06:51.90 ID:Ed1b694s0
 
ξ゚听)ξ「仲いいのね」

o川*゚ー゚)o「ま、悪くはないかなー。今日はさ、他に二人加えて遊びに行くとこ」

( ^ω^)「そうなのかお」

o川*゚ー゚)o「ね、二人も来る?」

ξ゚听)ξ「え?」

o川*゚ー゚)o「よーしそうしよ!」

(`・ω・´)「困ってるだろ」

o川*゚ー゚)o「そんなことないよーだ。ね?」


 結構、なれなれしい人だ。
 でも不快には感じない。ツンも戸惑っているようだけど、機嫌悪くはない。
 
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:08:51.73 ID:Ed1b694s0
 
(`・ω・´)「デートの邪魔してごめん。用があるなら断ってくれて構わないから」

( ^ω^)「でっででっデートじゃ」


 そっとツンを窺い――その目が二人の後方に固定されているのに気付いた。
 視線を追った先には。


| |パ -゚)


 電柱の陰に、クーが居た。


ξ゚听)ξ”


 小さくツンが頷く。
 
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/04/02(火) 01:10:27.66 ID:Ed1b694s0
 
( ^ω^)「……ごめんお。用事、あるんだお」

o川*゚ー゚)o「えー」

(`・ω・´)「キュート」

ξ゚听)ξ「……ごめんなさいね」

o川*゚ー゚)o「分かったー。でもじゃあ、今度遊ぼうね。
       あ、そうだ、ツンちゃんて呼んでいい? いいよね!
       キューちゃんとかシャキンて呼んでいいから!」

(`・ω・´)「何で俺は呼び捨てなんだ」

o川*゚ー゚)o「じゃ、また学校でねー」

( ^ω^)「ありがとだお」

o川*゚ー゚)ノシ

(`・ω・´)ノシ


 二人は手を振って去って行った。
 騒がしかったけど、あんな風にクラスメイト(ツンのだけど)と話すのは、初めてかもしれない。
 二人が見えなくなった所で、電柱の影からクーが出てきた。

 
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:13:11.29 ID:Ed1b694s0
川 ゚ -゚)「やあ」

ξ゚听)ξ「手紙?」

川 ゚ -゚)「ああ」


 クーからツンへ渡された手紙は、ツンの手の中で大きさを変えた。


川 ゚ -゚)「すまないな、邪魔をした」

ξ゚听)ξ「あの二人? いいのよ、仕事でしょう?」

川 ゚ -゚)「ふむ。……そういえば学校と言っていたか、なら学校で話せるな」

( ^ω^)「お」


 うん。そうだ。
 これから、話せばいいんだ。
 もしかしたら、友達になれるかもしれない。


川 ゚ -゚)「ではな」


 くるりと一回転、クーは姿を消した。
 きっと裏道に入ったのだろう。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:16:04.39 ID:Ed1b694s0
 ツンが手紙を開く。口に指を当て、ツンは考え込んだ。


( ^ω^)「誰からだお?」

ξ゚听)ξ「流石兄者」

( ^ω^)「お? ヒートの神域に居た……」

ξ゚听)ξ「ええ。……人形を、使うわ」

( ^ω^)「……え」


 それは――


ξ゚听)ξ「あんたのことじゃないわよ」

( ^ω^)「う、うん」


 ちょっとびっくりしただけだ。
 ツンの人形を使う。降霊、もしくは憑依。


ξ゚听)ξ「あとは読んで」


 手紙が差し出される。少し、風が吹いた。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:18:09.62 ID:Ed1b694s0
* * * * *


( ´_ゝ`)「おお、久しぶりだな! さ、それでは血を――」

( ^ω^)

( ´_ゝ`)

( ´_ゝ`)「冗談だ」

( ^ω^)「だと思いましたお」

( ´_ゝ`)「やめて、怖いから! 目が笑ってないから!」

ξ゚听)ξ「寸劇は結構よ」


 僕は結構本気だ。
 多分、兄者さんも半分本気だった。僕が許さないけども。


( ´_ゝ`)「……うむ。では案内しよう」

( ´_ゝ`)「づーの許へ」


 ――その名は、かつて僕たちが相対した女性の名前だった。
 
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:20:02.70 ID:Ed1b694s0
 
 和風な、どことなく自分の家に近いような屋敷は、落ち着けるものだった。
 廊下を歩きながら、訥々と兄者さんは語る。


( ´_ゝ`)「俺には双子の弟が居た。名を弟者という」

( ^ω^)「その弟さんが」

( ´_ゝ`)「ああ。今回呼んで欲しい奴だ」


 ツンの人形で呼ぶ。
 ――それはつまり、弟者さんが亡くなっている、ということに他ならない。
 
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:22:15.27 ID:Ed1b694s0
 
( ´_ゝ`)「知っての通り、俺たちは血を吸って生きる種族だ」

( ´_ゝ`)「そして彼女は――づーは、人だ」


 きっかけは些細なことであったらしい。
 人の街ではしゃぎすぎた弟者さんが倒れた所、たまたま居合わせたのがづーさんだったそうだ。


ξ゚听)ξ「似てるのね」

( ´_ゝ`)「兄弟だからな」


 多分、ちょっと意味が違う。


( ´_ゝ`)「づーは、風の力を持った、ただの人だ」


 それは人の世に於いては、異能とされる力だ。
 元より、人と違うことを自覚していた彼女は、妖である弟者さんを抵抗なく受け入れた。
 弟者さんも――自らが人の血を啜る種族でありながら、人を愛した。
 
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:24:40.12 ID:Ed1b694s0
 
( ´_ゝ`)「随分と仲が良くてな。離れて暮らす家族の為、写真も撮った」


   [瓜゚ー゚)(´<_` )]


 見せられた写真は、はにかんで笑うづーさんと、兄者さんによく似た長身の男だった。


( ^ω^)「ご家族とは離れて?」

( ´_ゝ`)「ああ。俺たち兄弟は、幼い頃に本家の跡取りとして養子になったんだ」


 それが、と兄者さんは声を低くした。


( ´_ゝ`)「その出来事が、本家の考え方こそが、原因だった」


 障子の前で兄者さんは立ち止まる。
 音もなく開けられた先は普通の和室――ではなかった。
 壁の中央にぽっかりと、地下への階段が口を開いていた。
 
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/04/02(火) 01:25:35.16 ID:Ed1b694s0
* * * * *


 兄者さんの手紙には、こうあった。


『どうかづーを救って欲しい』

『便利屋の君たちに、どうか、もう一度』


 詳しい事情を聞かぬまま、ここに来た。
 ツンは迷わなかった。
 僕もだ。

 便利屋は、いつだって便利屋だ。
 
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:27:17.57 ID:Ed1b694s0
 
( ´_ゝ`)「俺たちは妖力が強い。だから、養子にされた」

ξ゚听)ξ「不本意、みたいな言い方ね」

( ´_ゝ`)「まあな。家族と離れるのは辛かった。それでも、不幸だと思ったことはなかった」

( ´_ゝ`)「……弟者が、殺されるまでは」

( ^ω^)「どうして……誰にだお」

( ´_ゝ`)「本家の連中」


 何故。跡取りの筈ではなかったのか。
 兄者さんは自嘲気味に笑った。


( ´_ゝ`)「頑迷でな。人の血を吸う時は、吸い殺してしまうのがいいと考えていた。
      昔はよくあったことだ。それが吸血種族の誇りだと。
      だが俺たち、特に弟者は、同じように考え言葉が通じる人を、殺すのが好きではない」

( ^ω^)「でも、だからって、同じ種族を殺すなんて」

( ´_ゝ`)「君たちも同族殺しはするだろう?」


 ……それを言われると、返す言葉がない。
 
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:29:28.65 ID:Ed1b694s0
 
( ´_ゝ`)「もう一つは、俺のせいだ」

( ^ω^)「兄者さんの?」

( ´_ゝ`)「人に惚れ、肩入れする跡取り。だが、その跡取りには替えがある」

ξ゚听)ξ「あなたという、兄」

(  _ゝ )「そう。だから……」

( ^ω^)「違うお、兄者さんのせいなんかじゃないお!」

( ´_ゝ`)「……」

( ^ω^)「絶対、それは違うんだお」


 そうか、と小さく兄者さんは呟いた。
 替えがあるから殺されたなんて、誰かのせいでなんて、そんなこと。
 何でこんな一生懸命言い募っているのかと、我ながら少し不思議に思った。
 
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:31:19.16 ID:Ed1b694s0
 
ξ゚听)ξ「……それでよく私たちを呼べたわね」

( ´_ゝ`)「ああ、ちょっと早めに跡を継いでやったのさ。
      それに、づーが実行犯の殆どを殺していたからな」


 ……なるほど。
 残りは実力で排除したわけだ。

 づーさんは弟者さんが殺されて以来、力を餌に誘き出しては殺していた。
 この前の妖は噂に惹かれた妖で、本当に無関係な妖を手に掛けるのは僕たちが阻止したようだ。

 でも、なら。


『それは八つ当たりだお!』


 酷いことを、僕は言ってしまったのではないだろうか。
 
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:32:46.56 ID:Ed1b694s0
 
ξ゚听)ξ「……」ビシッ

( ^ω^)「おっ」

ξ゚听)ξ「あんたは顔に出るのよ」


 どうせ馬鹿なこと考えてたんでしょ、と言われて、ぐ、と詰まる。


( ^ω^)「馬鹿なことじゃないお」

ξ゚听)ξ「仕事よ。助かった奴がいるなら、それでいいでしょう」

( ^ω^)「……お」


 ああ、本当にツンは。
 僕の意思を尊重してくれるツンが。
 素直じゃない物言いをする所が、本当に、愛おしい。
 
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:35:13.41 ID:Ed1b694s0
 
( ´_ゝ`)「……えーと、本題入っていい?」

( ;^ω^)「おっ」

ξ゚听)ξ「どうぞ」

( ´_ゝ`)「うん、俺いじけそう。でも頑張る」


 デルタさんとは違うベクトルでうz面倒かもしれない、この人。


( ´_ゝ`)「……ツン、ブーン」


 ふと真面目な声で、兄者さんは僕たちを見つめた。


( ´_ゝ`)「づーを、助けてくれ」
 
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:37:02.45 ID:Ed1b694s0
* * * * *


 ひたひた、階段を下りる。
 兄者さんの持つ提灯が頼りだった。
 階段を下り始めてから、兄者さんは喋らなくなった。

 地上の灯りが遠くなった頃、ようやく底に着く。

 高い天窓と、幾つかの蝋燭の光。
 そして、柵。
 座敷牢だ。
 開け放たれた柵の向こう側、そこに――


瓜 ∀ )


 彼女が、居た。


( ´_ゝ`)「……出ようとしないんだ」


 ぽつりと兄者さんが呟いた。
 
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:39:25.15 ID:Ed1b694s0
 
ξ゚听)ξ「出たら殺される、という訳でもなさそうね」

( ´_ゝ`)「弟者を殺し、づーも殺せという奴らは全て黙らせた」


 それは恐らく、当主の権力であり、実力行使でもあったのだろう。
 兄者さんの声に反応して、ゆっくりとづーさんが顔を上げた。
 蝋燭の火に照らされて、影が揺れる。
 憔悴し、痩せた顔だった。


瓜゚∀゚)「……」

( ´_ゝ`)「づー」

瓜゚∀゚)「……来ないでって言ったのに。弟者じゃないあんたなんか、見たくもないのに」

( ´_ゝ`)「すまない」


 ふとづーさんの視線が後ろへ――僕らへとずれる。
 僕らを認めると、喉から乾いた笑いが漏れだした。
 
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:40:20.63 ID:Ed1b694s0
 
瓜゚∀゚)「ははっ、はっ! やっと、やっと殺す気になった?
     ははは!! 自分じゃ気が引けるから、こいつらに! あっはははは!」

( ^ω^)「違うお」

瓜゚∀゚)「何がよ!!」


 風が唸った。
 僕とツンの間を吹き抜けたそれは、それぞれの頬に一筋の傷を残す。


( ^ω^)「ごめんお、大丈夫かお」

ξ゚听)ξ「平気よ」


 ぐいと袖口で血を拭う。
 それ以上は構わず、ツンはカバンから人形を取り出した。
 卵竜の雛の糸、フラ酒の雫、今回の為にツンが丹精を込めた人形だ。


瓜゚∀゚)「はは、は、何よ。作り物たちが何なのよ。何でよ。見たくもない。あんたたちみたいな、そんな」

ξ゚听)ξ「兄者。用意は出来てる?」

( ´_ゝ`)「ああ」
 
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:42:23.78 ID:Ed1b694s0
 ツンの手の上に、兄者さんはそっとスカーフを置いた。
 それを人形に巻く。


瓜゚∀゚)「それは、弟者の」

( ´_ゝ`)「ああ。づーが弟者にあげたものだ。きっとこれが、一番いい」

瓜゚∀゚)「何、なにを……」

ξ゚听)ξ「――来たれ」


 一言、ツンが発した。
 光。
 紫の、なのに白くも見える、不思議な光。
 目の前が光で埋め尽くされる。
 すぐに光は収まった。

 収斂した光は、形を成し――


(´<_` )


 人形は、その姿を変えていた。

 
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/04/02(火) 01:42:58.24 ID:Ed1b694s0
 
瓜゚∀゚)「……あ、……え?」

( ´_ゝ`)「弟者……」


 兄者さんによく似た、涼しげな目元をした、男性に。


(´<_` )「……これは」

( ´_ゝ`)「呼んで貰ったんだ。弟者」

(´<_` )「兄者」


 暫く目を瞬かせていた弟者さんは、やがて全てを覚ったかのように、一つ頷いた。

 
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/04/02(火) 01:44:38.34 ID:Ed1b694s0
 
(´<_` )「――づー」

瓜゚∀゚)「おと……お……う、そ」

(´<_` )「ごめん、づー」


 づーさんが立ち上がる。
 ふらついた身体を弟者さんが支え――ぎゅっと抱きしめた。


(´<_` )「ごめん。本当にごめん」

瓜゚∀;)「おと、じゃ……」

瓜;∀;)「弟者あああ」


 その胸に縋り、づーさんは泣きじゃくる。
 弟者さんは優しく、背を叩いた。
 
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/04/02(火) 01:46:33.64 ID:Ed1b694s0
 
(´<_` )「辛い思いをさせた」

瓜;∀;)「うぅ、うう、あ」

(´<_` )「……ごめん。俺はもう、傍に居れない」

瓜;∀;)「やだ、嫌、そんなの」

(´<_` )「……ごめん」

瓜;∀;)「謝んないでよ、傍に居てよ! ねえ、お願い、お願いよ」


 強く――強く、弟者さんはづーさんを抱きしめる。


(´<_` )「もう、無理なんだ。だからせめて、俺の言葉を聞いてくれ」

瓜;∀;)「おとじゃ、」

(-<_- )「ありがとう、づー。お前と居た日々は、とても大切なものだ」

(´<_` )「お前を愛して、愛されて、本当に……幸せだった」

瓜;∀;)「おと……じゃ……」
 
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:48:01.31 ID:Ed1b694s0
 

 弟者さんが兄者さんに目を向ける。


(´<_` )「兄者」

( ´_ゝ`)「ああ」

(´<_` )「ありがとう」

( ´_ゝ`)「……ああ」


 そして、僕らに。


(´<_` )「君たちのおかげで、伝えられた。ありがとう」

ξ゚听)ξ「……仕事よ」

(´<_` )「そうか。あともう一つ。づーを止めてくれて、ありがとう」

( ^ω^)「それも、仕事だお」

(´<_` )「……ふ」


 弟者さんの輪郭が少しずつぼやけ、あの光が粒子状に浮かぶ。
 
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/04/02(火) 01:49:43.22 ID:Ed1b694s0
 
(´<_` )「ああ、いかないと」

瓜;∀:)「弟者」

(´<_` )「お願いだ。生きて、幸せになってくれ」


 俺もその傍に居たかったけど、と小さく弟者さんは呟いた。


瓜;∀;)「……」

(´<_` )「……」

瓜;ー;)「……愛してる」

(´<_` )「……ありがとう」


 輪郭が溶けていく。
 再び光が視界に満ちて――消え去った時、弟者さんもまた、そこには居なかった。


瓜;∀;)「……ああああああああ!!」


 ほとりと畳みに落ちた人形。
 空中に舞ったスカーフを掴み、縋り、づーさんは絶叫した。
 
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/04/02(火) 01:50:25.67 ID:Ed1b694s0
 
( ´_ゝ`)「……なあ、馬鹿なことを訊く」

ξ゚听)ξ「何?」

( ´_ゝ`)「ずっと、留めておくことは出来ないのか?」

ξ--)ξ「……死者は呼べても、留められないの。
       留めるのなら、動きも喋りも、触れることすら出来ない状態になるわ」


 ツンの人形は、死者や妖を呼ぶことができる。けれども、それは一時的なものだ。
 僕はぎりぎり死んでいなくて、どうにかなったのだけど、前例がなくいつまで持つか分からないと
 ワカッテマスさん――ツンのお父さんに言われている。

 兄者さんは、そうかと言って目を閉じる。

 づーさんの叫びが、ただただ木霊した。

 
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/02(火) 01:52:06.00 ID:Ed1b694s0
* * * * *


( "ゞ)「ほー。なるほどなるほど。お兄さんの雑貨は役に立ったみたいだね」

ξ゚听)ξ「まあ、ね」

( "ゞ)「含みのある言い方しちゃってもう!」


 後日、デルタさんには事情を話した。
 づーさんの事件の時、手を回してづーさんを助けてくれていたからだ。


ξ゚听)ξ「ついでに材料の補充するわ。見てくるから」

( ^ω^)「おっ、分かったおー」


 棚の間をすり抜けて、ツンの姿が消える。
 この雑貨屋は相も変わらず、棚に溢れている。
 
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/04/02(火) 01:52:44.71 ID:Ed1b694s0
 
( ^ω^)「……出来ないことって、沢山あるんだおね」

( "ゞ)「おやおやあ、どうした」

( ^ω^)「づーさん、あれで、よかったのかなって思ったんだお」

( "ゞ)「死の境界線は、妖ですら踏み越えるのが難しいんだよ」

( ^ω^)「でも、人魂や幽霊だっているお」

( "ゞ)「それはこっちに居るからさ。あるいは、情念のみ。一度あっちに送られたら、ね」


 情念。
 あの弟者さんは、決して感情だけには見えなかった。
 理性的で、記憶もあって。


( "ゞ)「だから、もう一度会えたのなら、それは奇跡さ」


 冗談めかしたデルタさんのウインクも、今回ばかりは気にならなかった。
 
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/04/02(火) 01:53:29.75 ID:Ed1b694s0
 
ξ゚听)ξ「お待たせ」

( ^ω^)「全然だお。それじゃ、デルタさん」

( "ゞ)「はいはーい。次も買い物してってね、お兄さん首を長くして待ってるからね!」


 屋敷への道を、ゆっくり歩く。
 木々の蕾が、色づいていた。

 春が、近い。
 僕らは高校三年生になる。
 ――僕は、どれほど、ツンの傍に居れるだろう。

 そんなことを考えながら、ただ歩みを進めた。



            【第三話】 了

 

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