ξ゚听)ξこちら妖の便利屋兼退治屋のようです( ^ω^)
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:03:30.77 ID:3YA5uzkt0
( ФωФ)「特定の心に反応する、ようであるな」


 おじいちゃんは、じっとペンダントを見つめた後、そう言った。
 石自体に守りの作用があり、鎖が僕たちの力を仲立ちしていると。

 石←→鎖←力(僕、ツン)

 こんな図式、らしい。
 恐らくは石を生み出した妖が、保守的な性質を持っていたのだろう、と。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:04:09.33 ID:3YA5uzkt0
( ФωФ)「守りであるから、そう……助けたい、守りたい、そういった気持ちであろうか」

( ^ω^)「……まもりたい」

( ФωФ)「うむ。……いいものを作って貰ったであるな」

( ^ω^)「うん」


 おじいちゃんからペンダントを受け取る。
 ぽんと頭を撫でられた。


( ФωФ)「守ってやるのであるよ」


 黙って、頷いた。
 ツンは必ず、守ってみせる。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:05:04.86 ID:3YA5uzkt0
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ξ゚听)ξこちら妖の便利屋兼退治屋のようです( ^ω^)


            【第2話】




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5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:06:19.35 ID:3YA5uzkt0
 兄者さんに遭遇し、数日。
 土地守の神をとらえた奴に遭遇して数日、とも言う。

 結局、あの機械仕掛けの正体は分からなかった。
 逃がしてしまったことが一番大きいのだけど、あれ自体が何なのか、さっぱり分からない。
 ヒートたちは一時的に結界を張ることにしたそうだ。

 それはいいのだけれど。
 一つ、ひっかかっていることがある。


( ´_ゝ`)『――君は、人間かい?』 


 僕は。
 あの時、兄者さんに問いかけられて、何と答えようとしていたのだろうか。
 僕は、僕は。

 ――携帯電話が振動した。
 アラームが作動している。


( ^ω^)「あ、学校、いかなきゃ」


 思考を振り払う。
 その先を言葉にするのが恐ろしくて。

 僕は。
 僕は――なんだろう。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:07:01.61 ID:3YA5uzkt0
* * * * *


 学校を終えて、ツンと二人、下校する。
 少し息を吐くと、目の前が白く染まった。


川 ゚ -゚)「やあ」


 塀の上から声がする。


( ^ω^)「お、クー」


 見上げると、大きなカバンを持ったクーが居た。
 クーは運び屋、手紙屋などと呼ばれる、水色の身体をした小さな妖だ。


川 ゚ -゚)「デルタから手紙だ」

ξ゚听)ξ「ふうん? 珍しいわね」


 確かに珍しい。
 デルタさん――雑貨屋には頻繁に行っているから、わざわざ手紙を寄越す必要もない筈だ。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:07:44.52 ID:3YA5uzkt0
 塀から飛び降りたクーが、ツンに手紙を渡す。
 それを開いて、


ξ゚听)ξ


 すぐに閉じた。
 というか握りつぶした。


( ^ω^)「ちょ、ツン!?」
  _, ,_
ξ゚听)ξ「……」


 無言で手紙を突き出された。
 何だろう。
 とりあえず、開いてみた。


【v( *"ゞ)>はあい、】


 閉じた。

.

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:08:38.88 ID:3YA5uzkt0
.


( ^ω^)

( ^ω^ )

ξ゚听)ξ「こっち見んな」


 もっかい開く。


【v( *"ゞ)>】


 変わらなかった。

.

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:09:41.01 ID:3YA5uzkt0
( ^ω^)「……クー、何だおこの写真」

川 ゚ -゚)「中身は知らん」

ξ゚听)ξ「捨てて」

( ^ω^)「そ、そんな訳にも」


 そっと開いて、慎重に上部を隠しながら、何とか文字だけ見る。


【 はあい、デルタお兄さんだよー。
  あ、今ツンは握り潰そうとしたな? お兄さん分かってるんだから☆
  ブーンはそんなことしないって信じてるよ!
  ちょっと依頼したいことがあるから、クーと一緒に雑貨屋に来てな。
  ついでに買い物もしてってね!
  じゃ、待ってるよ。

  ついしん
  お兄さんの生写真はサービスだよ(は・あ・と                】


( ^ω^)

ξ゚听)ξ「潰しなさい」

( ^ω^)「……はい」

 異論があろう筈もない。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:10:43.08 ID:3YA5uzkt0
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( "ゞ)「ふんふふーん、ふんふー、お、いらっしゃ――」

ξ゚听)ξ三0)"ゞ)「ごふっ」


 着いて早々、ツンの左ストレートが炸裂した。


(#)"ゞ)「えっちょっと、お兄さん何でいきなり殴られたの!?」

ξ゚听)ξ「自分の胸に聞きなさい」

( ^ω^)(蹴りじゃないだけ手加減してると思うお……)


 ツンの蹴りは怖い。
 つねられるのも痛いけど、ツンが蹴りつける時は、本当に容赦ない時だけだ。


(#)"ゞ)「んー? 何かなあ? お兄さん、清く正しく生きてるよ!」

ξ゚听)ξ∩イラッ

(#)"ゞ)「ははっ、じゃあそろそろ話に入ろうか」

( ^ω^)「きよく、ただしく……?」

川 ゚ -゚)「これほど似合わない言葉もなかなかないな」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:11:23.22 ID:3YA5uzkt0
( "ゞ)「はいということでー、今回はデルタお兄さんから依頼の仲介だよ!」

ξ゚听)ξ「珍しいことが続くものね。ここは雑貨屋だ、っていつも言うのに」

( "ゞ)「ほら、お兄さんだから。頼られたらね、力発揮しちゃう」

ξ゚听)ξ「うさんくさい」

( "ゞ)「とりあえず話聞いてよー、お兄さん拗ねちゃうよー?」

( ^ω^)「肝心の話を始めて下さいお」

( "ゞ)「拗ねちゃっていいの?」

ξ゚听)ξ「帰りましょう、ブーン」

( "ゞ)「でだね、この地図でいう所の、ここに住んでる妖から依頼されたんだよね」


 デルタさんは地図をカウンターの下から取り出して、指さす。
 相変わらず立ち直りが早い。
 というか落ち込んでたのだろうか。
 この場合、切り替えが早いというべきか。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:12:24.86 ID:3YA5uzkt0
ξ゚听)ξ「内容は?」

( "ゞ)「聞いてないよー」

( ^ω^)「それ依頼って言うのかお?」

ξ゚听)ξ「……やっぱり帰ろうかしら」

川 ゚ -゚)「……」


 ツンが首を振る。
 その横、カウンターの上で、クーはじっと地図を見つめていた。


川 ゚ -゚)「……ああ、そうか」

( ^ω^)「どうしたんだお?」

川 ゚ -゚)「見覚えがあると思ったら。私とドクオが人だった頃の、故郷だ」

( ^ω^)「え?」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:13:19.14 ID:3YA5uzkt0
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 人?
 ……ひと?


ξ゚听)ξ「ドクオ、と……?」

( ^ω^)「ど……え? どういうことだお?」

川 ゚ -゚)「ん? 時々、屋敷にも顔出してただろう?」

( ^ω^)「あ、いや、ドクオと知り合いなのは、知ってた……けど」


 いま重要なのは、そこじゃない。
 クーはこくりと短い首を傾げてこっちを見ている。
 時折、手紙を持ってくるついでのように、ドクオと話していた。それは覚えている。

.

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:14:01.18 ID:3YA5uzkt0
( ^ω^)「人、だった?」

川 ゚ -゚)「ああ、言ってなかったか。私とドクオは人だった」


 随分と昔の話だが、とクーは付け足した。
 人が妖に?
 本当なら、クーは。ドクオは。一体、何故。
 故郷?
 それなら、もしかして、ドクオにまつわる何かが、


ξ )ξ「どうして」


 不意にツンの声がひび割れて聞こえた。


ξ )ξ「――どうして何も言ってくれなかったの!?」


 響いて、そして、沈黙する。


( ^ω^)「……ツン」

.

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:15:07.60 ID:3YA5uzkt0
.


ξ )ξ「ドクオのこと……手がかりがあるかもしれないのに、何で、今まで」


 一言一言、苦しげに、必死に。絞り出すようだった。
 俯いた顔に、金色の髪が掛かる。


ξ )ξ「どうして」


 もう一度、呟いてツンは黙り込んだ。
 僕は言葉を失う。

 こんなにも、強く。
 ツンは、ドクオのことを、大切に想っている。

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22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/02/18(月) 23:15:59.86 ID:3YA5uzkt0
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川 ゚ -゚)「……手がかりは、多分ない」


 静かな声で、ぽつりとクーが言った。


川 ゚ -゚)「私たちが妖に変じたのは、故郷を出てからだ。
     特にいい思い出もない」

( ^ω^)「話したく、なかったのかお……?」

川 ゚ -゚)「いいや。話す理由や機会がなかった」

ξ )ξ「どうでもいいってことなの?
       ――ドクオのこと、私たちのこと!!」

( ;^ω^)「――ツン!」


 叫んだツンを、クーは見つめる。
 再びツンや僕が口を開く前に、クーは静かに言葉を紡いだ。


川 ゚ -゚)「どうでもなんてよくない。
     ドクオは、眠っているだけだ。少し待てば、目覚めて逢える。
     本当にただ、手がかりがないと思っていたんだ」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:16:38.77 ID:3YA5uzkt0
 しんとする。
 普段、賑やかすぎるくらい賑やかなデルタさんも、黙って肘をついていた。

 少し待てば。
 それは知っている。僕だって――ツンだって。
 けれどそれは、いつになるかなんて分からないのだ。


ξ )ξ「……ごめんなさい」


 絞り出すように、ツンが言った。店の奥へと足を向ける。


( ^ω^)「あ、待って」

 ξ)ξ「ブーンは、来ないで」


 どこか必死に聞こえる声だった。


( ^ω^)「……でも、僕」

ξξ)「……お願いだから」


 早足でツンは奥へと消えていく。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:17:22.83 ID:3YA5uzkt0
.

川 ゚ -゚)「私が行こう」


 僕の返事を待たず、クーはカウンターから飛び降りた。


( ^ω^)「クー」

川 ゚ -゚)「何だ」

( ^ω^)「どうでもよくないなら……話して欲しかったお」

川 ゚ -゚)「そうだな、一理ある。
     ただ、妖であろうと人であろうと、どちらでもよかったんだ。
     私が私であることに、変わりはないのだから」


 相変わらず表情が読めないクーは、ふと苦笑したようだった。


川 ゚ -゚)「だがやはり、私はもう人ではないようだ。……忘れていたよ。
     私にとっては少しでも、君にたちにはそうではないこと」


 すまない、と言い残して、またしても僕の返事を待たずに、クーはツンを追いかけていった。
 駆けていくクーの背中を見送る。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:18:12.30 ID:3YA5uzkt0
 僕は、ツンに“命令”されたら、逆らえない。
 人形だから、主従があるから。
 けども。


( ^ω^)(“お願い”されたら、そんなの)


 抗えるわけが、ないのだ。


( ^ω^)「…………」

( ´ω`)

( "ゞ)「沈んでるねえ」

( ´ω`)「……そりゃ、沈みますお」


 言ってくれなかった理由は分かった。
 ツンが悲しく思った理由も分かる。
 それでいて、僕には今、何も出来ない。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:19:07.64 ID:3YA5uzkt0
( ^ω^)「デルタさんは、知ってたんですお?」

( "ゞ)「ま、伊達に長く生きちゃいないからね」


 肘をつき手に顎を乗せ、デルタさんは軽く笑った。


( "ゞ)「そういうもんさ、妖というのは」

( ^ω^)「悪気がなかったことや、手がかりがないことは、分かりましたお」


 頭では分かっても、どうしても歯切れが悪くなる。
 どうでもいいなんて、そうは思ってない。
 そう決めつけて(そう思っても仕方ないと正直思うのだけど)弾劾したことを、ツンは謝ったのだろう。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:19:44.48 ID:3YA5uzkt0
 ……僕に来て欲しくないのは、僕自身が割り切れない。
 頼って欲しいから。
 こんな時でも独占欲を発揮する自分に、ショックを受けている。


( "ゞ)「妖でも人でも、女は女同士の方が分かることもあるだろうさ」

( ^ω^)「……そう、ですおね」


 僕は力を手にして、ツンを守れるようになると思っていた。
 でもそれは――心までも守れるわけではないのだろうか。
 湧いた疑問に、僕はただ店の奥を見つめた。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/02/18(月) 23:20:32.39 ID:3YA5uzkt0
* * * * *


 店の奥、棚がひしめく中で、足を止める。
 壁に背中を預けると、そのまま力が抜けてしまった。

 感情を露呈してしまったのは、久しぶりだった。
 クーが私たちのことをどうでもいいと思ってるなんて、口にしてしまった。


ξ )ξ「…………」


 最低だ。
 どうでもいい筈なんてない。
 ブーンのこと――私たちがドクオを取り戻して、ブーンを人に戻すこと。

 クーは何度も、依頼を仲介してくれた。
 私たちが便利屋を営むことを、応援してくれていたのに。


川 ゚ -゚)「ツン」

ξ゚听)ξ「……クー」


 クーが座り込んだ私の目の前にやって来た。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:21:30.73 ID:3YA5uzkt0
川 ゚ -゚)「すまない」

ξ゚听)ξ「ごめ……え?」

川 ゚ -゚)「君の気持ちを、考えていなかった。だから君が謝ることはない」


 思わず目を瞬かせる。
 クーはそっと私の頭に手を乗せた。


川 ゚ -゚)「ブーンのことだろう?」


 虚を突かれた。
 そしてそれは、正しかった。

 そうだ。
 私はあの時、クーに信頼されてなかったのかと思うと同時に――ブーンを助ける手がかりが
 あるかもしれないのに、とクーを責めたのだ。
 どうして分かったのだろう。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:22:36.70 ID:3YA5uzkt0
川 ゚ -゚)「大切な人を蔑ろにされていると思えば、反発するものだろう」

ξ゚听)ξ「……」


 黙って俯く私の頭を、クーは撫でる。
 その細く優しい感覚は、ドクオとそっくりだ。
 許されている、気持ちになる。


ξ゚听)ξ「……ねえ、クー。クーは、ドクオのこと……どう思ってるの?」

川 ゚ -゚)「大切だな」


 少しの迷いもなく、クーは言い切った。


ξ゚听)ξ「会えなくて、いいの?」

川 ゚ -゚)「いつかは逢える。君たちを傷つけたと知れたら、怒るだろうな」

ξ゚听)ξ「き、傷ついてるわけじゃないわ」

川 ゚ -゚)「そうか?」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:23:57.27 ID:3YA5uzkt0
.

 ならよかった、とクーはまた頭を撫でる。
 クーの考えていることは分かりづらい。
 分かりづらいけど、行動で示してくれる。


ξ゚听)ξ「……あ、りがとう」

川 ゚ -゚)「ん? すまん、聞こえなかった」

ξ゚听)ξ「何でもないわ。戻らないと」

川 ゚ -゚)「ああ」


 立ち上がる。
 依頼を、受けるのだ。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:24:57.58 ID:3YA5uzkt0
* * * * *


 あれから二日後。
 土日を利用して、僕らは件の依頼の場所に向かっていた。


ξ゚听)ξ「大分、歩いたわね」

川 ゚ -゚)「こんな山奥に来るのは久しぶりだ」


 カバンを持ったツンと、そのカバンから顔を出したクー。
 少し面白い。
 流石にクーの歩調に合わせては遅くなるので、こうなった。

 クーに来て貰うことにしたのは、例え少しでも手がかりが落ちてないか、
 その手がかりを僕らが見逃さないでいられるように、ということからだ。


( ^ω^)「クーは色んな所に行ってると思ってたお」

川 ゚ -゚)「行くが、大概は裏道を通るし、こちらの方に来るのはあまりない」

ξ゚听)ξ「……そうね、雑貨屋でもそう言ってたわね」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:25:29.91 ID:3YA5uzkt0
 裏道、とは妖や僕たちのような鍵を持つ者が使う道のことだ。
 デルタさんの雑貨屋へも、鍵を使って出入りしている。
 使いようによってはかなり短縮できる(つまり、瞬間移動もできる)が、
 道を知らなければ迷うだけだ。

 それにしても、随分歩いたと思うのだけど。


( ^ω^)「……見当たんないお」

ξ゚听)ξ「……見当たらないわね」

川 ゚ -゚)「見当たらないな」


 デルタさん曰く、ここら辺の筈なのだが。


ξ゚听)ξ「騙されたかしら」

( ^ω^)「幾らなんでも、それはないと思うけど……」

川 ゚ -゚)「少し休憩しないか」


 クーの言葉に頷いて、一つ息をつく。
 ツンはカバンを降ろして樹に寄りかかった。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:26:23.45 ID:3YA5uzkt0
( ^ω^)「クーの故郷って、ここら辺なんだおね?」

川 ゚ -゚)「そうだな。今は面影があるかすら分からないが」

( ^ω^)「どういう風に、暮らしてたんだお?」

川 ゚ -゚)「普通に。ただ馴染めなくて、二人で旅に出た」


 故郷にいい思い出はない、と言っていた。
 だからか、端的にクーは語った。


ξ゚听)ξ「……妖になったのは、その旅で?」

川 ゚ -゚)「ああ。ドクオの力だ。力というか、体質と言うべきか」

ξ゚听)ξ「どういうこと? ドクオは魂や生命力を移動させる力があるんだとばかり――」

川 ゚ -゚)「あいつの体質は、傍に居る者の魂の力を引き出し、変化させるもの。
     妖になったのは、私たちの本質が妖に近かったからだろう」


 屋敷の縁側で佇むドクオを思い出す。
 僕に気付いたドクオが微笑んで、月を指す。綺麗過ぎて怖いよな、と。

.

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:27:30.70 ID:3YA5uzkt0
( ^ω^)「それじゃ……僕やおじいちゃんが、
      視えたり生命力を移したりできるのは、ドクオの……?」

川 ゚ -゚)「いいや、家系だろう。妖になってからは制御出来ていたから。
     私の物の大きさを変える力も、ドクオの移すことが出来る力も、
     あいつ自身の体質によって引きずり出されたと言っていい」


 先程とは一転、クーは饒舌に語った。
 もしかしたら、雑貨屋での出来事を気にしているのかもしれない。
 相変わらず表情は読めないけど、きっと気にかけてくれている。


ξ゚听)ξ「そっか。……ありがとう、クー」

( ^ω^)「色々分かったお」


 確かに、故郷を出てから妖になったのなら、故郷にドクオの妖力の手がかりはないだろう。
 ドクオの“体質”については初耳だった。
 おじいちゃんは、知っていたのだろうか。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:28:04.21 ID:3YA5uzkt0
川 ゚ -゚)「そろそろ出発するか」

ξ゚听)ξ「そうね。まあ、見つからないのなら、それでもいいわ。
       ドクオとクーの――」


 がさっ


 ツンがカバンに手を駆けたと同時に、草の音がした。


 がさがさっ


( ^ω^)「下がって」


 ツンがカバンごとクーを抱きしめ、僕の後ろへと隠れた。
 身構えて、音がしたと思しき方向に備える。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:28:37.68 ID:3YA5uzkt0
.


(=゚ω゚)ノ「ってええええええい!!」


( ^ω^)「とっ!」


 何かが襲ってきた――と、思ったら。


(=゚ω゚)ノ


 妖か。
 木の棒を持っている。
 反射的に手に力を集める

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:29:11.76 ID:3YA5uzkt0
(=゚ω゚)ノ「……あれ?」

( ^ω^)「何者だお」

(=゚ω゚)ノ「人だよぅ。なのに何で反撃しないんだよぅ?」

( ^ω^)「え? ……えっと、戦いたいのかお?」

(=゚ω゚)ノ「そう、ちゃんばらだよぅ!」

( ^ω^)「……え、と」

ξ゚听)ξ「ちゃんばら?」


 猿のような、少し長い爪と曲がった足が特徴的な妖だ。
 棒――というか、枝を持っているし、襲ってきたのに、害意は感じない。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:30:03.36 ID:3YA5uzkt0
(=゚ω゚)ノ「そうだよぅ。人ってそうやって遊ぶんだろぅ?」

( ^ω^)「ちゃんばらごっこ……」

川 ゚ -゚)「ふむ。確かに子供はよく遊んでいるな」

(=゚ω゚)ノ「わっ、妖だよぅ!」

ξ゚听)ξ「あなたも妖でしょう」

(=゚ω゚)ノ「そうだけど……違うんだよぅ」

ξ゚听)ξ「? ……あなた、ここら辺に住んでるの?」

(=゚ω゚)ノ「だよぅ」

ξ゚听)ξ「ぃょぅって名前の妖、知らないかしら。依頼で来たんだけど」

(=゚ω゚)ノ「あっ、僕だよぅ!」


 途端に、妖の顔が輝く。
 赤く頬を染め、ぴょいぴょい僕たちの周りを跳ね回る。

.

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/02/18(月) 23:30:58.50 ID:3YA5uzkt0
(=゚ω゚)ノ「僕がぃょぅだよぅ!」

ξ゚听)ξ「あなたが、依頼主?」


 怪訝そうにツンが軽く眉をひそめた。
 妖――ぃょぅはお構いなしに、にこにこ笑っている。


(=゚ω゚)ノ「僕のお願い、叶えに来てくれたんだよぅ!」

( ^ω^)「お願い……うん、そうかもしれないお」

(=゚ω゚)ノ「僕、僕、人になりたいんだよぅ!!」

( ^ω^)

ξ゚听)ξ

川 ゚ -゚)

( ^ω^)(はっ)


 いけない、一瞬思考がフリーズした。

.

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:31:30.67 ID:3YA5uzkt0
.


ξ゚听)ξ「……人に?」


 ちらりとツンがクーに視線を寄越す。
 少々タイムリーと言うべきか。
 クーとは逆だけど。


(=゚ω゚)ノ「そうだよぅ。お願いだよぅ、便利屋さん!」


 きらきらと光る瞳で見つめる彼を、さて、どうすればいいだろう。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:32:23.03 ID:3YA5uzkt0
* * * * *



(=゚ω゚)ノ「村に行くと、皆いつも楽しそうなんだよぅ。
     僕も人になって暮らしたいんだよぅ」


 どうして人に、という問いに、ぃょぅはそう答えた。
 どうでもいいが、ぃょぅというは非常に言いにくい。ちゃんと発音出来てるか心許ない。


ξ゚听)ξ「あなた、人には見えないタイプよね」

(=゚ω゚)ノ「?? よく分かんないけど、僕が声かけると皆びっくりするよぅ。
     だから最近は、こっそり見てるよぅ」

( ^ω^)「声も聞こえるけど見えない、ってことだおね」

(=゚ω゚)ノ「きっとそうだよぅ!」


 妖にも、見えるタイプと見えないタイプがいる。
 ぃょぅは声だけのようだ。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/02/18(月) 23:33:09.08 ID:3YA5uzkt0
.

( ^ω^)(……どうしよう、ツン)コソ

ξ゚听)ξ(どうしようも何も)コソリ

(=゚ω゚)ノ?

ξ゚听)ξ チラ (^ω^ )

川 ゚ -゚)

(=゚ω゚)ノ??

川 ゚ -゚)「言っておくが私は知らないぞ」

ξ゚听)ξそ

( ^ω^)そ


 一瞬で先手を打たれた。
 うん、まあ、そうか。クーは人から妖になったんであって、逆は知らない訳で。
 そうなると完全に手詰まりだ。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/02/18(月) 23:34:22.12 ID:3YA5uzkt0
ξ゚听)ξ「……ぃょぅ」

(=゚ω゚)ノ「何だよぅ?」

ξ゚听)ξ「悪いけれど私たち、妖を人に変える方法、知らないわ」

(=゚ω゚)ノ「ええっ!」

ξ゚听)ξ「出来ない依頼は、受けられない」

(=゚ω゚)ノ「便利屋さんでも……ダメなのかよぅ……」


 しゅんと項垂れる。
 可哀想だがしかし、やれないことはどうしても沢山、ある。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:35:12.87 ID:3YA5uzkt0
.

( ^ω^)「せっかく依頼してくれたのに、ごめんお」

(=´ω`)ノ「…………」

ξ゚听)ξ「……ブーンに似てるわね、その顔」

( ^ω^)「えっ、そ、そうかお?」

(=゚ω゚)ノ「似てる!? 僕、人みたいだよぅ!?」

ξ゚听)ξ「ん……人では、ないけど」

(=^ω^)ノ「嬉しいよぅ!」

ξ゚听)ξ「あら、そっくり」

( ;^ω^)「ええええ!?」


 ぼ、僕は違うと思うんだけどな!


川 ゚ -゚)「ふむ。面白いな」

( ^ω^)「えっどこが!?」

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:36:14.88 ID:3YA5uzkt0
* * * * *



 ぃょぅはすっかり元気を取り戻し、僕たちの周りをくるくる回って踊っている。
 遊んで行ってよぅ、と言われて、少しそうすることにした。


(=゚ω゚)ノ「ちょうど三人いるよぅ、はい、これ持ってよぅ」


 クーに大きな緑の葉を、ツンには黄色の花を、そしてぃょぅが赤い落ち葉を持って、横に並ぶ。


( ^ω^)「僕はどうするんだお?」

(=゚ω゚)ノ「ブーンは車だよぅ」

ξ゚听)ξ「車?」

(=゚ω゚)ノ「ツン、動いちゃダメだよぅ! 信号機ごっこだよぅ!」


 ぃょぅが赤い落ち葉を掲げる。
 なるほど。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/02/18(月) 23:37:38.88 ID:3YA5uzkt0
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(=゚ω゚)ノ「クー、交代だよぅ」

川 ゚ -゚)「ああ。ほら、ブーン」サッ

( ^ω^)「おっ、ぶ、ぶっぷー」

三⊂( ^ω^)⊃

(=゚ω゚)ノ「ツン!」

ξ゚听)ξ「え、あ」サッ

( ^ω^)「早っ!?」キキィ

(=゚ω゚)ノ「赤だよぅ!」サッ



(=゚ω゚)ノ「はーないっちもんめっ♪」

ξ゚听)ξ「あーの子が欲っしい♪」

川 ゚ -゚)「あーの子じゃ分っからん♪」

( ^ω^)「そーだんしっましょ、そーしっましょ♪」

( *^ω^)(……抱き上げたりはしてたけど、ツンと手繋ぐのは久しぶりだお)

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/02/18(月) 23:38:40.09 ID:3YA5uzkt0
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(=゚ω゚)ノガリガリ

( ^ω^)「ぃょぅー、こっちもマル書けたおー」

(=゚ω゚)ノ「わーい、じゃあ僕から行くよぅ、けーんけーんぱっ」

川 ゚ -゚)「ぐーりーこ」

ξ゚听)ξ「ちーよーこーれーいーと」




(=゚ω゚)ノ「じゃあ次は泥棒ごっこだよぅ」

( ^ω^)(信号に続き、また変わったものを)


 暫しわらべ歌で遊んだあと、ぃょぅはそう言った。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:39:39.63 ID:3YA5uzkt0
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(=゚ω゚)ノ「村に行って、柿を取ってくるんだよぅ!」

ξ゚听)ξ「待って、それは駄目よ」

( ^ω^)「だお。ごっこじゃなくて、本当に泥棒になっちゃうお」

(=゚ω゚)ノ「え?」


 丸い目をくりくりとさせて、ぃょぅは首を傾げた。
 考え込んでいるようで、うんうん唸っている。


ξ゚听)ξ「別なものにしましょう」

(=゚ω゚)ノ「皆がそう言うなら、そうするよぅ」


 意味がよく分からなかったのか、ぃょぅは笑った。
 じゃあ何するか、と再び考え始めた横で、僕たちは一旦腰を下ろす。
 戦うより全然いいけど、疲れ方が違うんだなあ。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:40:40.44 ID:3YA5uzkt0
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(=゚ω゚)ノ「じゃ、食べに行こうよぅ!」

川 ゚ -゚)「食事か」


 うん、とぃょぅは無邪気に笑う。


(=゚ω゚)ノ「人を食べに行こうよぅ」


 瞬間、緊張が走った。
 ぃょぅだけが、笑ったままこちらを見ている。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:41:40.12 ID:3YA5uzkt0
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ξ゚听)ξ「……何を言ってるの?」

(=゚ω゚)ノ「? だって、前に村の人たち、そうしてたよぅ」

( ^ω^)「前?」

(=゚ω゚)ノ「んー、結構、前だったかもしれないよぅ。食べるものないって言ってたかよぅ?」

川 ゚ -゚)「……もしや、飢饉か」

(=゚ω゚)ノ「ききん?」


 そうか。昔なら、飢饉で口減らしをしたり――たべたり、あるかもしれないのか。
 納得は――できないけど。


川  - )「……そうか。あの村は、それを選んだのか」

ξ゚听)ξ「駄目よ。どうしてもそうするなら、私は……私たちは、あなたを退治する」

(=゚ω゚)ノ「え? どうして? どうしてだよぅ?」

( ^ω^)「ぃょぅが誰かを傷つけるのは、やめて欲しいんだお」

(=゚ω゚)ノ「でも……でも」

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:42:31.60 ID:3YA5uzkt0
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 本当に、何がいけないのか分かっていない様子だ。
 妖は――妖でしか、ないのだろうか。
 無邪気に遊び――無邪気に笑って言った言葉。


(=゚ω゚)ノ「そしたら、人になれるんじゃないかよぅ……?
      だって、ずっと見てたよぅ、そうしなきゃいけないと思ったけど、今までどうしても出来なかったよぅ。
      でもそうしなきゃ人になれないなら、僕、でも、僕、」


 ふるふると震えながら、ぃょぅは言う。
 困惑と混乱を湛えて。


川 ゚ -゚)「ぃょぅ」

(=゚ω゚)ノ「ちがうのかよぅ? そうじゃないのかよぅ?」

川 ゚ -゚)「人を食べても、人にはなれない」

(=゚ω゚)ノ

(= ω )ノ「……じゃあ、どうすればいいんだよぅ」

( ^ω^)「ぃょぅ、」

(=;ω;)ノ「どうしたら人になれるんだよぅ。どうしたら、ひとりじゃなくなるんだよぅ!」

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:44:33.66 ID:3YA5uzkt0
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 大粒の涙を零しながら、ぃょぅは叫んだ。
 それは、今まではしゃいでいた、どんな声よりも切実で。


『遊ぼうよぅ』

『僕、人になりたいんだよぅ!』


(=;ω;)ノ「人になりたいよぅ……寂しいよぅ……」


 大きな痛みを伴う、言葉だった。


 しくしくと泣き続けるぃょぅ。
 ……どうしたら、彼を泣き止ませられるだろう。
 どうしてあげられるだろう。
 人になりたいと、便利屋に依頼してきた彼を――僕たちは。


『似てる!?』

『寂しいよぅ……』


 ……あ。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/02/18(月) 23:46:36.83 ID:3YA5uzkt0
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( ^ω^)「ねえ、ぃょぅ」

(=;ω;)ノ「…………」

( ^ω^)「寂しんだおね?」

(=;ω;)ノ「うん……」

( ^ω^)「寂しいなら、ひとりじゃなくなれば、いいってことかお?」

ξ゚听)ξ「……あ。ブーン、つまり」

( ^ω^)「うん。妖が居ても驚かない所に、行けばいいんだお」

(=;ω;)ノ「……え?」

ξ゚听)ξ「この場所を離れて、私たちと来る気はある?」

(=゚ω゚)ノ「……僕、ひとりじゃなくなるのかよぅ?」

ξ゚听)ξ「ええ。人のお願いを叶えてくれる神様を知ってるの。
      彼らなら、私たちから願いを通せば、あなたが一人じゃなくなる場所を教えてくれる」

川 ゚ -゚)「なるほど。あの暇してる三柱か」

ξ゚听)ξ「ええ」

川 ゚ -゚)「見つからなくても、あそこに居ればあの暇神どもが居るしな」

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:48:34.41 ID:3YA5uzkt0
 何だかとっても酷い言いぐさを聞いた気がする。
 僕も心当たりがあった、というか多分同じ神様を想像しているんだろうけど。
 手紙で人の願いを叶えてくれる、神様が居るのだ。


(=゚ω゚)ノ「行くよぅ」

( ^ω^)「故郷を離れても、いいんだおね?」

(=゚ω゚)ノ「全然、想像もしてなかったよぅ。
      人が居なくなるのは、寿命が短くて死んでいくのばっかりだと思ってたよぅ。
      でも、それだけじゃないってことだよぅ?」

ξ゚听)ξ「そうね。引っ越したり、ね」

(=゚ω゚)ノ「僕、僕、そうすればよかったんだよぅ。
      だから、行くよぅ!」

川 ゚ -゚)「……では、依頼成立だな」

(=^ω^)ノ「うんっ!」

ξ゚ー゚)ξ「……やっぱりブーンに似てる」クスッ

( ^ω^)「おっ」


 似てるというのはやっぱり実感ないけど。
 ツンが少し笑った姿を見たら、それでもいいかな、と思えた。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/02/18(月) 23:49:31.56 ID:3YA5uzkt0
* * * * *



 あの後、クーとドクオの故郷を探索したが、


川 ゚ -゚)『正直もうどこか分からん』


 という一言と、手がかりのなさに諦めて帰ってきた。
 ぃょぅを連れて。


爪'ー`)y‐『おー、ツンちゃん』

从 ゚∀从『おう何だそいつ、猿か。どうしたんだ』

(-_-)『……預かる? ここで?』

爪'ー`)y‐『女の子の頼みはばっちり聞いちゃうぜ、オレ』

从 ゚∀从『すまんこの馬鹿は気にするな。手紙があるからオッケーだ』

(-_-)『まあ、最近避難所みたいだよね……いいけどさ』


.

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/02/18(月) 23:50:18.16 ID:3YA5uzkt0
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 こうしてぃょぅは、ある小さな神社の神様の所に、行くことになった。


(=゚ω゚)ノ『ありがとうだよぅ』


 ぃょぅは、静かに微笑んでくれた。


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76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/02/18(月) 23:51:51.79 ID:3YA5uzkt0
( ^ω^)「人になりたい、か」

ξ゚听)ξ「……」


 いつもの社――例の神様たちが居る社――から雑貨屋を巡り、帰り道。


ξ゚听)ξ『どうやって依頼受けたのよ』

v( *"ゞ)>『デルタお兄さんは物知りだってことさー』


 答えになってないが、デルタさんらしいと言えばらしい。
 その後、ツンの左が炸裂した。


( ^ω^)「ああいう妖も、いるんだおね」

ξ゚听)ξ「……そうね。寂しくて」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/02/18(月) 23:52:43.09 ID:3YA5uzkt0
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 寂しくて、寂しくて、だから人になりたかった。
 人でも妖でも構わないと、クーは言った。
 ――僕はどうだろう。

 隣を歩くツンをそっと見る。


ξ゚听)ξ


 手の上で、木の葉に乗った赤い実を、見ていた。


( ^ω^)「今回の報酬は、おいしそうだお」

ξ゚听)ξ「ええ。ジャムにでもしましょうか」

( ^ω^)「おっ、楽しみだお!」


 ジャムが出来たらぃょぅにも持って行って、一緒に食べよう。
 きっと甘酸っぱい、おいしいジャムになってくれる。



           【第二話】 了

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