ζ(゚ー゚*ζAmmo→Re!!のようです
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/24(火) 22:35:27.26 ID:IM+wmmS40
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Ammo→Re!!のようです
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                                        Ammo for Reasoning!!編
                ‥…━━ August 4th AM09:07 ━━…‥
                                        第四章【murder -殺人-】


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4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/24(火) 22:40:44.00 ID:IM+wmmS40
リンゴジュース五百ミリリットル、それとリンゴを二つ、トマトがいっぱいのサラダとトースト三枚の朝食を済ませた後、ブーンはノートに単語の書き取りを行っていた。
かれこれもう、一時間になる。

(∪´ω`)φ″

言葉を幾つも書き綴り、そして、それを自分の物にできる感覚が気持ちいい。
動詞、名詞、副詞、形容詞、接続詞、それぞれの言葉に与えられた別の言葉の意味を理解してからは、新しい単語の吸収が良い。
普段使っている言葉は形を変えて、様々な使い方をされている。
一体どこの誰が文字を発明したのか、ブーンは気になった。

(∪´ω`)「デレシアさん、だれがもじをつくったんですか?」

ζ(゚ー゚*ζ「うーんと昔の人よ。
      それこそ、私が生まれるよりもずっとずっと前ね」

デレシアでも知らないことなら、きっと、この世界の誰も知らないのだろう。
ブーンは気を取り直して、文字を書き始めた。

(∪´ω`)φ″コリコリ

以前までは出来なかったことが出来る感覚。
その自覚はこの上ない自信へと繋がった。
店で働かされていた時は文字を読めなかった。
しかし、今なら読める。

先ほどからブーンがノートに写しているのは辞書の内容だった。
これは、デレシアから教わった文字をより実用的に見るための訓練だった。
一ページ目に書かれた単語の意味が分からなかったとしても、その意味が、別の言葉で書いてある。
そちらの方が簡単に書かれているが、分からなかったとしても、更にまた調べればいいだけだ。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/24(火) 22:46:44.01 ID:IM+wmmS40
ζ(゚ー゚*ζ「少し息抜きしましょうか、ブーンちゃん」

(∪´ω`)「お」

本当はもう少しだけやりたかったが、デレシアにそう言われれば断れない。
代わりに、デレシアはノートの上に色とりどりの四角い物体を置いた。

ζ(゚ー゚*ζ「はい、これ」

ノパー゚)「へぇ、懐かしいな。
    ルービックキューブか」

風呂から出て湿った髪の毛をタオルで乾かしながら、ブーンの背中側からそれを覗き込んだ。
石鹸のいい香りがヒートの全身から漂っている。
ブーンはヒートの風呂上がりの香りが好きだった。

(∪´ω`)「お、これ、なんですか?」

とりあえず、まずはそれだった。
小さな正方形がびっしりと、一面に九つ。
色が六種類あるそれが何であるか、全く見当がつかない。

ζ(゚ー゚*ζ「これはね、こうやってくるくると回して……
      こうするものよ」

約五秒。
ばらばらだったはずの立方体の面が、全て、同じ色で統一されていた。

ζ(゚ー゚*ζ「立方体パズルってものよ」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/24(火) 22:50:29.92 ID:IM+wmmS40
ノハ;゚听)「……はえぇ」

ζ(゚ー゚*ζ「偶然よ」

と言いながら、デレシアは素早くパズルの面をばらばらにした。

(*∪´ω`)「おー!」

早速、ブーンも見よう見まねで面を動かしていく。
詳しい理屈などは分からないが、とにかく、直感に従って面を動かす事一分後。
見事、デレシアと同じように面を揃えることが出来た。

(*∪´ω`)ノ■「できましたお!」

ノハ*^ー^)「すごいぞ、ブーン!!」

ζ(^ー^*ζ「ほんと、あっという間じゃないの!!」

二人に同時に褒められながら抱きしめられ、ブーンは気恥ずかしかった。
獣の尻尾は激しく振れ、喜びを隠せない。
なんだかよく分からなかったが、ブーンは二人にされるがままとなった。
それはとても、気持ちのいいことだった。

――この時。
ブーン以外の二人は、彼の持つ別の才能の片鱗に気付いた。
しかしそれが確信に変わったのは、もう少し後の事なのであった。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/24(火) 22:55:23.96 ID:IM+wmmS40
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           _ -=<ハ
         , '´   ,ィ -‐' _  ― 、
       /    ,イ―<´  `、 -'
        ,イ 、    '    `=―r―、  ̄)
   _,_-_'-、_ `ヽ、-r―-、___ヽ, ィ-‐<´ノ
 ̄´   `ヽミ-   f`ヽ.i `ヽ. `ト、――ァ′
        i/  /l',` l`Y  ', !.',-―'
       ノ/ " l   しKニ .l ノl、
   _, -イ---‐イ  l   〃 八ハ
  ´       l!       /   ノ
          l         イ
          ',        /
          V  = 、   /
                ‥…━━ August 4th AM09:46 ━━…‥
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この短時間で、早くも捜査は暗礁に乗り上げてしまった。
探偵たちの必死の捜査で明らかになった事件の概要を、ショボン・パドローネは手帳に纏めた。
殺害時刻、昨夜二十三時から明朝二十四時半までの間。
現場には被害者以外の指紋は残されておらず、これと言って犯人につながる証拠は見つからなかった。

探偵が敵に回っているとなると、探偵たちの動きや弱みも必然的に分かるというもの。
厄介な人物が敵に回っていると認識せざるを得ない。
この事件は今後も続く。
最も簡単なはずの一回目の惨劇で、この進捗だ。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/24(火) 22:59:22.40 ID:IM+wmmS40
とてもではないが、これから先の事件に対応できるだけの余力は今の探偵組合にはない。
ならば、このショボンが進めてやるしかない。
事態進展のために全力を出す。
悪い気はしない。

警察での経験を活かすのは、いつだって快感なのだ。

(´・ω・`)「……」

川 ゚ 々゚)「怖い顔して、どうしたの?」

(´・ω・`)「何故、犯人は銃弾を隠そうとしているのだろうか?」

川 ゚ 々゚)「さぁ? 潔癖症で完璧主義のA型の人だとか?」

(´・ω・`)「完璧主義なら、死体を海に投げ捨てて遺書でも残すよ。
     だけど今回は違う。
     彼女、つまり第一容疑者のフェイス・オフは完璧主義にも拘らず、死体と消えた銃弾という謎を残した。
     これは紛れも無く、彼女からの招待状だよ。

     招待状だよ、招待状。
     四百五十人の探偵を相手に、招待状と来たもんだ。
     なめられてるんだよ、僕たちは。
     この招待、中指を立てて受け入れようじゃないか」

気が付けば、ショボンは声を荒げていた。
まるで演説でもするかのように。
まるで喜劇を演じる役者の様に。
この事件に関わる一人として、絶対に、この事件を迷宮入りにするわけにはいかない。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/24(火) 23:06:42.50 ID:IM+wmmS40
その為には、彼女、即ちクルウ・ストレイトアウトの協力が必要不可欠なのだ。
現場になければ死体にある。
死体は多くを語る。
その声を聞くことが出来るのは、この船には“ドクター・ストレンジラブ”以外にいない。

彼女を本気にさせれば、新たな情報が絶対に出てくるはずなのだ。
フェイス・オフからの招待状を解き明かし、探偵たちは次のステージに進まなければならない。
そのための一歩目は、このショボンが先導する。

(´・ω・`)「クルウ君、僕に手を貸してくれないか?」

川 ゚ 々゚)「……見くびらないで。 私が何年、あんたに手を貸してきたと思ってるの?
     変人奇人異人呼ばわりされたあたしにこうして天職を与えてくれたあんたの頼みを、あたしが断るとでも?」

(´・ω・`)「恩に着るよ、クルウ」

川 ゚ 々゚)「で、具体的に私は何を手伝えばいいの?」

(´・ω・`)「通訳だ」

そう。
この世界で、彼女以上に死体と言葉を交わせる人間はいない。

(´・ω・`)「銃弾の出て行った先。
     それを聞いてほしい。
     鑑識くん、風呂場は誰がなんと言おうと、現状維持だ。
     血を流すことも、物を動かすことも、だ」

(HнH)「了解です」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/24(火) 23:13:54.15 ID:IM+wmmS40
(´・ω・`)「さ、クルウ」

川 ゚ 々゚)「ベッドルームで聞きましょう」

これこそが、この事件の影を暴く第一歩。
ショボンとクルウは部屋に鑑識班の人間を残して、死体が保管されている船倉に向かった。
船倉までは、各ブロックにあるエレベーターにあるカードリーダーに、権限の与えられたカードキーをかざすことで行けるようになる。
二人だけのエレベーターは、途中で止まることなく真っすぐに船倉へと降りていった。

湿った空気の通路を進み、白い蛍光灯が照らす部屋に入る。
エタノール臭、そして微量の鉄臭。
白を基調とした清潔そのものの部屋には目立った調度品はなく、書類の乗った机と椅子、そしてベッドが一つだけ。
部屋の左手には厳重なセキュリティに守られた、クルウの趣味の部屋がある。

数百体の死体が眠る、死体安置所だ。
オアシズは船だ。
水葬にせず土葬を望む家族のために保管しているのもあれば、無縁仏故に一年間保管し、海に還すものもある。
そして、ここはそんな死体を保管する唯一の場所なのである。

全ての死体にはナンバリングがされ、いつどこでどのように死亡し、どのような処置がされたのか。
それら全てが、このオアシズが持つダットに集約され、管理されている。
クルウの場合、ダットを使わずとも死体の情報を記憶しているので、余計な手間が省ける。
案内されるまま、一定の温度を保つように設計されている死体安置所に足を踏み入れた。

蛍光灯が薄緑色の床と白い壁を照らし、部屋の真ん中にあるスチール製の机に乗ったそれを照らしだしている。
その上に、黒い死体袋に収められた物が置かれていた。
死体を挟んで向かい側に並び、クルウがチャックを下ろす。

川 ゚ 々゚)「防腐加工済みだから、まだ変化はしていないはずよ」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/24(火) 23:19:05.52 ID:IM+wmmS40
(´・ω・`)「蛆が湧いてないことを祈るばかりだよ」

袋の中から出てきたのは、写真で見た通りの惨たらしい死体だった。
早速、クルウが見せてくれたのは右の米神。
つまり、銃弾が侵入した箇所だった。
血で固まった髪の毛をどかしてよく観察してみると、火傷の痕が見られる。

至近距離から発砲された証拠だ。

(´・ω・`)「他には何かないのか?」

川 ゚ 々゚)「傷口を見たけど、特には」

(´・ω・`)「反対側は?」

川 ゚ 々゚)「はい」

被害者の頭を反対側に向けて、血に汚れた傷口を見せた。
確かに、脳みその多くがどこかに消え、乾いた血が顔半分に付着している。
更に、複雑に折りたたまれた四肢を見る。
左半身が血に濡れている。

不自然だ。

(´・ω・`)「何かに体ごと頭を押し付けた状態で撃っているね。
     固定された何かの上。
     ……そうか、風呂場か」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/24(火) 23:23:46.92 ID:IM+wmmS40
始まりはそこだ。
少し推理すれば、分かることだった。
まず、この被害者は両足の付け根を切断されてから殺害された。
ならば、風呂場以外の何処かに大量の血がなければならない。

部屋の中で唯一血が発見されたのは、浴槽だ。
では、浴槽でどのように殺害したか。
それも、考えれば分かることだ。
頭部を固定しつつ、銃弾を隠せる場所は浴槽の中にある。

それは、風呂の排水口だ。
排水口に銃弾の出口を持ってくれば、脳みそと銃弾を隠すことができる。
被害者の頭を排水口に押し付けていた証拠が、この左半身についた血だ。
クルウが言っていた通り、足の付根を切断してから頭を撃ったのならば、必ず血溜まりの中でそれは行われる。

大量の血が流れる浴槽で押し倒し、頭を撃ったのだ。

(´・ω・`)「現場に戻る。
     クルウ、あの風呂場の排水口はどこにつながっている?」

川 ゚ 々゚)「下水処理施設。
      残念だけど、汚水はもう処分されてるわ」

(´・ω・`)「まだ消え去ったわけじゃないさ」

真実は必ず残されている。
諦めない限り、そう簡単に消えはしない。
銃弾さえ見つかれば、必ず道は開ける意気込んで現場に戻ろうとしたショボン。
そしてそれを見送ろうとしたクルウ。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/24(火) 23:30:54.74 ID:IM+wmmS40
両者が立ち止まってスピーカーに目を向けたのは、同時だった。

『――あーあー、テステス。
オアシズの皆様、この館内放送は聞こえていますでしょうか?』

機械音声。
機械の力を使って変換させ、身元の特定を不可能にする装置。
そんな物、一般人は持っていない。
そして、館内放送をかける立場の人間が故意に使うものでもない。

『ははっ、驚いてる驚いてる。
なら、聞こえているみたいだね』

このアクセント。
この口調。
間違いなく、フェイス・オフのそれだ。
そしてそれを知るものは探偵だけであり、この放送が探偵全体への挑戦だと分かった。

ショボンは急いで駆け出し、一階の大通りに向かった。

『昨夜……あぁ、違うね。
正確に言えば今朝かな。
この船で、殺人事件が起こったんだ』

一階が近づくごとに、ショボンの心臓は動悸した。
これが何を引き起こすのか。
それは、火を見るよりも明らかだ。
船内全体を恐怖させ、探偵全体を敵にする。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/24(火) 23:38:21.50 ID:IM+wmmS40
大混乱は、どうあっても避けられない事態だった。
探偵たちが必死になって食い止めようとした事態を、この放送が引き起こす。
一階に上がり、そこから交通量の多い大通りに出ると、目の前に巨大モニターがあった。
高く聳え立つビルの壁面に設置されたそれは、普段は広告やニュースを流すものなのだが、今はガイ・フォークスの仮面が映っていた。

船内放映のジャック。
次に何が起こるのかを想像して、ショボンは思わず体を震わせた。

『四肢を折られて、目を潰されて、頭を吹っ飛ばされたんだ。 こんな感じにね』

次の瞬間。
画面が切り替わり、ハワード・ブリュッケンの死体が映し出された。
極めて解像度の高いカメラで撮影されたその画像は、当然、モザイク処理などは一切されていない。
脳みそが飛び出て、血の風呂に浸かる奇妙な肉の塊。

一瞬の出来事に、人間の死について経験と認識の浅い誰もが目を疑い、誰もが現実を直視しようとはしなかった。
あまりにも唐突過ぎたため、脳がそれを現実として処理していいものかどうか判断を迷ったのだ。
何の前触れもない、突然の非現実。
次の一言が、これを現実として認識する必要性を人々に与えた。

『そして、これは始まりに過ぎない。
私はまだ君たちと同じ船の中。
次は誰か、楽しみだね』

半瞬の静寂があった。
そして、悲鳴があちらこちらから上がった。

(´・ω・`)「……やられた」

――捜査も、何もかもが振り出しに戻った瞬間だった。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/24(火) 23:45:13.15 ID:IM+wmmS40
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                ‥…━━ August 4th AM10:13 ━━…‥
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殺人現場の映像が流れた瞬間、視界内にいた探偵達が驚きの表情を浮かべる顔が観察できた。
実に面白い表情をしていた。
意気がって集まって解決できると思い上がっていた連中の思惑をくじくことほど、面白いことはない。
所詮は素人集団。

千人集まろうが関係ない。
思考で一歩先を行く人間に、敵うはずがない。
折角の推理ごっこのところ申し訳ないが、こうしてやったほうが、もっと有意義な時間になる。
すなわち、乗客全員が恐怖に慄き、誰もが疑心暗鬼になる状態。

この緊張感がたまらないのだ。
大規模になればなるほど、この空気はその旨みを増す。
一昔前はホテルなど、とても小さな領域でのみ見られたこの現象を、街一つを利用して引き起こす。
こんな贅沢、普通は経験できない。

オアシズが船だからこそ出来る演出だ。
この演出は、世界中にいる全ての探偵達が憧れ、焦がれ、そして求めた物。
つまり、彼らが最も力を出さざるを得ない状況なのだ。
これは夢。

そう。
彼らにとっての、夢なのだ。
その夢が叶ったことに気づくのに、そう時間はかからないだろう。
勘のいい探偵はもう気づいているはずだ。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/24(火) 23:55:26.47 ID:IM+wmmS40
自分が興奮していることに。
これまでで最も胸を高鳴らせ、最も生き甲斐を感じていることに。
探偵だからこそ分かる、この旨味。
抗う術はない。

彼らが探偵であれば、それは絶対だ。
この舞台。
容易に崩すことはできない。
偽りを虚無に還すと言われる名探偵でさえ、例外ではない。

これだけの混乱の中、デレシアは果たして冷静でいられるだろうか。
昨夜は見事にしてやられたが、今回はそうはいかない。
逃してなるものか。
ブーンを恐怖の中に陥れ、そして、屠る。

彼の最期の味を堪能し、それから残った二人を殺す。
そうして、不安要素を全て排除した後に計画の核心部を実行に移すだけだ。
つまり言い換えれば、この騒動は全てあの少年のために用意したものなのだ。
この惨劇はまだまだ続けなければならない。

あの少年を殺す、その瞬間までは。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/25(水) 00:01:47.79 ID:/JV1NRMF0
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    トヽ.-''´:.:.:::::::.:.:.:.::::::::::::::.ソノl
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      !              ノ、_j j
                ‥…━━ August 4th AM09:43 ━━…‥
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大型モニターで惨状が映し出される三十分前。
ブーン達は第二ブロックにある大型マーケット内にあるカフェで茶を飲んでいた。
食後の散歩を兼ねた街の見学。
街を通じて人との対話力を身につけさせるための、デレシアの図らいだった。

――と言うのは建前で、本当の目的は追跡者の目的を知ることだった。
もちろん、対話力を養うことを蔑ろにしているわけではない。
彼の成長には必要な工程だし、それは人間として身につけておくべきことだ。
部屋の中に閉じこもっていても、見えるのは壁ぐらいなのだから。

人間と接することが苦手なブーンを外に連れ出し、より多くの人の目に触れさせる。
そうすることで、彼は人の目を気にすることがこれまでよりも少なくなり、より自由に世界を見ることができるようになる。
人間的な成長を望める機会を逃す訳にはいかない。

(∪´ω`)φ″「こーひー、こうちゃ、あかわいん。
         おー……すていん?
         やむちゃろーで、めっちゃうまかろーお……お?」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/25(水) 00:08:44.92 ID:/JV1NRMF0
ノートとペンさえあれば、そこがブーンの勉強の場となる。
今彼にやらせているのは、目についたものの単語を書かせることだ。
早速彼が書いているのは、この店のメニュー表。
きっちりとレイアウトまで似せて書き写し、なおかつ字体まで似せている。

案外細かい性格をしている。

ノパ听)「そうそう。 コーヒーのスペルは間違えやすいから気をつけろよ」

アイスコーヒーに浮かんでいた氷は全て溶け、味も香りも薄まっていたが、ヒート・オロラ・レッドウィングは気にも止めていなかった。
デレシアも自分で注文した飲み物にはほとんど手を付けず、ブーンが単語を書く様子を見守りつつ、周囲の気配を探っていた。
不穏な気配は感じ取れないが、不快な気配は感じ取れる。
ブーンもそれに気づいたのか、顔を上げて、その方向に目を向けた。

£°ゞ°)「おや、奇遇ですねお嬢さん」

ベージュのジャケットに赤いネクタイ。
金色の薔薇が付いたタイピン、そして過度なまでの香水。
左右に分けた黒髪と、目尻の垂れた碧眼がその高慢な性格を表している。
右腕にはめた金色の腕時計を見せつけるために、わざとらしく大げさな仕草で時間を確認する。

今、このタイミングで時間を確認する必要はない。
己の財力を見せつけるための演技でしかない。
男の名はオットー・リロースミス。
第二ブロックを統治するブロック長だ。

三人が座るテラス席の傍に立ち、ブーンの手元を覗きこむ。

£°ゞ°)「ほぉ、勉強中だったのか」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/25(水) 00:19:22.65 ID:/JV1NRMF0
(∪´ω`)゛

£°ゞ°)「単語の書き取りとは、偉いじゃないか。
      しかし君は真似して書くのが上手いなぁ」

感心した風な態度をしているが、その目はブーンからデレシアにチラチラと向けられている。
ブーンに興味を示している自分に興味を示してほしいという現れに、デレシアは呆れ果てた。
ここまで単純で猿のような人間はそう滅多に見られない。
害悪になるには貧弱だし、そこまでの悪人ではないというのがこれまた嫌な部分だった。

使いようによっては便利な人間だが、興味が一ミクロンもない以上、関わり合いになるのは時間の無駄であり、デレシアは時間を無駄にしない主義だった。
クロスワードパズルでもやらせて、ブーンの学力向上と語彙力の向上を考える方がよっぽど有意義だ。

£°ゞ°)「どれ、私の勉強にも手を貸してくれないかな?」

机の上にロミスが置いたのは、スウドクと呼ばれる数字のパズルだった。
縦横ともに九の倍数のマス目があり、そこに数字を当てはめるというシンプルなもの。
しかし、難しいのはその数字が被さらないように空欄を埋める作業で、時間潰しと推理力を鍛えるにはいい道具だ。

£°ゞ°)「このページなんだが、さっぱりでね。
      どうだろう、できるか――」

縦横五十四マス。
難易度は中級といったところか。

(∪´ω`)φ″

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/25(水) 00:24:44.87 ID:/JV1NRMF0
ルールは聞いていなかった。
ページを見たのは一瞬だった。
後はただ、数字を書くだけだった。
ブーンが取った行動は、見て、そして書く。

この二つだけだ。

(∪´ω`)「これで、いいんですか?」

£;°ゞ°)「な?」

ロミスとしてはからかうつもりで見せた問題だったのだろう。
軽はずみな行動だったが、しかし、それが思わぬ結果を導いた。
ルール説明もなく、ただ見せられた数字の羅列。
そこから法則性を見出し、そして一瞬で解いたのである。

ロミスが我が目を疑うのも当然だ。
数字を見ただけで全てを理解する子供など、そう滅多なことでは見られない。

ζ(゚ー゚*ζ「すごいじゃない、ブーンちゃん!
      全問正解よ」

ノハ*^ー^)「偉いぞ!!」

(*∪´ω`)「えへへ……」

照れ笑いを浮かべるブーンの頭を、ヒートが撫でる。
傍らで見守っていたデレシアは、温かさを欠いた笑顔をロミスに向け、礼を言った。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/25(水) 00:29:25.72 ID:/JV1NRMF0
ζ(゚ー゚*ζ「どうもありがとう。
      さ、ブロック長のお仕事に戻ってください」

£°ゞ°)「……そうさせていただきましょう」

スウドクの本を持って、引きつった笑いを浮かべながらロミスはいそいそと退場した。
それから三十分後。
悲鳴のした方向に目を向け、デレシア一行もその事件を知ることとなった。
ただし、三人が全員感じたのは恐怖ではなかった。

――それは、純粋な興味だった。

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                ‥…━━ August 4th AM10:30 ━━…‥
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一日に二回も探偵会議が開かれることは、異例中の異例だった。
探偵達が約六時間で集めた全ての情報、そして推理を共有して挑む必要があったからだ。
これは形式的な物ではなく、突発的に行われた会議の為にほとんどの人間が仮面をつけていなかった。
重い空気の漂うフォアローゼスの店内は緊張感に満ち、焦りのようなものもあった。

最初に口火を切ったのは、ノレベルト・シューの弟子と呼ばれた長身痩躯の若い男、コーヒー色の肌が特徴的なセヤカーテ・クドゥ。
クドゥは黒革の手帳を一瞥してから、全体に向けて声を発した。

「被害者の体に残されていた手形。
大きさは一般の成人男性よりもでかかった。
つまり、犯人は相当な力を持つ人間、もしくは強化外骨格、即ち“棺桶”を使用した可能性が非常に高い」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/25(水) 00:35:14.44 ID:/JV1NRMF0
“ドクター・ストレンジラブ”が彼の横で頷く。
最重要人物であるノレベルト・シュー“フェイス・オフ”、もしくは犯人が内部犯である可能性が高いことが認識された瞬間だった。
もともと、死体がおかしな形に折り曲げられていた時点では、腕力に物を言わせた犯行だと思われていた。
しかし、そうなれば犯人の体躯はノレベルト・シューからかけ離れ、新たな容疑者を探さなければならない。

彼女の体躯問題を解決するのは、“棺桶”だった。
そして全ての武器――“棺桶”を含む――は全て乗船時に預けられ、倉庫に格納される。
その倉庫を開けることが出来るのは預けた本人のカードキーだけ。
オアシズの警備を担当している人間に銃が貸与されていることは周知の事実だが、“棺桶”となると話は別だ。

分厚い鋼鉄の扉と厳重な警備システムに守られた武器庫。
そこに保管された“棺桶”を使用できるのは、権限の与えられたカードを持つ内部の人間だけなのだ。
更に、その権限を持つのは警備担当者を含んだ、ブロックの安全を担当する者達だ。
探偵でさえ与えられていない権限を行使して秘密裏に“棺桶”を運べるのは、内部の人間を除いて他にいない。

「武器庫の使用履歴を確認したが、ハワード・ブリュッケンの物が最後に残されていた。
犯人につながる情報はなかった」

クドゥの発言に食いついたのは、ショボン・パドローネ。

(´・ω・`)「目撃情報は?」

「ない……と、言いたいところだが、二つあった。
一つは大きな荷物を運ぶハワードの姿、その後に見慣れぬ清掃員が船倉に向かい、これまた大きな荷物を運ぶ姿が見られた。
しかし、両者ともに白だ」

(´・ω・`)「理由は?」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/25(水) 00:38:36.33 ID:/JV1NRMF0
「ハワードに関しては忘れ物を取りに戻った事が確認されている。
カードの使用時間と照らし合わせても辻褄が合う。
後者は時間だ。 清掃員は午前二時に目撃されている」

なるほど、とショボンは頷く。
完全に無関係とは言いがたいが、その清掃員の情報を記憶しておくことにした。
手に入れた目撃情報は、犯人の特定には繋がらないだろう。

(´・ω・`)「銃弾のことだが、まだ見つかっていないのかい?」

警察に所属する鑑識の代表者が答える。

(HнH)「はい。 ですが、微量ながら硝煙反応を浴槽で確認しました。
     おそらく、銃弾はその先にあります」

「銃弾?」

(´・ω・`)「死体から発見されていないんですよ。
     奇妙だと思いませんか? あれだけ凄惨な現場で、あるはずのものがない。
     もしやと思って、浴槽の排水口を調べさせたんです。
     ビンゴだった」

訝しげに眉を顰めるクドゥ。

「そんな不確かな物に時間を割くのか?
なら、ノレベルト・シューを探した方が……」

(´・ω・`)「おいおい、それはないだろう。
     探偵っていうのは一つの証拠から真実を引きずり出すのが仕事。
     この銃弾が彼女につながるんだよ」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/25(水) 00:42:22.43 ID:/JV1NRMF0
「……そうか、線条痕か!!」

現代で使用されているほとんどの銃には、その銃身内にライフリングと呼ばれる螺旋状の溝がある。
発砲の際に銃弾が安定して飛ぶことを目的に発明されたそれは、同時に、銃にある物を与えた。
銃弾に刻まれる溝。
それは、銃の指紋とも呼ばれる一丁毎に違う溝だった。

オアシズが所有する全ての銃は線条痕の登録が済まされており、つまり、銃弾さえ見つかればそこから線条痕を調べて殺害に使われた銃の持ち主の特定が出来るのだ。

(´・ω・`)「だから探すんだ。
      例え偽りと汚物にまみれた小さな証拠でも、そこから真実を探すのが僕らだ。
      それが探偵じゃないのか?」

ショボンの一言に、その場の全員が深く同意した。
時間的な猶予がなく、決定的な証拠もない。
それは全員の認識だ。

(´・ω・`)「……挑んでやろうじゃないか。
     この偽りに、僕達探偵のプライドを懸けて」

店の扉を押し開け、ショボンが宣言する。

(´・ω・`)「さぁ、真実を語る銃弾探しの始まりだ」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/25(水) 00:50:05.43 ID:/JV1NRMF0
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探偵達は予定通りに動き始めた。
驚くほど単純な集まりだ。
こちらの意のままに動くその様子は、意思を持った操り人形そのもの。
自らの意思で動いていると錯覚し、勘違いした哀れな道化だ。

斯くして探偵達の目は一発の銃弾に向けられたわけだが、そんな物を追ったところで辿り着くのはこちらの用意した真実だ。
そしてその真実が辿り着いた先にあるのは、更なる謎。
もちろん、その謎もこちらが用意したものだ。
確かにあの銃弾を追えば、こちらに辿り着くことも可能だ。

しかし、その頃にはこちらの目的は達成されている。
だが。
もしもこの謎が解ける者があれば、ぜひともお目にかかりたい。
複雑に張り巡らせたこの大掛かりな謎。

この船にいる探偵達に果たして解けるだろうか。
あの様子を見る限りでは、不可能だ。
そして。
そして何より。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/25(水) 00:54:20.04 ID:/JV1NRMF0
“武装した”人間がこうして警備兵詰め所に侵入している点で、最早止められる者はいないのだが。


『そして願わくは、朽ち果て潰えたこの名も無き躰が、国家の礎とならん事を』


完全に気を抜いていた警備兵達の中心で口にしたのは、軍用第三世代強化外骨格、通称“棺桶”の起動コード。
最も現存するBクラスの傑作軍用強化外骨格、“ジョン・ドゥ”。
その機能性、そして汎用性は傑作機の名に相応しい。

('゚l'゚)「な、な?!」

〔V゚[::|::]゚〕

ダットサイトとサプレッサーを取り付けたH&K HK417を肩付けに構える。
この間、十二秒。
装着に十秒、そして構えと照準に二秒。
棺桶の使用期間にラグがあった為か、少しだけ腕が鈍っている。

しかし、この警備体制ならば問題はない。
銃口の先、ダットサイトの赤い点が重なる先にいる男の手には傑作突撃銃カラシニコフ。
だが銃把を握って人差し指がトリガーガードにかけられており、安全装置も掛かっている。
更に、十分間の観察の末、誰一人として対棺桶用の武器を持っていなかった。

銃弾も通常の規格通りで、この装甲を短時間で貫通できるものではない。
予め手は打ってある。
後は銃爪を引いて殺すだけだ。

(`゚l`゚)「こ、こいつは……?!」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/25(水) 01:01:42.23 ID:/JV1NRMF0
〔V゚[::|::]゚〕

一人目はカラシニコフの安全措置を解除する間もなく頭を吹っ飛ばされ、隣にいた二人目は肺を撃ち抜いた。
そして、時速百マイルに達する脚力を駆使して前方へ疾駆。
握り固めた左拳を振りかざし、その速度と硬度のみで三人目の肋骨を粉砕し、背骨を破砕する。
その推進力を活かし、人が密集している二時の方角に一躍し、飛び蹴りで四人目の顔面を踏み潰した。

着地し、薙ぎ払うように片手でライフルを撃つ。
急所に当たらずとも、防弾チョッキを身に着けていない人間を行動不能にするには十分だ。
血を撒き散らしながら倒れる男たちの悲鳴と真鍮製の薬莢が地面を叩く音が、一つの音楽となる。
三十発入りの弾倉が一つ空になり、人差し指で弾倉を落とす。

(●ム●) 「奴は弾切れだ!!」

コルトを構えると同時に男は発泡した。
狙いはジョン・ドゥの中で最も装甲の薄いヘルメットだ。
自分ならそうするし、マニュアルにもそう書かれている。
だから、左足を軸に回転しつつ体を低く屈めて弾を避け、新たな弾倉をチェストリグから取り出し、装填した。

〔V゚[::|::]゚〕『エイムサポート、オン』

音声コントロールを使用し、カメラと腕部サポートを連動させる。
あまり知られていないが、ジョン・ドゥを始めとする多くの棺桶にはカメラが捉えた動的物体に対して自動的に狙いを付ける機能が備わっている。
個体差はあるが、ジョン・ドゥは最長で連続二時間の使用が可能だ。
狙いが定まり次第、ただ銃爪を引くだけで弾は最適な方向に飛んで行く。

これだけ人間が一箇所に集まっている時には、自ら狙うよりもよっぽど効率がいい。
まして相手は豆鉄砲しか持っていないのだ。

(-゚ぺ-)「CQ、CQ!!」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/25(水) 01:06:33.91 ID:/JV1NRMF0
一手目。
無線の封鎖。

(::゚,J,゚::)「退避して武器庫に!!」

二手目。
各出入口の封鎖。
もちろん、ライフルの収納されているロッカーもだ。
これで、この詰め所は“詰み”だ。

どうしようもないと理解した時、彼らの顔から滲みだす絶望の味がよく分かる。
銃弾を涼しい顔で受けながら、カメラをライフルの銃身下部に取り付け、今の状態を船内に伝える。
ここからが面白いのだ。

〔V゚[::|::]゚〕『お楽しみの時間だ。
      なぁ、探偵さん達よ。
      この瞬間を待っていたんだろう?
      私に殺される哀れな奴が現れるのを』

たった一発の銃弾を躍起になって探す彼らに、ささやかなプレゼントだ。
死体に残す百二十発以上の銃弾。
それが撃ち込まれる様まで見せてやる特典付き。
是非とも堪能してもらいたいものだ。

そして、疾走した。
拳銃で立ち向かってくる男たちをひとりずつ撃ち殺し、武器を捨てて逃げる者は追いかけて拳足で殺した。
極力丁寧な撮影を心がけ、一発で殺す事のないように悲鳴を重要視して仕事を続行する。
血が派手に吹き出すように、肉片が飛び散るように急所を外して撃つ。

足を撃たれて転倒していた男の傍に屈んで、じっとその目を見る。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/25(水) 01:16:40.12 ID:/JV1NRMF0
(::゚,J,゚::)「や、やめ……!!」

〔V゚[::|::]゚〕『……家族は?』

(::゚,J,゚::)「む、娘と妻が」

〔V゚[::|::]゚〕『そうか』

下顎を掴み、握り潰す。
その様子はばっちりとカメラが撮っている。
血と肉を吹き出しながら、男が悲鳴を上げて悶絶する。

〔V゚[::|::]゚〕『訊いただけだ』

踵で下腹部を踏み潰し、より大きな悲鳴を上げさせた。
この様子を見て、そろそろ警備隊達が大挙して押し寄せてくることだろう。
しかし、捕まえることはおろか、辿り着くこともできない。
こちらが戯れに打った程度の手を読めない人間には、不可能なのだ。

惜しいが時間がもうない。
生き残った人間を追って、一撃で殺し始める。
脳、心臓。
まるでゲームのようで、面白みにかける殺しだ。

殺しとは命を奪う行為。
ゲームであってはならない。
もっと高尚で、もっと素晴らしい禁忌なのだ。

〔V゚[::|::]゚〕『では、次の配信を待つといい。
      さようなら、探偵諸君』

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/12/25(水) 01:27:31.88 ID:/JV1NRMF0
詰め所に居合わせた不運な三十二名は、こうして、たった一人の棺桶持ちによって殺されたのである。
この場から離脱するために振り返り、視認し、硬直し、認識し、歓喜し、そして失笑した。






(∪´ω`)「お?」






――ここに到達できる人間は即ち、こちらが待ち望んだ人物に他ならないのだ。





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